今、最も注目されるビジネスの一つが「宇宙ビジネス」です。

特にアメリカのIT巨人と言われるGAFAやマイクロソフト、イーロン・マスク率いるスペースXなど、世界を席巻する企業や経営者が続々と宇宙に巨額投資をしているのです。

なぜ世界的IT企業が続々と宇宙への投資を進めているかというと、宇宙空間も地球の延長線上にあるインターネット空間として捉えているからです。

つまり宇宙までネットが張り巡らされる状況になれば、地球上のあらゆる観測が可能となり、蓄積されたビックデータによってリアルタイムで正確な情報を得ることができるのです。

こうした通信環境の変化によって私たちの生活も大きく変化するはずです。

宇宙
(画像=Getty Images)

宇宙ビジネスはイノベーションが進んでいないブルーオーシャンと言えるのです。

実際「スペース・エコノミー」と言われる宇宙ビジネスの世界市場は2005年の17兆円から2016年には33兆円まで拡大しています。

市場規模は10年で約2倍に拡大し、それに伴い投資金額も集まりやすくなり、世界中で宇宙関連のベンチャー企業が増加しています。

宇宙ビジネスは19世紀にアメリカで起こった「グリーンラッシュ」に例えられるほど、その勢いはますます加速しています。

今回は宇宙ビジネスの市場性や各国の政策、米国や日本の宇宙企業について解説していきます。

米国の宇宙企業

スペースX

米国で宇宙ビジネスの最前線にいる人物を一人挙げるとすれば「イーロン・マスク」しかいないでしょう。

電気自動車テスラを率いる人物としてもよく知られています。

そのイーロンが2002年に立ち上げた宇宙ビジネスの会社こそ、世界を席巻している「スペースX」なのです。

ロケット「ファルコン」シリーズは2008年に打ち上げに成功し、現在は「ファルコン9」まで続いています。

そして現在は世界一の巨大ロケットである「ファルコンヘビー」を開発しました。

こうしてスペースXは商業衛星の打ち上げ市場において飛躍的に成長していきます。

その最大の特徴は低コストを実現していることです。

これは全てを自社開発しているからこそコストダウンの成功へと繋げています。

実際、他社が大型ロケットを打ち上げるには100億~200億かかると言われていますが、スペースXでは60億円程度で実現でき、今後さらにロケットの再利用によって30%以上の予算を削減しようとしています。

その他にも、打ち上げロケットの他に独自の衛星ネットワークの構築に挑んでいます。

実際、2016年11月には米連邦通信委員会(FCC)に対して、4425機の衛星を製造・打ち上げる計画を申請しています。

将来的な惑星間輸送システムの構築が実現した場合、1000人単位で火星に飛行できることを想定しています。本気で「火星移住」を計画しているのです。

モルガン・スタンレーの分析によると、スペースXは2017年7月時点の資金調達による企業価値は2兆円を超えていますが、将来的には5兆円を超えると言われています。

アマゾン

スペースXのイーロン・マスクと常に比較されている人物が、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスです。

その宇宙ビジョンは「100万人が宇宙に住んで働くこと」です。

経済圏が地球から宇宙へと拡大していき、それによって人類の技術が革新的に進歩していくという哲学を持っているのです。

アマゾンによって設立された航空宇宙企業「ブルーオリジン」は、ベゾス個人が持ち株を売却して得た資金500億円を投入してスタートしました。

2017年には毎年1000億円を投資することを発表し、これは日本の宇宙関連予算が3000億円であることと比較しても、ブルーオリジンの規模の大きさがわかるはずです。

開発も着々と進んでおり、垂直離着陸型のサブオービタル(準飛行)機の「ニュー・シェパード」や大型ロケット「ニュー・グレン」を次々に発表し、宇宙旅行や宇宙実験に向けての開発が進化しています。

