いつかは迎えることになる遺産相続。数年前に相続税の対象が拡大されたこともあり、最近は家族で相続について話し合っておくことが一般的になりつつある。

今回は、家族で相続を考える際に知っておくべきこと、話し合うべきことを分かりやすく解説する。

そもそも遺産相続とは?

遺産相続
(画像=PIXTA)

まず、遺産分割の意味や流れについて簡単に解説する。いざというときに慌てることがないよう、要点を把握しておくことが大切だ。

誰かが亡くなったとき、その人が生前所有していた財産を遺族が引き継ぐことを遺産相続という。遺産相続の流れとしては、まず故人の遺言書の有無を確認する。その後、相続人同士が話し合い、遺産分割協議によって遺産をどのように分けるかを決める。

遺産分割が終われば、不動産の登記や相続税の申告といった手続きを行う。相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなければならない。法定期限を過ぎると延滞税が課されるケースがあるため、十分注意する必要がある。

家族で共有しておきたい遺産相続の基礎知識

続いて、遺産相続に関する基礎知識を順番に解説していく。

預金や不動産、有価証券以外にも遺産相続の対象となる「財産」がある

遺産相続の対象となる財産には、現預金・有価証券・不動産などがある。また、第三者への貸付金や著作権といった、目に見えないものも遺産としてカウントされる。さらに、自動車や宝飾品、美術品なども遺産分割の対象だ。

遺産相続の対象となるのは、資産だけではない。個人的な借金や事業用の借り入れなども、対象となる。

借金や借り入れが預貯金などの資産を上回る場合、相続そのものを放棄することも可能だ。また、預貯金などの資産の範囲内で限定的に借金や借り入れを相続する限定承認という方法もある。

ただし、相続放棄や限定承認をするには家庭裁判所での手続きが必要となる。相続の開始を知った日から3ヵ月以内でなければ手続きできないため、遺産相続の対象となる資産や借金については、事前にしっかり把握しておくようにしたい。

法定相続人と遺産の割合

遺産を相続できる人の優先順位と相続する遺産の割合は、民法で次のように定められている。ただし、割合については必ずしもこれに従う必要はなく、特殊な場合を除き、話し合いで自由に決めることができる。

第1順位:配偶者1/2 子ども1/2
第2順位:配偶者2/3 父母や祖父母などの直系尊属1/3
第3順位:配偶者3/4 兄弟姉妹1/4

対象が大きく広がった相続税

相続税には基礎控除があり、遺産が基礎控除の範囲内におさまれば、相続税を納める必要はない。基礎控除が平成27年に大きく縮小されたことにともない、相続税を納めなければならない人は大幅に増えたと言われている。

「相続税がかかるほどの財産はうちにはない」と両親が言っていても、念のため現行の制度に基づいて確認し直したほうがいいだろう。基礎控除は次の式で計算できる。

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

例えば、配偶者1人、子ども2人というケースなら、法定相続人は3人なので4,800万円が基礎控除となる。したがって、遺産総額が4,800万円を超える場合にのみ、相続税対策が必要だ。

遺産相続に備えて家族で話し合うべき3つのこと

年末年始に実家に帰省する人も多いだろう。親族が集まったところで、相続の話題が出るかもしれない。そんなときに、最低限家族で話し合っておくべきことを3つ紹介する。

1つ目は、現在保有している財産についてだ。預貯金などの資産や借り入れなど、現時点での財産をすべて整理して一覧にしておくと、万一のことがあった場合も速やかに手続きができる。

子どもに自分たちの財産を明かすことに抵抗がある親世代は多い。そのため、オープンにするか否かは別として、ひとまず一覧を作成し、権利書などを1ヵ所にまとめておいてもらうよう頼んでおくといいだろう。

2つ目は、法定相続人の人数だ。相続税の計算にもかかわってくるため、法定相続人の人数は必ず確定させておくことが大切だ。遺産相続の際に想定外の相続人が現れると、遺産分割が長引いてトラブルになり、裁判費用がかかってしまうこともある。

3つ目は、相続税がかかるか否かだ。法定相続人の人数が確定したら、基礎控除を計算し、遺産総額が基礎控除の範囲内に収まるかどうかをチェックしよう。基礎控除を超えるようであれば、贈与などでできる限りの相続税対策をしておきたい。

遺産相続で慌てないための具体的な準備

遺言代用信託

相続が発生すると、故人の預貯金の口座が凍結されてしまい、葬儀などの手続き費用を支払えなくなってしまうことがある。

遺産分割が確定すればもちろん口座の凍結は解除できるが、法定相続人全員の署名や印鑑が必要であり、解除までに時間がかかってしまう。

口座の凍結を防ぐには、遺言代用信託を活用する方法がある。生前に手続きをしておけば、万一のことがあった場合、あらかじめ指定された受取人が資金を引き出せるようになる。

遺言書

相続人が複数いるなら、できれば遺言書を準備するよう頼んでおきたい。遺言書があれば、特殊な場合を除き、遺産分割はスムーズに終わることが多い。

遺言書は、インターネットなどでフォーマットをダウンロードし、自分で作成することもできる。ただし、自分で作成した場合、不備があると無効にされてしまうケースがある。そうならないためには、公証役場に出向いて公正証書遺言として遺しておくと安心だ。

遺産相続には早め早めの対策を

相続については、「まだ元気なので話を切り出しづらい」という声を聞くことがある。しかし、病気などで体調が悪化すると、ますます話しにくくなる。元気なうちこそ、遺産相続について家族でしっかり話し合うチャンスだ。

最近は、40代、50代のうちから相続に備え始める人もいるという。両親が60代を超えているなら、一度家族で機会を設けて、遺産相続について話し合う場を設けるようにしておくといいだろう。