ZUU onlineでは特集「プロに聴く、Withコロナでの資産運用」というテーマで金融・経済・M&A・不動産など投資の専門家にインタビューを実施している。

新連載の第4回は、昨年5月に不動産売買プラットフォーム「the REMS」を立ち上げたオーべラス・ジャパン株式会社の大庭勇太代表取締役社長と池田良太代表取締役副社長に7月7日、新型コロナウイルス感染が広がる情勢下での不動産市場の動向や今後の見通しについて聴いた。

池田良太氏と大庭勇太氏
(画像=池田良太氏と大庭勇太氏)

新型コロナウイルス、不動産業界への打撃は数か月後

オーべラス・ジャパン株式会社の大庭勇太代表取締役社長は、ZUU onlineとのインタビューで、「デベロッパーや不動産ファンドなど、プロの不動産業界は新型コロナ前とそんなに変わっていない。キャッシュリッチな会社は、まだ体力があるので普通に物件を持っている。B to Bの法人は大きく変わっていない」と指摘した。ただ、「個人投資家の一部は慌てて売り始めている」とも語った。

一方、池田良太代表取締役副社長は、「このままの状況が続けば、いずれ体力の限界が来るだろう。影響が出てくるのはこれからだ」と予想する。「B to Cのビジネスで、客がホテルに来ない、ショッピングセンターに行かない。金融発端ではないところがリーマンショックとの一番の違い。テナントが家賃を払えなくなり、これから数か月後に、コロナの打撃が出てくるだろう」と見込んでいる。

法人が持っている物件は概ねリスクヘッジしているため、現段階では目立った価格の暴落という話は出てきていないという。ホテルや商業施設などは、営業があまりできていないため、大きな影響が出るのはこれからのようだ。

池田氏は、「われわれは、5億円以上の大型物件の売買プラットフォームを運営しているが、5〜10億円で最初に影響が出始め、それから10〜50億円に出始めるだろう。もっとも、50億円以上はあまり関係ないと思う」と述べた。

新型コロナで長期的には都心から郊外への動きも

新型コロナウイルス感染状況を背景に、テレワーク、サテライトオフィス、シェアオフィスなどが活用され、長期的には都心から郊外への動きにつながるとの見方を示す。もっとも地方の不動産価格を大きく押し上げるほどではないとも言う。

大庭勇太氏
(画像=大庭勇太氏)

大庭氏は、「コロナの影響で都心にいる意味がなくなっている。都心でなくても仕事ができない訳ではない」と指摘。「地方で少しゆっくりできるところがもう1回流行ってくると思う。都心は買えないので、2極化するだろう」と述べた。

しかし池田氏は、地方・郊外でテレワークいう新しい働き方が広がっても、地方の地価が上がるほどの影響はないと見込む。

「田舎でスローライフといっても、東京のスピード感で生きている人は馴染めないので、すぐにはできないと思う。今すぐという話ではなく、5年、10年先の話」と説明。「大きな市場になるかというと、そこまで広がるとは思わない。今回のテレワーク推進だけでは、不動産価格に影響するほどではないと思う」と語った。

さらに同社が利用しているシェアオフィスを例に挙げ、「空スペースを有効活用するためのシェアオフィスだったが、それが多過ぎて空きになっている状況」と分析。

「シェアオフィスが乱立するので、各社のシェアオフィスを全部統合するプラットフォームが出てくるだろう。プラットフォーマーが全部のシェアオフィスをつなぎ、利用者はオンライン上で空き状況を見て、適切な場所へ行けば良い」とも語った。

不動産業界は耐える時

金融機関の融資姿勢は、新型コロナショックとリーマンショックを比較すると大きく異なり、不動産業界への影響も違う。リーマンショック時は金融側から崩壊して融資の引き締めにつながった。

一方、今回のコロナショックは、リーマン時と違い、店舗などの現場から発生している不況のため、銀行を始め金融機関は支援する姿勢が強いようだ。

世の中の低迷度合いと比較すれば、不動産業界が目立って悪い印象ではなく、金融機関がオーナー側に寄り添い、いずれ景気は戻ると見込んでいる。

池田氏は、「緊急事態宣言などによる影響は一過性。街はゆっくりと戻っていくし、戻っていかなければならない。不動産業界としては耐え時」と強調する。

金融機関の融資に関しては、「コロナの影響で、潰れそうな企業がいっぱいあり、救済を優先している。ただ小規模な不動産融資には時間を割いてくれず、後回し」と語り、運転資金への融資は緩和姿勢だが、不動産投資への融資には消極的と解説した。

