子どものいる家庭なら、一度は「ペットが欲しい」と言われたことがあるのではないか。私たち親世代の返す刀は、決まって「お散歩に行けるならね」とか「テストでいい点を取ったらね」など、条件を付けることで、無意識に結論を先延ばしにしていることだろう。

そのとき私たちの頭の中では、家庭内キャッシュフローを計算しているかもしれない。一体、イニシャルでいくらかかって、ランニングでいくらかかり続けるのだろう。学費との両立は大丈夫か? 来年のハワイ旅行はどうしたら…。

今回は、ペットを飼うことの「情緒面」を一切排除して、お金、暮らし、教育の観点からロジカルに「ペット飼育」について紹介していこう。

目次

  1. ペットを飼いたいと言われたら、まずすべきこと
  2. ペットを飼うための費用はどのくらいか?
    1. 犬の飼育費用(イニシャルコスト)
    2. 犬の飼育費用(ランニングコスト)
    3. 犬の飼育費用まとめ
    4. 猫の飼育費用(イニシャルコスト)
    5. 猫の飼育費用(ランニングコスト)
    6. 猫の飼育費用まとめ
  3. ペットを飼うことで、暮らしはどう変わるか?
    1. どうぶつと暮らすことでの「良い変化」
    2. どうぶつと暮らして困ること
    3. 健康面への影響
    4. ペットと子どもは仲良くできるのか?
  4. 子どもの教育には役立つか
  5. まとめ
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ペットを飼いたいと言われたら、まずすべきこと

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(画像=Yuliya Evstratenko/Shutterstock.com)

1.命を預かることの大切さを説く
2.本当に欲しいのか、家族で話し合う
3.ペットを飼ったあとのことを考える

子どもにとって、動物への親近感は深く、頭ごなしに親が「NO」ということは避けた方が良いだろう。「ペットを望むことは、悪いことなんだ」という誤解は与えるべきではない。

まずは、生物の命に責任を持つことの大事さについて、両親の経験を踏まえて、子どもに説明してあげてほしい。それでもなお欲しいと言えるのであれば、その子どもだけでなく、家族全員が「本当に欲しいのか」を会議する時間を設け、話し合うと良いだろう。そこで、親は「ペットを飼ったあと」のことを考えておかなければならない。つまり、お金、暮らし、教育といった観点だ。まずは、お金について説明していこうと思う。

ペットを飼うための費用はどのくらいか?

特にペットに関心が無いのに「ペットが欲しい」と言われた親にとって、最も関心があるのはお金の部分ではないだろうか。ひとくちにペットといっても、実は犬と猫ではかなり違うため、それぞれについてイニシャルコストとランニングコストに分けて、紹介しよう。

犬の飼育費用(イニシャルコスト)

犬を迎える方法の主だったところは、ペットショップかブリーダーであろう。ペットショップに並ぶ犬たちが掲載されているサイトの大手である「ハローべいびぃ」では、11,000~2,590,000円の価格レンジが並んでいる(平均 約287,000円)。また、ブリーダーとのマッチングサイト大手である「みんなのブリーダー」では、60,000~2,000,000円で販売されている(平均 約271,000円)。比べてみると、若干ブリーダー直販の方が経済的に迎えられることがわかる。

命に値付けがされることに違和感を覚える方もいるだろうが、どの犬が高くて、どの犬が安いのかは、主に、「犬種」「月齢」「血統(姿形含む)」の3つで決まる。10年以上に渡って人気犬種の1位(アニコム損保調べ)でありつづけているトイ・プードルは、比較的高値が付きやすい犬種で、特にティーカップ・プードルと呼ばれるような超小型であると、100万円を超すこともある。また、大型犬や、希少価値のある珍しい犬種にも高値が付きやすい。

イニシャルコストには、犬の購入代金だけでなく、ケージ、おもちゃ、フード(食餌)、ペット保険なども考えておかなければならない。ケージなどのグッズ系やフードは、1-3万円程度であろう。ペット保険は、ペットショップが保険会社と提携していれば、購入時に加入することができる。購入後1か月間の病気やケガの治療費が補償される保険が、無料で付く場合もある。購入直後の体調を崩しやすい時期には、ありがたい。

犬の飼育費用(ランニングコスト)

アニコム損害保険株式会社
(画像=アニコム損害保険株式会社)

