お客様の「情報・属性」を踏まえた声かけ&トーク
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名義変更の届けがあったことを踏まえて…
6.ご結婚おめでとうございますこれからご夫婦でチャレンジしてみたいことはありますか?

2018年度の結婚平均年齢(初婚年齢)は、男性が31・1歳、女性が29・4歳なので、30歳前後のお客様が名義変更をする場合は、ほぼ結婚によるものだと考えられる。

結婚は人生の大きなライフイベントであり、結婚を機に今後のライフプランを具体的に考えるお客様は多い。したがって、「ご夫婦でこれからチャレンジしようと思っていることはありますか?」といった声かけで、ライフプランを聞いてみたい。

皆さんがお客様に提案する「資産形成」は、理想のライフプランを実現するためにある。「お金を貯める」ことが目的ではなく、ライフプランを実現するための手段であることをしっかり意識しておこう。

夢の実現をサポートしよう

先の質問に対しては、「2人の共通の趣味が御朱印集めなので、全国の神社巡りをしたいと思っているんですよ」「ディズニーが好きなので、世界中のパーク&リゾートを制覇したいです」といった趣味に関する話から、「30代のうちにマイホームが欲しいですね」といった具体的なライフプランまで、いろいろな答えが予想される。「私も御朱印帳を持っていますよ」など、お客様と共通の趣味や嗜好があると、一気に距離が縮まることもあるだろう。

お客様がチャレンジしたいこと、夢は様々であっても、大抵の場合、その実現にはお金がかかる。そこで、「夢の実現にはお金が必要ですよね。そのためのご準備は、何かされていますか?」と聞いてみよう。

結婚したばかりのお客様であれば、結婚式・新婚旅行・新居関係など様々な出費が続いているため、「いや、まだまだこれからですね」という答えが多くなる。「結婚されると収入は2人分になりますが、支出が2口だと、お金は貯まりにくいといわれています。そんなお話を聞かれたことはありますか?」などとつなげ、興味を持ってもらうとよい。

お客様の「情報・属性」を踏まえた声かけ&トーク
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住居が賃貸と思われることを踏まえて…
7.毎月の家賃分で住宅を買いご資産にするという考え方もありますよ

この声かけは、ハウスメーカーの営業担当者がよく使うセールストークである。「今は低金利ですから、家賃と同じくらいの毎月返済額で、○○万円の物件が買えますよ」と言われれば、賃貸物件に住むお客様の心は揺れる。

例えば、住宅ローンの年利が0・7%、返済期間が35年(元利均等返済)なら、8万円の毎月返済額で2970万円、10万円の毎月返済額で3724万円を借り入れることができる。

首都圏の中核都市では厳しいかもしれないが、地方では、この価格帯でお客様の希望どおりの物件が見つかることが多い。したがって、「毎月の家賃を払うなら、その分で住宅を買い、ご資産にするという考え方もあるんですよ」という声かけはインパクトがある。

頭金の積立等に話を展開

さらに、「こういった話を聞いたことはありますか?」というひと言を加えると、「はい。ハウスメーカーから聞いたことがあります」と返答するお客様もいる。こうしたお客様はすでにマイホームの取得を検討していることが多いので、「どうお感じになりましたか?」などと聞いてみると、「そんなうまい話があるんですかね…」といった答えが返ってくる。

そこで、「今のお家賃はどのくらいなのですか?」と聞き、先のようなシミュレーションを見せてみよう。すると、「本当に買えちゃうんですね」といった反応が予想される。

住宅ローンを組むには頭金があったほうがよいため、「頭金××万円をあと▲年で貯めるには…」という方向に話を展開していけばよいだろう。

ただし、金融機関の担当者の目的は、お客様の背中を押して「家を売る」ことではない。マイホームを持てば、固定資産税がかかるし、定期的な修繕や将来的なリフォームも必要になる。住宅ローンの金利が上がる可能性もある。こうした情報提供もしっかりと行いたい。

お客様の「情報・属性」を踏まえた声かけ&トーク
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勤務先が地元の優良企業であることを踏まえて…
8.○○社にお勤めなのですね退職金・企業年金制度なども万全に整えているのでしょうね

