本業支援・事業性評価の指南書【第3回】上席が本業支援の重要性を理解していない
(画像=PIXTA)

本業支援に取り組みたいのですが、上司からは「余計なことはせず融資先を探しなさい」「要注意先にはあまり関わらないように」と言われてしまいます。この状況をどう変えていけばよいですか。

今の時代、こうした話をする上司は相当減ったと思う。ただ、直接は言わないものの、暗に「時間がかかる本業支援は後回しでよい」「優良先との取引を優先すべきだ」という雰囲気を出してくる上司はいると思う。

こういう上司が多数を占める金融機関に未来はないだろう。金融機関を取り巻く環境の変化を理解できていない証拠であるし、このまま続けていれば、お客様にも見放される可能性が高いからだ。

このような上司がいる場合、「未来を見据えた仕事のやり方について話し合いを行う」ことを提案したい。

営業担当者としての率直な悩みを上司にぶつけるということだ。上司が聞く耳を持たなければ、支店長に直接お願いしてもよい。

融資に専念していては十分な利ザヤは取れない

では、どんなことを話し合えばよいのか。

今回の相談には2つのポイントがある。1つは上司には「本業支援は余計なことであるという認識があること」。もう1つは、同じく「要注意先に関与するべきではないという認識があること」だ。

まず「本業支援は余計なこと」という認識だが、この背景には「金融機関の本業は融資であり、それに専念すべき」という考え方があるように思う。

確かに、融資は「金融仲介」の根幹となる重要な仕事だが、その一方で現下の金融緩和、資金繰り状況などを踏まえると金融機関同士の融資競争が激しさを増しており、それが適用金利の低下にも表れている。

言い換えれば「融資の付加価値は低下している」「リスクの高い融資の価値は高いが、リスクの低い融資は誰でも対応できるので付加価値が相対的に低い」といえるだろう。

実際、正常先や担保充足先といったセグメントへの融資は競争も激しく、利ザヤも薄い。そのため、融資だけに専念(依拠)するビジネスモデルは成り立ちにくいというわけだ。

だからこそ「お客様の新しいニーズに応えるビジネスモデル」を作ることが大切なのである。

その「お客様の新しいニーズ」こそが様々な経営課題であり、それを解決する本業支援を行うことが、金融機関が生き残るためのカギとなる。したがって「本業支援が余計」という認識は完全に誤りといえる。

本業支援・事業性評価の指南書【第3回】上席が本業支援の重要性を理解していない
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正常先に変えるという思いが必要になる

次に「要注意先には関与するべきではない」という上司の認識をどう変えていけばよいか。この背景には「リスクの高い先に対応することは危険」という、〝触らぬ神に祟りなし〟の発想があると思う。

この考え方は「貸して終わり」という発想だ。逆に「貸すだけでなく本業支援を加えて、お客様の経営改善を図る」という発想があれば、「融資実行時点は要注意先であっても、将来は正常先に変わる」というストーリーが描けるはずである。

また、「リスクの低いお客様だけを相手にする」というビジネスモデルでは、信用リスクは低減されるかもしれないが、競争も激しく低採算に苦しむことになる。

そもそも中小企業の多くは景気変動の波の中で正常先になったり、要注意先になったりしている。景気が良いときは貸して景気が悪いと貸さないとなれば、お客様はどう思うだろうか。

金融機関の使命は「困っているお客様を支援すること」であるはず。それであれば「要注意先など経営に難を抱えているお客様に伴走型支援を行うことで、信用格付けを高める」ことが重要になってくると思う。それはお客様にとってうれしいことだし、金融機関にもリスクに応じた利ザヤを確保しつつ将来は引当金の戻りを得るというメリットが生じる。WIN -WINの関係が作れるだろう。

こうした考え方を金融機関全体、支店全体で共有することが本当に大事だ。冒頭に述べたように、上司と「対話・話し合い」の場を設けて、本業支援や困っているお客様を支援することの重要性をしっかり考え、話し合うことが有益となる。

ポイント

壱、「未来を見据えた仕事のやり方」について営業店で話し合う場を設ける
弐、お客様のニーズに応える、困っているお客様を支援することの重要性を話し合おう

近代セールス
青木 剛(あおき・つよし)
商工組合中央金庫 常務執行役員
1985年、商工組合中央金庫に入庫。5店舗の支店長を務めるなどして、2019年より現職。主な著者に『事業性評価と課題解決型営業のスキル』(商工総合研究所)