今回は、民事訴訟の意味や種類、流れについてわかりやすく解説する。刑事事件との違いや、民事訴訟にかかる費用についても解説するので、民事訴訟について知りたい人はぜひ参考にしてほしい。この記事を読み終わる頃には、民事訴訟について一定の知識が身につくだろう。

民事訴訟とは?

民事訴訟
(画像=PIXTA)

民事訴訟とは、個人の間の法的な紛争が生じた時、裁判官が当事者双方の言い分を聞いたり、証拠を調べるなどして、判決を下すことで解決する手続きのことだ。貸金の返還、不動産の明け渡し、交通事故などに基づく損害賠償、土地の所有者など、主に財産権に関する紛争であることが多い。

請求金額が140万円までなら簡易裁判所で、140万円を超える場合は地方裁判所で訴える必要がある。

訴えた側を原告といい、訴えられた側を被告という。民事訴訟は、訴える相手である被告の住所を管轄する裁判所で起こすことになる。

また、訴訟の途中で、判決が下される前に、話し合いによって解決するケースもある。これを「和解」という。

民事訴訟の種類を解説

続いて、民事訴訟の種類について解説する。民事訴訟には、主に通常訴訟・手形小切手訴訟・ 少額訴訟の3つがある。また、これに含まれない民事訴訟も存在する。

民事訴訟の種類1.通常訴訟

「通常訴訟」とは、個人の法的な紛争、主に財産権に関して解決を求める個人同士の訴訟のことだ。不動産の明け渡し、損害賠償などがあり、民事訴訟法に従って審理が行われる。

民事訴訟の種類2.手形小切手訴訟

通常訴訟よりも簡易的に、迅速に解決したい場合に選択できるのが、「手形小切手訴訟」だ。手形小切手訴訟は民事訴訟法で規定されている。手形小切手訴訟を起こせるのは、手形・小切手による金銭の支払い請求と、それにともなう損害賠償請求を行う場合だ。

なお、訴える側は、通常訴訟を選択することもできる。また、手形小切手訴訟を起こしたあと、通常訴訟に移行したいと申し立てれば、訴えられた側の同意がなくても、通常訴訟へと移行できる。

手形小切手訴訟を選択すると、相手に手形・小切手の支払を求めることになる。

手形小切手訴訟では、判決を早期に言い渡せるよう、証拠は書証と当事者尋問に限定される。書証とは、文書に書かれた内容を裁判官が閲覧し、証拠とすることだ。また、最初の口頭弁論期日で審理を完了するという「一期日審理の原則」が適用される。

民事訴訟の種類3.少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める場合で、簡易的に迅速に解決したい場合、「少額訴訟」を選択することもできる。少額訴訟では、裁判官と関係者がラウンドテーブルに着席する形式で審理が進められる。

少額訴訟は、原則1回の審理で完了する。即時解決を目指すためにも、証拠書類や証人は、審理の日にその場ですぐ調べられるものに限られる。なお、紛争の内容が複雑な場合は、少額訴訟を利用できないケースもある。

民事訴訟の種類4.その他の訴訟

通常訴訟、手形小切手訴訟、少額訴訟の他にも、離婚や認知の訴えなど家族関係に関する「人事訴訟」や、公権力の行使について取り消しを求める「行政訴訟」などがある。

人事訴訟の代表的なものは、離婚に関する訴訟で、子どもの親権者の確定、財産分与、養育費の算定、離婚にともなう慰謝料の請求などを行うことができる。人事訴訟では、家族関係の紛争は基本的には話し合いで解決すべきという判断のもと、まずは家事調停が行われる。

人事訴訟は、通常の民事訴訟の審理と同じ手続きで行われるが、必要に応じて子どもに面接して調査するなど、臨機応変な対応がなされることもある。

行政訴訟では、国や公共団体など、行政庁を相手どって訴訟を起こすことになる。適用されるのは、行政事件訴訟法だ。具体的には、「営業停止処分の取り消しを求める」場合や、「原発設置許可の取り消しを求める」場合などがある。

民事訴訟の流れを知ろう

続いて、民事訴訟の流れを解説する。民事訴訟が始まるまでの流れは、次のとおりだ。

1.紛争の発生、原告が訴状を裁判所に提出

訴える側である原告が、訴状を裁判所に提出することで、民事訴訟が始まる。

2.裁判所の訴状受付、被告への訴状の送付

裁判所は、原告から提出された訴状を受け付け、審理を行う。その後、被告に訴状を送付する。

3.訴状の受領

訴えられた側である被告が、訴状を受け取る。

4.口頭弁論期日の指定・呼び出し

裁判所が口頭弁論の日を決定し、原告・被告に通知する。

5.答弁書の提出・送付・受領

被告が答弁書を裁判所に提出し、裁判所は答弁書を原告へと送付する。原告は答弁書を受け取る。その後、原告・被告ともに、証拠や証人を準備する。

6.審理

審理では、口頭弁論が行われる。口頭弁論では、まず、訴状の内容に間違いがないかを、裁判所が原告に対して確認する。その後、答弁書をもとに被告の主張を聞き、証拠と照らし合わせたり、証人尋問を行ったりする。口頭弁論は、必要があれば何回でも行われる。

判決を確定するのに十分な証拠がそろったと裁判所が判断すれば、口頭弁論は終結し、判決が下される。また、話し合いによって解決できた場合は、和解となる。

判決が下されたものの、判決内容に納得がいかない場合は、原告・被告のどちら側からでも、裁判の取り消し・変更を求める「上訴」を行うことが認められている。

民事訴訟と刑事訴訟の違い とは?

