テクノロジーの発達によって、これまで人が行ってきたさまざまな作業が自動化されてきています。今後もこの流れは加速していき、かつて人が空想の中で思い描いていた未来の生活が現実のものとなる日も近いのかもしれません。

明るい未来に注目が集まる一方で、「AIによってなくなる仕事」について一時期話題となりました。テクノロジーの発達は、実際のところ社会にどのような影響を与えるのでしょうか。人工知能や機械学習に関する研究に取り組む国立情報学研究所の山田誠二教授に、AIで仕事は本当になくなるのかを聞きました。

AIで仕事はなくなる?その真相は

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(写真=TAW4/Shutterstock.com)

――マイケル・A・オズボーン教授の論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT(雇用の未来)」で、「AIでなくなる仕事」が多くあると話題になりました。AIによって本当に仕事はなくなるのでしょうか?

山田: AIは決して万能ではありません。あくまでも人間が書いたプログラムに沿って行動しているだけで、人間のように一を聞いて十を知り、さまざまなことを想定し考えて行動することはできない、という前提があります。

例えばコンビニエンスストアの作業を思い浮かべてみてください。レジ作業はAIでもできますが、おでんや中華まんの仕込み、お客さんの気持ちを考えながらのギフトの予約作業をするなど、繊細な動作やコミュニケーションを必要とする作業はできません。さまざまな硬度のものを傷つけずにつかむ作業も苦手で、通販大手の倉庫の中で動いている物流ロボットも、商品をつかんで箱に入れる作業ができないためその部分の作業は人間が行っています。

AIが社会に浸透していく中で、AIが人間の仕事を奪うのではなく、実際にはAIやロボットと人間が役割分担をしてともに作業を行う場面が増えていくと考えられます。

AIが何かを行うとき、そのそばには必ず人間がいます。月面調査や海底調査などの特殊な環境下を除き、自動運転自動車内でもオフィス内でもAIが作業をしている傍らには人間がいて、AIがヘルプを出したら人間が助けるというように、ともに作業を進めることになるでしょう。

AIは仕事を奪うわけでも、単体で業務を効率化できるわけでもなく、現在の自分の仕事の「クオリティアップ」につながるものと考えています。自動化できるものとできないものを仕分けし、自動化できる部分はAIに任せることで、人間にしかできない業務に注力できるようになるのです。

AIと協働するために必要なスキルは

――AIとともに働くことが当たり前の社会になったとき、ビジネスパーソンにはどのようなスキルが求められるようになると思いますか?

山田:AIリテラシー(利用する能力)を有していると、仕事上有利になる場面が増えると考えます。年代を問わず、AIに関する知識は持っておいたほうがよいでしょう。プログラミングについても軽く理解しているだけで、キャリアも変わってくるのではないでしょうか。

企業もAIを導入していく中で、AIリテラシーの高い人材を求める傾向が強くなっていくはずです。AIリテラシーを有していると転職にも役立つでしょう。

――プログラミングやAIという領域は、専門的でハードルが高く踏み込めないイメージがあります。今からでも学習は可能でしょうか。

山田:これから小学校でプログラミング教育が始まり、大学でもAI専門の専攻が生まれるなど、世間の興味関心も高まっています。ニーズが高まれば、eラーニングや通信教育などAIについて学ぶ方法も多くなっていくでしょう。

文系の人には「難しそう」といわれますが、プログラミングの学習は語学学習と似ている部分があり、実は文系の人のほうが覚えるのに苦労しないのではないかと思います。新しい単語と文法を覚えるようにして学習すると覚えやすいはずです。英語をはじめとする外国語よりも、覚える内容は格段に少ないのでぜひチャレンジしてみてください。

むしろAIは新たな仕事を生む

――AIが人間の仕事を奪うわけではないということが分かりました。最後に、AIの活用が進むことで生まれる仕事について教えてください。

山田:AIを活用する際には、少なくとも、AIを導入するタスク(業務)、導入したAIをメンテナンスするタスク、AIリテラシーを教育するタスクが発生します。これらのタスクからさまざまな新しいAI関連ビジネスや業種が生まれるのではないでしょうか。AIは新規ビジネスの創出にもつながると考えています。

AIリテラシーを身につけて求められる人材へ

AIは人間から仕事を奪うものではなく、むしろ現在の仕事の質を向上させてくれる大切なパートナーとして発展していきそうです。AIをパートナーとして活用する際には、使用する人間にAIリテラシーが求められます。

来るべき時に備えて、AIに関する予備知識を学んでみたり、今からプログラミング分野の学習をしたりしても良いかもしれません。その際、AIがどんな作業を行うことができ、人間がどの部分を担えるのか、予測することができれば、将来のキャリアに新たな可能性が生まれるでしょう。

著者プロフィール
【山田誠二】
1989年大阪大学大学院博士課程修了、同大学助手、講師、1996年東京工業大学大学助教授を経て、2002年より現職。専門は人工知能、HAIヒューマンエージェントインタラクション。ここ10年の研究テーマは「人間と協調する人工知能」であり、現在HAI、IIS知的インタラクティブシステムを中心にさまざまな研究プロジェクトを推進中。人工知能学会前会長・顧問。

(提供:ANA Financial Journal

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