地方では特に、「〇〇社にお勤めなのですね」という声かけは、「良いところにお勤めですね」という意味合いを持つ。規模は小さくても、地場で一目置かれている会社はたくさんある。お客様は謙遜するかもしれないが、そう言われてうれしくない人は少ないと思う。

そこに続ける「退職金や企業年金などの制度も万全に整えていらっしゃるのでしょうね」という言葉は、「〇〇社のような立派な会社であれば、退職金・企業年金制度も充実しているに違いない」という含みを持つ。

しかし、この声かけに対する答えは、「よく知らない」といったものが多くなる。

実態に即した目標が大切

「このまま勤め続ければ、60歳でいくら退職金がもらえる」ということが分からなければ、実態に即した資産形成の目標額を定めることができない。「勤続35年以上の退職金相場は大卒で約2000万円」といった平均データにはあまり意味がなく、「お客様自身はいくらもらえるか」が大切だ。

自身の勤務先の退職金や企業年金制度について「よく知らない」というお客様には、「退職金や企業年金によって資産形成の目標額が変わってきますから、まずは調べてみてはいかがですか」などとアドバイスしよう。そのうえで、老後資金の上乗せとして長期・積立・分散投資による資産形成を促すとよい。

お客様の勤務先が企業型確定拠出年金を導入している場合には、「そこでどれくらいのリスクをとっているか」も確認したい。これにより、運用提案の内容も変わってくるからだ。

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親が高齢だと思われることを踏まえて…
9.親御さんの将来のことでご不安はありませんか?

総務省が2019年9月にまとめた人口推計によると、日本における65歳以上の高齢者人口の割合は28・4%となっている。この割合が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会といわれるが、日本は07年から「超高齢社会」に入っており、その度合いは年々増している。

健康な状態で年齢を重ねていけるのなら、高齢化自体は悪いことではない。しかし、加齢とともに認知症などのリスクは高まっていくのが現実だ。

認知症の人は、12年時点で460万人(高齢者の7人に1人の割合)だったが、25年には700万人(同5人に1人)になるともいわれており(厚生労働省)、認知症を「他人事」と思える人は、ほとんどいないのではないだろうか。

不測の事態に備えてもらう

介護や認知症に対する不安は、その対象が「自分の両親」「配偶者の両親」はもちろん、「自分自身と配偶者」にも及ぶことが特徴といえる。そのため「親御さんの将来のことで不安はありませんか?」という声かけをすると、「私の親は80歳に近いので、いつ介護が必要になってもおかしくないと思っています。夫の両親も最近は体調が優れないらしくて…」といった具合に、たくさんの情報が返ってくることが多い。

介護の苦労話に関しては、担当するお客様や親戚・知人、あるいは芸能人など、実例がたくさんあると思う。そんな話をすれば、お客様からも「私の親戚も苦労したみたいで…」といった話が聞かれる。「介護離職」をなくすことが国の目標になっていることからも分かるように、介護のために仕事を辞める人は非常に多い。これは決して他人事ではなく、不測の事態に備えた資産形成に話を展開しやすいだろう。

なお、この声かけから成年後見制度や家族信託などの情報提供につなげることも一案だ。

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旧家や地域特有の名前であることを踏まえて…
10.昔からこの地域にお住まいなんですね 周辺環境の変化に不安を感じませんか?

ある程度の年齢になると、変化を好まなくなる傾向がある。たとえ不便であっても「変わらないこと」に安心を覚えるものである。

中年以上の人が「この町もすっかり変わってしまったね」と言う場合、近所に大型スーパーやコンビニができて便利になっていたとしても、「昔は良かった」という思いで言っていることが多い。

旧家が多い地域に住んでいるお客様や、地域特有の名字のお客様などに対して、「昔からこの地域にお住まいなんですね。周辺環境の変化に戸惑いを感じませんか?」という声かけをすると、「感じる」という答えが多くなる。それと同時に、「昔はこんなにマンションやアパートはなかったから、もっと広々して暮らしやすかったですよ」といった言葉が聞かれる。

納税資金の備えを提案

都市化が進んでいる地域を前提として、ここからのトーク展開を考えてみよう。「都市開発に伴って不動産価格も上昇していますが、その点はどう思われますか?」などと聞くと、「そうらしいですね。自宅を売って、駅前のマンションに引っ越す人もいますよ」「近所の××さんが亡くなったとき土地の評価が高くて相続税に苦労したようですよ」といった話を聞くことができる。

