投資家にとって株式投資のメリットで大きいのが、配当です。

配当とならんで大きなメリットとなるのが今回ご紹介する企業による自社株買いです。

アメリカの著名な投資家であるウォーレン・バフェットは自社株買いする企業の銘柄を高評価すると言われています。

場合によっては配当以上のメリットがある自社株買いについてご紹介していきます。

会議
(画像=Getty Images)

自社株買いとは何か?

自社株買いとは企業が自社で発行した株式を買い戻すことです。

自社株買いは企業による株主還元の方法の一つとして、配当とならんで行われます。

アメリカの株式市場では機関投資家だけでなく、個人投資家による投資もさかんにおこなわれています。

そのため、投資家からの評価を高める上でも配当と自社株買いによる株主還元に積極的なアメリカ企業が数多くあることで知られています。

ゴールドマンサックスの調査によれば、2019年第一四半期(2019年1月~3月)の米国主要500社の自社株買い総額は2058億ドルと過去2番目の規模になりました。

企業が自社株買いする理由とは?

企業が自社株買いするのは以下のように様々な理由に基づいて行われています。

市場からの評価を高め、株価対策になる

自社株買いに積極的な企業は株主還元策に真剣であると認識されることから市場で買われやすくなります。

結果として株価上昇につながり、資金調達の面から有利に働くことになります。

企業の自社株買いによって株主にもたらされるメリットについては後ほど詳しくお伝えします。

アナウンスメント効果がある

企業が自社株買いの意向を発表することで市場の取引参加者に対し、その企業から買い支えられているという安心感が生まれ、株価が下げづらくさせるアナウンスメント効果があります。

自社株買いによる得られるアナウンスメント効果は業績が悪化している企業の株価下支え対策としても利用されます。

特に決算発表時に業績を下方修正する企業などの場合、自社株買いも同時にアナウンスすることで株価の下落をできるだけ避けようとします。

また、自社株買いをする企業の中には自社株に対して市場から過小評価されていると考えて実施する場合もあります。

過去にはソフトバンクグループによる6,000億円もの自社株買いが実施され、1日で2割近くもの株価上昇がありました。

このような自社株買いについても、市場に対してその企業の株価水準が割安すぎるというアナウンスメント効果を発揮することもあるのです。

敵対的買収(TOB)対策となる

敵対的買収の危機的な状況にある企業の場合、買収されにくくするために自社株買いによって自社の持分割合を上げる目的で実施される場合もあります。

例えば、発行済株式数100,000株に対して自社保有株式20,000株の場合、その企業の自社保有比率は20%となります。

この場合、20,000株分の自社株買いをすることで、自社保有比率を40%にまで高めることで買収されにくい状況をつくることができます。

自社株買いから得られる株主にとってのメリット

一方で株主が企業の自社株買いから得られるメリットとしては以下のようなものがあります。

EPS上昇による短期的な株価の上昇の可能性があること

EPSとは「Earnings Per Share」の略称で「一株当たりの企業の純利益」のことを指します。

EPSは企業が一株あたりどれくらいの利益を生み出しているのかといった収益性を測る指標となります。EPSの算出方法は「EPS=当期純利益/発行済株式数」です。

自社株買いは自社の発行済み株式を市場から買い戻すわけですので、この数式の分母である発行済株式数が減ります。

発行済株式数が減ればおのずとEPSが上昇しますので、その企業の収益性も高く評価されることになります。

その結果としてその企業銘柄は買われて株価が上昇することになります。

株価上昇の理由は簡単な数式でも算出することができます。

株価は「株価 = EPS × PER」で算出されますので、PERが不変であればEPSの上昇により株価も上昇することがわかります。

ちなみにPERとは「Price to Earning Ratio」の略となり、「株価収益率」を意味しています。

PERを数式で表すと「時価総額(=株価×発行済株式数) ÷ 純利益」となります。

ROE上昇による長期的な株価の上昇の可能性があること

ROE(自己資本利益率)とは、自己資本(純資産)に対し、どれだけ効率良く利益を生み出したのかを表わす指標です。

ROEは「ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」で算出されます。

自社株買いを実施した企業がその株式を消却することで、純資産とされる自己資本が減ることになります。

分母となる自己資本の減少によっておのずとROEは上昇しますので、市場からの買いが入りやすくなり、株価も上昇していきます。

自社株買い後の株はどうなるのか?

自社株買いによって市場から買い戻された発行済み株式は、会計上は自己株として「純資産の部」においてマイナス表示されます。

買い戻された株式はその後、「消却」か「処分」のいずれかになります。

消却とは?

消却とは買い戻した自社の株式を金庫株として自社で保有せずに消滅させることです。

自己株を消滅させることではじめて発行済株式総数が減少し、先ほどご説明したEPSやROEの上昇につながります。

処分とは?

処分とは自社株買いによって保有することになった自己株を再び資金調達などのために市場で売却することです。

市場で売却することは発行済株式総数が増えることになりますので、株価が希薄化します。

当然のことながらEPSやROEを押し下げる効果となって現れます。

処分のタイミングによってはその企業は売却益が得られる場合もありますが、株主価値のほうは減少することになります。

まとめ

自社株買いは実施する企業側にも株主の側にも双方にメリットがあることがわかりました。

企業側のメリットとしては株価や敵対的買収への対策の他、アナウンスメント効果が得られる点が挙げられます。

株主側のメリットにはEPSやROE上昇に伴う株価上昇でリターンが増えることがあります。

株式投資で銘柄選定の際には企業の配当性向や増配率なども重要ですが、今後は自社株買いの実施状況についてもチェックしてみると役立つかもしれません。

自社株買いを実施する企業銘柄は市場に割安であることを伝えるアナウンスメント効果もあることから、銘柄選定の参考になることも考えられます。(提供: The Motley Fool Japan


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