投資信託は預金のように確定した利回りが得られる商品ではないため、利回りの概念は少し複雑だ。投資信託の利回りとはどのようなものか、計算方法や注意点を整理していく。

また、利回りに類似した言葉として「利率」、「騰落率」、「パフォーマンス」というワードが投資ではよく用いられる。これらの言葉との違いも説明しておきたい。さらに、資産を2倍にするために必要な利回りが簡単に計算できる「72の法則」も紹介する。

菅野陽平
監修者・菅野陽平
株式会社ZUUM-A取締役。日本最大級の金融webメディア「ZUU online」副編集長。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。

そもそも投資の利回りとは何か?

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(画像=PIXTA)

利回りとは投資金額に対する収益の割合のことを指す。例えば、100万円を投資して1年後に1万円の利益を得ることができたのであれば、1年間の利回りは1%である。

1万円(収益) ÷100万円(投資金額)×100=1(%)

利回りを見れば、どれだけの利益を得られたかを容易に知ることができ、他の金融商品とも収益性を比べやすくなる。投資期間が1年を超える場合の利回りは、比較しやすいように年率に換算して表記されるのが一般的だ。

初心者が金融商品を理解しづらい理由の一つとして、「利回り」の感覚が身に付いていないことがあげられる。逆に言うと、「利回り」に関する知識が身に付くと、どの商品に投資すべきか、あるいは投資すべきでないのか、感覚がつかみやすくなる。これは、投資信託だけではなく、株式、債権、不動産など、すべての金融商品について言えることである。

「利回り」と混同しやすいワード

「利回り」に類似した言葉として「利率」「騰落率」「パフォーマンス」という言葉も投資ではよく用いられている。一見、似た言葉ではあるが、それぞれ個別の意味があり「利回り」とは違ったものだ。混同しないためにも、それぞれを理解しておく必要があるだろう。

・「利率」

「利率」とは債券の額面金額に対し毎年受け取る利子の割合のことだ。「表面利率」と呼ばれることもある。

また、銀行の預金でも受け取れる利息の割合を表すのに「利率」が用いられることがある。

後述するが、投資信託の場合はどれだけの利益が得られるかは不確実だ。そのため、投資信託において「利率」という言葉を使うことはあまりない。

・「騰落率」

「騰落率」とは、一定期間の最初と最後で価格がどれだけ変化したかをパーセント(%)で表すものだ。例えば、始めに100円であった運用商品の価格が110円になった場合、10%の上昇と表す。反対に90円になったのであれば、10%の下落だ。株式、債券では、1日でどれだけ価格が変動したかを騰落率で評価するのが一般的だ。

投資信託の場合は、一定期間に基準価額がどれだけ上下したかを騰落率で表記する。1日単位だけでなく、1カ月、3カ月、6カ月、1年、3年、5年と中長期の騰落率を算出することも多い。

・「パフォーマンス」

投資の世界で「パフォーマンス」とは、運用成果や運用実績のことを指す。

様々な評価機関が投資信託のパフォーマンスを評価している。

投資信託のパフォーマンス評価は、騰落率や利回りを比較するだけではない。収益がリスクに見合ったものであったか、市場全体をどれほど上回ったか等も考慮して行なわれる。

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投資信託の利回りと預金の利回りの違い

高配当利回り
(画像=Getty Images)

「利回り」に話を戻そう。「利回り」と聞くと、多くの場合、預金から受け取れる利息を連想するかもしれない。基本的な利回りの考え方は預金も投資信託も同じだ。だが、投資信託の利回りは預金でいう利回りとは大きな違いがある。

一般に、預金は預けた時点で、元本に対して受け取れる利率が決まっている。そのため、預金した時点でどれほどの利息を受け取れるかが確実に把握でき、利回りもその時点で確定する。一方、投資信託は購入した後に、その価格(基準価額)は変動するため、収益は変化する。

投資信託は値動きがある商品であり、元本保証もない。値動きした結果、どれほどの利益が得られるかは、投資した時点では分からない。また、収益の配分として分配金を受け取れることもあるが、決算を迎えるまで分配金の金額を知ることはできず、無分配のこともあり得る。

このため、投資信託の利回りは、結果としてどれくらいの収益があったかを後に計算するものであり、未来にどれほどの利回りがあるかを予測するものではないのだ。

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投資信託の利回りの計算方法

投資信託の利回りの具体的な計算方法を紹介する。

・「分配金利回り」の計算方法

100万円の投資信託を購入し、分配金1万円を受け取り、1年後の投資信託の評価額が105万円であったとしよう。受け取った分配金が1万円なので、以下の式で利回り1%と計算してしまう人もいるかもしれない。

1万円(分配金) ÷100万円(投資金額)×100=1(%)

