スワップやオプションなどのデリバティブ取引が組み込まれた債券を「仕組債」という。

今回は仕組債の特徴や種類、魅力に加えて、その裏にあるリスクを解説する。さらに、時として仕組債が「初心者にはハイリスク」といわれる理由や、どのような人が仕組債の取引に向いているかなども紹介するので、資産運用のひとつの選択肢として参考にしてほしい。

菅野陽平
監修者・菅野陽平
日本最大級の金融webメディア「ZUU online」編集長。株式会社ZUUM-A取締役。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)

目次

  1. 仕組債とは?
  2. 代表的な仕組債「リンク債」の特徴を解説
  3. 仕組債の「ノックイン事由」とは?
  4. 仕組債の「早期償還判定」とは?
  5. 早期償還した場合、その資金で仕組債を再購入する際に気をつけたいこと
  6. 仕組債のメリット
  7. 仕組債の主なリスク
    1. 1.ノックイン事由発生による元本割れのリスク
    2. 2.カウンターパーティーリスク
    3. 3.利率変動リスク
    4. 4.流動性リスクおよび価格変動リスク
    5. 5.早期償還によるリスク
    6. 6.仕組債はハイリスク?
    7. 7.仕組債の取引に向いている人は?
  8. 余裕資金の投資先として仕組債も選択肢へ!

仕組債とは?

債券
(画像=PIXTA)

仕組債は債券の一種だが、通常の債券と違い、「デリバティブ取引」という複雑な取引を組み込んだ債券だ。大まかな違いは以下の通り。

通常の債券

・償還 *時点の受取額や利率があらかじめ決まっている

・利息や元本は、発行者から支払われる

・発行者が破綻等しない限り、償還時点の元本は保証される

・「償還」:元本を返すこと。「償還日」は、債券における「満期日」にあたる。


仕組債

・株価、金利、為替などの参照指数に連動する「仕組み」により、償還日や利率、償還額などが変動する

・そのような「仕組み」により、同じような信用力(格付)、同じような期間の「通常の債券」と比較して、利率を高く設定できる

・一方でその「仕組み」により、「通常の債券」にはないリスクが発生し、投資家が受け取る償還金に差損が生じ、元本割れになる可能性がある

債券は、国・企業などが一般の投資家からお金を借りるために発行する有価証券のことだ。「通常の債券」は、発行者が破綻等しない限り元本は保証される。発行者の財務状況が、安全性を見極める際のポイントになるだろう。加えて、格付、利率、最低購入金額、利払日、償還日、通貨などを確認のうえ購入したい。

仕組債は、「通常の債券」のように発行者の財務状況も安全性を見極める際のポイントだが、それに加えて、デリバティブ取引を組み込んで設定された条件をよく理解することが重要だ。比較的高い利率は投資家にとってありがたい話だが、その「条件」をよく理解しないと、思わぬ損失を被る可能性がある。

代表的な仕組債「リンク債」の特徴を解説

仕組債にはいくつか種類があるが、今回は代表的な「リンク債」について説明する。リンク債は、参照指数の変動率等によって、償還額や利率が変動するという性質を持った債券だ。

リンク債の代表的なものに、「日経平均株価」を参照指数とする「日経平均リンク債」がある。

日経平均リンク債の他、外国為替レートを参照する「為替リンク債」や、日経平均とS&P500といった複数の指数を参照するものもある。

仕組債の「ノックイン事由」とは?

日経平均リンク債においては、観測期間中に日経平均株価が一度でも一定水準以下になった場合に、元本割れの可能性が生じる。この一定水準を「ノックイン判定水準」と呼び、日経平均株価がノックイン判定水準以下になることを「ノックイン事由」と呼ぶ。

参照指数がS&P500であれば、ノックイン判定の指数は日経平均株価ではなくS&P500となる。つまり、仕組債におけるノックイン事由とは「参照指数が観察期間中に、一度でもノックイン判定水準以下になること」だ。ノックイン事由が起こると損失の可能性が発生する。

