節税対策として富裕層に人気の資産管理会社。しかし、どういった仕組みで節税できるのかいまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。今回は、資産管理会社の節税の仕組みを分かりやすく解説し、実際の節税額のシミュレーションも紹介します。

本当に節税できる?最大の節税効果は所得税と法人税の税率差

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(写真=SARYMSAKOV ANDREY/Shutterstock.com)

富裕層であれば、資産管理会社のことを耳にしたり、設立をすすめられたりした経験が一度はあるはずです。しかし、「会社設立といっても具体的に何をすればいいか分からないし、かえってコストや手間が増えるのでは……」と考える人も多いでしょう。

まず、資産管理会社の節税の仕組みについて分かりやすく解説していきます。資産管理会社を設立することによる節税メリットは、主に所得税・法人税の税率差と損益通算の2点です。また、資産の移転・分割がしやすくなるなど相続税対策としても効果的です。

所得税が法人税率の23.2%を超えるならメリットあり

まず、所得税・法人税の税率差について解説します。日本の所得税率には最低5%から最高45%まで幅があり、所得が高いほど所得税率も高くなります。それに対して、法人税率は一律23.2%です。中小法人などであれば、年間800万円までの利益にはさらに低い19%という税率が適用されます。

資産管理会社を設立することで、この税率差の分だけ毎年手元資金を増やせるというのが最大の節税効果です。詳しいシミュレーション結果は後述しますが、数十年単位で見れば数千万円の節税効果が出ることも少なくありません。

損益通算で税負担を軽減できる

続いて損益通算について解説します。所得税の場合、株式投資で大幅な譲渡損が出ていても不動産投資で利益が出ていれば、不動産投資の利益に対しては所得税が課税されます。所得税だと損益通算できる所得には制限があり、自由度が低いからです。

一方、法人税の場合、すべては法人の事業として一括して利益を計算し、その利益に対して法人税が課されます。そのため、株式投資で生じた譲渡損を不動産など他の利益と相殺することができるのです。これも税務上の大きなメリットといえるでしょう。

配偶者や子どもへの資産の移転にも有効

最後に、相続税対策として資産管理会社を活用する方法を紹介します。資産が大きくなれば、将来に備えて相続税対策を始める人が多いでしょう。

毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからないため、計画的な贈与を実行している人もいるかもしれません(定期贈与の場合は課税対象となるので注意が必要です)。しかし、110万円を大幅に超える金額を贈与すると途端に高額な贈与税がかかります。そのため、財産の移転がなかなか進まないと悩む声をよく聞きます。

資産管理会社を設立すれば、子どもを役員にすることで役員報酬を支払うことができます。贈与とは別枠で効果的に財産の移転を進められるのです。

また、不動産の場合は少しずつ子どもに贈与するわけにはいきません。登記費用や不動産取得税がその都度発生してしまうからです。しかし、資産管理会社に不動産を所有させてしまえば、資産管理会社の株式として少しずつ子どもに贈与を進めることもできます。

資産管理会社の実際の節税額をシミュレーション

続いて、実際の数字でシミュレーションしてみましょう。

税率差から見る節税効果

まず、所得税と法人税の税率差についてです。課税所得のうち給与所得部分が900万円、不動産所得部分が500万円、合計1,400万円という所得構成の人が、不動産管理会社を設立して不動産を移転したとしましょう。

不動産所得500万円に対して課される所得税率は33%、法人税率は19%、税率差は14%なので、毎年の節税効果は70万円です。つまり10年で700万円、20年で1,400万円、30年で2,100万円もの金額が節税できます。

税率差の影響の大きさが分かるでしょう。将来的に子どもへの資産の移転を考えている場合も、早めに資産管理法人を設立しておくことで、個人で所有しているより多くの資産を遺せる可能性が高くなります。

相続対策にも大きな効果

次に個人で子どもに資産を贈与した場合と、法人から役員報酬を支払った場合を比較します。1年間で500万円を子どもに贈与した場合、贈与税は53万円です。一方、資産管理会社を設立し、110万円を贈与し残りの390万円を役員報酬として支払うと、所得税は約12万円です。それぞれの計算式は次のとおりです。

【個人で贈与した場合の贈与税】
(500万−基礎控除110万円)×税率20%−控除額25万円=53万円

【役員報酬で支払った場合の所得税】
① まず課税所得を計算する
(500万円−110万円)−給与所得控除132万円(390万円×20%+54万円)−基礎控除38万円=220万円

② 次に所得税を計算する
課税所得220万円×税率10%−控除額9万7,500円=12万2,500円

贈与する金額が大きくなれば、節税効果はさらに大きくなります。相続対策としても資産管理会社の設立が効果的だと分かるでしょう。

資産家への課税が強化される時代。大切な資産を守り抜くために

数年前から、相続税の基礎控除の縮小、所得税率の引き上げなど資産家への課税は強化されています。一方で、法人税率は経済活性化の名のもとに引き下げられてきました。今後もこの流れは加速していくといわれています。

このような政策動向や税制改正の流れを踏まえても、資産管理会社の設立は資産を守る方法として理にかなっているといえるでしょう。

節税効果は資産構成や所得状況、家族状況によって変わるため、事前に十分なシミュレーションが必要ですが、一度設立を検討してみてもいいのではないでしょうか。(提供:ANA Financial Journal

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