将来、宇宙への輸出コストが飛躍的に下がることで新たなマーケットが創出されていくはずです。

シリコンバレーと宇宙プラットフォーム

ITの聖地でもあるシリコンバレーには世界中から資金が集まりやすい土壌が形成されています。

新しい事業に必要な金額をVC(ベンチャーキャピタル)から調達することは、この界隈の投資家にとって日常の出来事です。

宇宙ビジネスは「宇宙をベースとしたITプラットフォームのひとつ」として捉えられています。

またシリコンバレーには「エイムズリサーチセンター」というNASAのフィールドセンターがあります。

ここでは宇宙の他に、IT、バイオテック、創薬など、様々な分野のスタートアップに必要な研究・開発が可能です。

様々な企業が交わることでシナジーが起きているのです。

具体例として、米国にある宇宙ベンチャー企業を少しご紹介します。

アクシオム・スペース社

国際宇宙ステーション(以下、ISS)に接続予定の居住モジュールの建設会社に、アクシオム・スペース社が選出されました。

これにより、2022年にモジュールを打ち上げてISSに接続後、ISSが運用停止した後に切り離して、居住モジュールを活用して宇宙旅行などに利用される予定です。

2024年以降には商業用宇宙ステーションを追加で構築して、次世代宇宙ビジネスを開拓することが期待されているのです。

オライオン・スパン社

人間が宇宙に行く準備期間として従来の24ヶ月から3ヶ月へと大幅に短縮し、宇宙旅行を身近なものとすることを目指しています。

その一つが2022年開業を目指している「宇宙ホテル」です。

実現すれば90分間に1周のペースで地球を回ることとなり、1日に16回も日の出を見る体験が可能となります。

宇宙空間での分譲マンションなどの展開も予定しています。

このように米国では宇宙ビジネスが次々と創出されていますが、日本はどうなのでしょうか。

次は日本の宇宙産業について見ていきましょう。

日本の宇宙産業

日本国内の宇宙ビジネスの市場規模は約1.2兆円ほどで、世界市場から比べたら僅かな規模に過ぎません。

特に宇宙インフラに関わる分野は、官民のバックアップが強い欧米諸国に大きな差を開けられています。

では日本はこのまま宇宙ビジネスの分野で遅れをとるのかというと、必ずしもそうではなく、むしろ日本にとって数少ないビジネスチャンスとして「宇宙」が存在します。

日本はロケット発射をする場合、世界有数の地理的条件に恵まれた場所です。

なぜならロケットの発射は地球の自転に合わせて東側に向けて打ち上げます。

また観測衛星の場合は極軌道に乗せる必要があるため北か南に向けて打ち上げます。

日本は東に広い太平洋が広がり、北も南も隣国から離れています。

これが他国の場合、打ち上げる方角によって発射場を変更する必要があり、輸送コストが必要です。

国土が狭く移動がコンパクトでありながら、広い海がある日本は宇宙ビジネスにとても有利な状況なのです。

また国内でロケットの部品調達ができる環境があるため、法申請が国内だけで済むことも大きなメリットでしょう。

日本国内の主な宇宙関連企業

アクセルスペース社

国内宇宙ベンチャーの先頭を走る会社です。

有名になったきっかけは小型衛星を打ち上げて、気象データ会社のウェザーニュースに運用をワンストップサービスで提供したことです。

今後も2022年までに約50機の衛星を打ち上げ予定であり、地球上の詳細なビッグデータを企業ごとに提供する新たなプラットフォームを作ることを目指しています。

インターステラテクノロジズ社

人工衛星よりもさらに小さな観測ロケット「MOMO」の開発を進めており、高性能ロケットではなく、出来る限りコストを抑えた最小限の性能を持ったロケットを実現することで、ロケット価格を極限まで安価なものとすることを目指しています。

宇宙ビジネスにおける低価格の分野においてトップランナーを目指しています。

アストロスケール社

使わなくなった人工衛星などがゴミとなり、深刻化している「スペースデブリ」の除去に取り組む会社です。

現在、国際宇宙ステーションが周回する高度400キロ付近では、軌道上に10センチ以上のデブリが2万3000個以上、確認されています。

実際、スペースシャトルの窓に当たってヒビが入るなどの深刻な問題が起きているのです。

そうしたデブリ除去衛星の開発・打ち上げの準備を進めています。

エール社

宇宙から人口的に流れ星を作り出す会社です。

これにより音楽フェスなどで人工的に流れ星を流すなど、エンターテイメント産業との高い親和性も期待されています。

日本には花火や花見などの文化があり、流れ星をいかに新しい文化として定着させるのかも興味深いところです。

その他にも衛星を使って気象データの観測など宇宙への研究に役立てようと試みています。

宇宙ビジネスとベンチャーキャピタル

宇宙空間での「クオリティ・オブ・ライフ」を上げるために、宇宙産業の発展とともに様々なビジネスが登場するはずです。

例えば、快適な宇宙空間を演出する居住空間やインテリア、宇宙ファッション、宇宙での結婚式、宇宙ならではのスポーツ産業など、従来では思いもよらないビジネスが誕生するはずです。

とはいえ環境が変われど、人間が「楽しむ」という普遍的な感情は変わりがありません。

また、宇宙に携わる民間企業が新たなサービスを創出するためには、資金を投入する多くの投資家が必要です。

米国はもちろん日本も資金調達市場が成熟しつつあり、一昔前よりも資金が集まりやすい環境があります。

日本から世界を席巻する宇宙ビジネスが誕生することも決して不可能ではないのです。

各国の法整備動向

米国やロシアなど伝統的な宇宙活動をする国は、自国のリスクを回避するために早くから国内宇宙法を整備してきましたが、それが新たに参入するベンチャー企業の障壁となるケースが少なくありません。

新たな宇宙ビジネスの促進という観点からも、各国がいかに足並みをそろえて法整備をしていくのか、今まさに議論をしているところなのです。

おわりに

現在の宇宙ビジネスはIT黎明期と似ていると言われています。

スマホの普及によってライフスタイルが変化したように、新たな技術によって従来の社会活動に劇的な変化が起こるはずです。

これを「投資」という側面から見ていくと、例えばGAFAだけでなく他の宇宙関連企業にも面白い会社が沢山存在します。

確実に成長する産業であるだけに、今から少し投資をしておくと、将来、思わぬリターンがやってくるかもしれません。

確実にやってくる未来を見据えて投資先を選ぶことも、投資家として大切な視点であるはずです。21世紀のブルーオーシャンこそ「宇宙」なのです。(提供: The Motley Fool Japan


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