投資信託は初心者でも手軽に始められる資産運用の一つだ。運用自体はプロに任せられるうえ、比較的少額でも投資を始められ、分散投資もしやすい。このように投資信託は便利な金融商品だが、さまざまな手数料がかかることには留意が必要だ。

投資信託において、投資家が負担する手数料は「○○手数料」と銘打たれた分かりやすいものから、一見すると分かりにくいものまでさまざまだ。投資信託を購入してから最終的に売却するまでの間に発生する各種手数料を解説していく。

手数料を抑えた投資信託が増加

投資信託,手数料
(画像=PIXTA)

近年、個人投資家もコストに敏感になっている。それに応えるように、各金融機関も投資信託の各種手数料を低く抑える取り組みを見せている。

・ノーロードファンドの増加

以前は、購入時手数料ゼロ(ノーロード)で販売される投資信託は非常に少なかった。しかし、昨今、数多くの投資信託がノーロードで販売されるようになった。また、オンライン証券を中心に取り扱う投資信託のすべてを購入時手数料ゼロ(ノーロード)で販売するという動きも見られる。

・信託報酬の引き下げ

信託報酬の引き下げに関しても競争は激しい。特に、インデックスファンドについてはコスト引き下げ競争が盛んで、業界最低水準の運用コストを目指し続けるとうたうインデックスファンドまで出ている。

投資信託の運営にはコストがかかる

手数料を抑えた投資信託も増えつつあるが、一般に販売される投資信託は、販売、運用、資産の保管などのそれぞれの業務を専門の機関が役割分担することで成り立っている。具体的には販売会社、運用会社、信託銀行という3つの金融機関だ。

これらの金融機関がうまく機能を分担することで、投資家保護と効率的運営が実現されている。当然、この仕組みを維持するためにさまざまなコストがかかってくるため、投資信託を購入する投資家は直接的または間接的に手数料を支払うことになる。

投資家が投資信託を購入する場合、販売会社(銀行、証券会社など)を通して投資信託を購入する。販売会社は投資信託を販売するための営業や商品説明のためにコストをかけている。

運用会社にはファンドマネージャーやアナリストらがおり、投資信託の運用成果を出すために努力を重ねている。さらに、投資信託の基準価額の計算や運用報告書作成などの役割も担っている。こうした役割を担う専門家の雇用や事務のために相応のコストがかかってくる。

一方、信託銀行は運用会社からの運用の指図に従い、株式や債券などの売買や管理を行うといういわば投資信託の金庫番のような役割を果たしている。当然、この業務にもコストがかかる。

これらのコストをまかなうため、関係する3つの金融機関はそれぞれ収益を得る必要がある。では、投資家が投資信託を購入してから売却するまでの過程で、どのような手数料をいつどこに払うことになるのかを具体的に見ていこう。

購入時にかかる手数料

投資信託を購入する際に支払う手数料として「購入時手数料」がある。

・「購入時手数料」はどんな手数料か?

「購入時手数料」は販売会社である銀行や証券会社が行う商品説明、運用相談、取引報告書の交付などの対価として投資家が販売会社に直接支払うものだ。

ただし、販売会社により呼称が異なることがある。「購入時手数料」のことを「販売手数料」「買付手数料」「申込手数料」などと呼ぶ販売会社もある。

・「購入時手数料」はどれくらいかかるのか?

通常、投資信託の購入金額に対して1~4%程度の購入時手数料がかかる。しかし、近年では購入時手数料がゼロで販売される投資信託(一般に「ノーロードファンド」と呼ばれる)も増えつつある。

「購入時手数料」が購入金額に対して1.1%(税込)と定められている投資信託の場合、100万円購入する際に1万1,000円の購入手数料を販売会社に支払うことになる。

100万円(購入金額)×1.1%(手数料率)=1万1,000円(購入時手数料)

・購入場所で手数料が異なる場合も

同じ投資信託であれば、どの販売会社で購入しても手数料が同じだとは限らない。販売会社によって購入時手数料が異なることもある。

銀行Aで購入時手数料2%の投資信託が、銀行Bでは購入時手数料1%で販売されているといったケースはよくあることだ。さらに、銀行Cでは販売手数料ゼロ(ノーロード)で販売されている可能性もある。

また、同じ販売会社で同じ投資信託を購入する場合でも、購入方法(販売チャネル)などによって購入時手数料が違うこともある。

例えば、店舗窓口での対面販売よりも、インターネット経由で購入するほうが購入時手数料が優遇されるケースや、購入する金額が大きくなればなるほど購入時手数料が優遇されるもある。

どこでどのように購入するかで同じ投資信託であっても購入時手数料が変わってくる可能性があるのだ。

投資信託の保有中にかかる手数料「信託報酬」

投資信託は購入して保有し続ける間は継続してコストがかかる。保有中にかかる手数料の主なものは「信託報酬」だ。

・「信託報酬」とはどんな手数料か?

