大手金融会社が2020年中頃から新しい証券取引所を開始する予定です。

創立企業に加え、あとから出資に名乗りでた企業のネームバリューから、寡占化状態が続くアメリカの取引所に大きな影響を与えるのではと予想されています。

そこで今回は、設立予定の証券取引所MEMXの狙いや、日本人投資家への影響を解説します。

株価
(画像=Getty Images)

証券取引所MEMXとは

MEMXはアメリカやヨーロッパの金融会社がアメリカに新設する予定の証券取引所です。

MEMXはMembers Exchange(メンバーズ・エクスチェンジ)の略称ですが、この名称は予定となっているため、実際には違う名前が付けられる可能性があります。

出資会社に大手金融グループや個人向け証券会社が名前を連ねており、アメリカの金融・投資の世界に大きな影響を与えると予想されています。

2019年より計画はスタートし、2020年中頃に運営を開始する予定で、市場データの試験などのスケジュールが発表されました。

しかし、2月下旬から新型コロナによる経済への影響が深刻化しています。

記事執筆時点だとMEMXの出資会社から正式な発表はありませんが、延期する可能性も浮上しています。

MEMXの特徴

市場参加者が直接取引所の運営に乗り出す

MEMXの主な出資会社

  • モルガン・スタンレー
  • チャールズ・シュワブ
  • JPモルガン・チェース
  • ゴールドマン・サックス・グループ
  • ジェーン・ストリート・キャピタル
  • フィデリティ・インベストメンツ

当初、MEMXはアメリカやヨーロッパの金融会社9社が創立企業となり、運営する予定でした。

その顔触れは多彩で、機関投資家向けサービスに特化したモルガン・スタンレーを筆頭にアメリカやスイスを代表する大手金融グループ2社、個人投資家向けサービスが充実したチャールズ・シュワブやEトレードが並び、超高速取引業者の大手シタデル・セキュリティーズや大手運用会社のフィデリティ・インベストメンツなどが加わっています。

これらの創立企業9社に続いてJPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループ、ジェーン・ストリート・キャピタルの3社が、取締役会の席と議決権を手にすると2020年2月に発表して、大きな話題となりました。

通常、取引所は金融商品取引所を運営する企業が独立しており、証券会社や金融会社と売買を行う環境を管理しています。

日本の場合は、日本取引所グループが東京証券取引所・大阪取引所・東京商品取引所などの取引所を運営しています。

アメリカには営業前のロングターム証券取引所を含めれば23もの証券取引所があり、MEMXのほかにも認可待ちの取引所はあります。

しかし、アメリカの取引所は大手が寡占している状態にあります。

NYSEとナスダック取引所、シカゴ・オプション取引所の3グループに、1日あたりの株式売買高の約6割が集約しています。

大手取引所の寡占化による弊害として、売買コストが高値のまま下がらず、取引情報などのマーケットデータを支払う利用料金が増えているなどの問題が指摘されていました。

市場参加者が直接取引所を運営しようとするのは、これらの弊害を解決するのが狙いだと言われています。

新しいシステムの導入予定

MEMXでは、新しい情報技術を用いて取引所のシステムを構築すると発表しています。

注文形式の複雑さを取り除き、市場参加者が取引所に支払うコストを引き下げ、複数の企業による運営方式をとることで透明性を向上させるなど、大手取引所とは違う路線だとアピールしています。

実現すれば、大手取引所が独占している状況に風穴が空き、取引所同士の価格引き下げなどの競争が起き、アメリカの株取引熱が更に加速するのではないかと予想されます。

アメリカに取引所が多い理由

アメリカに取引所が多いのは、投資家にとってより良い環境を作るためです。

取引所の数が多くなると、取引所同士の価格競争やサービスが展開され、参加する投資家が健全な市場で取引できるという考え方から多くの取引所があるのです。

また、日本とアメリカの取引所では上場企業の株式取引のルールが違います。

日本の取引所では、東証一部に上場している企業の取引は東証でしか行えません。

しかし、アメリカでは別の取引所で上場している株でも購入が可能となっています。

そのため、アメリカの証券会社は投資家から受けた注文を、一番理想的な価格で売買している取引所を選ぶことが可能となっています。

2018年の取引高に占める比率でシェア1位を獲得したのは、取引所の外で行われる取引所外取引になります。

日本だと東証一部が大きな市場として君臨してほかの市場が続くピラミッド構造となっていますが、アメリカでは多くの取引所が繋がって一つの市場として回っています。

新興取引所が抱える課題

上記でも触れましたが、アメリカの取引所は3つのグループが寡占している状態で、有望な取引所は買収のターゲットになります。

2006年にはNYSEがゴールドマン系のアーキペラーゴが、2016年にはCBOEが電子株式取引所を運営するバッツ・グローバル・マーケッツが買収しました。

2013年に創設された、IEXは高頻度取引の排除を掲げて有名になりましたが、シェアは全体の2.4%程度となっています。

このように、業界に新しい風を作ろうとしても、大手取引所グループの買収ターゲットになるか、影響力を伸ばせず苦しい戦いとなってしまうのが問題となっています。

証券取引所MEMXが設立した時の日本人投資家への影響

MEMXが設立すれば、日本人投資家にとって売買コストの安い新しい選択肢が誕生します。

2019年7月より、日本からアメリカ株を購入した際の手数料が改訂され、それこそ数千円から投資ができるようになりました。

大手ネット証券はこぞって手数料の条件を見直し、最低手数料を撤廃するなどの動きがありました。

しかし、多くの人が待ち望んでいる手数料の上限引き下げには至らず、落胆する声も少なくありません。

MEMXが取引コスト削減を掲げて設立すれば、ほかの取引所も対抗して取引コスト削減に動き出し、競争が起きる可能性があります。

大手取引所グループが削減に動けば、日本からアメリカ株を購入した際の手数料も下がる可能性はあります。

まとめ

以上が、証券取引所MEMXの狙いの解説になります。

経済のグローバル化が進み、各国で取引所の統合が進んでいます。

日本でも日本取引所グループが東京商品取引所を買収し、日本初の総合取引所を設立しようと動き出しています。

大手取引所による寡占状態が各国で進んでいるなかで、MEMXのような新興取引所がどこまで対抗できるのか注目です。(提供: The Motley Fool Japan


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