新しく投資を始める時、どのような情報を基に自分の投資のベースを決めたのでしょうか。

また、それはいつ頃から始めたのでしょうか。

インターネットやSNS、ブログの普及により、近年は比較的「目立つ情報」を手に入れやすくなりました。

そして「わかりやすい投資法」により、投資を始めるハードルも大分下がってきたのではないかと思います。

しかし、そんな「わかりやすい投資法」を盲目的に信じている方の多さには危機感を覚えます。

今回は私が危機感を抱く理由と、これから投資を始める方に是非とも「自分の頭で」考えていただきたいことを取り上げていきます。

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(画像=Getty Images)

わかりやすい投資法とは?

私の中で代表的なのは「インデックス投資」「高配当投資」「連続増配投資」などでしょうか。

これらの投資手法は極端に表現すると、「とある指数に連動した投信やETFを買うだけ」「高配当の銘柄を買うだけ」「連続増配銘柄を買うだけ」で良い、と言わんばかりです。

ベテランの方は「バックテストのためのカテゴライズ」程度にしか思っていないかもしれませんが、投資手法の名前だけ見ると投資初心者の方が「〇〇するだけで儲かるのか…」と勘違いするに十分なレッテルだと思います。

そして、実際にこれらはそれぞれのキーワードで検索すれば「これを買え」と言わんばかりの記事やコメント、銘柄紹介が次々と出てきます。

まだ投資や経済、企業のビジネス、財務などを知らない初心者にとっては、細かい「本質」を学ぶより、「とりあえずどうしたら良いか」を教えてくれる情報は最高に助かるものです。

実際に私も米国株投資を始めたばかりの頃は、声高に「最高だ」などと叫ばれる「インデックス投資」から始めてみたり、配当金として手元にお金が入ってくる実感を得られる「高配当投資」に憧れたり、色々な投資手法を試してきました。

その頃の私はまだまだ不勉強でしたから、とにかくわかりやすいもの、有名な方が勧めているもの買うことで自分も儲かれる、と勘違いしていたわけです。

しかし、それらの情報は「わかりやすく」「目立っていた」だけであり、正しかったとは限らないのです。

「そんなの当たり前だろ」と鼻で笑った方、これ以降の記事は退屈かもしれませんが、どうぞ最後までお付き合いください。

「えっ?なぜ?」と思った方は、一度頭を空っぽにしてから読み進めてください。

何故目立つのか?

まず何故目立つのか?と言うことです。理由の根本は簡単です。「わかりやすいから」です。

ではなぜ、わかりやすいと目立つのか?ザックリ3つに分けて考えてみましょう。

人気が出やすい

これは証券会社や検索エンジンにとっては非常に好都合な理由です。

一流のプロはいちいち検索して出てきたブログを読んで情報収集なんてしません。

つまり、検索でヒットするのはこれから投資を始めようとしている人や始めたばかりの初心者、一般レベルの投資家です。

つまり「わかりやすい情報の方を求めている」層が多いわけです。

証券会社も口座開設数や利用者を増やしたいですから、どんどん初心者を取り込もうと考えます。

上級者はほっといても自分で調べて取引ができるので、ファネルを拡大する必要があるのです。

証券会社のアイデアが先か、世間の話題が先か…と言うのはありそうですが、わかりやすい「○○投資」に乗っかった情報や商品を展開したほうが、客付きが良いですからね。

また、検索エンジンも人気の無いコンテンツを検索上位においても意味がありません。

人気のあるコンテンツを目立つところに配置するでしょう。

人気があればGoogle砲と呼ばれる「あなたにオススメ」記事にも出てきやすくなり、さらに目立ちます。

また、人気があり目立った記事を模倣すれば自分も人気を稼げるので、そういった「わかりやすい」コンテンツが増え、「人気がでて」、「目立つ」ようになるのです。

伝播しやすい

次に、わかりやすい情報とは伝播しやすいのです。

同じような情報がどんどん伝播していけば、目立つようになります。

これは上記の「模倣すれば…」とほぼ同義ですが、これは非常に大きい理由だと思っています。

例えば私は数学が苦手なのですが、難しい数学の定理をどんどん人に広めてくれ、と言われても残念ながら不可能です。

私の意味不明な説明を聞いた人が、さらに誰かに広めようとしても結局意味不明で、伝言ゲームは途絶えてしまうでしょう。

しかし、「○○投資」と言うわかりやすい情報は、わかりやすいが故に初心者にとっても容易に理解でき(それが本質的な理解かどうかはさておいて)、表面的な情報を他の、あるいは次の世代の初心者に伝えやすくなります。

それを繰り返すことにより、わかりやすい情報はファネルが広く、浅い層にもどんどん伝播していくわけです。

また、これは2020年初めまで続いた上昇相場により、「わかりやすく」「身近な説得力のある」情報として伝播されています。

インデックス投資は比較的わかりやすく、他のよりリターンが優位な特定銘柄との比較はさておき「確実に儲かることが出来ていた」と言う成功体験と共に伝播されます。

高配当投資はインデックスと比べ奮わないケースも多くあったと思いますが、「これだけの配当が定期的に入ってくる」と言う、初心者からすれば憧れの的になりうる成功体験と共に伝播されます。