「信託報酬」とは、投資信託の運用・管理の対価として支払うものだ。投資信託を保有している期間中、継続的に発生する。

信託報酬は信託財産から日割計算で日々少しずつ差し引かれていくため、間接的に投資家が負担している。

信託報酬を信託財産の額に応じて一定率を徴収する投資信託が一般的だ。年率0.1%未満の非常に信託報酬が低い投資信託もあれば、年率2%を超えるような投資信託もある。そのほか、運用の成果に応じて信託報酬を徴収する投資信託もある。

信託報酬は投資信託ごとに決められているもので、購入時手数料のように販売会社や購入方法によって違う料率が適用されることはない。信託報酬がどのように計算されるのかは「交付目論見書」から知ることができる。

・「信託報酬」を受け取るのはどこ?

信託報酬は資産運用を行う役割を果たす運用会社の主な収益源となるが、信託報酬のすべてを運用会社が受け取っているのではない。信託報酬は、提供するサービスや業務内容に応じて、販売会社、運用会社、信託銀行に一定の割合で配分される。これらの3者にどのような割合で配分されるかは「交付目論見書」に記載されている。

・「信託報酬」は安ければ安いほどいいのか?

継続的にかかるコストはできるだけ抑えたいと思うものだ。しかし、信託報酬が安ければ安いほど良い投資信託かというと、一概には言えない。

運用の手法は投資信託によってさまざまだ。例えば、インデックスファンドであれば、信託報酬を低く抑えて平均的な運用成績が出ればよいと言えるだろう。一方、アクティブファンドのように平均を上回る運用成績を目指すために、信託報酬を高めに設定して専門家による調査・分析にコストをかけている投資信託もある。

信託報酬を比べることで単純に投資信託の善し悪しを語ることはできない。運用手法や運用成績に見合った信託報酬が設定されているかどうかが重要だ。

投資信託の保有中にかかる他の手数料

投資信託を保有している間にかかるコストは信託報酬だけではない。そのほかにも間接的に投資家の負担となる手数料がある。

・「監査費用」

投資信託は原則決算ごとに、公認会計士や監査法人などから監査を受け、第三者である監査人が投資信託の計算が適切に行われているのかなどを確認している。こうすることで、投資信託の公正性や透明性が確保されているため、投資信託の運営上不可欠な仕組みだ。

この監査のための費用を「監査費用」として徴収する投資信託も多い。監査費用は信託報酬とは別に信託財産から差し引かれるため投資家が間接的に負担することになる。

・「売買委託手数料」

個人投資家が株式を売買する場合は証券会社に手数料を払って取引をする。同様に、投資信託の信託財産で株式などの金融商品の取引がなされると、信託財産から証券会社などに手数料が支払われる。この取引のために支払った手数料を「売買委託手数料」と呼ぶ。

株式に投資する投資信託の場合、売買を繰り返すような運用をすれば売買委託手数料の負担も大きくなる。一方、あまり頻繁に売買しない運用手法をとる投資信託であれば、売買委託手数料は低く抑えられる傾向にある。

・そのほかの見えにくい手数料

「監査費用」「売買委託手数料」のほかにも、投資信託によっては、目論見書などの作成、印刷にかかる費用を徴収する場合がある。

どんな費用がかかるかは、すべて「交付目論見書」に記載されている。

換金時の実質的な手数料?「信託財産留保額」とは

現在、換金時に手数料を徴収する投資信託はほとんど見かけない。しかし、実質的に換金時の手数料といわれるものとして「信託財産留保額」を徴収する投資信託は少なくない。

信託財産留保額は、換金を申し込んだ投資家から一種のペナルティ料として一定額を徴収するもので、別途支払うものではなく解約代金から差し引かれる。信託財産留保額が解約代金の1.5%と定められた投資信託であれば、100万円分を換金すれば98万5,000円しか受け取ることができない。

100万円(評価額)-1万5,000円(信託財産留保額)=98万5,000円(受取金額)

だが、これは運用会社の収益になるものではない。徴収された信託財産留保額は信託財産に残されていくもので、投資信託を保有し続ける投資家にとって自身の持ち分が増えることを意味する。

このように換金時に差し引かれるため、信託財産留保額は一見すると換金時手数料であり、ないほうがよいとも感じる。しかし、信託財産留保額が設定されていることで、投資信託の短期での換金を防止し、運用を安定させるというメリットもある。

手数料で資産を減らしては本末転倒

これまで、投資信託の購入時に支払う「購入時手数料」、保有期間中に負担する「信託報酬」を中心とした各種費用、そして投資家が解約時に負担することになる「信託財産留保額」といった投資信託にかかる各種手数料について解説してきた。

投資信託を購入する目的は、紛れもなく資産を運用して増やすことだろう。だが、投資信託を購入して、必要以上に高い手数料を支払うことで、資産運用の目的が妨げられては本末転倒だ。そうならないためにも、私たち投資家自身も高いコスト意識を持つべきだろう。

これから購入しようとする投資信託にかかる各種手数料が相応なものなのかどうか、よく見比べることをおすすめする。

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