7月に入り、東京を中心とした新型コロナウイルスの再燃に加え、九州を中心に西・東日本で異例の長時間豪雨が発生しました。こうした報道を目にするたび、考えなければならないのが思わぬ事態はいつ私たちに降りかかってきてもおかしくない、ということです。

イザというときに気になるのが「お金」の問題。本業とは別に安定した収入があるとないとでは、取れる選択肢が大幅に変わってきます。

では、収入の「第二の柱」をつくるにはどうしたらよいのでしょうか。

今回、15年間で27戸の不動産を購入し、20年勤めた会社を退職、今では早期リタイア生活を楽しむ個人投資家の村野博基氏(44)にインタビューを実施。ご自身の30代を振り返っていただき、資産を築く上でやっておいてよかったこと、後悔したこと、そこから得た教訓をお聞きしました。

インタビューで見えてきたのは、ちょっとした「視点の切り替え」が将来の資産形成を大きく左右するということ。仕事や家庭に多忙な30代が、明日からでもできる資産形成術を、村野氏の体験談を交えてご紹介します。(取材日:7月9日)

やっておいてよかったこと1:不動産投資

村野様
(画像=15年間で27戸の不動産を購入。今では早期リタイア生活を送っている村野博基氏)

―早速ですが、村野さんの30代を振り返って、やっておいてよかったことを教えてください。

いくつかあるのですが、一つ目はやはり不動産投資を始めたことですね。

私は28歳のときに、都内の投資用ワンルームマンションを1戸購入し不動産投資を始めて、それからコツコツ買い増しし、30代の終わりには計16戸の物件を所有していました。

40代の今になって思うのは、若いうちに物件を購入しておいてよかったな、ということです。

例えば30代で30年ローンを組んで物件を購入した場合、私の年ですでに約3分の1は家賃収入だけで返済し終わっているんですよ。そのまま返済を続けた場合、定年前後で完済できているのです。不動産投資は早く始めれば始めるほど有利になる投資ですので、30代のうちに物件を買い増ししておいてよかったと思います。

また、30代で自宅を購入したのも良いタイミングでした。

私は37歳で一軒家を購入したのですが、30代後半というと、収入が上がってきて、かつ子育てなどいろいろとお金がかかる時期です。このタイミングで住宅ローン控除を活用すると、税金が大きく戻ってくるので、その分を子供の学費などに充てていましたね。

―自宅の購入と投資用不動産の購入ではどちらが先にやったほうがよいですか。

これは個人の資力によって異なります。自宅も投資用不動産の購入もご自身の信用力がベースになるローンを使って購入することになります。この際、給与などの収入が大きいほど借入可能額も大きくなります。

そして、ポイントは自宅を買う場合でも、投資用不動産を買う場合でもローンを組む場合にはおなじ自身の信用力を使うというものです。そのため、給与がまだ少ない人が間違えた投資用不動産を購入してしまうと、金融機関によっては自宅用のローンがなかなか使えなくなるケースもあります。

もしどうしても自宅を「早く必ず」欲しい場合や、給与が少ないうちは、まず自宅の購入をされたほうがよいでしょう。ただし、住宅ローンの返済にアップアップになってしまうと、自宅以外の資産形成ができなくなってしまいますので、社宅があるなど、家賃を抑えられる環境にいるのであれば、自宅を後回しにするという選択肢もあると思います。

一方で、給与水準が高い方であれば、毎月手元にお金がそれほど残らない場合でもローンは利用できるので、 不動産投資も積極的に検討していくことをお勧めします。

やっておいてよかったこと2:「お金」の勉強

―勉強的な部分については何かされたのですか。

投資に関係のある部分だと、経理の勉強は役に立ちましたね。

37歳のころ、勤めていた会社で子会社に出向することになり、そこで財務を任されまして。そのときは簿記などの知識が全くありませんでしたが、業務上、勉強せざるを得ませんでした。

それまでは「お小遣い帳」的な感じで、お金がいくら減って、いくら増えたか、という単純な考え方だったのですが、複式簿記の考え方では、資産や負債、純資産の増減などを「借方」と「貸方」に分けて記載するので、お金の入出金の理由や、家計全体の財務状況がわかるようになりました。

つまり、現金を支払ったとしても、一方では得た「財産」がある、借金をしているということは、その分だけ現金が入っている、という意識ができるようになったんです。投資においてこの考え方は大切だと思っていて、例えば1,000万円の物件を買おうとするとき、私たちはどうしても1,000万円が一気になくなってしまう、という心配や不安が先行してしまいがちです。

