
(画像=Burdun Iliya/Shutterstock.com)
Q1.高齢結婚のため婚姻10年目ですが、妻の老後が心配なので、今のうちに自宅を贈与したいと思っています。この場合、20年経過していないので、やはり持ち戻されてしまうのでしょうか?
A 条文上、「20年」と要件が定められてしまっている以上は、やはり、居住用不動産の贈与の持戻し免除の推定規定は適用されません。
ただし、実は持戻し免除は、今回の相続法の改正以前からもあるのです。
具体的には、被相続人が持戻しをしないでよい(免除する)旨の意思を表示したときは、その意思表示は効力を有するのです。居住用不動産の贈与の持戻し免除の推定規定が適用されなくても、「妻には自宅を贈与したが、絶対に持戻しはさせないように」と遺言なり、確かな書面を遺して夫が死んだ場合には、持戻し免除の効果が認められます。現実の持戻し免除の意思表示です。
これを確実に残しておけば、本来は、居住用不動産の贈与の持戻し免除の推定規定など必要ないのです。
もともと、居住用不動産の贈与の持戻し免除の推定規定というのは、本当はそんな意思表示はどこにも存在しないけれども、「妻に自宅をあげるというのはそういうことだろう」と推定する規定なのです。
ですから、逆に言えば、その推定に反する証拠、例えば、夫が「妻にはいったんは自宅を贈与したが、その後の態度がひどかったので、絶対に持戻し免除はしない」という内容の遺言なり確かな書面を遺して死んだ場合には、持戻し免除の推定は覆されます。