「金銭信託」は、あまり聞き慣れない金融商品かもしれない。「投資信託」と同じく“信託”のワードがあるので、類似の商品に見えるかもしれないが、投資信託とは異なる仕組みで成り立っている金融商品だ。

今回は、金銭信託の仕組みや種類について説明した上で、投資信託や定期預金との比較についても説明する。また、金銭信託はどのような投資家に向いているのかも検討するので、資産運用の選択肢の一つとして金銭信託を加える際の参考にして欲しい。

金銭信託とは

金銭信託
(画像=PIXTA)

金銭信託とは、信託銀行や信託会社など(以下、信託銀行)が投資家に代わって資金を管理・運用してくれる金融商品だ。

金銭信託では、投資家から託された資金を信託銀行が決められた方針にそって運用し、その収益を投資家が受けることになる。あまり馴染みがないかもしれないが、個人、法人を問わず利用できる金融商品だ。また、比較的少額から利用できる。

金銭信託の仕組み

金銭信託の仕組みを使えば、大切な資金の管理と運用を信託銀行に任せることができる。

個人や法人が金銭信託を利用する場合、信託銀行と信託契約を締結することになる。そして、信託銀行に資金を預けると、信託銀行は資金を管理するだけではなく、貸付金、公債、社債、株式、預金などで預かった資金を運用してくれる。

金銭信託では、予定配当率が運用開始前に発表され、どの程度の利回りを得られるかの参考値となる。しかし、最終的な配当は資産運用の実績に基づいて決定されるので、どれだけの運用収益が得られるかを正確に知ることはできない。運用実績が悪ければ、利回りがマイナスとなる可能性もある。

だが、金銭信託には安定的に収益を確保することを目的として運用されるものが多い。金銭信託の種類や契約内容により異なってくるが、元本保証がついていたり、預金保険の対象となっていたりする金銭信託もある。条件によっては、安全性を確保しながら銀行預金よりも高い利回りを期待できる。

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金銭信託は大きく2種類

金銭信託は、管理や運用の方法などにより、さまざまな種類に分けられるが、広く利用されているものとして「合同運用指定金銭信託(一般口)」と「実績配当型指定金銭信託」の2種類がある。

・合同運用指定金銭信託(一般口)とは

「合同運用指定金銭信託(一般口)」とは、複数の人から信託された金銭を「合同して運用し」、「運用方法が大まかに指定」された金銭信託である。

資金を信託する人はそれぞれ信託契約を信託銀行と締結するが、このうち、同一の運用方法の金銭を合同して一緒に運用するわけだ。

一般に、合同運用指定金銭信託(一般口)の場合、元本保証もあり、預金保険の対象ともなっている。また、安定的に収益を確保することを目的として、運用の対象範囲は、貸付金や公社債、株式、預金等とされている。

預け入れ金額は商品によって異なるが、金額は5,000円以上1円単位が多くなっており、少額から始めやすいという特徴もある。

・「実績配当型金銭信託」とは

「実績配当型金銭信託」は、具体的な商品内容は信託銀行によって異なってくるが、住宅ローン貸付金、クレジット債権、リース料債権などを裏付けとした信託受益権などで運用される。

合同運用指定金銭信託(一般口)と大きく異なる点は、運用方法と元本保証の有無だ。実績配当型金銭信託は安定性に加えて収益性をより意識した運用がなされ、元本保証はない。また、預金保険の対象ともならない。

預け入れは10万円以上1円単位、100万円以上1円単位などが多く、利用するにはまとまった資金を用意する必要がある。

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金銭信託の注意点

安定性重視で金銭の運用を任せられる金銭信託だが、注意したい点もある。

・元本保証がないことも

一部の金銭信託には元本保証があり、預金保険の対象ともなっているが、種類によっては元本保証がない金銭信託もある。

・途中の解約が原則できない

信託期間の途中で解約することは原則としてできないので注意したい。通常、信託期間は1年以上だ。やむを得ない事情で解約する場合は解約手数料がかかることもある。

・予定配当率はあくまで目安

予定配当率が発表されているとしても、それはあくまでも配当の目安でしかない。予定配当率や予定配当額は保証されているわけではない。金銭信託の実際の配当は信託期間中の運用実績に応じて支払われることになる。

・種類が多く複雑

代表的なものとして、「合同運用指定金銭信託(一般口)」と「実績配当型指定金銭信託」の2つを紹介したが、金銭信託には他の種類のものもある。また、信託契約ごとに信託期間、運用対象、予定配当率は変わってくる。銀行預金ほどシンプルではないので、よく比較検討したうえで、選んでいく必要があるだろう。

金銭の管理・運用をする「信託銀行」とは

金銭信託の主体となる「信託銀行」とはどんな銀行だろうか。

信託銀行も普通の銀行と同様に、預金や貸付といった銀行業務を行なっている。ただし、信託銀行は、通常の銀行業務に加えて信託業務と併営業務も行なうことができる点が異なる。ひとことで言えば、信託銀行とは信託業務も行える銀行である。そのため、信託銀行は信託兼営金融機関ともいわれる。