しかし、ここで計算した1%は投資信託の正確な利回りとはいえない。これは、受け取れた分配金のみに着目したもので「分配金利回り」と呼ばれるものだ。

・「分配金利回り」では投資信託の正確な利回りは分からない

「分配金利回り」だけでは、投資信託の損益を正しく知ることはできない。

例えば、分配金利回りが1%あったとしても、最初に投資した元本が5%下落するようなことがあれば、全体として損失を被っていることになる。

また、分配金が支払われる場合、投資信託の基準価額はその分下落する。つまり、分配金が支払われた場合、保有する投資信託の評価額もその金額分下がってしまう。そのため、「分配金利回り」だけでは、その投資信託の善し悪しや収益性を論じることはできないのだ。

確かに、投資信託において分配金はリターンの大切な要素だ。ただし、もう一つ重要なリターンの要素として価格の変動による損益があることを忘れてはいけない。つまり、投資信託の分配金と価格の変動による損益の両方を考慮しなければならない。

トータルリターンで利回りを把握

利回りで投資信託を比べるにはトータルリターンを知る必要がある。

・トータルリターンとは

上記の例で言うと、受け取った分配金が1万円であることに加えて、1年後に評価金額も考慮して利回りを計算するべきだ。

値上がり益(または値下がり損失)と分配金が考慮された正確な投資信託の利回りは一般に「トータルリターン」と呼ばれる。1年後の評価金額が105万円になったと仮定しよう。トータルリターンを計算してみると以下のとおりだ。

(分配金1万円+値上がり益5万円)÷ 投資金額100万円×100=6(%)

分配金と値上がり益を考慮して算出された正確な利回り(トータルリターン)は6%となる。

・投資信託の正確な利回り(トータルリターン)を知る方法

正確な利回りとも言えるトータルリターンは、基準価額や分配金の過去のデータを手に入れれば、自身で計算することが可能だ。

また、多くの証券会社や投資信託の評価機関のWebサイトでは「トータルリターン」が算出されている。これらのトータルリターンを見ることで、投資信託の正確な利回りを把握することもできる。

・違う意味の「トータルリターン」に注意

投資信託に関して、もうひとつ別の意味で「トータルリターン」という単語を用いることがあるので注意したい。

2014年12月から導入されている「トータルリターン通知制度」によるものだ。このトータルリターンは、投資家それぞれについて、受取った分配金や一部売却を加味した上で、その投資信託がどれだけの利益を生んでいるのか、損失を生じさせているのか知ることができる。年1回以上、投資家に通知されることになっている。

ただし、この制度のトータルリターンは、比率(%)ではなく、金額(円)で表示される。名称は全く同じだが、利回りを表すトータルリターンとは異なるものだ。

投資信託の実際の利回りはどれくらい?

では、実際に投資信託で運用した場合の利回りはどれくらいなのだろうか。

・つみたてNISAの対象ファンドのトータルリターンは?

話題の「つみたてNISA」の対象となっている投資信託の中からトータルリターンを紹介しよう。投資対象が異なるインデックスファンド4本とアクティブファンド2本のトータルリターンは以下のとおりだ。

ファンド別のトータルリターン(モーニングスターより、2020年5月31日時点)

ZUU online編集部作成
(画像=ZUU online編集部作成)

・債券やREIT(不動産投信)に投資する投資信託のトータルリターン

つみたてNISAの対象となる投資信託は、株式または株式と他の資産を組み合わせることで運用されるものばかりだ。

ここで株式以外の資産で運用される投資信託のトータルリターンも確認しておきたい。国内債券に投資する投資信託と国内REITに投資する投資信託それぞれのトータルリターンは以下の通りだ。

ファンド別のトータルリターン(モーニングスターより、2020年5月31日時点)

ZUU online編集部作成
(画像=ZUU online編集部作成)

もちろん、投資信託ごとにトータルリターンは変わってくるものだ。だが、ここで注目して欲しいのは、株式に投資する投資信託は1年のトータルリターンがプラスであったが、国内債券や国内REITを投資対象とする投資信託はマイナスとなっていることだ。

対象資産(アセットクラス)が違えば運用成果は大きく変わってくるかもしれない点を理解しておきたい。

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投資信託の利回りに関する3つの注意点

紹介した8つの投資信託はトータルリターンがマイナスのものから、10%を超えるものまで様々だ。一見、この中からトータルリターンが一番高い投資信託を選べばよいと思うかもしれない。しかし、この利回りだけをみて投資信託を選ぶべきではない。

投資信託の利回り(トータルリターン)だけで、投資信託を選ぶべきではない3つの注意点を考えよう。

・利回りはあくまで過去の結果でしかない

投資信託の利回り(トータルリターン)は、あくまで過去の結果だ。例えば、過去1年間の利回りが良かったとしても、今後1年間で同様の利回りとなる保証はない。利回りの保証がないばかりか、投資信託は元本の保証もない。運用成績によっては結果として利回りがマイナスになることも十分にあり得る。

