住宅購入資金を親などから援助してもらうケースは多いでしょう。そこで気になるのが、「贈与税が発生するかどうか」です。結論から言えば、親子間のお金の授受でも贈与税の支払い義務は発生します。ただし、住宅購入資金に限っては、特例を使って非課税にすることが可能です。
「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」とは?

たとえ親から子へのお金の受け渡しであっても、その金額や内容によっては贈与税が発生します。ただし、場合によっては贈与税が非課税になることもあります。その手段の一つが、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例(住宅資金贈与特例)」の利用です。
これは2021年12月31日までの間に、直系尊属(父母や祖父母など)が20歳以上の子・孫へ、マイホームの増改築も含めた住宅購入資金として贈与したお金については、次の非課税限度額までが非課税になる制度です。非課税にできる金額は、新築・購入・増改築の契約をした年によって変わります。具体的には以下のとおりです。
建物の価格に消費税率10%が適用される場合
契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
2019年4月1日~2020年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
上記以外(中古住宅の個人間売買で建物に消費税がかからない場合)
契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
~2015年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2016年1月1日~2020年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
【参考:省エネ住宅とは】 住宅資金等資金贈与が非課税になる「省エネ住宅」とは、室外の温度変化に左右されず、少ない冷暖房エネルギーで室内の温度を一定に保てる家屋をいいます。具体的には「夏に直射日光を遮蔽する」「冬に室内の熱を外に逃さない断熱効果がある」そしてそれらの効果をささえる「機密性の高さをもつ」住宅となります。 この「日射遮蔽」「断熱」「機密性の高さ」が、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)にもとづき、基準として定められています。 また、省エネルギー性能の高い住宅には住宅ローン【フラット35】の優位なプラン(省エネルギー基準等級により金利が一定の期間引き下げられる)を利用できるなどの特典が用意されています(等級により年数と引き下げられる金利は異なります)。 |
なお、非課税の対象となるのは、一定の要件を満たしている場合になります。具体的には以下のとおりです。(引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm)※
【参考:受贈者の要件】 次の要件の全てを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。
|
要件を満たしているかどうか等、念のため事前に国税庁のホームページで確認しましょう。
他の非課税枠と併用できる
なお、上記の非課税枠を使った後に、さらに贈与税の基礎控除(1年間に110万円)を利用することができます。たとえば個人から中古住宅を購入し、2019年12月に契約するケースでは、700万円プラス110万円で、合計810万円の住宅購入資金を非課税でもらえることになります。
また、住宅資金贈与特例は「相続時精算課税制度」とも併用できます。相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した際に選択できる制度で贈与時は2,500万円まで非課税で受け取ることができます。ただし、贈与してもらった親などが亡くなって相続が発生した時には、相続時精算課税制度を利用して受け取った贈与財産と、相続した財産を合わせて再計算して、相続税額を決めることになります。
なお、贈与税の基礎控除と相続時精算課税制度は併用できません。よって住宅資金贈与特例と併用する場合は、贈与税の基礎控除か、相続時精算課税制度のいずれかを選ぶ必要があります。
非課税の場合も申告は必要
住宅資金贈与特例を利用する際に注意すべきことは、非課税の場合でも申告が必要という点です。贈与税申告の期間内、つまり贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、申告書や添付書類を税務署に提出して申告します。期限内に申告しなければ、特例の適用を受けることができません。
相続の可能性があるなら要検討
住宅購入時に住宅資金贈与特例の利用を検討する際に、もう一つ頭に入れておきたいことがあります。それは、贈与を受ける人が将来相続する時に、「小規模宅地等の特例」を受けられなくなる可能性があることです。
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった人が所有していた不動産を相続した場合に、一定の要件のもとで相続税評価額が大幅に減額される制度です。たとえば、親が住んでいた自宅を子どもが相続した場合、この特例によって評価額が最大で8割引になります。1億円の不動産を相続しても、評価額が2,000万円になるので、支払う相続税は大きく抑えられます。
ただし、小規模宅地等の特例を受けられる人は、「亡くなった人と同居していた親族」か、「別居していても、過去3年以内にマイホームを所有していない親族」です。つまり、住宅資金贈与特例を使って住宅を購入した人は、この小規模宅地等の特例を受けられないことになります。
したがって、子どもなどへ住宅購入資金を援助する時には(あるいは親から援助をしてもらう時には)、「住宅資金贈与特例」や「相続時精算課税制度」を使うのか、それとも将来「小規模宅地等の特例」を使うのか、トータルで得になる方法を事前によく検討する必要があります。(提供:オーナーズ倶楽部)
【おすすめ記事 オーナーズ倶楽部】
・家賃収入を確定申告するとき損しないためのポイントとは?
・自主管理は効率が良い!?大家による管理の実態
・極度額の明記が必須に!民法改正によって連帯保証人はどうなるのか?
・資産承継前の注意点!被相続人がやるべきこと
・変わる賃貸経営。保証会社のこれまでとこれから