年金を受け取ることができたとしても、企業を退職後は収入がガクッと落ちる。そのため、老後の生活に備えて早いうちからリタイア後の準備をしておくことが重要だ。ただある調査によると、日本人の退職準備は「要注意」水準となっている。将来のために日本人が今からどのようなことに取り組んでおくべきなのだろうか?

日本の「フィディリティ退職準備スコア」は「要注意」水準

退職準備
(画像=PIXTA)

米資産運用大手のフィデリティ投信が設立したフィディリティ退職・投資教育研究所が、興味深いデータを独自に公表している。それは、どれほど退職の準備が資金面でできているかを示す「フィディリティ退職準備スコア」という指標で、2019年秋の調査結果を最近発表している。

このフィディリティ退職準備スコアは、「退職までに用意できる資産額(推計値)」を「退職後の生活に必要な資産総額(推計値)」で割って算出されるもので、95ポイント超が「計画通り」、81〜95ポイントが「あと一歩」、65〜80ポイントが「要注意」、65ポイント未満が「警戒」に分類される。

フィディリティ退職・投資教育研究所によれば、国別の中央値は以下の通りだ。

<6カ国のフィディリティ退職準備スコア>※数値は中央値
日本:75ポイント
カナダ:77ポイント
米国:83ポイント
英国:73ポイント
ドイツ:73ポイント
香港:75ポイント

日本が突出して低いわけではないが、75ポイントは「要注意」に相当する数値で、何らかの対策が求められていると言える。ちなみに日本における年代別のフィディリティ退職準備スコアは以下の通りとなっており、特に若い世代に課題がある状況と言える。

<日本におけるフィディリティ退職準備スコア(世代別)>※数値は中央値
全世代:75ポイント
若年勤労者層(20〜38歳):67ポイント
中堅勤労者層(39〜54歳):77ポイント
高齢勤労者層(55〜75歳):85ポイント

またフィディリティ退職・投資教育研究所によれば、日本人のうち「退職までにいくら資金を用意すればいいかがわからない」と答えている人は52%に上るという。この割合は他国よりも高く、同研究所は「勤労者に対する資産形成の教育が、より重要であることを示唆している」としている。

日本人に求められる「資産構成の見直し」

フィディリティ退職・投資教育研究所が指摘するように、日本では働く人の資産形成に対する意識が低いことが課題の1つとして挙げられる。同研究所はフィディリティ退職準備スコアの改善に向けては「資産構成の見直し」などが必要であることを強調している。

日本人の保有資産における株式資産の比率は非常に低い。簡単に言えば、ほとんど投資にお金を回していないということだ。この状況を改善する必要がある。一般的に、株式投資や投資信託を保有すれば、リスクはあるものの、預金金利よりも高い利回りが期待できる。同研究所も「資産構成比率の見直しは重要」としている。

そして「複利効果」を考えれば、早い時期から中長期目線で投資を始めることが望ましい。この複利効果について、少し深掘りして説明しよう。

複利効果による恩恵、投資は「中長期」がポイント

複利効果とは、投資で得られた利益を再投資することで利益がさらに増えるというロジックのことを指す。投資している期間が長ければ長いほど複利効果による恩恵は大きくなる。

例えば100万円を投資するとする。年10%のリターンが得られ、そのリターンを全て再投資する場合、1年目は資産が100万円から110万円へと「10万円」増え、2年目は資産が110万円から121万円へと「11万円」増える。このように資産の膨らみ方がどんどん大きくなっていくわけだ。

そしてこれが10年間続くと1年間で得られるリターンは「24万円」となり、年間の投資成果は1年目の2.4倍にもなる。だからこそ投資は早い段階でスタートするべきなのだ。まさに「思い立ったが吉日」で、20代であっても30代であっても40代であっても、なるべく早めに始めることに越したことはない。

投資を始めるなら「投資信託」が1つの選択肢に

日本では2019年、「老後資金2,000万円問題」が波紋を広げた。端緒となったのは、金融庁の金融審査会がまとめた報告書だ。公的年金を収入の柱とするだけでは老後の生活資金が大きく不足するという内容で、日本人の間で将来不安が高まるきっかけとなった。

ただ企業勤めの人の場合、給与所得は一朝一夕には高めることは難しい。だからこそ、退職後に向けた経済的な準備としては、資産運用が不可欠であると言える。

資産運用にもさまざまな方法があるが、投資を初めて行うという人は「投資信託」(※略して「投信」とも呼ぶ)が1つの選択肢となる。投資のプロに運用を任せるというタイプの金融商品で、個別株に投資するよりも安定的な成果が得られやすいことが特徴であると言える。

「要注意」水準にある日本人の退職準備スコア。各個人のスコア改善に向け、早めに投資を始めてみてはいかがだろうか。