アマゾンやネットフリックスが上場してから今までで、株価が何倍になっているかご存知でしょうか。
アマゾンは1997年5月に1.73ドルで上場し、記事執筆時点で約1,000倍になっています。
またネットフリックスは2002年5月に1.21ドルで上場し、記事執筆時点で約217倍になっています。
こういった高い成長率を誇る企業は「成長株」と言われ、たとえ赤字段階にあったり、配当を払わなかったとしても、将来性を期待され投資家から注目されます。
市場や投資家は常に次のアマゾンやネットフリックスを探していますが、この記事では注目される「成長株」を5つ紹介します。

トレード・デスク(TTD)
インターネット広告配信のトレード・デスクはここ数年で最も上昇している株の一つです。
同社の株価は2019年に入って倍増しており、2016年9月のIPO以降、670%以上上昇しています(記事執筆時点)。
広告は印刷媒体やテレビからデジタル分野への移行が進んでいます。
調査会社eMarketerによれば、世界の2019年のデジタル広告費は、前年同期比約18%増の3,330億ドルと予想され、全広告費の半分以上を占めるようになると見込まれます。
そして、2023年までには、世界的なデジタル広告費は5,170億ドルに達し、全広告費の60%以上になると予想されています。
デジタル広告市場の中でも急速に拡大しているのが、「プログラマティック広告」です。
高度なアルゴリズムや高速コンピューターを使って自動的に広告枠を買い付け、広告対象となる消費者に最も正確に広告を伝えるというものです。
このプログラマティック広告はトレード・デスクの主力事業で、同社のKoa AI(人工知能)システムは、広告媒体の費用対効果を瞬時に分析することができ、毎秒900万件の検索が可能です。
調査会社のゼニスメディアによれば、プログラマティック広告は2019年に前年同期比19%増の840億ドル以上に拡大すると予想され、2020年には980億ドルに達するとみられます。
この恩恵を同社は大きく受けることができ、同社の増収率は2017年に52%、2018年は55%と加速しています。
トレード・デスクは2016年9月に上場しましたが、多くのIPO(新規株式公開)企業と異なり、黒字基調です。
2018年の調整後EBITDA(支払い利息・税金・償却控除前利益)は、前年比67%増の1億5,900万ドルでした。純利益の伸びはさらに大きく、73%増の8,800万ドルです。
2019年も増収増益傾向が続いており、さらに最近、調整後EBITDAの予想額を当初の1億8,200万ドルから1億8,850万ドルに上方修正しています。
アルテリックス(AYX)
データ分析企業のアルテリックスは、各種経営ソフトウェアなどから必要な情報を抽出・加工し、顧客企業の経営判断に必要なソリューションを提示します。
AIやIoTの発達により、企業は業務動向のモニタリングや関連データの収集が容易になったため、データ分析企業が注目されています。
データ分析業界では企業の整理統合が進んでおり、投資対象企業が減っています。そのような中でも、アルテリックスは突出しています。
同社の2019年上期の売上高は前年同期比55%増、顧客数は34%増でした。
第2四半期(4月~6月)の1既存顧客当たりの平均売上高は前年同期比33%増で、既存顧客も利用を拡大しています。
売上高成長に加えて、特筆すべきは利益面です。
ソフトウェア企業は他業種に比べると利益率が高いですが、その中でもアルテリックスの年初来の総利率は89.1%と極めて高い水準です。
アルテリックスの株価は2019年に倍増以上となっていますが、データ分析市場は今後さらに大きくなっていくでしょう。
調査会社IDCによれば、アルテリックスの潜在市場規模は500億ドル前後にのぼります。
また、経営陣は、2018年の営業利益率19%に対して長期目標を35%以上と設定しています。
これらにより、アルテリックスの利益には大きなアップサイドが見込まれ、優れたハイテク株として検討する価値があるでしょう。
この成長分野で巨大プレーヤーのアルテリックスの株価は、数年間は上昇を継続させる可能性が高いとみられています。
ショッピファイ(SHOP)
Eコマース市場で今後数十年にわたり高成長を続けるとみられる企業の一つとして、Shopify(ショッピファイ)が注目されます。
