社会階層を3つに分け、「上流」「中流」「下流」とすると、日本には上流階級がほとんどいません。なぜなら、「上流」というのは資産や収入の多寡ではなく「身分」のことで、「働かない人たち」を指すからです。

一方、「上流」を資産や収入が多い富裕層としてみると、日本は世界でも有数の「上流」の多い国と言えます。しかし今後の日本ではその数が減っていくことが予想されます。

いまの日本の社会階層がどうなっているのか、将来どうなるのか、ここで整理してお伝えします。

英国の階級社会:日本の社会階層との違い

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(写真=Joshua Davenport/Shutterstock.com)

英国は「階級社会」と言われます。例えば、ヴァージン・グループの創始者リチャード・ブランソン氏は中流階級の出身です。サッカー選手のデビッド・ベッカム氏も同じです。いまでは2人とも富裕層の仲間入りをしています。

ところが、2人を「上流階級の人間」とは言いません。英国では「上流階級」は、その頂点が王室で、その下が爵位を持つ貴族階級とジェントリーと呼ばれる代々の大地主です。「上流」と「中流」を区別する基準は「身分」であり、資産や収入の多寡は関係ないのです。

現代の日本には、皇室はあっても貴族はいません。戦前は爵位を持つ人々がいましたが、戦後はみな平等になり、英国的な意味の「上流」はほとんどいなくなりました。その点で、現代の日本の社会階層はアメリカに近くなっていると言えるでしょう。

ファッセル氏による階層分類:「上流」は一生働かない人々のクラス

ペンシルベニア大学教授のポール・ファッセル氏は、その著書“CLASS : A Guide Through the American Status System”(邦題『階級』、訳・板坂元、光文社)の中で、社会階層を次のように分類しました。まず、「上流」「中流」「下流」、さらに「上流」を三つ、「中流」を四つ、「下流」をさらに二つに細分化しています。

上流(働いていない人々):レジャークラス
  「最上流階級」――ケタはずれで見ることができない
  「上流階級」
  「上層中流階級」
………………………………………………
中流(働いて暮らす人々):ワーキングクラス
  「中流階級」
  「上層労働階級」
  「中層労働階級」
  「下層労働階級」
………………………………………………
下流(日々の暮らしに困る人々):ロウアークラス
  「貧困階級」
  「最下層階級」――ケタはずれで見ることができない

ここで重要なのは、上流を「レジャークラス」(leisure class:有閑階級)として、「働いていない人々」としていることです。上流は、英語では一般的に「アッパークラス」(upper class)と言いますが、レジャークラスとも呼びます。一生働かずに遊び暮らしていく人々だからです。これに対して、働かなければ生きていけない人々は「ワーキングクラス」(working class:労働階級)です。

日本における「上流」「中流」「下流」とは?

このようにファッセル氏の階級分類では、人々の労働形態が大きく階級を左右しています。少しでも働いていれば、それは「上流ではない」とファッセル氏は考えたわけです。

では、ファッセル氏の分類を、日本に当てはめるとどうなるでしょうか。日本にそんな人々はいるでしょうか。一部の大企業のオーナー、大地主、資本家、投資家だけではないでしょうか。

つまり、日本で言うサラリーマンを中心とした一般労働者は、そのすべてが「中流階級」「上層労働階級」「中層労働階級」「下層労働階級」のいずれかに入るわけです。

米仏等の社会階層:収入や資産が多い人々を「富裕層」としている

一方、米経済誌の『フォ−ブス』の長者番付や各種の調査では、収入と資産の多寡で社会階層を分類しています。この分類では、資産がワンミリオン(米ドルで100万ドル:1ドル100円として1億円)を超える人々を富裕層としています。そうして、それ以下をさらに細分化して、10〜100万ドル、10万ドル以下、1万ドル以下に分けています。

また、よく使われるフランスのコンサルティング会社「キャップジェミニ」が発表する「World Wealth Report」では、居住用の住宅や収集品、消費財、耐久消費財を除いた資産が100万ドル以上ある人を、「High Net Worth Individual」(HNWI)と呼び、富裕層と定義しています。このレポートによると、日本には2017年度で約316万人の富裕層がいます。これは、アメリカの約528万人に次いで世界第2位です。

そこでここからは、資産や収入の多寡で社会階層を分ける方法で、「上流」を富裕層とすることにしてみます。富裕層を「上流」とし、その下の中間層を「中流」、さらにその下の貧困層を「下流」とした上で、今後、日本の「上流」の人々がどうなるのかを見てみましょう。

高齢化と労働人口減が上流の人々の富を減らす

ここ数年、日本の富裕層人口(上流階級)は増えています。その原因は、一つには異次元の金融緩和によって、過剰なおカネが富裕層に回ったからです。緩和マネーは株や不動産などの価格を上昇させました。また、日本でもグローバル資本主義、ネット資本主義の進展で、ニューリッチ、ITリッチと呼ばれる新・富裕層が誕生したことも理由の一つです。

しかし、今後は「富裕層=上流階級」の数は減ると予測されています。というのは、いずれ金融緩和が終わり、日本経済全体の大きな成長が望めないからです。少子高齢化が進む日本では労働力が徐々に減り、市場規模が縮小すると考えられています。その結果、日本の国力が弱体化すると「日本円」の価値が下がる、すなわち円安になります。円安になれば、ドル換算された資産は目減りします。

さらに、現在、金融資産のほとんどを高齢者が持っていますが、この人たちは今後、多死社会によりどんどん死んでいきます。日本の相続税は高いので、資産継承がよほどうまく行われない限り、資産の多くは国のものになってしまいます。それが嫌で「資産フライト」をする人も増えています。

2025年には、団塊の世代がすべて後期高齢者(75歳以上)になります。日本人は社会階層を問わず働きすぎと言われます。しかし「人生100年時代」になったとはいえ、さすがに75歳以上になると、働くのはきつくなってくるでしょう。すると、資産を取り崩すことになります。

このように、今後の日本では、高齢化や人口減が「上流」の人々の富を減らす要因となっていきそうです。(提供:ANA Financial Journal

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