投資信託は預金のように確定した利回りが得られる商品ではないため、利回りの概念は少し複雑だ。投資信託の利回りとはどのようなものか、計算方法や注意点を整理していく。さらに、資産を2倍にするために必要な利回りが簡単に計算できる便利な「72の法則」も紹介する。

そもそも投資の利回りとは何か?

PIXTA
(画像=PIXTA)

利回りとは投資金額に対する収益の割合のことを指す。例えば、100万円を投資して1年後に1万円の利益を得ることができたのであれば、1年間の利回りは1%である。

1万円(収益) ÷100万円(投資金額)×100=1(%)

利回りを見れば、どれだけの利益を得ることができたのかを容易に知ることができ、他の金融商品とも収益性を比べやすくなる。

初心者にとって金融商品を理解することが難しいのは「利回り」の感覚が身に付いていないことが大きな理由の一つである。逆に言うと、「利回り」に関する知識が身に付くと、どの商品に投資すべきか、あるいは投資すべきでないのか、感覚がつかみやすくなる。それは株式、債権、不動産、投資信託を含むすべての金融商品について言えることである。

投資信託の利回りは、あくまで過去の結果に過ぎない

「利回り」と聞くと、預金から受け取れる利息を連想するかもしれない。基本的な考え方は同じだが、より厳密に言うと、投資信託の利回りは預金でいう利回りとちょっとした違いがある。

一般に、預金は預けた時点で、元本に対して受け取れる利率が決まっている。そのため、預金した時点でどれほどの利息を受け取れるかが確実に把握でき、利回りもその時点で確定する。一方、投資信託は購入した後に値動きがあり、収益は変化する。

投資信託は値動きがある商品であり、元本保証もない。値動きした結果、どれほどの利益が得られるかは、投資した時点では分からない。また、収益の配分として分配金を受け取れることもあるが、決算を迎えるまで分配金の金額を知ることはできず、無分配のこともあり得る。

そのため、投資信託の利回りは、結果としてどれくらいの収益があったかを後に計算するものであり、未来にどれほどの利回りがあるかを予測するものではないのである。

投資信託の実際の利回りはどれくらい?つみたてNISA対象ファンドを紹介

では、実際の投資信託の利回りはどれくらいなのだろうか。

つみたてNISAの対象となっている投資信託の中からいくつか紹介しよう。主立ったインデックスファンド4本とアクティブファンド2本のトータルリターンは以下のとおりだ。

ZUU online編集部
(画像=ZUU online編集部)

投資信託の利回りの計算方法

ここで、投資信託の利回りの計算方法を紹介しよう。

100万円の投資信託を購入し、分配金1万円を受け取り、1年後の投資信託の評価額が105万円であったとしよう。受け取った分配金が1万円なので、以下の式で利回り1%と計算してしまう人もいるかもしれない。

1万円(分配金) ÷100万円(投資金額)×100=1(%)

しかし、ここで計算した1%は正確な投資信託の利回りとは言えない。これは、受け取れた分配金のみに着目したもので「分配金利回り」と呼ばれるものだ。

「分配金利回り」では投資信託の正確な利回りは分からない

「分配金利回り」だけで、投資信託の損益を評価することはできない。分配金利回りが1%あったとしても、最初に投資した元本が5%下落するようなことがあれば、全体として損失を被っていることになる。

また、分配金が支払われる場合、投資信託の基準価額はその分下落する。つまり、分配金が支払われた場合、保有する投資信託の評価額もその金額分下がってしまう。そのため、「分配金利回り」だけでは、その投資信託の善し悪しや収益性を論じることはできないのだ。

確かに、投資信託において分配金はリターンの大切な要素だ。ただし、もう一つ重要なリターンの要素として価格の変動による損益があることを忘れてはいけない。つまり、投資信託の分配金と価格の変動による損益の両方を考慮しなければならない。これを「トータルリターン」と呼ぶ。

トータルリターンで利回りを把握

上記の例で言うと、受け取った分配金が1万円であることに加えて、1年後に評価金額が105万円になったことも考慮して利回りを計算するべきだ。

値上がり益(または値下がり損失)と分配金が考慮された正確な投資信託の利回りは一般に「トータルリターン」と呼ばれている。実際に、上記の例でトータルリターンを計算してみると以下のとおりだ。

(分配金1万円+値上がり益5万円)÷投資金額100万円×100=6(%)

分配金と値上がり益を考慮して算出された正確な利回り(トータルリターン)は6%となる。

投資信託の利回りを知る方法

正確な利回りとも言えるトータルリターンは、基準価額や分配金の過去のデータを手に入れれば、自身で計算することが可能だ。

また、多くの証券会社や投資信託の評価機関のWebサイトでは「トータルリターン」が算出されている。これらのトータルリターンを見ることで、投資信託の正確な利回りを把握することもできる。

