「有事の金」とよく言われますが、金を投資先の一つとしてポートフォリオに入れる意義はどこにあるのでしょうか?

また、金現物への投資(純金積立)と金鉱株への投資とどちらが、良いでしょうか?

金に投資する意義として、インフレヘッジとか、有事の金ということで、分散投資の観点から、ポートフォリオに入れておくべきものとして語られてきました。

金に投資しても、利子や配当は有りません。

金投資の収益源泉は、売買益のみです。

価格は上がったり下がったりするとしても、長期的にはあまり変わらないもしくは下落する、ということであれば長期投資する意味がありません。

最低限、価格は長期的には下がらない。

株価
(画像=Getty Images)

そして、ポートフォリオの中で最もリスクの高い株式に対して、異なった動きをする、という特性があるのであれば投資する意味があります。

インフレ上昇時、金は上昇し、株が下がることが多いです。

インフレは、株式にとってはプラスではありません。

インフレが起きている時というのは、通貨の価値が落ちている時です。

そういう時に、金の価格が上昇してくれていると、インフレヘッジの効果があると言えるでしょう。実際にそのように見えます。

通貨(ドル)への信認が揺らいだ時も、金への資金シフトが起こると言われています。これは有事の金ということです。

過去5年の動きを見ると、ドル(対円)と金価格(スポット)の価格の動きは2019年末くらいまでは、対象的な動き(相関係数がマイナス)でしたが、2019年から今年にかけてはその動きに乖離が出てきています。

金価格が一方的に上昇している状況です。

分散投資という観点からの金投資とは
(画像=引用:Bloomberg)
青:金現物、オレンジ:対円為替

株式市場(S&P500)との比較でみると(下のチャート)、この5年では、逆の動きを短期的にしている時期もありますが、長期トレンドとしては、S&P500が上昇する中で、遅れて上昇していくという状況であったかと思います。

景気が良く、株価が上昇する中で、しかもインフレは低位で抑制され、金利も低いままであったここ5年では、金はあまり良い投資先ではありませんでした。

ただ、一時的な下落時には、株からの逃避先になったのか、株が下落した時に金価格は上昇しているように見えます。

分散投資という観点からの金投資とは
(画像=引用:Bloomberg)

金価格のチャートを見ると、長期トレンドでは上昇してきています。

そもそも、金価格は需給で決まるもので、サイクルは有ってもトレンドはないと言われていましたが、チャートを見る限りでも長期トレンドは存在します。

長期トレンドを形成する唯一の要因は生産コストです。

90年代までは、金鉱会社は金を採掘した段階で先物で売りを立て、売却価格を固定することで利益確定をしていました。

金価格が長期で低迷している間は、先物で金を売っておくことは正しかったのです。

先物市場でのメインプレーヤーが金鉱会社で、大量に売りヘッジをすると、それによって金価格が下がり、それを見て再び慌てて先物を売るという悪循環に入っていました。

2000年代に入ると過去の反省から金の売りヘッジはあまり行われなくなり、金価格は生産コストに応じて上昇する傾向がはっきりしてきました。

金価格が2002年に$300ドル(1トロイオンス)くらいだったころの生産コストは$233くらいです。

10年後の2012年に金価格が$1677を付けたころの総生産コストは$1,200~$1,300くらいになります。

生産コストが$1,300だとすると、金価格が$1,300を超えてくると生産が増えると同時に、退蔵されていた金が流通市場に出てくるようになり、供給が増えることで、価格の上昇にブレーキがかかります。

一方、価格が$1,300を割り込んでくると、採掘すればするほど赤字になるので、生産量が落ち、供給が減り、価格の下落に歯止めがかかります。

このような仕組みで、金価格は生産コストを大きく下回ることは考えにくくなります。

比較的下値が抑えられていて、米ドルや株式市場のヘッジとして役立つとすれば、分散の意味でも投資しない手はないです。

では、金の現物と金鉱株のどちらに投資するのが良いでしょうか?

株式投資や債券投資もしているという前提で、金投資をするのであれば、敢えて金鉱株ではなく、金現物で良いのではないかと思います。

金鉱株に投資すべし、という推奨を沢山みます。

それも分からないではないですが、私は株リスクを既に株式投資でとっているなら、分散の意味では、金鉱株ではあまり分散の意味をなさず、金現物の方が良いと考えています。

金現物の収益源泉は、価格変動のみですが、金鉱株は金価格が上昇すれば株価も上昇する傾向があると同時に、配当のあるものがあります。

また、企業努力で他社よりも生産コストを抑えられる仕組みがあれば、その分利益が出やすく、株価も上昇しやすかったりします。

あるいは、経営があまり良くなかった金鉱株の経営が変わり、生産性が少しでも上がったら、株価は大きくプラスに反応します。こうした醍醐味もあります。

ただ、そうしたことは金鉱株特有のことではなく、株式の銘柄を選ぶに際して取るリスクそのものです。

分散としては意味がないと言えます。株式ポートフォリオの中で取るべきリスクです。

価格の変動が収益源泉なので、少しずつ買いためていくドルコスト平均法が良い方法だと思います。

田中貴金属や三菱マテリアルの純金積立の形で投資するのが良いでしょう。

金鉱株への投資は、金価格が上昇基調で、株価も上昇トレンドの時は、分散投資ではなく、純粋な投機として考えて投資をすると大きな収益を生むチャンスがあります。

金鉱株としての投資先は、二大金鉱株としてNewmont Corporation(NYSE:NEM)とBarrick Gold Corporation(NYSE:GOLD)があります。

中小型の金鉱株投資は、より細かな分析が必要です。

先ほど、金価格は生産コストのトレンドに従って上昇しており、下落リスクは少なそうだと書きました。

この前提が崩れることが、金投資の一つの大きなリスクになります。

原油掘削で起きているように、技術革新で生産コストが低下した場合、金価格も低下する可能性があります。

やはり、No Free Lunchです。

気をつけながら分散の意味で金にも投資をされると良いと思います。(提供: The Motley Fool Japan


免責事項と開示事項 記事の作者、松本義和は記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。