新型コロナウィルスの対策による物流停止、消費低迷の影響と、その後の見通しについてです。

この記事ではアップル(NASDAQ:AAPL)とマイクロソフト (NASDAQ:MSFT)の新型コロナウィルスによる消費低迷や業績影響について書きました。

マイクロソフトもその後ソフトウェア部門に影響ありとのガイダンスを出していました。

今回はもう少し広い範囲でビジネスの影響について考えていきたいと思います。

半導体
(画像=Getty Images)

コロナショックの問題点

今回の暴落は、新型コロナウィルスによるサプライチェーンの問題で物が流れなくなる、外出制限、渡航制限などにより人が移動しなくなる、またそれらの結果として消費が落ち込む等の経済的なダメージと、それに伴う原油の需要悪化&減産拒否による原油安、さらには各企業の業績予想の下方修正や債務問題など同時多発的にリスクが顕在化したことで売りが売りを呼んだ結果と思われます。

複数の要因があるため、何か一つの改善だけでは元通りとはなりづらく、セクターやビジネスにより強弱が分かれる結果となりそうですが、今回は直接的な「人」と「物」が動かなくなったことによる消費低迷にフォーカスしていくつかのビジネスに対する影響を考えたいと思います。

純減となるか純増となるか、リバウンドがあるか

まず、いくつかのビジネスへの影響について考えるとき「純減となるか」「純増となるか」「リバウンドがあるか」を念頭に置いておく必要があります。

これはコロナショック中の決算と、問題解消後の決算での影響を予測するためです。

世界的な経済の低迷(完全なるリセッション)を除き、一時的な要因として捉えた場合、純減の場合はコロナショック中の決算が悪化し、問題解消後の決算は概ね平時に戻るでしょう。

減少に対するリバウンドがある場合は、コロナショック中の決算が悪化しますが、問題解消後の決算は概ね平時に戻るか、やや良い決算になるでしょう。

純増の場合はコロナショック中の決算が良くなり、問題解消後の決算は概ね平時に戻るでしょう。

増加に対するリバウンドがある場合、コロナショック中の決算が良くなりますが、問題解消後の決算は概ね平時に戻るか、やや悪い決算になるでしょう。

影響がある業界

既に株価に反映されているものも多いですが、影響がありそうな業界の例を挙げていきましょう。

旅行・観光事業

話題となったクルーズ船関連や民間航空会社、観光タクシーなど旅行時の移動手段を提供する企業や、ツアーパッケージを提供する旅行会社、ホテルなどの宿泊施設、テーマパークを含む観光地やその物販(土産)など、旅行、観光に関連する事業は大きなダメージを受けていることでしょう。

渡航禁止、州間移動禁止など、人が移動しなくなるわけですから、これらの事業は致命傷かもしれません。

外出制限中に旅行に行けなかった分、問題解消後に積極的に旅行に出る人もいるかもしれませんが、十分なリバウンドがあるとは思えません。

特に印象が悪くなってしまったクルーズ船事業は一時的な純減どころか今後も影響が続きそうです。

またホテルなどの宿泊施設、民間航空も増発や価格調整で多少吸収できる可能性もあるものの、キャパシティが倍になるわけではありませんから純減は免れないでしょう。

実際に、カーニバル(NYSE:CCL)やロイヤル・カリビアン・クルーズ(NYSE:RCL)は2月20日から3月20日までの一ヶ月間で-70%を超える暴落となっています(以降記載する騰落率は全てこの期間で取得したものです)。

また、ウォルトディズニー(NYSE:DIS)も-38.75%とS&P500ETF(NYSE:VOO)の-31.95%を超える下落となっています。

外食産業

外出制限や、自発的に人が多く集まるような場所への移動を避けることの影響で、外食産業は純減となるでしょう。

これは外出制限中に外食を控えた場合、仮に期間を1ヶ月間としましょうか。

この1ヶ月間は別のものを食べているためです。

多くの人の食事量をある程度一定と考えると、1ヶ月間外食しなかったからと言って、翌月に2倍外食をするわけではありません。この間のダメージは純減となります。

ただし、レストラン型の外食産業はダメージが大きそうであるものの、ドライブスルーなどを採用するファストフード店は気軽に立ち寄って食料を調達できるため、一定のニーズは継続してあるものと思われます。

車で出かけ、ドライブスルーで食料を買い、車内、あるいは帰宅して食事をした方が、徒歩や電車で出かけ、レストラン型の飲食店で食事をしたり、スーパーマーケットで買い物をしたりするよりも他人との接触が少なくて済むからです。

参考までに、マクドナルド(NASDAQ:MCD)は-30.96%とVOOよりわずかに低い下落幅で、スターバックス(NASDAQ: SBUX)は-34.50%とVOOよりわずかに高い下落幅でした。

ブランド力のある一般消費財

iPhoneのようにサプライチェーンの影響や一時的な店舗の閉店で販売台数が低迷しているものはリバウンドの可能性もあるでしょう。

これはそもそもユーザーの目的が「iPhoneを買う」ことであるため、一時的に在庫がなかったり、外出制限や店舗の閉店で買いに行けなかったりと言った理由で販売台数が低迷したとしても、在庫が復活したり、店舗が再開したりすれば目的達成のために購入を行うと考えられるからです。

同様にブランド力のある自動車も一時的な供給減少に対するリバウンドがあると考えられます。

趣味やステイタスとして特定のメーカー車(例えばスポーツカーなど)を好んでいる人が、一時的なサプライの影響で納車が遅れたとして「じゃあ適当な普通車でいいか…」とはならないからです。