いざ犬を飼ったあとに必要なコストは、フード代、動物病院での予防費や治療費、保険料などが挙げられる。トイ・プードルに代表される、毛が伸びる犬種では、毎月のトリミング代も必要になるだろう。

アニコム損保の「ペットにかける年間支出調査(2019年)」によると、年間の飼育費は、29~45万円(平均 306,801円 平均年齢5.2歳)とある。主な違いは犬のサイズで、大型犬になるほど高額化する傾向にある。病気やケガの治療費や、フードは、大型の分、量が増えることになり、膨らみやすい。また、大型犬の場合は人に咬みつくなどを防ぐため、しつけの費用にも大きな開きがある。

見えないコストとしては、夏場は熱中症予防のために、留守中も冷房が必要となったりすることで、光熱費にも影響があるようだ。

犬の飼育費用まとめ

犬の飼育に関しては、サイズによってバラつきがあるものの、おおむね、イニシャルコストが30万円、年間のランニングコストが30万円であることが分かる。犬の平均寿命は14歳なので、1頭あたりの生涯飼育費用は450万円という計算となった。他の様々な効果と比べ、この金額をどう捉えるかは、人それぞれであろう。

猫の飼育費用(イニシャルコスト)

猫を迎える方法は、ペットショップやブリーダーもあるが、近年は保護ネコの里親募集や譲渡会から引き取る方法も増えている。

猫は、同じく「ハローべいびぃ」によると、ペットショップでは11,000~659,000円(平均 約255,000円)で販売されている。また、「みんなのブリーダー」によると、ブリーダーでは、50,000~2,850,000円で販売されている(平均 約199,000円)。

一方、譲渡会で引き取る場合には、譲渡費用として、譲渡前にかかった飼育費用や治療費、ワクチン等の予防費用などが代金に含まれることが多く、おおよそ3万円前後と考えられる(ちなみに、犬だと5万円前後)

猫の飼育費用(ランニングコスト)

アニコム損害保険株式会社
(画像=アニコム損害保険株式会社)

猫は、犬に比べてランニングコストがかかりにくい。文化的にも、猫を外に連れて行くという習慣もなく、費用項目はオーソドックスなものに限定される。

同調査によると、年間の飼育費は、平均 158,680円(平均年齢4.8歳)で、犬の約半分の費用となっている。猫はサイズによる違いもないため、おおむねレンジは安定していると言えるだろう。

猫の飼育費用まとめ

猫の飼育は、おおむね、イニシャルコストが24万円(ショップやブリーダー経由の場合)、年間のランニングコストが16万円であることが分かった。猫の平均寿命は14歳なので、1頭あたりの生涯飼育費用は248万円という計算となった。犬よりも経済的な負担が小さく、また散歩等の手間もかかりにくいことから、ペットとして人気は高く、2018年からは犬をしのぐ飼育頭数と推測されている。

ペットを飼うことで、暮らしはどう変わるか?

昨日までいなかったペットが、ある日突然やってくると、家の中はどう変わるのだろうか。行動上の見える変化は、犬であれば散歩が日課となったり、家族の中にペットを中心とした会話が生まれたり、まだ小さな子どもが小さなペットの世話を始めたり、微笑ましいものが多い。一方で、仕事中や旅行に行く際には、これまで通りとはいかなくなるだろう。散歩に関しても、毎日2~3回歩くのは難しいということもある。

どうぶつと暮らすことでの「良い変化」

2016年のペット飼育に関する調査(アニコム損保)によると、「どうぶつと暮らしてよかったこと」の1位は、「家族との会話が増えた(60.6%)」とあり、2位の「運動量が増えた(37.5%)」や、3位の「家の中を片付けるようになった(26.8%)」より飛び抜けている結果となった。もちろん、子どもを持つ家庭にとっては、これらのどれも喜ばしいことなのではないだろうか。

散歩は、面倒と思う側面もあるが、厚生労働省の「身体日本21」の序文には、「10分程度の歩行を1日に数回行う程度でも、健康上の効果が期待できる」とある。WHOのガイドラインには「毎週、緩めの有酸素運動を少なくとも150分(以下省略)」を運動量の指標としている。15分の早歩きの散歩を一日2回、週5回以上行うことでクリアできるが、これを一人で行うのは、なかなか容易ではない。犬と一緒なら、犬のためにも、自身の運動のためにも、クリアしやすいのではないだろうか。