これにより、投資をこれから始めたい人にとっても自分に近しい「初心者」も、自分より経験豊富な「先輩」も、多くの人が語り、さらに目立つようになっていきます。

理解できない情報からは目を逸らす

これは人によるかもしれませんが、確実に存在する理由です。

目立つ情報とは、本当にその情報「だけ」が本当に目立っているとは限らず、自分にとって理解できないもの、見ても意味がないと感じるもの、見たくないものも同じくらい目立つところにあっても、なかったことにしてしまいます。

例えば特定のワードで検索し、自分が読めない言語の記事が1個目、2個目に出てきたとしましょう。

3個目から日本語で読みやすい記事だったとします。

1個目、2個目から熱心に読みますか?開いたとしても「ん、わからなそうだ」と閉じてしまいませんか?これはブログ、SNSなどでも同様です。

意図してわからないことを熱心に学ぼうとしなければ、都合の悪い情報は退けてしまいがちです。

これから投資を始めたい人や始めたばかりの初心者の方が、「簡単でわかりやすい情報」と「複雑でわかりにくい情報」が並んでいた時に、後者を優先して選ぶでしょうか。

これら3つの理由により、「わかりやすい投資手法」は「目立つ投資手法」となり、どんどんファン、あるいは信者を増やしていきます。

危機感を感じる理由

わかりやすくて人気な投資手法が目立って行き、さらに広まっていく、一見すると素晴らしいことです。しかし、ちょっと待ってください。

証券会社や検索エンジン、ブロガーはそれで良いかもしれません。

人気が出て、目立って、さらに人気が出て、目立って…ポジティブなループです。

しかし「投資」は人気商売ではありません。

市場は投資家の人気だけで成り立っているわけではありません。

株価は短期的には人気(需給)で成り立っている部分もあるかもしれませんが、長期的には「銘柄としての人気」だけで企業が一生稼いで行けるわけではありません。

2019年秋~年末にかけてインデックス投資でエントリーした人は、コロナショックにより大きく下げた株価で突然どん底に突き落とされていたかもしれません。

既に退場している人もいれば、目を逸らして塩漬けしている方もいるでしょう。

高配当投資に関しても、エネルギー株を有していた人は原油安により大きな痛手を負ったのではないでしょうか。

しかし、どちらも高値掴みをしていれば…と言う話であり、長期的に投資をしていた方はインデックス投資だとしても、高配当投資だとしても、それほどのダメージは負っていなかったと思います。

結局投資を「金儲け」としてだけ見るのであれば、「資金力とタイミングありき」と言えてしまいます。

「それでは投機では?」と言う方もいるかもしれませんが、極端な話、どれだけ長期で特定の国や企業を信じ投資をしていても、国家がどん底に陥る、企業が倒産してしまっては意味がありません。

「受取配当が元手を上回っていれば倒産しても問題ない」と考える方もいるでしょうが、私が見る限り「配当金は再投資」が正解、と見ている方が非常に多いため、再投資した配当ごと消えてしまいそうです。(ならば他の銘柄に配当を…と言う議論も生じそうですが、それはまた別の機会にお話ししましょう)

話を戻しますが、コロナショックの下げ相場で退場した人は、インデックス投資家であろうと高配当投資家であろうと(あるいはもっと別のオリジナリティある投資手法であると)、何も言わなくなります。

退場者は自分の発言に説得力を失ってしまうので、何も言えなくなりますし、「わかりやすい投資手法」と「失敗体験」の組み合わせではあまり伝播せず、目立たなくなります。

反面、それほどダメージを負っていなかった古参勢は「わかりやすい投資手法」と共に「上昇相場で稼げた成功体験」と「下落相場で耐えぬいた成功体験」をセットにして、さらに魅力的な提案をすることでしょう。

一言で言ってしまえば生存バイアスが働いていくわけです。

前述の通りわかりやすい→人気→目立つ→さらに人気、の流れ絶対数が多ければ「生存バイアス」で目につく「生き残り」も多くなり、尚更目立って行くことでしょう。

さて、投資を始めたいと感じていながらも、2019年末までの株価を割高に感じ、様子見をしていた方々は大丈夫でしょうか。

最近の下げで「徐々に買い始めるかな…」と考えている方は、どのような事を勉強していて、どのような投資手法を選択していくのでしょうか。

ハードルを下げるのは入口だけで良い

流れ的に「わかりやすい投資手法」の代表格である「インデックス投資」「高配当投資」に否定的に思われるかもしれませんが、私はこれらのわかりやすい投資方法を全面的に否定するつもりはありません。

投資自体はより多くの人が取り組むべきと考えています。

そして投資について知識が乏しかったころの私も、「わかりやすさ」のおかげで入口のハードルが下がり、無事(?)投資の世界にデビューすることができました。

これは幸いな事であり、デビューを支えてくれた「わかりやすい投資手法」にはとても感謝しています。

デビュー後もインデックス投資をしていた頃は上昇相場で儲かりましたし、高配当投資をしていた頃も儲かりましたし、高収益銘柄に乗り換えた今も(コロナショックにより一時マイ転したものの)多少は儲かっています。

