現役世代が数十年後に受け取れる年金額をシミュレーションする財政検証。現在の年金額に換算すると最もよいケースで約3万5,000円の減額、最悪なケースでは約8万6,000円も減額という厳しい結果が予測されています。今回は国の最新シミュレーションにそって、不足する年金がどれぐらいになるのかについて解説します。

将来もらえる年金額をシミュレーションする財政検証

年金シミュレーション,年金不足
(写真=Baiploo/Shutterstock.com)

財政検証とは、公的年金の定期診断のようなものです。将来の公的年金(国民年金・厚生年金)がいくらもらえるかを厚生労働省がシミュレーションし5年おきに発表されます。財政検証のベースとなるのは人口動態・物価・賃金・経済成長率などいくつもの指標です。これらを組み合わせて夫(厚生年金に加入者)と妻(専業主婦)のモデル世帯の年金額を算出しています。

2019年8月に厚生労働省から発表された財政検証を元にポイントについて確認していきましょう。

現在の厚生年金は現役世代の約60%に設定されている

年金制度のベースとなるのは「現役男性の平均手取り額」の何%を年金受給者が受け取れるかという比率です。この比率のことを「所得代替率」といいます。ちなみに2019年度の厚生年金加入者の所得代替率は61.7 %で現役男性の平均手取り額は35万7,000円です。所得代替率61.7%であれば、夫と妻が受け取られる厚生年金は1ヵ月あたり「現役世代の平均手取り額 35万7,000円×所得代替率61.7%=約22万円」になります。

将来の厚生年金は現役世代の手取りの30%台後半~約50%に大幅減額

最新の財政検証では、経済成長が進んだ場合から進まなかった場合の6つのケースが示されました。結論からいうと、理想的な経済成長を果たした場合でも年金受給者の生活はかなり苦しくなり、最悪なシミュレーションでは目も当てられない結果ということになります。6つのケースの所得代替率は以下の通りです。

※所得代替率=現役世代の平均手取り額に対する年金の割合

  • ケース1:所得代替率51.9%(経済成長率0.9%)※2046年の代替率
  • ケース2:所得代替率51.6%(経済成長率0.6%)※2046年の代替率
  • ケース3:所得代替率50.8%(経済成長率0.4%)※2047年の代替率
  • ケース4:所得代替率46.5%(経済成長率0.2%)※2053年の代替率
  • ケース5:所得代替率44.5%(経済成長率0.0%)※2058年の代替率
  • ケース6:所得代替率37.6%(経済成長率 -0.5%)※2053年の代替率

現在の所得代替率が61.7%ですから、最もよいケース1で約10%減少、最悪なケース6では 24.1%減少します。

現在の年金で換算すると、約3万5,000~8万6,000円減額になる

所得代替率を見ても、あまり実感がわかないかもしれません。これを(現在の)現役の平均手取り額に当てはめてみると結果は次のようになります。

  • ケース1:35万7,000円×51.9%=約18万5,000円
  • ケース2:35万7,000円×51.6%=約18万4,000円
  • ケース3:35万7,000円×50.8%=約18万1,000円
  • ケース4:35万7,000円×46.5%=約16万6,000円
  • ケース5:35万7,000円×44.5%=約15万9,000円
  • ケース6:35万7,000円×37.6%=約13万4,000円

    ※100円以下四捨五入

現在の夫婦2人の年金額は約22万円ですから、最もよいケース1で約3万5,000円、最悪なケース6では8万6,000円も減額することになるのです。ただし財政検証はすべてのケースで物価上昇を想定しており、物価が上がるにつれて給与や収入も増えていきます。それに伴い年金も額面自体は増えますが、実質的な価値は下がっていくことに注意してください。

物価上昇(インフレ)も同時進行するので現金・預金の価値は減る

最新の財政検証では、かなり厳しい将来の年金が見えてきました。ポイントは、これからの日本が本格的な人口減少社会を迎えることです。その中で長期的な経済成長を果たすことは相当高いハードルでしょう。経済成長がないケース5や6のような結果も現実的に考えられます。この環境の中、私たちにできることは将来に備えることだけです。

貯金をするという選択肢もありますが、財政検証ではすべてのケースで物価上昇を見込んでいます。ということは、現金・預金を持っていても資産価値が目減りしていくということです。このような年金の(実質的な)減額、物価上昇に対抗していくには、資産形成をしていくしかありません。投資信託・株式・国債などのペーパーアセットと金や不動産などのリアルアセット、それに私的年金のiDeCoなどをどう組み合わせるかが鍵になります。

資産形成に正解はありません。自分の人生設計やリスクをどこまで許容できるかを意識して、ベストな選択をしていきましょう。(提供:アセットONLINE

【オススメ記事 アセットONLINE】
2019年不動産マーケットを3つのキーワードで読み解く
2030年、世界における東京都市部の価値、優位性は?
2019年、投資用マンション購入は見送るべきか?高騰する物件価格
将来、日本の空き家はどのくらい増えるのか
2019年以降の社会的イベントと賃貸経営にまつわるポイント