しかし、長い目で考えたときに、現金で1,000万円持っていても、それが500、300万円と減っていくのと、 現金は無くなっている(マンションになっている)ものの、毎月10万円ずつ収入があるのと、どちら幸せでしょうか。

私は迷わず後者を選びます。こうした発想に至ったのも、簿記を通じて「お金とは何か」を再認識したおかげです。

また、登記を自分でやれるようになったのも、司法書士さんにお願いしていた分のお金が浮いてよかったですね。これはたまたま知り合いに「登記って自分でできるよ」と言われて調べてみたら本当に簡単で。今では自分でこなしています。

やっておいてよかったこと3:投資の「トライ&エラー」

村野様
(画像=30代で様々な投資の経験を摘んだと語る村野様)

―なるほど。心持ちの部分ではいかがでしょうか。

トライ&エラーでどんどん投資の経験値を積んだことです。

不動産投資以外にも株や為替などを行いましたし、そこから「これは大丈夫」「これはまずい」と経験したことによって、投資に対する考えを固めることができたんです。これがもし40、50代などある程度年齢を重ねてからだと、なまじ資金に余裕があるので、大きく投入すると取り返しがつかなくなる恐れがあるんですよね。

その点、30代のころはそもそも絶対額としての資金がありませんから、少々失敗しても深手を負うことはあまりありません。

私の大きなトライ&エラーでいうと、30代のころに株の自動売買ツールを120万円で購入して勝てる方法が確立できないか、2か月ほど睡眠時間を削って試行錯誤したことがあるのですが、結局判ったのは、運が良ければ勝てる、勝てないときには勝てない、という至極当たり前のことだけ。

少々高い「授業料」だったなと思います(笑)。

やっておいてよかったこと4:「支出の効率化 1.1倍ルール」

―確かにその通りですね。他にはありますか。

あとは30代のうちはあまりお金がなかったので、「支出の効率化」を考えていました。

「支出の効率化」とはお金を使うとはどういうことかを知る、ということです。つまり、支出に着目して、本当にそれが必要なのかを考えることです。

不動産投資を始める前のころですが、ある雑誌の取材を受けたことがあって、そこで「1.1倍ルール」について話しました。

これは、買おうかどうしようか迷っている商品があったとして、仮にその値段が1.1倍だとしても購入するかどうか、という私がものを買うときの一つの基準として考えていることです。当時はお金の絶対額が少なかったので、無駄な支出は抑える必要がありました。そこで、私なりに「買う」「買わない」の線引きを突き詰めて考えた結果が、このルールなんです。

無駄な支出を減らせるほかにも、買うものは私の中では全て1割引で買うことができた、と思えるので、 なんだかトクした気持ちでいられます。今では使えるお金が増えて、1.1倍だとハードルが下がってしまったのでさらに進化して「3割ルール」として3割高くてもそれを買うかどうか、にシフトしています(笑)。

このルールを実行して分かったのは、幸せに生活するために必要なものは限られているということです。例えば腕時計だと、数千万円の時計もありますが、「正確な時間を知る」という時計本来の目的を考えると、数万円で買えるソーラー電波時計が機能としては完璧なんですよね。私としてはこれで満足です。

世間をみると、「欲しい」ものをわざわざ探してまで手に入れる人が多いように思います。「もの」の方を探すのであれば必要なことだと思いますが、「欲しい」をわざわざ探すなんて、お金が余っていて、使いたくて仕方がないのかな、と思います。要するに「足るを知る」ということが肝心です。

後悔していること:経済危機でよぎった「余計な心配」

―では逆に、やっておけばよかったと後悔していることは何でしょうか。

私の投資の主軸である不動産については、基本的に毎年1~3戸程度買い増ししていっているのですが、 2009年~2012年の間はリーマンショックの不安で買わなかったんです。

これは後悔していますね。買い続けていれば3、4年は早くリタイアできていたと思います。ここで得た教訓としては「どうしようもないことを心配しても仕方がない」ということです。

投資の経験を積むと、「リスクは回避しよう」と過剰に考えてしまうんですよね。景気には波があるので、身も蓋もないことを言うと、落ちるときはみんな落ちますし、待っていれば結局はどこかで盛り返します。

それにうまく乗ろうとするのも一つの手ですが、それを気にして「投機」を繰り返すと結果的にどこかで崩壊してしまうと考えています。

ですので、マインド的な部分で、たとえ投機がうまくいったところで「俺すごい」とはならず、「いつかやられる」と思ってしまいますし、一方でもし思惑の逆をいって損をしてしまったときには、その後悔はものすごいでしょうね。