ここ数年の株式市場は、比較的好調であったため、株式で運用するファンドはどれをみても利回りがよく見えるだろう。だが、今後の利回りも同様に推移する保証はどこにもない。

・投資信託の利回りはさまざまな期間で見るべき

1年の利回りだけで判断しては、直近の1年だけ偶然利回りが良かったという可能性もある。逆に、1年の利回りがマイナスであったとしても、5年間の年換算の利回りが十分に良ければ、運用成績が良い投資信託と判断できるかもしれない。

一般的に投資は長期保有することでリスクが抑えられ安定的な収益が見込める傾向がある。投資信託の過去の利回りを見るときは、中長期での利回りも確認したい。

・売買にかかる手数料や税金が考慮されていない

Webサイトなどで公開される投資信託の利回り(トータルリターン)は、投資信託の売買にかかる手数料や税金は加味されていない点にも注意したい。

購入や解約に手数料がかかる投資信託も少なくない。

また、株式投資信託の場合、分配金(普通分配金のみ)は「配当所得」、売却により確定した利益は「譲渡所得」として課税され、税率20.315%(所得税、住民税、復興特別所得税)が適用される。

利回り(トータルリターン)から、税金や手数料を差し引かなければならないため、実質的な投資家の利回りは、さらに小さくなる可能性がある点も留意しておきたい。

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利回りの知識を資産運用計画に応用する

利回りの知識は資産運用計画にあたって重要だ。

例えば、500万円を投資信託で運用すると、20年後にはいくらになるだろうか。利回りを3%と想定した場合、20年後には約900万円になる。だが、利回りを6%と想定すると約1600万円になる。

どのような資産目標を立てて運用していくかによって、必要となる利回りは変わってくる。

高い利回りを求めれば、それだけリスクも高くなる。投資信託は想定どおりの運用成績が得られる保証はない。だが、リスクとリターンのバランスを考え、どの程度の利回りを得られれば、どれくらいの資産を築くことができるのかを把握しておくことは資産形成において大いに役立つ。どれくらいの利回りを想定するかによって結果は大きく変わり、取るべき投資戦略も変わってくるのである。

もし、「老後に豊かな生活を送りたいので、60歳までに5000万円を貯めたい」と思っている場合は、リスクを承知のうえでより高い利回りが見込める金融商品を検討して資産を増やす必要があるかもしれない。逆に、「資産はそこまで増えなくてもいいから、より安定した運用をしたい」と考えるのであれば、よりリスクの少ない商品を選ぶことになるかもしれない。

一般に、長期間の利回りを計算する場合、複利計算が用いられるため、利回り計算は複雑になる。しかし、こうした利回りのシミュレーションは、公的機関や金融機関のサイトにも掲載されており、気軽に計算することができる。

利回り計算に便利な「72の法則」

複利計算で長期の利回りを計算するのは少し複雑だが、簡易的に利回りなどを計算できる便利な「72の法則」を紹介する。

・「72の法則」の使い方

「72の法則」とは、投資した元本が何年で2倍になるかを簡易に計算できる便利な法則である。しかも、複利計算を前提としているため使い勝手がよい。

「72の法則」:72÷金利≒2倍になる期間 (年)

例えば、0.1%の利回りで運用した場合、何年で資産を2倍にすることができるだろうか。

72÷0.1(%)≒720(年)

現在の預金のように低い利回りでは、なかなか資産を増やしていくのは難しいことが分かる。

利回りを5%までアップさせると、以下の計算式のとおり約14年で資産が倍になることが導き出される。

72÷5(%)≒14(年)

利回りは未確定で、いつまでに資産を倍にしたいのか、というゴールが決まっているのであれば、下記のようにして「資産を2倍にするために必要な利回り」も計算できる。

72÷X(年)≒Y(%)

10年で資産を2倍にしたいのであれば、X=10(年)となるので、Y=7.2(%)であることが導き出せる。40歳の時に、「今の資産を倍にして50歳でセミリタイアしよう」などと目標を立てた場合は、毎年7.2%の利回りで資産を運用することを目指せばよい、となる。

自分の人生に合う資金計画を

「72の法則」を利用して計算した年数や利回りは、大まかな数字である。しかし、この法則を知っておくことで資産運用の計画を立てる際に容易に概算値を把握でき、目標とする利回りも想定しやすくなる。

目標が定まれば、必要以上にリスクを取ることもないし、必要以上に保守的になることもなくなる。このように自分の人生の目標に合う資金計画を立てることが、何よりも大切なのである。

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