ノックイン事由が起こり、かつ最終評価日に、予め定められた水準(当初日経平均株価)以上に日経平均株価が回復しないと額面金額の100%未満で償還され、元本割れが発生する。

よく勘違いが発生するポイントだが、ノックイン事由が起こっても、その時点で損失が確定するわけではない。償還日まで運用は続き、損益は参照指数の変動に連動する。最終評価日時点で参照指数が当初の数値以上だった場合、元本割れすることなく償還される。日経平均リンク債を次の架空の仕組債の例で具体的に考えてみよう。

ノックイン型日経平均株価連動円建社債の例
期間 約1年
利率(固定) 年率1.20%(税引前)
発行者 ZUU銀行(架空の金融機関)
当初日経平均株価 2020年12月30日における日経平均株価の終値
早期償還判定水準 当初日経平均株価×110%
ノックイン判定水準 当初日経平均株価×60%
償還額 早期償還の場合は「額面金額」。
満期償還の場合
①ノックイン事由が発生しなかった場合は「額面金額」。
②ノックイン事由が発生した場合は「額面金額×最終評価日の日経平均株価の終値÷当初日経平均株価(上限は「額面金額」)」
※その他詳細項目は割愛

2020年12月30日における日経平均株価の終値は27,444円であったので、以下の数字が当てはまる。

当初日経平均株価 27,444円
早期償還判定水準 27,444円×110%=30,188円(1円未満四捨五入)
ノックイン判定水準 27,444円×60%=16,466円(1円未満四捨五入)

向こう約1年で日経平均株価の終値が16,466円以下にならなければ、ノックイン事由は発生せず、償還日に元本割れする可能性は発生しない。これが下の画像【1】のシナリオ①(赤線)に該当する。シナリオ①では当初日経平均株価を一度も上回っていないが、仮に上回っていても元本割れしないということに変わりはない。(ただし、後述する早期償還判定に該当して、早期償還される可能性はある)。

やや複雑なのが、ノックイン事由が発生するパターンだ。まずは「ノックイン事由が発生したが元本確保で満期償還を迎えるケース」を見てみよう。これが画像【1】のシナリオ②(緑線)に該当する。

あおぞら銀行, 仕組債
(画像=【1】)

ノックイン事由が発生しても、最終評価日の日経平均株価終値が当初日経平均株価以上の場合、額面金額の100%で償還される。画像【1】シナリオ②(緑線)では期間前半にノックイン事由が発生したものの、最終評価日の日経平均株価終値が当初日経平均株価以上となった。つまり額面金額で償還されるということだ。

続いて「ノックイン事由が発生して元本割れで満期償還を迎えるケース」を見てみよう。これが画像【2】のシナリオ①(赤線)に該当する。

あおぞら銀行, 仕組債
(画像=【2】)

ノックイン事由が発生し、最終評価日の日経平均株価終値が当初日経平均株価未満の場合、償還額は額面金額を下回り、元本割れでの償還となる。償還額は以下の計算式で導き出される。

満期償還額=額面金額×(最終評価日における日経平均株価終値÷当初日経平均株価)

満期償還時のイメージをまとめたのが以下の画像【3】だ。このフローチャートの意味をしっかり理解してから購入したい。

あおぞら銀行, 仕組債
(画像=【3】)

なお、ノックイン事由の発生有無に関わらず、償還額が額面金額を上回ることはない。

すなわち、日経平均株価がいくら上昇しても償還額は額面金額を上回らない代わりに、ノックイン事由まで日経平均株価が下落しない限り、元本割れは発生しないことになる。

仕組債の「早期償還判定」とは?

