『不動産は、一にも二にも立地』。

これは、不動産投資で安定収入を得るための鉄則です。立地が重要ということは、つまり賃貸需要があるかどうかということです。

では日本で一番需要が見込める地域はどこか、というと、やはり東京都の都心部が有力でしょう。しかし、同じ都心の物件であっても、用途によっては収益の安定性も異なります。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、飲食店などを中心に、家賃の減額・猶予といった話を目にするようになりました。居住用不動産に比べて、事業用不動産のほうが、経済環境の変化に対して、より大きな影響を受けやすいのです。

これは過去に発生したリーマンショックによる賃料や入居率の推移をみても明らかです。

この記事では、リーマンショックの事業用と住居用、それぞれの賃貸市場に与えた影響を振り返りながら、激変する経済環境のなかでも、資産を堅実に築くためのポイントをお伝えします。

事業用不動産の賃料は25%ダウン 住居用は微減にとどまる

不動産投資,東京,マーケット
(写真=PIXTA)

2008年9月に発生したリーマンショック。日本の不動産マーケットに影響が出てきたのは、2009年に入ってからでした。

まず賃料の推移はどうだったのでしょうか。今回は、三鬼商事が公表しているオフィスデータを手掛かりに、事業用不動産のトレンドを読み取ります。

東京ビジネス地区と定義される都心5区のオフィス平均坪賃料はリーマンショック以降、下落トレンドに入り、2010年までの1年だけで相場は2割近く低下しました。底を付けたのは、2013年の終わり頃です。2009年の水準から比較すると25%ものダウンです。

事業用不動産の平均賃料が2009年の水準に回復できたのは、なんと昨年になってからでした。

今度は、その間の居住用不動産の賃料推移を確認してみます。

住居用不動産については、アットホーム社のマンション賃料インデックスを用います。調査対象は、30平米未満のマンション賃料でエリアは23区全域です。

リーマンショックによって相場家賃は下がりましたが、下げ幅は5%程度。さらに、元の賃料水準には事業用不動産に比べて、5年も早く戻すことができました。

居住用不動産の家賃は事業用よりもはるかに下がりづらいことがわかります。

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(居住用不動産の家賃は事業用よりもはるかに下がりづらい)

入居率でも住居用不動産は安定

では入居率はどうでしょうか。

三鬼商事のデータで、東京ビジネス地区の2009年1月時点の入居率は95.07%。2012年夏には90.57%で底打ちし、2015年には2009年と同水準まで戻しました。

賃料の底よりも入居率の底のほうが早いことから、家賃を値下げしてでも、フロアを埋めざるを得なかった苦境がうかがえます。

住居用物件の入居率は、23区を中心に22,000戸以上を管理する当社・日本財託の管理物件で月次データを取っています。

リーマンショック後も入居率98%以上を保っていましたが、2009年10月末に一度だけ、97.31%という数値を記録しています。ただ、その翌月には98%台を回復、以降は年間平均98%以上の入居率を維持し続けています。

入居率が5%も変動した事業用不動産に比べて、都心のワンルームの入居率は安定していました。

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(都心のワンルームの入居率は安定している)

物件の種類も見極め投資を!

このように同じ都心の不動産であっても、経済環境の変化による影響は大きく異なります。

事業用不動産は都心立地であっても、利回りが高いものもあり、小ぶりなビルなら個人投資家でも手が出せる価格の物件もあります。

しかし、高い利回りは高いリスクも抱えています。賃料や入居率の変動幅が大きいので、安定した運用を目指すならば注意が必要です。

不動産投資は長期の投資です。投資期間中には、今回のような大きな経済環境の変化も起こります。

賃貸需要の安定した立地を選び、そのうえでより安定性の高い居住用の不動産に投資することで影響も最小限に抑えることが可能です。

不動産に投資をする際には、立地に加えて、物件の種類もしっかりと見極めて検討することをお勧めします。