「サラリーマンは、株や投資信託で儲けようと考えるべきではありません」。

そう断言するのは、株式会社日本財託で不動産オーナー様への資産形成、リスクコンサルを中心に行い、入社から5年間で約3,000件の契約に携わってきたという櫻井隆志氏(54)だ。 櫻井氏はビジネスマンとして20年以上のキャリアを築くなかで、保険、銀行(証券)、不動産の3社を渡り歩き、常に個人の資産形成と向き合ってきた。

他方で本業とは別に、自身も32歳から不動産投資を開始。54歳となった今では保有資産が1億円に達する不動産オーナーでもある。

ただ、最初から順風満帆に資産を積み上げてきたわけではない。株式投資での失敗など自身が身銭を切って経験したこと、仕事の現場で実際に見聞きしたことを自らの糧とし、一般的なサラリーマンでも資産が形成できる「櫻井流」の投資スタイルが生まれた。

今回は櫻井氏のこれまでの投資経験を振り返ってもらいながら、新型コロナウイルスで先行き不透明な時代に、私たちサラリーマンが行うべき資産形成法を聞いた。 (取材日:9月1日)

櫻井隆志氏
(画像=櫻井隆志氏)

目次

  1. 20年間の家賃収入は8,000万円
  2. 社会人1年目の貯金を株で溶かす
  3. バブル崩壊を経験、それでも「不動産投資」の道へ
  4. 物件2戸完済でみえた「資産1億円」
  5. 入居者が室内で大麻を栽培!?20年間での不動産トラブル
  6. サラリーマンの投資は「リスク分散」と「長期的視点」が重要

20年間の家賃収入は8,000万円

―最初に現在お持ちの資産を教えてください。

東京23区内と川崎市に投資用で区分の中古ワンルームマンションを7戸と、名古屋と東京に自宅用マンションを1戸ずつ保有している状況です。

加えて積立型の保険に加入しており、60歳の満期時に1,000万円が受け取れます。

投資用マンションを今売却したとして、全7戸で大体8,000万~8,500万円、これに満期保険金の1,000万円と預貯金を入れて1億円程度の資産となります。

―不動産の運用状況はいかがでしょうか。

ワンルームマンションは新御徒町、蒲田、浅草、幡ヶ谷、池袋と、川崎、元住吉にあるのですが、月の家賃収入がおおよそ48万円で、年間では更新料を入れて620万円ほどになります。そこからローン返済を差し引くと手取りは年間400万円ほどです。ローン残高は約700万円ですね。

不動産投資は1998年に始めたのですが、そこから20年間での累計家賃収入額は約7,919万円でした。この収入から管理費やリフォーム費、固定資産税など経費を差し引いた手取り家賃収入額は5,485万円。元本と利息を含めたローン返済額が約4,425万円なので、手取り収入からローン返済額も差し引くと、この20年間で1,060万円が手元に残った計算です。

社会人1年目の貯金を株で溶かす

―なるほど。では最初から不動産をメインに投資をしていたのですか。

いえ、初めての投資は株でしたね。1989年に購入したのですが、この経験は私にとって苦い記憶となったと同時に、資産1億円に向け本格的に戦略を練るきっかけとなりました。

その前年、私は大手生命保険会社に新卒で入社したのですが、そのときはバブル絶頂期。

日経平均株価も日に日に上がっていました。入社して1年ほどが経ったある日、証券会社に勤務していた知り合いに株を買わないかと言われ、初ボーナスなどで貯めたお金計88万円を元手に、ソニーの株を購入したんです。

当時の私にとってはかなりの大金でしたが、さほど躊躇することはありませんでした。ソニーは世界的企業で、誰でも知っている会社です。日経平均株価も右肩上がりですし、大崩れすることは絶対にあり得ないと思っていました。そのため感覚としては「貯金」と同じで、あわよくば利益も上げられるんじゃないかというつもりで買いました。

―しかしながら、翌年の1990年からバブルが弾け、株価は暴落します。

ソニーの株も例にもれず暴落し、売るに売れなくなってしまいました。当時は本当にショックでしたね。とはいえ、サラリーマンとしての給与所得もあるので、無理に売ることはせず、そのまま持っていました。