リンク債のような仕組債の場合、当初設定された償還日前に償還する「早期償還条項」が盛り込まれているケースがある。保有期間中に設けられた早期償還判定日において、参照指数が一定(早期償還判定水準)以上に値上がりしている場合、満期前でも額面金額で償還するという条項だ。額面通りの償還なので損失はない。

上記の「ZUU銀行発行・ノックイン型日経平均株価連動円建社債」の例では、早期償還判定水準は30,188円であった。ここまでの説明では早期償還判定に該当せず、最終評価日まで保有することを前提に説明してきた。しかし実際には、保有期間中に日経平均株価が30,188円を上回る可能性もある。

早期償還するパターンを画像【4】で確認してみよう。早期償還判定日は3ヵ月おきに来るものとする。

あおぞら銀行, 仕組債
(画像=【4】)

画像【4】シナリオ①(赤線)の場合、約6ヵ月後の早期償還判定日において、日経平均株価終値が30,188円以上になった。この場合は早期償還となり、額面100%で償還される。もちろん元本割れはしない。

画像【4】シナリオ②(緑線)の場合はどうだろうか。画像【4】シナリオ②(緑線)では、期間前半でノックイン事由が発生したが、約9ヵ月後の早期償還判定日において、日経平均株価終値が30,188円以上になった。この場合も早期償還となり、額面100%で償還される。こちらも元本割れはしない。

つまり、早期償還判定日に日経平均株価終値が早期償還判定水準以上だった場合、ノックイン事由の有無に関係なく、額面100%で早期償還されるというわけだ。

早期償還した場合、その資金で仕組債を再購入する際に気をつけたいこと

早期償還自体で損失を被ることはないが、手元に戻ってきた投資元本にて、新しい仕組債を購入する際には注意が必要だ。この行為は「ロールオーバー」「ロールする」などと呼ばれることもある。

なぜ注意が必要なのだろうか。上記の「ZUU銀行発行・日経平均株価連動」仕組債の例で言うと、早期償還されるということは、日経平均株価終値が30,188円を上回ったということだ。次も同じような仕組債に投資した場合、ノックイン判定水準も同様の条件(60%)だったと仮定すると、その判定水準は高くなる。

一般的に、上がり続ける株式相場はないと言われる。どこかのタイミングでは下落に転じる可能性がある。さらに、こちらも一般的に、下落局面は上昇局面より変動スピードが速いと言われている。ロールオーバー自体が悪ではないが、参照指数の判定水準が高値となり、ノックイン事由発生の可能性(元本割れの可能性)が想定より高くならないか、自身の相場観に照らして検討する必要があろう。合わせて、参照指数が大きく下落したときはどれくらい元本が毀損するのか、購入前にしっかり確認するようにしたい

仕組債のメリット

仕組債には、どのようなメリットがあるのだろうか。何と言っても、魅力なのは相対的に高い利回りだ。

仕組債はデリバティブ取引を利用することで、同じような信用力(格付)、同じような期間の「通常の債券」と比較して、比較的利率を高く設定できる。通常の債券と比較するとリスクは高くなるものの、そのリスクが許容できる範囲であれば、投資家に選択肢を与えてくれる金融商品と言えるだろう。

上記の「ZUU銀行発行・ノックイン型日経平均株価連動円建社債」の例で言うと、「向こう約1年で日経平均株価が16,466円を割れることはないだろう」と考えている人からすると、期間約1年で年率1.20%の利率は魅力的に映るかもしれない。

また、上記例では日経平均株価を参照指数としたが、よりボラティリティ(指数の変動幅)の高い指数を参照したり、複数の指数を参照したりすることによって、より高い利回りを狙う仕組債も存在する。

一般に広く募集を行う「公募仕組債」のみならず、顧客が希望する利息や満期期間、許容リスク等に応じて発行される私募仕組債も存在する。このようなオーダーメイド型の組成が可能なことも仕組債のメリットのひとつと言えるだろう。

仕組債の主なリスク

一方で、仕組債にはどのようなリスクがあるのだろうか。まずは仕組債特有のリスクについて見ていこう。

1.ノックイン事由発生による元本割れのリスク

仕組債ではノックイン事由が起こる可能性がある。通常の債券のように、発行者が元本を保証する仕組みではないことに注意したい。ノックイン事由が起こっても、その時点で損失が確定するわけではないが、前述のように最終評価日において、当初株価等の条件を下回る状況になった場合、償還額が元本を割り込むリスクがある