投資信託の利回りに関する3つの注意点

先ほど紹介した6つの投資信託はどれもトータルリターンが3%を超えており、10%を超える利回りのものもある。一見すると非常に有利な金融商品だと感じるかもしれないが、この利回りだけをみて投資信託を選ぶべきではない。その理由をいくつか考えよう。

利回りはあくまで過去の結果でしかない

投資信託の利回り(トータルリターン)は、あくまで過去の結果だ。例えば、過去1年間の利回りが良かったとしても、今後1年間で同様の利回りとなる保証はない。利回りの保証がないばかりか、投資信託は元本の保証もない。運用成績によっては結果として利回りがマイナスになることも十分にあり得る。

ここ数年の株式市場は、比較的好調であったためどのファンドをみても利回りがよく見えるかもしれない。だが、今後の利回りも同様に推移するわけではないことには、注意しておきたい。

投資信託の利回りはさまざまな期間で見るべき

1年の利回りだけで判断しては、直近の1年だけ偶然利回りが良かったという可能性もある。逆に、1年の利回りがマイナスであったとしても、5年間の年換算の利回りが十分に良ければ、運用成績が良い投資信託と判断できるかもしれない。

一般的に投資は長期保有することでリスクが抑えられ安定的な収益が見込める傾向がある。投資信託の過去の利回りを見るときも長い期間で見たほうが良いだろう。

売買にかかる手数料や税金が考慮されていない

Webサイトなどで公開される投資信託の利回り(トータルリターン)は、投資信託の売買にかかる手数料や税金は加味されていない点にも注意したい。

購入や解約に手数料がかかる投資信託も少なくない。

また、株式投資信託の場合、分配金(普通分配金のみ)は「配当所得」、売却により確定した利益は「譲渡所得」として課税され、税率20.315%(所得税、住民税、復興特別所得税)が適用される。

利回り(トータルリターン)から、税金や手数料を差し引かなければならないため、実質的な投資家の利回りは、さらに小さくなる可能性がある点も留意しておきたい。

利回りの知識を資産運用計画に使う方法

利回りの知識は資産運用計画にあたって重要だ。

例えば、500万円を投資信託で運用すると、20年後にはいくらになるだろうか。利回りを3%と想定した場合、20年後には約900万円になる。だが、利回りを6%と想定すると約1600万円になる。

もし、「老後に豊かな生活を送りたいので、60歳までに5000万円を貯めたい」と思っている場合は、元本を増やすか、リスクを承知のうえでより高いリターンが見込める金融商品を検討していく必要がある。逆に、「資産はそこまで増えなくてもいいから、より安定した運用をしたい」と考えるのであれば、よりリスクの少ない商品を選ぶとよいだろう。

高い利回りを求めれば、それだけリスクも高くなる。投資信託は想定どおりの運用成績が得られる保証はない。だが、リスクとリターンのバランスを考え、どの程度の利回りを得られれば、どれくらいの資産を築くことができるのかを把握しておくことは資産形成において大いに役立つ。どれくらいの利回りを想定するかによって結果は大きく変わり、取るべき投資戦略も変わってくるのである。

一般に、長期間の利回りを計算する場合、複利計算が用いられるため、利回り計算は複雑になる。しかし、こうした利回りのシミュレーションは、公的機関や金融機関のサイトにも掲載されており、気軽に計算することができる。

利回り計算に便利な「72の法則」

複利計算で長期の利回りを計算するのは少し複雑だが、簡易的に利回りなどを計算できる便利な「72の法則」を紹介する。

「72の法則」とは

「72の法則」とは、投資した元本が何年で2倍になるかを簡易に計算できる便利な法則だ。しかも、複利計算を前提としているため使い勝手が良い。

「72の法則」:72÷金利≒2倍になる期間 (年)

例えば、0.1%の利回りで運用した場合、何年で資産を2倍にすることができるだろうか。

72÷0.1(%)≒720(年)

現在の預金のような低い利回りでは、なかなか資産を増やしていくのは難しいことが分かる。

利回りを5%までアップさせると、以下の計算式のとおり約14年で資産が倍になることが導き出される。

72÷5(%)≒14(年)

利回りは未確定で、いつまでに資産を倍にしたいのか、というゴールが決まっているのであれば、下記のようにして「資産を2倍にするために必要な利回り」も計算できる。

72÷X(年)≒Y(%)

10年で資産を2倍にしたいのであれば、X=10(年)となるので、Y=7.2(%)であることが導き出せる。40歳の時に、「今の資産を倍にして50歳でセミリタイアしよう」などと目標を立てた場合は、毎年7.2%の利回りで資産を運用することを目指せばよい、となる。

自分の人生に合う資金計画を

「72の法則」を利用して計算した年数や利回りは、大まかな数字である。しかし、この法則を知っておくことで資産運用の計画を立てる際に容易に概算値を把握でき、目標とする利回りも想定しやすくなる。

目標が定まれば、必要以上にリスクを取ることもないし、必要以上に保守的になることもなくなる。このように自分の人生の目標に合う資金計画を立てることが、何よりも大切なのである。