高収益銘柄の選定はやや雑なので別として、「インデックス投資」も「高配当投資」もそれぞれわかりやすく、あまり知識がなくともそれなりのリターンを得られますし、異なる優位性を持った投資手法です。タイミング良ければ尚更ですね。

私がこれから投資を始めようとしている知人に投資を勧める時も、「これが全てではないし投資は学ぶことが多いけど」と前置きをし、さらに「必ず儲かるとも限らないからお金の使い道や損できる程度(つまりリスク許容度)を考えた上で」と保険を掛けた、「インデックス投資は手軽だし、わかりやすいし最初はオススメだよ」と伝えています。

インデックス投資は実際にオススメしやすく、何も知らない初心者が何もわからず適当な株を買うより遥かに優れています。

わかりやすさもあり、投資にチャレンジするためのハードルが低いのです。

しかし、ハードルを下げるのは入口だけで良いのです。

私が非常に良くないと感じるのは、これらの「わかりやすい投資手法」を伝える際に、「これこそがゴールである」とゴールのハードルまでも下げようとしていることです。

世界は刻一刻と変化しており、それに合わせて経済も、ビジネスも変化しています。

そうやってマーケットが変化していく以上、投資に「真のゴール」など存在しないと思っています。

過去に学び、現在を知り、時に未来を予想しつつ、基本的には追いかけ続ける事が投資家の本質だと思っています。

もしこの記事をお読みのあなたに子供がいるならば…あるいは、何かの学問を身に着けたことや、研究をしたことがある方も同様に考えてみてください。

小学校に入学する子どもたちに対し、小学校の先生が「1年生から勉強が好きになれるように、勉強のハードルを下げてあげよう」と工夫してくれたとしましょう。これは素晴らしいことです。「先生、ありがとう!」となります。

しかし、その先生が「高校は行っても無駄、世の中で稼いでいくには中学校までの知識で十分。別にバイトでも稼いではいける。」「大学とかはもっと意味がない。何の役に立つの?大金払ったからって給料が増えるとも限らないんだし」と言い始めては「いやいや、何を勝手な事を…」となるのではないでしょうか。

言っていることは一理あります。しかし万人に対しても適切かと言えば、そうではありません。

実際に中学校までの知識で十分と感じる人(勉強よりもやりたいことがある)もいれば、知識を探求し、自らの知恵で新しいものを発見したいと感じる人もいるでしょう。

また、より良い学歴のもとでより良いキャリアを目指したい方もいると思います。そう言った人たちのゴールを、他人が勝手に決めつけて良いものではないのです。

金融教育を志している方、子供が生まれたら金融教育をしたいと考えている方の中にもこう言った「自分がブログやSNSで聞きかじった、わかりやすく目立つ情報だけ」を伝えようとしているように見える方をチラホラ見かけます。

入口としては十分に下がったハードルが用意されていることは、次世代の子どもたちにとっては幸せなことです。

しかし、それをゴールと決めつけられてしまっては、応用力も、知識を探求する事すら叶わなくなってしまうかもしれません。

投資と向き合うためには、投資や経済の歴史、現在の経済状況やビジネスの視点、時代の変化をどう捉えるかなど、多角的視点で物事を考える力も養うべきでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「投資は自己責任」とよく言われますが、これは自分の費やしたお金に対する損失部分のみならず、自分が売買した銘柄の選択、そもそも選択した情報、情報源、それを基に考えた内容も含め全て自己責任です。

極端に言ってしまえば、発信する側は発言内容に対して責任がなく、あえて悪い言い例をあげれば「虚偽の情報を流し、騙されたとしても」騙された側の自己責任と言えるのかもしれません。

しかし、投資を行っていながら投資の情報をブログやSNSで発信している人の中には、「もっと投資を広めたい」「多くの方に投資と言う素晴らしいものを知ってもらいたい」と考えている方もいるのではないかと思います(もちろん、商材販売や広告収入、アフィリエイト収入などのマネタイズを目的に、読者に与える影響などどうでもよく「人気が出て稼げればなんでもいい」と考えている層もいるかもしれませんが)。

純粋な志を持って投資を伝えたいと考えている方こそ、「わかりやすい」「目立つ」情報は表面的な部分だけ伝播されやすく、初心者にフィルタをかけてしまうことを自覚すべきだと思います。

発信者も本質的な部分まで学び理解した上で…もっとも、投資にゴールがないことを考えると、その「学び理解する」ことも終わりがないことかもしれませんが、多角的な視点を持ち、より多くの可能性を考慮した上で発信ができると良いでしょう。

そして、これから投資を始める人、すでに投資を始めている人も、これから得る情報、過去に得て来た情報を整理し、自らの頭で考え、その人にとって本当に最適な答えを見つけられると良いですね。

投資の世界において、多くの方が正解と言うことが正解とは限りませんし、声が大きい方が正解と言うことが正解とは限りません。

真の正解は未来に立ち、過去を振り返った時にしかわからないものなのですから。(提供: The Motley Fool Japan


免責事項と開示事項 記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。