その後2000年代に入ると、ITバブルの時代が到来。ソニーの株価は購入時の3倍以上の値を付けました。今となってはあの時なぜ売らなかったのかと思いますが、人間そう割り切れるものではありません。当時の私のなかで「まだ上がるんじゃないか」という欲があって、それがどうしても振り切れなかったのです。

そしてこの頃、ソニーは株式の分割を発表しました。世間的にもこれでさらに株価が上がるという雰囲気があったのですが、いざ分割したとたん、予想に反して真っ逆さまに下落してしまったんです。こうして私はまたもや損切りできず、いわゆる「塩漬け」にするしかありませんでした。

ソニーの株はその後も低空飛行を続け、2010年には2500円くらいまで下がってしまいました。私が保有していた200株は結局、2016年にアベノミクスで景気が回復してきたタイミングで売却し、何とか88万円は取り返すことができました。

結局、購入から売却まで26年間かかりました。株や投資信託などのように、自分の力ではどうにもならないところや、知識のないところにお金を置いておくのは怖いなと実感した出来事です。

バブル崩壊を経験、それでも「不動産投資」の道へ

―そこから不動産投資を始めたのはなぜですか。

やはり金融資産だけではリスクが大きいと感じたからです。金融機関に勤務した経験や、株での失敗から、経済の大きな波がくると、金融市場は誰にも予想できない動きをするということが身に染みて分かっていました。やはりこつこつと長期で掛けていくもの、現物のものが一番堅いと考えるようになったのです。現物資産のなかでも、リスクが少なく、サラリーマンでも始めることができ、長期にわたって収益を生み出してくれるものは何かを考えたとき、不動産だろうと思い、ワンルームマンション投資への一歩を踏み出したのです。

一方で、バブル崩壊により不動産投資で損失を出した人もみてきました。例えば、私が新卒だった当時、勤務先の40代半ばの部長が地方の駅前にある新築のアパートを2戸、7,000万円で買ったのですが、バブルの崩壊によりひどい目にあっていました。不況による自動車工場の撤退などで賃貸需要がなくなり、家賃をどれだけ下げても入居が付かない状態だったそうです。その部長はアパート購入時のローンのせいで定年まで働いても自宅すら買えないと嘆いていましたよ。

―そうした現実を見ていて、よく決断できましたね。

「東京・中古・ワンルーム」なら堅いと思ったからです。私が保険会社にいたころもそうでしたが、大手の会社にいると、地方の支店から東京の支店への転勤でも20人ほどの単身者が来るんですよね。会社からの家賃補助が6万円だとして、7万、8万円くらいのところに住もうとすると、東京だとワンルームしか選択肢がないんです。そういうのをみていると、東京でワンルームを所有している大家は強いなと感じていました。また、先の部長の例もあるので、新築よりは中古だと思いましたね。

櫻井隆志氏2
(画像=櫻井隆志氏)

物件2戸完済でみえた「資産1億円」

―なるほど。そこからどのようにして資産を増やしていったのですか。

1戸目は1350万円ほどの物件をフルローンで購入しました。しかしローンの償還表をみると、家賃収入のうち、元本が減っているのは3割ほどで、ほとんど金利と保証料を支払っている状態だったんです。当時の貸出金利は現在より2%ほど高い3.5%前後でしたからね。家賃は毎月もらえているものの、この状況で入居者がいなくなったりすると大変だなと思っていました。

私は65歳定年時に、年間約1000万円の収入を実現すると目標を立てていましたから、今後も資産を拡大していかなければ到達できません。次は安い物件を買って早く借り入れのない物件を持たなければと思い、2000年に約900万円で1989年築の物件、2002年に約1,000万円で1992年築の物件を立て続けに購入しました。この2戸はボーナスを全額投入するなどして、2005年までに繰り上げ返済できました。その後毎月12、13万円の家賃収入が手元に入るようになってからは、月々のキャッシュフローがかなり楽になりましたね。

今思い返すと、ここが資産1億円への一番のターニングポイントだったように思います。 当時はあまり繰り上げ返済する人はいなかったので、この点に気づけたのは良かったですね。