同社のプラットフォームやサービスを活用することで、さまざまな規模の店舗がオンラインで商品を売ることができ、同社のビジネスは近年拡大しています。
Shopifyは、注文管理、オンラインマーケティング、クレジットカード決済など、オンライン販売で必要な全てのサービスを顧客店舗に提供しています。
現在の顧客ベースは80万社で、直近四半期の売上高は前年同期比で50%増と大きく伸びています。
急速な増収と今後のEコマース市場の拡大見通し(2025年までに24兆ドル)により、Shopifyの株価は今年に入り、226%上昇しています。
Shopifyがサポートする店舗はいたるところにあり、直近四半期の増収率は48%増と引き続き堅調です。
株価は今年3倍近く上昇し、アナリストは、株価上昇と事業ファンダメンタルズの改善で目標株価の上方修正に追われています。
また、Shopifyは小規模販売業者向けにビジネスをしているイメージが強いですが、大規販売模業者向けのプラットフォームである「ショッピファイ・プラス」が最も急成長しているサブスクリプションプランです。
2019年第2四半期のショッピファイ・プラスの売上高は、前年同期比38%増の1億5300万ドルとなりました。
ショッピファイ・プラスの月間経常売上高(MRR)は53%増の1240万ドルになり、全体のMRRの26%を占めるまでに成長しています。
ロク(ROKU)
スマートテレビ(インターネット接続機能を持ったテレビ)機器のRoku(ロク)の長期ビジョンは、自社のオペレーティングシステムを世界中のすべてのテレビで使えるようにすることです。
ストリーミングTVのパイオニアであるRokuは、米国で進むコードカット革命(ケーブルTVなど従来のTVからストリーミングへの移行)の勝者として台頭しています。
Rokuの現在のアクティブアカウント数は3,050万で、2019年の第3四半期(7月~9月)の合計視聴時間は100億時間を突破するとみられます。
第2四半期(4月~6月)決算では、売上高は前年同期比59%増の2億5010万ドル(約265億円)で、増収率は第1四半期の51%、前年第4四半期の45%から加速しています。
継続する業績の増勢に伴い、経営陣は2019年の通期ガイダンスを大きく引き上げました。
売上高予想を、当初の10億3000万ドル~10億5000万ドルから10億7500万ドル~10億9500万ドルに上方修正し、調整後EBITDA(支払い利息・税金・償却控除前利益)予想を、当初の1000万ドル~2000万ドルから3000万ドル~4000万ドルに大幅に引き上げました。
2017年9月に26.54ドルで上場したRokuは、2019年9月に169.86ドルとなり、約640%上昇しています。
オクタ(OKTA)
オクタはクラウドベースのセキュリティソフトウェア会社ですが、一般的にはあまり知られていません。
しかし、「クラウド型のID管理サービス」市場の主要プレーヤーとして急速に台頭しています。
顧客企業は、保有データへのアクセスを保護するためにオクタのサービスを使います。
オクタのソフトウェアは、ゲートキーパーのように機能し、特定情報への顧客および従業員のオンラインアクセスをコントロールし、機密情報へのアクセスを制限します。
多くの企業が顧客および従業員向けオンラインサービスを増やしているため、クラウド型のID管理サービス市場は重要性を増しており、市場規模は今後6年間で240億ドルに達すると予想されています。
市場の拡大と共にオクタも急速に成長しており、直近四半期では、6,500超の企業がオクタのサービスを利用しており、売上は前年同期比50%増と大きく伸びています。
さらに大口顧客の利用も増えており、年間契約額10万ドル超の顧客数が前年同期比53%増となっています。
成長株を追求している投資家とっては、拡大しつつあるクラウド型のID管理サービス市場において、急速に成長しつつあるオクタは注目に値するでしょう。
まとめ
以上が、2020年も引き続き注目すべき5つの成長株です。
いずれの企業も成長産業において急速に存在感を示しており、今後も高い成長率が期待できます。
また、このような成長株に投資を行う際は、急落リスクを避けるためにバリュエーションにも注意を払いましょう。(提供: The Motley Fool Japan)
記事の作者、中澤航太は記事で言及されている株式を保有してはいません。