どうぶつと暮らして困ること

同調査によると、「どうぶつと暮らして困ったこと」の1位は「旅行など、家を長く空けることができない(62.8%)」であった。

2020年現在は、ペットツーリズムという概念も広まり、ペットと一緒に旅行ができるインフラも整ってきた。リゾート地として有名な那須では、地域全体がペットフレンドリーになりつつあり、ペットと泊まれるホテルや、一緒に食事ができるレストランなどが増加している。シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉・浦安)では、ペットと泊まれる客室はもちろん、専用ドッグラウンジなども用意されている。日本航空(JAL)では、「ワンワンJET」と銘打ち、愛犬とともに沖縄旅行にいけるチャーター便などの取組みも行っている。

旅行中には、ペットを預けるペットホテルや、ペットシッターのサービスも拡充してきている。

2位は「お金がかかる(35.8%)」であり、前述の通り、飼育には一定の家計の負担は今後も続きそうだ。以降は、「部屋の掃除が大変(26.2%)」、「世話をするのが大変(13.4%)」、「鳴き声が大きい(10.7%)」などが並んだ。

健康面への影響

多くの読者は、「アレルギーがないか心配」も気になるだろう。内科病院などでは、アレルギー検査を受けることができ、事前に犬や猫に対するアレルギーの度合いを調べられる。

一方で、良い影響も報告されている。英研究では、犬を飼う人の身体能力は、そうでない人に比べて10歳以上若いことが報告されている。スウェーデンの大規模調査では、犬の飼育者は有意に死亡率が低く、長生きであることも分かっている(特に単身者)。肌身で感じる変化ではないが、ペットの飼育により、健康面にポジティブな影響を及ぼす可能性は高い。

ペットと子どもは仲良くできるのか?

一般的には、ペットと子どもは、とても良い関係性を築けることがほとんどだ。動物ながら、子どもに対して、大人とは違う感覚で接する様子はしばしば見うけられる。明確な主従関係というよりも、友人ライクな関係に近いだろうか。

しかし、警戒心や攻撃性の強い犬や猫もいる。こうした場合には、子どもも自然と心が離れていくことがある。動物の性格を飼育前に読むことは難しい。親としては、こうした場合も想定した上で飼育を決めたり、しつけの徹底などを考えておいた方が良いだろう。

子どもの教育には役立つか

ペットの飼育が、子どもの情操教育に大きな影響を及ぼすことは各所で報告されている。英国には、「子どもが生まれたら、犬を飼いなさい」という諺(ことわざ)があるようだ。

子供が生まれたら犬を飼いなさい。

子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。

子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。

子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。

そして子供が青年になった時、

自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう。 (原典不明)

ペットを飼うことが人間形成において重要な一部分を担う可能性は十分に感じられる諺だ。

学術的にもエビデンスがある。

2013年のオーストラリアの研究では、犬の飼育世帯は、非飼育世帯に比べて週に142分ほど運動量が多く、肥満の防止に役立っているというデータがある。2017年のドイツの研究では、犬が介在した場合、子どもの読書能力が向上したとの結果もある。ペットの飼育者は、「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが増加し、「ストレスホルモン」が有意に低下するといったデータもある。思春期を迎える子どもたちの心の安定にも繋がるかもしれない。

まとめ

子どもの絵本に、動物が出てこないものを探す方が難しい。動物園は、いつだって休日に家族でお出かけする黄金ルートだ。私たち人間は、本能的に動物との関わりを求めているのかもしれないとすれば、子どもたちの「ペットを飼いたい」という懇願も頷ける。

一方、「ロマンと算盤」という言葉の通り、大人には大人の事情がある。家計、暮らし、教育、さまざまな観点から、ペットを飼う選択肢について、再考してはいかがだろうか。

ライター紹介

小川 篤志(獣医師)
日本獣医生命科学大学を卒業後、2007年に獣医師国家資格を取得。専攻は、動物比較発達心理学で、動物のストレス軽減や、人や子どもへの心理的影響について研究。臨床医となってからは、救急医療を中心にキャリアを積み、宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター 副院長を歴任。その後、アニコム ホールディングス株式会社に経営企画部長として勤務。アニコム キャピタル株式会社 代表取締役、香港アニコム有限公司 董事長を務め、EPARKペットライフ取締役、東京都公益社団法人 獣医師会 広報委員や、アジア獣医師会学会の日本支部である一般社団法人FASAVA-TOKYO2019の理事も務める。企業や学会でのセミナーや、ビジネスカンファレンス等での講演、取材、記事等多数。

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