そこで、「相続税の基礎控除が少なくなり、課税対象が拡大したことはご存じですか?」と続ける。首都圏の中核都市などでは、自宅の評価額だけで相続税の課税対象になる世帯も増えている。知っているにしても知らないにしても、「相続対策」の必要性を感じてもらう方向に話が展開できる。

代々地主の旧家など、現時点で相続税を支払うことになる可能性が濃厚なお客様については、「相続税の納税資金を備えておくことも考えませんか」といった方向から、積立・資産運用のアプローチにつなげる方法もあるだろう。

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近所に両親や子どもが住んでいるお客様に…
11.ご夫婦や親子でご一緒に当行のセミナーに参加してみませんか?

高齢のお客様が投資信託を購入する場合、多くの金融機関は、子どもなど家族の同席を求めている。高齢者は理解力や判断能力が衰えるので家族にも話を聞いてもらい、納得を得ることが目的だ。将来のトラブルを防ぎやすくなる。

このとき、子どもはお客様の資産の「相続人」に当たるのだが、ここで注意したいのが、相続人間でもめる〝争族〟だ。これを未然に防ぐには、親世代と子世代、夫婦間でお金に関わる情報や考えを共有し、一緒に学び、同じ水準の金融リテラシーを持つことが有効になる。

実際、最近の遺言トラブルの原因は、被相続人の生前に遺言が相続人に知らされていなかったから──という分析がある。盆や正月などに子どもたちが帰省して家族会議をすることがあるが、ここで相続に関しても話し合うことは、古臭いようで実は有効だろう。

親が元気なうちに「私が死んだら、こんな財産分割を考えている」といったことを説明して理解を得ておけば争族は起こりにくい。また、子どもから遺産相続ではなく生前贈与や教育資金の一括贈与という形で備えたいといった希望も出せる。

声かけから争族対策に

したがって、「ご夫婦や親子一緒にセミナーに参加されませんか?」という声かけは非常に意味がある。

お客様から「長男はいいけど次男は寄りつかないよ」「両親とは疎遠でね」といった答えが返ってきたら、争族のリスクについて話をしよう。「なぜ、親子で聞いたほうがいいの?」といった反応なら、前述のように将来のトラブルを防ぐ必要性などを説明をする。

親子で同じセミナーに参加すれば、その感想を語り合う機会が得られる。一緒にセミナーを聞く親子、夫婦が増えれば、お金についてオープンに語り合う文化も育っていくだろう。その意味からもこの声かけはぜひ実践してほしい。

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10年前に資産運用取引があったことを踏まえて…
12.運用をやめた理由は何ですか?今は投資環境が変わってきていますよ

資産運用をやめた人で多い理由は、「バブル崩壊で大損したから」、あるいは「リーマン・ショックでひどい目にあったから」だ。若い担当者が多く接するのは後者だろう。

2006年~07年はバランス型ファンドが人気で、金融機関はよく、債券と株式の組合せによってリスクを抑える分散投資を提案していた。ところが、08年9月にリーマン・ショックが発生。株式、債券、不動産のトリプル安という事態にバランス型ファンドも損失を被り、多くの担当者がトラウマを抱えた。

しかし、投資に関わる環境は変わってきた。今ではバランス型ファンドに対する抵抗感は買い手にも売り手にもなくなってきたと感じる。リスクを3~4%に抑えるという商品もある。また、相場が低迷すると安全資産のウェイトを増やすなど、資産配分を固定化しない運用スタイルのファンドも出てきた。

過去と違う商品性をPR

このように、勝つのではなく、負けない運用が期待できる商品が今はあるということを担当者は伝えたい。まずは「運用をやめられた理由は何ですか」と声をかけてみよう。「実はリーマンで…」といった話が返ってくれば、「バランス型ファンドの商品性が改善されているんですよ」などと今の商品や仕組みを説明しよう。

投資から離れたお客様は、年齢を重ねて「お金を増やす」よりも「減らさない」ことに関心が移っているかもしれない。リスクを抑えた運用が望まれるので、積立投資信託のアプローチにつなげてもよいだろう。

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