新型コロナウィルスによる観光、消費の低迷、サプライチェーンの影響による業績悪化の予測で大きく下げ、また利下げや支援金などの金融緩和で大きく上げ、非常にボラティリティの高い相場が続いています。

このような相場において「短期投資はリスクが高い」「長期投資はリスクが低いので安心」と言う声をよく聞きます。

しかし、これは正しくリスクを理解できてないのではないかと思います。

安易に「長期投資はローリスクで安心だ!」と思い込んでいると危険が伴うかもしれません。

ローリスク
(画像=Getty Images)

そもそもリスクとは?

リスクとは「取りうる値動きの幅」と考えれば良いでしょう。

「損する危険性」や「下げ幅」と捉えて「ローリスクハイターン」と表現を使う方がいますが、本来そんな都合の良いものはありません。

ただし、逆に「ハイリスクローリターン」はあり得ます。

まずはこの考え方を理解する必要があります。

とある銘柄の今現在の価格を100ドルとすれば、リスクは今後取りうる値動きの幅です。

仮に1日あたりの変動幅を±1%としましょう。

この場合、とある銘柄の価格は明日には101ドルになるかもしれないし、99ドルになるかもしれません。これがリスクです。

つまり1日最大でも上下に1%しか変動しないローリスクな銘柄であれば、最も素晴らしいリターンも1%しかなく、ローリターンと言うことになります。

逆に、1日最大で上下に20%変動しうるハイリスクな銘柄であれば、最大リターンも20%と言うことになりハイリターンを望めます。

しかし、これは「最大リターン」であるため、当然反対に最大限動けば-20%となり、「ハイリスクローリターン(マイナスリターン)」になるわけです。

長期投資におけるリスク

長期投資のリスクを考えるときに、少なくとも3つの要素を考えなければなりません。

その3つとは「資産がリスクに晒される時間」「追加入金できる機会」「変動幅の収束」です。

1つずつ説明していきましょう。

資産がリスクに晒される時間

これは今回の本題になるのですが、前述の通り、1日最大で上下に20%のリスク幅を持つ資産があるとします。

1日であれば最大の利益は20%、最大の損失は-20%ですが、10日毎日20%上昇し続けた場合はどうなるでしょう。

ちなみに今回は便宜上「前日比」ではなく「元手の」20%とします。

20%×10日なので200%ですね。

逆に動いた場合は-200%となるわけです。

長期で投資する事で資産を積み上げる事が出来るとすれば、それは高いリスクを背負っているからに他なりません。

1日であれば上下に20%のリスク幅しかないものが、200%のリスク幅を持つ結果になりえるわけです。

このように、理論上は「長期投資はローリスク」とは言えません。

これは株式などの比較的高いリスクを持つ資産が、キャッシュなどの無リスク資産と呼ばれる低リスクな資産(私はキャッシュも無リスクとは思っていません)と比べて相対的に高いリスクに晒され続けているためです。

投資期間が長期になればなるほど、相対的に高いリスクに晒され続ける期間も伸びるので、リスクは時間と共に拡大していきます。

ではなぜ、長期投資はローリスクであると言われるのでしょうか。

追加入金できる機会

1つは追加入金できる機会が多いためです。

これはドルコスト平均法にも繋がる話ですが、追加で入金をしていく過程で初期に入金された分のリスクは総資産から見た場合に薄まっていきます。

例えば、最初に投入した資金1,000ドルが、一定期間リスクに晒された結果上下に50%のリスク幅を持つとしましょう。

この部分に限れば、一定期間経過後の資産はおよそ500~1,500ドルになるわけです。

しかし追加で1,000ドル入金した場合、入金直後(つまりリスク0の状態)に限れば資産は1,500~2,500ドルになります。

結果として、総資産から見ればリスクが薄まり、25%のリスク幅しか取りえなかった事になります。

これはやや詭弁じみていると言いますか、「ナンピンすることで含み損%が減っている」ことと同じような状態です。

初期に投入した資産に対するリスクは変わっていません。

しかし長期投資において、もっとも最初に投入した資金に対するリスクだけを追い続けることはまずないでしょう。

また、投資期間が長くなればなるほど入金回数も増えるため、定期的にリスク0の状態の入金を行う事で、見かけ上は「総資産に対するリスク」が薄まることになります。

変動幅の収束と確率

そして本質的に「ローリスクである」と言われる理由はこの「変動幅の収束と確率」です。

取りうる値幅がランダムであると仮定した場合、確率的には中央(±0周辺)に収束していくことになります。

例として、-5から+5までの値をランダムで表示するよう、Excelで「=RANDBETWEEN(-5,5)」と入力したセルを365個用意し、全ての値の合計を取ってみました。

1つのセルは1日5%の変動幅を持つ資産と仮定して、1年間運用した想定です。

この結果10回ほど繰り返し取得してみましたが、-34%、25%、54%、-44%、13%、23%、41%、-55%、-43%、33%という結果となりました。

毎日5%ずつ上昇した場合、複利を考慮しなければ5%*365日で1825%となります。

つまり、±1825%が取りうるリスクの最大幅ですが、10回試した程度では一度も100%を超えることすらありませんでした。

投資期間が伸びれば理論上取りうるリスクの幅が大きくなりますが、実際に取りうるリスク幅は確率的に中央に収束しやすくなるため、前述の「追加入金できる機会」と合わせて総資産に対するリスクは限定的となりやすく、結果として短期的な極端な変動を顕在化させることなく、印象として「ローリスクである」と結論づけられるやすいのでしょう。

まとめ

長期投資のリスクと、ローリスクであると言われる理由を挙げましたが、私の結論は「やはり長期投資はローリスクではない」と言うことです。

繰り返しますが、リスクとリターンが表裏一体である以上、長期投資により高いリターンを得られるとすれば、それは高いリスクを背負っているからに他なりません。

しかし入金と中央への収束により、実際に取りうるリスク幅と比べると穏やかなリスクに抑えられることや、株式投資の場合はある程度「経済の成長は長期で見れば右肩上がりである」ことを前提としているため、リスクの最低値が切りあがって行くように「錯覚」していることも大きいと考えられます。

この前提の是非はここでは問いませんが、そもそも「右肩下がりである」ことを前提とした場合は投資対象にならないと思いますので、投資しているからには長期的には「右肩上がりである」という前提、あるいは期待を置くのは正しい思考であると言えるでしょう。

ただし、期待によりリスクが低下するとは限りませんから、現実から目を背けたりせず、個人のリスク許容度に合ったリスクコントロールを行いたいものですね。(提供: The Motley Fool Japan


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