営業における新規開拓や既存取引先の与信管理など、様々な場面で活用される帝国データバンクの「信用調査報告書」。このデータにまつわる疑問に迫る帝国データバンクの北野信高氏へのインタビュー。最終回となる第4回は調査を行う中で印象的だったエピソードや数字から読み解ける事業承継の動きなどについて話を聞いた。

北野信高(きたの・のぶたか)
帝国データバンク営業推進部 営業開発課 課長
平成12年、帝国データバンク入社。内勤を経て、調査部門で延べ2000社の信用調査業務を行う。本社営業推進部に異動後、金融機関をはじめとする大口顧客の課題解決サポートを主な活動とする。

粉飾や詐欺も‥印象的な調査での経験

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(画像=bizvector/shutterstock.com,ZUU online)

――今まで調査に行かれた中で、印象に残っているケースをご紹介いただけますでしょうか。

これは、ある東京都の会社のことですが、社長が「北野君、新規事業ですごいものを発明したよ」と言うので、「何ですか、社長」と聞いたら、「いや、この四角い箱の中に物を入れると完全になくなってしまう。そういうものを開発した」と。

そんなものあるわけがないですよね。中学生だって、「質量保存の法則」を学校で習って知っています。そうしたものを熱っぽく一生懸命、「新規事業だ」と言う会社もあります。その一方で、試作用のリニアモーターを作っている年商600万円のすごく小さな会社もある。会社の数だけ、それぞれ特色のある会社がありますね。

――長く調査を経験されていると、様々な経験をするのですね。

調査の過程で、粉飾に気づいてしまうケースもあるのですが、そうした会社の多くは余裕がありません。だから、すぐにわかってしまう嘘をついてしまうことがあります。

粉飾で多いのが、在庫勘定の操作なのですが、在庫勘定が有り得ない数字になっていたことがありました。この会社は、私の担当ではなかったのですが、台所周りの細かな商品を扱う会社の在庫が数億円、数十億円規模になっていたというのです。

その会社は「倉庫を持っていない」と言っているのにかかわらず、です。「細かな商品の在庫が何十億円分って、どんな広い倉庫ですか」という話ですよね(笑)。

――粉飾決算している企業というのは、頻繁に見かけるものなのでしょうか?

今お話ししたような在庫の水増しは、簡単に粉飾できてしまうので、つい手をつけてしまいがちな古典的な手口です。

最近では、小売りなど、店舗を持っている会社で多いように感じます。銀行から既に資金を借りているのに、借りていないように装って別の銀行からも資金を借りるということもありますから、私たちが知っている以上に、実態は多いのではないでしょうか。

また、建設会社や不動産会社などの許可業は、都道府県に届け出をして、決算が終わってから4カ月後くらいに決算書を提出しなければなりません。その際、各都道府県のフォーマットに合わせて決算書を提出する必要があるのですが、事務員が転記する際に間違えたのか、決算書の右と左でバランスが取れていないということもあります。

――これまで本当に犯罪に手を染めている企業をご覧になったことはありますか?