ニューヨークでは「Atera」(アテラ)、バンコクでは「Gaggan 」(ガガン)、東京では「NARISAWA」(なりさわ)、台北では「RAW」(ロウ)など、世界で人気の予約が取れないレストランは、『ミシュラン』の三つ星は獲得していません。今まで、人気のある店は、ミシュランで三つ星を獲得しているなどのイメージが強くありました。

いまの富裕層、特にニューリッチ層は、ミシュランで三つ星を獲得し、掲載されているかどうかはレストラン選びの基準になっていないようです。

予約の取れないレストランは『ミシュラン』の三つ星店ではない

予約の取れないレストラン,共通点
(写真=EQRoy/Shutterstock.com)

ニューヨークでいま評判のレストラン「Atera」には、伝統的な白いテーブルクロスのかかったテーブル席はありません。トライベッカ地区の一角にあるこぢんまりとした店にはコの字型のカウンター席が配され、シェフたちが直接料理を出してくれます。

メニューは全18品のコース一種類だけ。これにおすすめのワインティスティングを付けて、フレンドリーなサービスを楽しみます。料理は、フレンチともアメリカンとも言えない革新的な、いわゆるイノベーティブ、プログレッシブと言われるものです。

この「Atera」は『ニューヨークタイムズ』の三つ星ですが、『ミシュラン』では二つ星です。

ニューヨークで『ミシュラン』の三つ星は、2018年現在、5店。「Le Bernardin」(ル・ベルナルダン)、「Per Se」(パ・セ)、「Eleven Madison Park」(イレブン・マディソン・パーク)、「Chef’s Table at Brooklyn Fare」(シェフズテーブル・アット・ブルックリン・フェア)に、和食(寿司)の「Masa」(雅)です。これらはいずれも正統的、伝統的な格式ある店です。

しかし、「Atera」は、これらの店と同じカテゴリーには入らないのです。

まったく予約が取れない人気店「Gaggan」「RAW」も二つ星以下

いまやアジアでNo.1のレストランとされるバンコクの「Gaggan」も、『ミシュラン』では二つ星です。

「Gaggan」はバンコクにありますが、いわゆるタイ料理の店ではありません。インド料理、つまり、カレー風味がベースとなった「プログレッシブ・インディアン」というべき料理が次々に出てきます。しかも、分子料理(ガストロノミー)の手法が駆使された、まさに現代そのものの料理です。 ただし、2018年8月をもって閉店。「レストランの寿命は10年」と言うオーナーシェフ、ガガン・アナンドは、さらに新しい店に挑戦するようです。

台北の「RAW」も同じです。『ミシュラン』では一つ星ですが、予約はまったく取れません。予約は、ネットで2週間前からしか受け付けず、アクセスできても早い者勝ちなのですぐに埋まってしまいます。世界中のニューリッチのフーディーズがアクセスするからです。

『ミシュラン』は、10年前はアジアでは日本版だけ(東京版、京都・大阪版など)でした。それがいまでは、香港・マカオ版、上海版、ソウル版まであり、ここ2年で、バンコク版、シンガポール版、台北版が加わりました。手広くカバーすればするほど評価が行き届かなくなるのは、仕方ないことかもしれません。「Gaggan」「RAW」のような、ミシュランの星の数が顧客からの評価と合わない現象は今後も起こるのでしょう。

伝説のレストラン「エルブリ」経験者のスターシェフがいる店

ニューヨークの「Atera」、バンコクの「Gaggan」、台北の「RAW」などに共通することがあります。それは、料理がこれまでのどんなカテゴリにも属さない革新的なもので、まったくのオリジナルということです。つまり、それができるスターシェフがつくっているのです。

例えば、台北の「RAW」のスターシェフのアンドレ・チャンは台湾出身、シンガポールで大成功した料理人です。アンドレ・チャンは2011年に自身の名を冠したフランス料理店「Andre」(アンドレ)をシンガポールで開きましたが、即座に『ニューヨークタイムズ』に絶賛されました。この年、なんと「飛行機に乗ってでも行く価値のある世界の10軒のレストラン」に選ばれたのです。つまり、アンドレ・チャンは、台湾に凱旋帰国して「RAW」を開いたのです。

