インタビュー
(画像=PIXTA)

当座貸越を基本設計とし枠内で自由に借入可能に

――専用当座貸越とはどんな商品なのか、教えてください。

浅沼 短期継続融資というと、手形貸付を期日に書き替えることで融資を継続させるイメージが強いと思いますが、当金庫は「当座貸越」を活用しています。お取引先から申込があれば審査を行い、正常運転資金(経常運転資金)に応じた貸出枠を設定。その枠内であれば、自由に融資を借りることも返済することも可能です。

貸出枠内で資金を借り続けることも可能で、実質的に手形貸付による短期継続融資と同じ資金繰り改善効果をお取引先にもたらします。また、期限を1年で区切り1年ごとに審査を行う仕組みとしています。この点も手形貸付の書替継続を意識していますね。

――すばらしい商品ですね。その専用当座貸越を営業店の職員はどう推進していったのですか。

浅沼 先ほども申し上げたとおり、推進にあたっては「お取引先の資金繰りを改善する」という目的を明確にしました。それまで営業店の職員は、どうしても「運転資金は不足していませんか?」「設備投資の予定はありませんか?」と、お取引先を定期的に巡回してニーズがあれば対応する〝御用聞き〟のような活動が中心でした。しかし、専用当座貸越により職員の意識が「提案型セールス」にシフトしたと実感しています。

「御社は証書貸付で資金調達されていますよね。資金繰りが苦しくありませんか」「御社の正常運転資金は○万円くらいだと思います。この分を専用当座貸越で調達することで、資金繰りが改善します」――このような提案ができるようになったわけです。

ただ、それまで当金庫の職員には「短期継続融資」「正常運転資金」という概念が薄く、商品を用意したからといって、すぐに推進できるわけではありませんでした。


近代セールス
(画像=近代セールス)
▲盛岡信用金庫本店の外観(写真上)と、「資金繰り相談窓口」と明記された本店営業部の入口(同下)

そこで、決算書上の数値を入力するだけで資金繰りにおける課題や正常運転資金が判明する「分析システム」を、船井総合研究所と一緒に開発。これにより営業店の職員は、プリントアウトされた分析結果を営業ツールとして持参することで、経営者と資金繰りに関する課題を共有することができ、スムーズに専用当座貸越の提案を行えるようになったのです。

併せて、船井総合研究所のコンサルタントに定期的に研修を行ってもらい、営業ツールの使い方や提案話法を学んでいます。こうしたシステム導入や研修を通して、職員の短期継続融資に対する苦手意識を払しょくできたことが、積極的な推進につながったのでしょう。

永年の信頼があるからこそ受け入れてもらえる

――地域の取引先の反応はいかがですか。

浅沼 もちろんお取引先にも大変喜んでいただいています。まず「いつでも借りられる」ということが、我々の想像以上に経営者に安心感を与えていますね。

実際、お取引先の中には売掛金の入金が急遽ズレて、資金繰りがつけられないケースが発生することがあります。そのようなときでも、専用当座貸越があれば、すぐに資金調達ができるわけです。これは経営者にとって多大な安心感につながると思います。

資金繰りに奔走する時間が減り、本業に集中できるようになったという声もいただいており、当金庫の狙いどおりの効果が上がっています。

――ただ短期継続融資は、貸しっ放しという状況も生み、リスクがあると思いますが…。