2.カウンターパーティーリスク

デリバティブ取引の相手方を「カウンターパーティー」といい、仕組債において重要な役割を担っている。カウンターパーティーが破綻すると、デリバティブ取引で得られるはずだった支払いを受けられない可能性があり、これが損失の原因となる。仕組債を組成する金融機関の破綻リスクとも言えるだろう。これは仕組債特有のリスクで「カウンターパーティーリスク」と呼ばれる。

3.利率変動リスク

デジタルクーポン債のように、仕組債には金利が変動するものもある。参照指数の数値により、複数設定された金利の中から適用される金利が決まるのだ。高い利率が適用されることを想定していたとしても、実際は低い利率が適用される可能性がある。仕組債を購入する際は、一見高い利率に見えても、諸条件はしっかり確認するようにしたい。

4.流動性リスクおよび価格変動リスク

仕組債は、デリバティブ取引を利用しているため、償還日前の途中売却が難しい。途中売却自体ができない場合もあり、できるとしても投資元本を大きく割り込む価格で売却せざるを得ない可能性がある。満期までの保有を前提にしたほうがよいだろう。なお、通常の債券でも流動性リスクおよび価格変動リスクは発生するが、より注意したほうが良いという意味で、仕組債特有のリスクとして記載している。

5.早期償還によるリスク

前述のように早期償還された場合、損失は発生しないものの、以後の運用において早期償還されなかった場合(満期まで運用される場合)に得られる利息と同等の運用成果が得られない可能性がある

上記に加えて、仕組債特有のリスクではないが、通常の債券と共通するリスクもある。発行者の財務状況・経営状況によっては、デフォルト(元利金の支払の不履行もしくは遅延)が発生する「信用リスク」などだ。

6.仕組債はハイリスク?

仕組債について調べ始めた際に、「仕組債はハイリスク」という情報を目にして購入を悩んでいる人もいるかもしれない。

仕組債には、元本割れの可能性があるなどの上記の特有のリスクがあるため、確かにハイリスクと言えるかもしれない。また、仕組債にはデリバティブ取引が組み込まれており、その構造はやや分かりにくい。仕組債を単に「利率の高い債券」とは考えず、その仕組みおよびリスクの大きさ等をしっかり理解して購入したい

販売する側の金融機関にも高度な説明力が求められるが、購入者側も購入を検討する際には「納得いくまでは購入しない」という姿勢で、仕組債の条件やそのリスクについて質問を重ね、納得したうえで購入したい。

7.仕組債の取引に向いている人は?

仕組債は元本を大きく毀損する可能性のある金融商品である。そのため「この資金は何があっても減らしてはいけない」という資金ではなく、余裕資金の範囲内で運用していただきたい。

資産運用でリターンを狙いたいものの、本業等で忙しく、時間を割けない人もいるだろう。一般的な株式投資では、個別企業のビジネスモデルや事業内容を理解して、決算書や関連するニュースにも目を通すことになるはずだ。

その点、日経平均株価と連動する仕組債を選べば、個別企業の株価や特定の国の情報をチェックしなくても、運用状況を把握できる

また、自身が許容できるリスクや相場観に合わせて、ラインナップの中から選択できることも魅力のひとつだろう。前述のように、ボラティリティ(指数の変動幅)の高い指数を参照したり、複数の指数を参照したりすることによって、より高い利回りを狙う仕組債も存在する。自身のリスク許容度や相場観によっては、「ぜひ購入したい」と思える仕組債が見つかるかもしれない。

余裕資金の投資先として仕組債も選択肢へ!

仕組債は、構造が複雑ではあるが、うまく活用すれば魅力の多い金融商品だ。株式投資ほど情報収集に時間を割かなくとも、リスクを許容できれば相対的に高い運用成果を狙える可能性がある。余裕資金の投資先のひとつとして、検討の余地はあるだろう。

一方で、早期償還条項やノックイン事由等の条件をよく確認し、仕組債の構造やリスクを理解したうえで投資することが重要になる。その他の金融商品においても言えることだが、冷静に市況を見渡し、商品のリスクとリターンを十分に理解したうえで投資判断をすることが大切だ。

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