入居者が室内で大麻を栽培!?20年間での不動産トラブル

―20年以上オーナーをしていて、トラブルはありましたか。

3戸目に買った浅草の物件で、購入してすぐ、入居者が逮捕されたことがありました。管理会社から一報が入り、何事かと思ったのですが、どうやら私の物件が住居としてではなく、大麻栽培の温室として利用されていたようなんです。こうなると当然、警察による捜査が入り、証拠保全で部屋が使えない状態になってしまします。私の場合は保証会社がついていたので、正式な退去日になるまではきちんと家賃収入はありましたし、原状回復もきれいに行ってもらったので、驚きはしましたが、結果として金銭的にはとりわけ損失はありませんでした。

もうひとつ、川崎の物件を買った際のことですが、購入時には大手電気機器メーカーの工場が近くにあったのですが、その後撤退してしまったんですね。この結果、近辺の賃貸需要が一気になくなってしまったのですが、幸いなことに、工場の跡地にショッピングモールができたのです。このショッピングモールは川崎駅の北側にあり、私の物件も同様に北側でした。北側は今でもある程度栄えているのですが、南側は工場の撤退後どんどんさびれてしまいました。これは運が良かったといった感じですが、ひとつの賃貸需要に頼るのは危ないと学びましたね。

サラリーマンの投資は「リスク分散」と「長期的視点」が重要

―不動産投資で資産を築くためのポイントは何でしょうか。

まずは「東京・中古・ワンルーム」を選ぶことです。私自身、これまで不動産オーナーとして大きなトラブルもありませんし、親友にも紹介していますが誰からも苦情を受けていません。

おすすめなのは、できるだけ若いうちから開始することです。

例えば今週、契約されるお客様で、旦那様が26歳、奥様が27歳で共稼ぎのご家庭の方がいらっしゃいます。さらに、奥様は来月出産予定です。子供が生まれるタイミングで買うことを勧めるのには理由があります。仮に15年間で購入物件のローンを繰り上げ返済しながら完済したとします。そのときには生まれた子供は高校生となり、教育費の負担が大きくなる時期ですが、同時に家賃収入が丸々入ってくるタイミングでもあります。このご夫婦が購入したのは築年数が浅めの物件なので、15年後といえども、年間で100万円ほどの家賃収入が入ってくる見込みです。つまり、家賃収入が学資保険の代わりになるということです。加えて子供が独立した後も不動産は残るので、そこから先、自分たちの老後の収入源にもなります。

ポイントは将来の家賃収入の使い方を具体的に想像すること。そうすることで、繰り上げ返済にも力が入ると思います。

―コロナ時代、私たちサラリーマンが取るべき投資戦略を教えてください。

リスクを可能な限り抑えて、長期の視点を持って投資をするということですね。今回の新型コロナウイルスによる株価の乱高下でも分かった通り、私たちサラリーマンの浅はかな知識では、瞬間的には運よく儲かるかもしれませんが、長期的にみて資産形成ができるかというと疑問です。

とはいえ、資産のすべてを東京のワンルームに固定してしまうのも考えものです。やはりある程度リスクを分散させておくことをおすすめします。手元に置く預金は2、300万円あれば十分だとおもいます。例えばがんなどの病気になってお金が必要となったとしても、200万円もあれば、当座は凌げるでしょう。それに加えて、変額年金や不動産投資など、長期で増えていくものを組み合わせるのです。着実に資産形成をしようとする場合、まずはそうした「ベース」を確保することが重要だと思います。


櫻井 隆志
(株)日本財託 ライフプランニング部 部長 櫻井 隆志(さくらいたかし)


1998年に旧安⽥⽣命保険に⼊社、個⼈融資部、営業教育部勤務の他、名古屋、銀座、丸の内支社にて国内社の⽣保営業を経験。 全国表彰多数獲得、17年間の勤務の間に明治⽣命との合併を経験。 2005年には、⾦融⾃由化の波を受け、銀⾏窓販という新しいチャネルへの挑戦を決意して⼤⼿地銀に転職。 その後、トータルライフソリューション企業を⽬指すという⽇本財託の企業理念に共感し、新規事業として、⽣保代理店を⽴ち上げる。 オーナー様への資産形成、リスクコンサルを中⼼に5年間で約3,000件の契約を獲得。
資格: 宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、相続知識検定マスター