実は、アンドレ・チャンは、バルセロナの伝説となったレストラン「El Bulli」(エルブリ)の経験者です。「Atera」のシェフのロニー・エンボルグも、「Gaggan」のガガン・アナンドも「エルブリ」の経験者です。つまり、この「エルブリ」の経験者というスターシェフの経歴も、いまの富裕層フーディーズの人気の秘密なのです。

伝説のレストランといえば、デンマークの 「Noma」(ノーマ)があります。ここの経験者も、大人気です。「Atera」の初代シェフ、マシュー・ライトナーは「ノーマ」出身でした。

『ミシュラン』より『世界のベストレストラン50』

2019年現在、スターシェフによってつくられる革新的なモダン・キュイジーヌのガイドは、『The World's 50 Best Restaurants』(世界のベストレストラン50)です。そのアジア版である『Asia's 50 Best Restaurants』(アジアのベストレストラン50)も、アジアを旅する日本人富裕層フーディーズにとって欠かせないガイドになっています。

『世界のベストレストラン50』は、2002年に始まったアワードです。これによってバルセロナの「エルブリ」やコペンハーゲンの「ノーマ」は、世界一のレストランになりました。 2013年からはアジア版である『アジアのベストレストラン50』が始まり、毎年1回開かれる大会には、アジア中のスターシェフが集まり大盛況です。

いまや、食文化はスターシェフとイノベーティブ、プログレッシブがキーワードで、時代性を反映したレストランが正統的、伝統的な格式ある店よりも人気を集めるようになったのです。

『アジアのベストレストラン50』全リスト

それでは、以下、最新版の『アジアのベストレストラン50』(2019年度版)の全リストを紹介してみましょう。
1位 オデット(ODETTE)シンガポール
2位 ガガン(GAGGAN)バンコク
3位 傅(DEN)東京
4位 ズーリングバンコク
5位 フロリレージュ(FLORILÈGE)東京
6位 ウルトラバイオレット(ULTRAVIOLET)上海
7位 ムメ(MUME)台北
8位 NARISAWA 東京
9位 日本料理 龍吟 東京
10位 バーント・エンズ(BURNT ENDS)シンガポール
11位 ザ・チェアマン(The Chairman)香港
12位 8 1/2 OTTO E MEZZO BOMBANA香港
13位 ミングルス(Mingles)ソウル
14位 ラ・シーム(La Cime)大阪
15位 ベロン(BELON)香港
16位 ガア(GAA)バンコク
17位 インディアン・アクセント(INDIAN ACCENT)ニューデリー
18位 ブルガリ・イル・リストランテ ルカ・ファンティン(Il Ristorante Luca Fantin)東京
19位 ボラン(BO.LAN)バンコク
20位 ル・ドゥ(LE DU)バンコク

日本のスターシェフが牽引するアジアの食文化も注目されている

『アジアのベストレストラン50』を見て特筆すべきは、日本のレストランが12店もランクインしていることです。『ミシュラン』でも星獲得店が最多なように、日本はいまや世界一の美食国家であり、多くのスターシェフを輩出しています。

第3位「傳」(東京・神宮前)の長谷川在佑シェフ、第5位「フロリレージュ」(東京・神宮前)の川手寛康シェフ、第8位「NARISAWA」(東京・南青山)の成澤由浩シェフ、第9位「日本料理 龍吟」(東京・日比谷)の山本征治シェフなどの名は、アジアはもとより世界中の美食家で、その名を知らない人はいません。

ところで、日本国内の店ではありませんが、第40位のシンガポールの「Waku Ghin」(ワク・ギン)は、日本からオーストラリアに渡って「Tetsuya’s」で成功した和久田哲也シェフが、シンガポールのマリーナベイ・サンズ内に開いたレストランです。

ミシュランといえば、フランスで誕生したもの。そのため、ミシュラン三つ星獲得のレストランといえば、フランスに多く点在していました。
しかし、世界各国で、フランス、そしてフランス料理から遠いジャンルでもある日本料理やアジア料理また、既存のジャンルにくくられないイノベーティブな料理が誕生し、それに伴いレストラン選びの基準に変革が訪れているのかもしれません。多くの富裕層たちの注目する予約の取れないレストランは、多種多様になっていくのでしょう。(提供:ANA Financial Journal

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