信託業務とは、信託銀行が個人や法人からの信託の設定により財産を預かり管理・運用する業務をいう。金銭信託も信託業務の一部だ。なお、信託銀行で信託できる財産は金銭に限られていない。株式などの有価証券、不動産、金銭債権など、財産的価値のあるものであれば、どんなものでも信託の対象となる。

一方、遺言書の保管や相続関連の業務なども併営業務として行なっている。その他、企業の株主名簿管理などの証券代行業務、不動産の仲介・鑑定業務なども、信託銀行の併営業務だ。

つまり、信託銀行は普通の銀行よりも幅広い業務領域をカバーしている。そのため、顧客からすれば、より豊富な金融ソリューションの提供を期待できる銀行といえるだろう。

金銭信託はどこで利用できるのか?

金銭信託はどこにいけば契約することができるのだろうか。

・金銭信託は信託銀行で扱っている

上述の通り、金銭信託は、資金の管理も運用も信託銀行が行なっている。そのため、金銭信託を利用したい場合は、信託銀行で契約することができる。

普通の銀行ほど信託銀行の店舗は多くない。だが、最近はインターネットで金銭信託の契約ができるケースも増えてきている。最寄りに信託銀行がないのであれば、オンラインで探してみることもできるだろう。

通常、信託銀行には「○○信託銀行」という名称がついているので、信託銀行であると判別やすい。だが、「○○信託銀行」と名乗っていない信託銀行もあるので、銀行の名称だけで判断できないこともある。

・通常の銀行等で金銭信託を扱っていることも

わざわざ信託銀行を探さなくとも、日常的に利用している銀行で金銭信託が利用できる場合もある。

普通の銀行が信託銀行から委託を受けて、信託契約の締結の代理・媒介などを行う信託契約代理店として販売窓口を担っている場合もある。普通の銀行の子会社やグループ会社に信託銀行があり、そこから委託を受けて金銭信託の販売会社となっている例が多い。

だが、普通の銀行で金銭信託を申込む場合でも、投資家と金銭信託の信託契約を締結する相手は信託銀行だ。金銭信託を扱う普通の銀行は委託を受けて仲介しているだけで、契約の主体とはならない。信託契約により資産の管理・運用を行なうのもあくまで信託銀行となる。

金銭信託と投資信託の相違点

金銭信託も投資信託の一種と考えてしまう人もいるかもしれない。確かに、金銭信託には“信託”という言葉がついており、金銭信託で預けられた資金のことは投資信託と同様に信託財産と呼ばれる。似ているところも多いが、金銭信託と投資信託の仕組みは全く異なる。

投資信託の場合は、実際の運用は運用会社が行なっていて、信託銀行は資金の管理をするだけだ。だが、金銭信託は運用も管理も信託銀行が行なう。

また、金銭信託では投資信託のように毎日基準価額が算出されることはない。日々の価格変動を気にする必要はなく、基本的には、託した資金を信託期間が終了するまで置いておく運用をすることになる。

一方、信託期間が終了するまで置いておくということは、換金性が劣ることを意味する。オープン型の投資信託であれば、いつでも換金を申込むことができるが、金銭信託は原則として途中の解約ができない。

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金銭信託と定期預金の相違点

金銭信託は資金を銀行に一定期間預けるという意味では、定期預金に似ているようにも見えるかもしれない。定期預金との金銭信託は何が違うのだろうか。

日本円の定期預金は元本保証があり、預金保険の対象にもなる。一方で、金銭信託は、「実績配当型金銭信託」の場合は、元本保証がなく預金保険の対象とならない。「安心の運用でほぼ安心」と安全性を重視して宣伝されることもあるが、元本の保証がない点には変わりない。

銀行の定期預金の場合、「1年もの○%」のように金利が提示され、満期到来時にどれだけの利息が受け取れるかが預入時に確定する。金銭信託で提示されるのは「予定配当率」となる。予定配当率は配当率の目安を表すものであり、あくまでも予定だ。実際には信託期間中の運用実績に応じて配当が支払われるため、金利のように確実に受け取れるわけでない。

金銭信託がおすすめなのはどのような人か?

金銭信託は比較的少額からはじめられるリスクの低い運用商品だ。そして、多くは預金よりも高い利回りをうたっている。たとえ、元本保証がない商品でも、安定性を重視した運用がなされるものが多い。そのため、リスクはできるだけ小さく抑えたいが、少しでも高い利回りを得たい安全重視の投資家に向いているといえるだろう。

また、金銭信託は運用商品ではあるが、投資信託のように日々損益がでるものではない。そのため、毎日、市場の動向を気にしたり、価格変動に気を遣ったりすることはない。これらの心理的負担を減らしたい投資家にも適しているかもしれない。信託期間が決まっているため、一度預けたらじっくり待つだけだ。

定期預金だけでなく、もう少しだけ背伸びして魅力的な資産運用にチャレンジしたいと思っているなら、金銭信託は有力な選択肢となるかもしれない。