その上で、「今回のコロナで淘汰されるのは恐らく消費者向けの現場。企業体力を付けたり、サービスをオンラインに切り替えたり、ゲームチェンジの先手を打った会社が業界で生き残るだろう。現状維持している会社はいずれ沈没する」と予想する。

「ビジネスモデルを変えるしかない。今までのやり方に縛られていたら、時代に取り残されて淘汰される」と危機感を示す。

不動産価格は数か月後に下落が鮮明に、バーゲンセールへ準備を

不動産業界では、価格の下落はまだ始まっていないものの、今後のバーゲンセールに備えておくべきと強調する。

池田氏は、「数か月後に価格の下落が鮮明になってくると思う。株価やJ-REIT(不動産投資信託)価格は変化しているが、不動産評価額ではない。現物はキャッシュがなくなってきた人が安売りし始めてから下がってくるため、これからだ」と見込んでいる。

もっとも、「不動産価格がどのくらい下がるか分からない。本当に賃料が払えなくなり、オーナーが融資の返済ができなくなってからだ」と指摘した。

現在の局面については、「賃料の先延ばしや減額などの交渉をしている状態。企業が倒れて賃料を滞納して、大家がローンを返済できなくなる状況まで行っていない。ドミノ倒しのまだ途中」と語った。

選択肢を増やして大手の独占に風穴を

従来、不動産業界の高額・法人物件に関する情報は、プラットフォーム化されておらず、売買情報を探す場合、付き合いのある信託銀行など金融機関、不動産会社、仲介会社に依頼し、人と人のつながりで物件の売り手と買い手をつなぐ方法しかなかった。

しかし、オーべラス・ジャパン社の提供するプラットフォーム「the REMS」では、「5億円以上」というハードル設定で会員を絞った上で、平等に売買物件情報を取得できる。これまで閉鎖的かつ平等ではない業界に、新しい選択肢という風を吹かせることを目指している。

池田氏は、「今後、コロナの影響で資金繰りが詰まり危ない、今すぐ現金で不動産を売却したい会社が出て来る時、人脈もなく、売り先が見つからなかったら万事休すだ。そんな会社が1社でも救えるよう、今のうちに業界のさまざまなプレーヤーに会員登録を推進している」と説明した。

一方、「個人投資家でも、キャッシュを持ち5〜10億円の物件を買える人にとってはチャンス」と指摘する。「バーゲンセールが始まれば、都心3区の一等地が激安で買えるかもしれない。これまでは、美味しい物件情報は水面下で取引されていた。the REMSでは皆、平等。そしてスピードが命。情報強者の大手法人と情報弱者の個人が同じフィールドで勝負できる。むしろ法人は決済に時間がかかるため、スピードのある個人はチャンス」と語った。

池田良太氏
(画像=池田良太氏)

新型コロナ情勢を背景に、資金繰りに困った企業にとってだけでなく、これまで情報を得にくかった個人でも、5億円以上を出せる人なら好機になるため、掘り出し物の物件検索で出遅れないようにすることが重要だ。

池田氏は、「個人、法人、REIT、ファンドでも良い。昨年に当サイトをオープンした時に想定していたよりも早く、オンラインでの情報交換が当たり前の時代になった。恐らく数か月後には実際の不動産価格の下落が始まってくる。体力がなくなった会社が多少安くてもいいから買ってくれないかという話になる」と予想する。「物件が増えたら掘り出し物も出てくるので、今のうちに登録しておいて欲しい」と言う。

最後に、同社設立の経緯について、「残念ながら、5億円以上の高額な不動産を持っている人の情報ルートは限られていた。業界の流動性は低く、5億円以上の物件を売買できる人は多くいない。取引における選択肢を増やし、業界が長期的に発展していければと思い、プラットフォームを作って運営している」と説明した。