ホテル旅館の事業性評価
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1)問題の傾向と事業特性

ここでは、弊社が実際に再生支援に関わった旅館のうち、大中規模の旅館(客室30室以上)37社の分析結果を使って解説します。

ホテル旅館,事業性評価
(画像=ビジネス教育出版社)

まず、結果指標の評価結果ですが、ここから見えてくるのは「売上の評価が低いほど金融支援が大きくなる傾向にある」ということです。これは大中旅館でも、特に100室規模以上の旅館になると顕著になります。

その理由は、この規模になると固定費が重くのしかかり、相当な売上がなければ利益を出すことができないからです。通常、規模が大きくなるほど過去に大規模な設備投資をしているので、どうしても減価償却費や固定資産税など、施設にかかる経費が大きくなります。また、館内が広く、規模が大きいほどパブリックスペースを贅沢に取っているし、客室1室あたりの坪数も広くなる傾向があります。

パブリックスペースを贅沢に取ったり、客室1室あたりの坪数を広くとると、空調にかかる燃料費や重油、電力の負担が増え、水道光熱費がかかります。特に寒冷地の場合、冬の暖房にかかる燃料費が一気に大きくなるので注意する必要があります。もちろん暑い地域の冷房費もかなりの負担増になりますが、筆者の経験則上、寒冷地における暖房費の方がはるかに大きな負担になります。

例えば、集中のボイラーと熱交換器を入れているホテル旅館の場合、その多くがA重油を燃料として使用しています。A重油のコストは、原油の世界市況によって大きく変わります。現在のように世界情勢が流動的な局面では重油単価は上昇傾向にあります。これはすぐにホテル旅館の水道光熱費を増加させます。

また、箱が大きいため、多数の顧客を迎え入れるスタッフも多く配置する必要があります。かつてのように団体客が宴会場を使ってくれれば効率的にサービスを提供することも可能でしたが、前述したとおり宴会場を利用する団体客は減少傾向にあり、今は個人客の比率が上がっています。そうなると食事を部屋出ししている旅館は言わずもがなですが、宴会場に個人客を集めて食事のサービスを提供している旅館でも、スタッフ増は避けられません。なぜかというと、1つは団体客より個人客の方が手数を必要とすること、もう1つはスタッフが個対個のサービスに慣れていないことも大きな要因になります。

規模が大きい旅館は固定費が重くなるため、どうしても損益分岐点売上高が大きくなってしまい、その売上を確保するためには安価な団体客でも取り込まなければならないのです。そうすると客単価が下がり、非効率的な収益構造になってしまいます。これらのことから、単に売上を上げてもなかなか収益を上げられない旅館が多いのです。

一方、プロセス評価の評価結果ですが、大中規模の旅館の場合、レーダーチャートがデコボコすることはなく、きれいな六角形になることが多いです。つまり、6つの評価分野の中に目立って低評価となる分野はなく、バランスのとれた評価結果になる傾向があります。

なぜ、バランスのとれた評価結果になるかというと、一定規模以上の旅館の場合、マネジメント機能を発揮しなければ経営が成り立たないからです。もちろん経営者によって巧拙はありますが、少なくともマネジメントを発揮し、バランス良く経営している姿が見て取れます。逆説的な言い方をすれば、「一定規模以上の旅館の場合、単なる家族経営から脱却しなければ経営は成り立たない」ということです。

大中規模の旅館では、プロセス指標の評価結果が低いほど金融支援が大きくなる傾向が強く出ます。特に「施設」と「経営管理」の分野の評価が低いと、金融支援が大きくなる傾向にあります。

2)「施設」の傾向