執筆者:株式会社ZUU
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ポン・ジュノ監督作品
(画像=Featureflash Photo Agency/Shutterstock.com)

カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、その勢いのままアカデミー賞で作品賞を含む4冠に輝いた『パラサイト 半地下の家族』。嬉しそうにオスカー像を握りしめたポン・ジュノ監督のスピーチも記憶に新しいところです。そんなポン・ジュノですが、もちろん同映画で突然スターダムに駆け上がったわけではなく、2000年代前半から上質な作品を世に送り出し続けてきました。今回は、映画作家として、彼の評価を確立した初期の長編3作を通じて、その特異な才能を検証してみたいと思います。

『ほえる犬は噛まない』(2000年)

ポン・ジュノ監督作品
(画像=UpU編集部)

2000年に公開された『ほえる犬は噛まない』は、ポン・ジュノの長編映画デビュー作として知られています。主役に抜擢されたのは、その後、韓国を代表する国際派女優として名を成すペ・ドゥナ。彼女が演じるヒョンナムは、商業高校を卒業して団地の管理事務所に勤める、ちょっぴり夢想家で純粋な女の子です。

もうひとりの主役は、同団地で妊娠中の妻と暮らす青年・ユンジュ(イ・ソンジェ)。大学のポストを目指すもなかなか結果が出ずノイローゼ気味の彼は、団地内で起きた「連続小犬失踪事件」をめぐって、ヒョンナムや他の住人たちとユーモラスなドラマを展開していくことになります。

この映画の見どころは、なんといっても若きペ・ドゥナのみずみずしい存在感でしょう。おせっかいで天然なヒョンナムがトレードマークの黄色いパーカーのフードをかぶった姿は、『ほえる犬は噛まない』のオフビートな魅力を端的に表しているといえます。

またこの映画のコミカルなエッセンスが、『パラサイト』をはじめポン・ジュノのさまざまな作品の底流にあることも見逃せません。

『殺人の追憶』(2003年)

ポン・ジュノ監督作品
(画像=UpU編集部)

コメディタッチのヒューマンドラマ『ほえる犬は噛まない』から打って変わって、1986年から1990年代にかけて実際に発生した「華城連続殺人事件」を題材にメガホンをとった作品が、ポン・ジュノの代表作のひとつ『殺人の追憶』です。

韓国国内はもちろん海外でも高い評価を集め、映画監督クエンティン・タランティーノも「傑作」と手放しで絶賛しています。

緻密な脚本と緊張感あふれる演出は、長編映画2作目にしてすでに巨匠としての貫禄が感じられるほど。また『パラサイト』でもおなじみのソン・ガンホが演じるパク刑事の拷問のような取り調べをはじめ、同映画では警察の暴力性や、捜査のずさんさがしきりに強調されます。

観客の黒い笑いを誘うほどの過剰な描写は、当時軍事政権下にあった韓国の権力の腐敗を表したものでもあるのでしょう。

立場の違いから反目し合いながらも、有力な容疑者へとたどり着くパク刑事とソ刑事(キム・サンギョン)。しかし焦燥感がつのるあまり、捜査は思いもよらない方向に転がっていきます。なんとも形容しがたい茫漠とした不安をもたらすラストシーンは、ぜひその目で確かめてみてください。

『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)

ポン・ジュノ監督作品
(画像=UpU編集部)

『ほえる犬は噛まない』のペ・ドゥナ、『殺人の追憶』のソン・ガンホと、1作目、2作目で活躍したキャストを再びメインに迎えた長編第3作『グエムル-漢江の怪物-』は、グエムル(怪物)というタイトルの通り、“怪獣映画”の伝統に連なる作品です。

しかしその内容は単なるパニックムービーではなく、政府や軍隊へのポン・ジュノの不信感が織り込まれたものになっています。

ソウルの中心を流れる漢江(ハンガン)に突如出現した正体不明の怪物。ポン・ジュノは、在韓米軍によって下水口から漢江にホルムアルデヒド(化学物質)を流出させた「龍山基地油流出事件(2000年)」から、『グエムル』の着想を得たことを明かしています。

『ゴジラ』に代表されるように、怪獣映画には往々にして社会批判的なメッセージ性が織り込まれているものですが、同作はそこに家族愛という縦軸を加えて一線級のエンターテイメントに仕上げてみせました。

娘のヒョンソ(コ・アソン)を怪物にさらわれた“ダメ親父”のカンドゥ(ソン・ガンホ)は、妹のナムジュ(ペ・ドゥナ)らと一家総出で救出に向かいます。

息もつかせぬスリリングな展開は評判に評判を呼び、韓国では1,300万人を超える驚異的な観客動員を記録。ポン・ジュノはヒットメーカーとしての地位を確立し、さらに国際的な評価を高めていくことになるのです。

ユーモアを武器に権力と対峙する映画作家

子を想う母の恐ろしいほどの情念をダークなテイストで描いた『母なる証明』(2009年)、氷河期に突入した地球上を疾走する列車を舞台にしたSF大作『スノーピアサー』(2013年)、Netflix資本による異色のアドベンチャー『オクジャ/okja』(2017年)を経て、ポン・ジュノは2019年に傑作『パラサイト』を生み出します。同映画の世界的な大ヒットは、あらためて強調するまでもないでしょう。

ジャンルこそバラバラですが、ポン・ジュノの監督作品には体制に対する疑念やヒューマニズム、そしてブラックなユーモアが必ずといっていいほど織り込まれていることがよくわかります。

彼の左派的な気質と作風は、2008年から2017年にかけての韓国の保守政権にとっては不都合なものと見なされ、文化芸術界のブラックリストに入れられていたことも明らかになりました。

さまざまな圧力に晒されながらも、信念をもった映画作りを貫き、ついにパルムドールやアカデミー作品賞までたどり着いたポン・ジュノ。

なによりもまず娯楽として、あるいは社会問題を考えるきっかけとして、そして“近くて遠い”隣国を理解するための手がかりとして、ぜひその豊穣な作品世界に身を委ねてみてはいかがでしょうか。(提供:20代、最高の自己投資メディア UpU

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