その点、不動産投資は世界の情勢に惑わされず資産を増やせる方法です。それがあるのに「投機」に行くのは資産形成をする、という意味では考えものだと思います。

私が行っている投資は「『100』投資して『101』返ってくる」というロジックだけです。リーマンショックの経験から、そういった景気の波と関係ないところで生きていこうと決めましたね。

「線」ではなく「面」として時間を捉える

―私生活や仕事で多忙な30代が資産形成を行う上で意識しておくべきことは何でしょうか。

まずは時間の使い方だと思います。時間を直線ではなく面として考えて、いろいろなものを並行して動かしていくことが大切だと思います。

例えば、資産を増やすために副業をしよう、とするなら、本業で勤務して、その後にも働いて、となります。 これは時間を「線」で捉えてしまっている稼ぎ方です。これではただ自分をこき使っているだけで、どんどん疲弊していってしまいます。

他方で、私が行っている不動産投資では、今こうしてインタビューに答えている間にも、物件たちがお金を稼いでくれているんです。一本あたりの収入は薄いですが、これを何本も走らせておけば、トータルしたときに大きな収益となります。

収入源を複線化して束にすると、厚みが増して「面」になります。これが投資において「面」として時間を捉える、ということです。つまり、自分が手足を動かさなくても、別で稼いでくれる何かをたくさん作っておくということですね。

知りたいことは他人がすでに持っている

―なるほど。他にはありますか。

あとは、いろんな考え方を知るために人脈を作っておくことですね。この人脈にも「線」と「面」の考え方が使えます。

私はポイントカードやクレジットカードを数十枚持っているのですが、きっかけは「支出の最小化」を 考えていたときに周りの人から教えてもらったことです。また、登記を自分で行えるようになったのも、知人のアドバイスのおかげです。

このように、自分のなかにない情報は、自ら手を動かさなくても、すでに他人が調べてくれているんですよ。 もしこれが「線」だと、自分ですべて調べなければなりません。

知りたいことは他人がすでに持っている、だから仲間が必要なのです。

まずは「支出」に焦点を当て家計を把握すべき

―これから資産形成を始めようと考える30代がまずやるべきことは何でしょうか。

まずは家計を把握すべきです。

現状で収入と支出の状況がどうなっているか、資産はどれくらいあるか、これを把握しなければ、資産形成はうまくいかないと思います。収入が少ない状況かつ、手元に資金がないのであれば、まずは支出を減らすことです。

ポイントは「支出の内訳が出てこないものは、今すぐやめること」です。例えば、現在はサブスクリプション型のサービスが多々ありますが、それらにいくら支払っているでしょうか。すぐに言える方は少ないと思います。支出をすぐに言えないものは概して活用できていないものなので、切った方がよいでしょう。

手っ取り早いのは保険の見直しです。保険は住宅に次いで、人生で2番目にお金を支払うものだといわれています。にもかかわらず、余計な保険を入っているケースが結構あるのです。

30代にはお金を生み出す「時間」がある

―確かに、自分でも把握できていない支出は多々あります。

資産形成を行おうとする人は、「いくら儲かるか」という収入の面を気にする傾向にありますが、お金がないときほど、支出を気にするべきなのです。

さらに、資産形成をする上で意識していただきたいのは、次の方程式です。

将来の資産=時間×(収入-支出)+現在の資産

20、30代は「収入」も「現在の資産」も少ないので、お金がないと思いがちですが、将来の資産を増やせるだけの「時間」を持っています。50、60代と比べても本当は強いんです。

「時間」に「収入」と「支出」の残りをうまく掛ければ、将来の資産は増やすことができます。「収入」を増やすのはなかなか難しいですが、「支出」は今すぐ自分でコントロールすることができる部分です。

一時的な「収入」や「現在の資産」など目に見えることにとらわれるのではなく、「収入-支出」に気を付け、そこに時間をかけて資産形成法を進めていくことが、30代の皆さんがまずやるべきことではないでしょうか。

村野博基氏
村野博基氏
2004年に不動産投資をスタート。今では27室の不動産を所有し、年間の手取り家賃収入は2,400万円に上る。

2019年まで大手通信会社に勤務していたが、44歳でアーリーリタイアを実現。 現在では不動産投資セミナーで講師としても活躍しており、サラリーマンとして働きながら、不動産経営で成功するために意識すべきことなどについて、自身の経験をもとに伝えている。

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