参考までに、アップルは主力のiPhoneの下方修正ガイダンスはあったものの、-28.43%とVOOと比べやや低い下落幅に留まっています。

物流事業

サプライチェーンの影響で製造が止まり、人の消費低迷で物の流れが減少するので、物流関係の事業も大きなダメージを受けています。

近距離の輸送は自宅待機中便利なため利用されそうですが、長距離輸送、国際輸送などは、肝心の「輸送するもの」がないため売上も激減してしまいます。

輸送する対象がリバウンドを見込めるものばかりであれば良いですが、現実はそういかず、純減を免れないでしょう。

実際に、ユニオン・パシフィック(NYSE:UNP)は-35.75%、フェデックス(NYSE:FDX)は-32.65%とVOOより大きい下落幅でした。

しかしユナイテッド・パーセル・サービス(NYSE:UPS)は-12.23%と、かなり低い下落率でした。

衛生用品・日用品

純増となるものの例として、マスク、消毒薬等の衛生用品が挙げられます。

これは普段意識していなかった、利用していなかった層の衛生意識が高まることで、純粋な購入量、消費量が増えるためです。

しかし、自宅待機のために「買い溜め」されたものは消費量が増えなければ後々の購買ペースが低下するだけなので、多くの人々が日用品を買い漁る、需要の急増…と言えるのほど期待はできないかもしれません。

場合によっては増加後のリバウンドで一時的に需要が下がる可能性もあります。

参考までに、プロクター&ギャンブル(NYSE:PG)は-19.08%、ジョンソンエンドジョンソン(NYSE:JNJ)は-19.20%と、VOOと比べ低い下落幅でした。

スーパーマーケット、ドラッグストア

外出制限により消費が低迷しているとは言え、スーパーマーケットやドラッグストア、ECサイトなどの食品や医薬品、生活必需品を手に入れるところは短期的には影響を受けません。

むしろ買い溜め、買い占めの影響で品切れが相次ぐなど、需要が増加しています。

賞味期限が長くない食品などは買い溜めによる増加後のリバウンドも考えにくく、外食をしなくなる分、自宅での消費量が増えると予想できるため、純増を期待できるでしょう。

しかし気を付けなければいけないのは、供給が追い付かなければ需要が高まっても売れるものがありません。

サプライチェーンの影響で供給できない製品もあるため、中長期的にはニュースで見る「棚からすべての商品が消えた…」というイメージほどのインパクトはないかもしれません。

参考までに、ウォルマート(NYSE:WMT)は-3.16%とかなり健闘しており、CVSヘルス(NYSE:CVS)は-23.96%、Amazon(NASDAQ:AMZN)は-14.26%と、どちらもVOOより低い下落幅でした。

Amazonはクラウド部門、コンテンツ部門もあるため、後述の「通信・ネットコンテンツ」の影響もあるかもしれません。

通信・ネットコンテンツ

外出制限などで自宅に待機する人が増えれば、外出しての娯楽が減る分、屋内での娯楽を求めるでしょう。

今回のコロナショックにおいて通信事業自体はあまりマイナスの影響を受けない可能性が高く、コンテンツ事業にとっては追い風になる可能性すらあります。

実際に、ベライゾン(NYSE:VZ)は-10.83%、ネットフリックス(NASDAQ: NFLX)は-13.77%とVOOと比較して下げ幅はかなり低く、AT&T(NYSE:T)も-26.31%とやや低い下落幅となりました。

やや話は逸れますが、AT&Tは債務が大きいため、多額の自社株買いを取りやめ、事業や従業員を守る資金に充てると宣言をしていました。

これにより株価は一時急落しましたが、個人的にはこれは英断だと思っています(ホルダー故の贔屓目かもしれませんが…)。

通信事業自体安定したキャッシュフローを稼げるビジネスなので、世の中が安定しない時期は債務返済、5Gに向けた事業への投資、配当を優先し、十分体制が整ってから自社株買いを再開してもらえれば、と思っています。

無理な自社株買いで競合に遅れを取ったり、減配したりするようなことは避けて欲しいものですね。

リモートワーク関連

外出制限、出社制限により、日本でも米国でもリモートワーク(在宅ワーク)がより盛んになりました。

ミーティングやセミナーをWebミーティングに置き換えたり、ウェビナーに置き換えたりする事で、集会を防ごうとする動きもあります。

これらの働き方がコロナ終息後も文化として定着するのか、元の働き方に戻るのかで今後の業績にも影響があると思いますが、少なくとも現在の需要増加は純増と捉えて良いでしょう。

参考までに、ズームビデオコミュニケーションズ(NASDAQ:ZM)は+23.99%と多くの銘柄が暴落に見舞われる中で急伸を遂げています。

また、スラック・テクノロジーズ(NYSE:WORK)も-19.13%と、VOOと比較して低い下落幅に留まっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

これらは飽くまで影響を受けるビジネスの一例に過ぎず、尚且つサプライチェーンの影響や物流、人の移動制限はこれらのビジネスに影響を与える一要素に過ぎません。

実際には前半でも書いた通り、エネルギー需要の低下や債務問題、金融緩和のための利下げにより、石油系企業や金融業の業績悪化、債務超過による体力がない企業の倒産…さらにはB to B企業から見た場合の顧客の倒産、事業への投資削減、それによる資本財やハイテク企業への受注減少と、影響は広い範囲に波及していきます。

このような状況下では特定の材料に偏った判断、短期的な株価の動きだけで銘柄の強弱を判断するのは危険を伴うかもしれませんが、今後来る決算で各企業への投資判断が今まで以上に分かれると思っています。

いわば保有判断、売買判断の分水嶺となることでしょう。

しかし長期投資を掲げる投資家にとって、今回のように特殊な状況下におけるたった1回の決算のみで将来を決めつけてしまうのもやや早計であると思います。

リバウンド需要の有無を考える事が、先を見据えた投資判断の一助になれば幸いです。(提供: The Motley Fool Japan


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