続いて、民事訴訟と刑事訴訟の違いについて解説する。

民事訴訟とは、個人と個人、会社と個人など、私的な紛争を解決するための手続きだ。国や地方公共団体と個人が争うケースもある。

民事訴訟では、まずは裁判所がお互いの主張の内容を聞き、証拠の確認や証人尋問によって、主張に間違いがないかを確認する。その後、事実に基づいて、当事者間の権利関係などをもとに判決を下すことになる。

民事訴訟で適用される法律は、民法や商法などで、手続きについては、民事訴訟法に規定されている。

一方刑事訴訟とは、被告人が犯罪行為を行ったかどうか、行っている場合はどの程度の刑罰を科すべきかを裁判所が決める手続きだ。たとえば、殺人や窃盗、薬物の使用、脱税などがある。刑事訴訟は、検察官のみが起訴することができる。

刑事訴訟で適用される法律は、刑法、大麻取締法、銃刀法などだ。また、金融商品取引法などの罰則規定が適用されることもある。手続きについては、刑事訴訟法に規定されている。

民事訴訟にかかる費用 は?内容別に具体例を3つ紹介

続いて、民事訴訟にかかる費用の具体例を紹介する。民事訴訟を起こす場合にかかるのは、訴訟費用と弁護士費用だ。

訴訟費用には、裁判所手数料や訴状を郵送するための郵便切手代などがある。裁判所手数料は、裁判所のホームページで公開されている。

弁護士費用は、依頼する弁護士事務所によって異なる。今回は、日本弁護士連合会が公表する「市民のための弁護士報酬ガイド」の最も多かった回答をもとに、具体例を紹介する。

離婚訴訟

裁判所手数料……1万5,000円
郵便切手代……6,000円
弁護士への法律相談料……1万円
弁護士への着手金……30万円
弁護士への報酬金……30万円
その他、交通費やコピー代等……1万円

総額64万1,000円

建物の明け渡し

裁判所手数料……8,000円
郵便切手代……6,000円
弁護士への法律相談料……5,000円
弁護士への着手金……30万円
弁護士への報酬金……60万円
その他、交通費やコピー代等……2万円

総額93万9,000円

欠陥住宅

裁判所手数料……4万6,000円
郵便切手代……6,000円
弁護士への法律相談料……1万5,000円
弁護士への着手金……50万円
弁護士への報酬金……90万円
その他、交通費やコピー代等……1万5,000円

総額148万2,000円

民事訴訟ではなく民事調停にするという選択肢も

トラブルが起きた時、いきなり相手を訴えて民事訴訟を起こすのではなく、まずは「民事調停」を選択することもできる。民事調停とは、非公開の話し合いで解決を図る手続きだ。

民事訴訟では、法廷で原告・被告が争い、裁判官が判決を下すことになる。一方民事調停では、調停委員会が双方の言い分を聞いて、お互いの歩み寄りを促し、話し合いによってトラブルを解決することを目指す。

民事調停では、民事訴訟のように裁判官が判決を下すわけではない。調停委員会に判決を下す権限はなく、あくまで双方の合意が得られた場合に、問題解決となる。

民事調停は、民事訴訟より手続きが簡易で、早期解決を図れるというメリットがある。また、民事訴訟は公開で行われるが、民事調停は非公開なので、プライバシーが守られることになる。

一方で、民事調停を選択したものの結局お互いの合意が得られなければ、その後民事訴訟へと移行しなければならない。

民事調停で取り扱われるトラブルには、主に次のようなものがある。

・貸したお金が返ってこない
・家賃の不払いが続いている
・家賃の改定に納得がいかない
・敷金、保証金の返還を求めたい
・建物を明け渡してほしい
・損害賠償や慰謝料を請求したい

民事調停でお互いに合意した内容は、民事訴訟の判決と同じ効力を持つ。そのため、もし相手が合意した内容に背く行為を行った場合、財産の差し押さえなどの強制執行を行うこともできる。

民事調停は、訴えたい相手の住所地の簡易裁判所で申し立てる必要がある。申立書を提出した後、調停委員が構成され、調停期日が決まる。調停期日が決まったら、話し合いによって解決を図っていくことになる。

法務リスクに備えるための弁護士保険

トラブルに巻き込まれ、民事訴訟を起こしたいと思っても、訴訟費用の関係で及び腰になってしまう人は多い。最悪の場合、泣き寝入りを余儀なくされることもある。そうなれば、自分や家族が不利益をこうむってしまう。

最近では、法務リスクに備える方法として、弁護士保険に注目が集まっている。弁護士保険に加入しておけば、法務トラブルが起きて弁護士費用を支払った場合、保険金を受け取ることができる。

受け取れる保険金の限度額や、報酬に対する割合は、プランによって異なる。月々数千円の保険料設定となっていることが一般的だ。

病気やケガに保険で備えるのと同様、法務リスクに対しても、日頃から備えをしておくことが大切だろう。