不動産投資は、賃料収入による収入の増加や減価償却費による所得税・住民税の節税などがメリットです。その中でも高所得者の相続税対策としての不動産投資は、有効な選択肢となる場合があります。今回は、不動産投資で相続税が節税できる仕組みと重要性について解説していきます。

基礎控除額の変更や小規模宅地等の特例制度の見直しで相続税への対策が重要に

不動産投資
(画像=warakorn/stock.adobe.com)

2015年と2018年に相続税が改正されたことに伴い、相続税を支払う必要がある人の割合は改正以前より大きく増加傾向です。公益財団法人生命保険文化センターによると、2018年における相続税の課税件数の割合は8.5%にも達しています。被相続人一人あたりの相続税額は1,813万円と非常に大きな税負担です。

<死亡者数に対する相続税課税件数の割合>

年度被相続人数
(死亡者数)
相続税が課税された被相続人数相続税が課税された人の割合納税者の相続人数
2015年129万510人10万3,043人8.0%23万3,555人
2016年130万8,158人10万5,880人8.1%23万8,550人
2017年134万567人11万1,728人8.3%24万9,576人
2018年136万2,470人11万6,341人8.5%25万8,498人

注:死亡者数は厚生労働省「人口動態統計」
出典:公益財団法人 生命保険文化センター

上述したように相続税は、2015年と2018年の税制改正で大きく変更しています。まずこの2つの変更点を把握し相続税対策の重要性を再確認していきましょう。

2015年の税制改正~基礎控除額の変更と、最高税率の引き上げ~

2015年に行われた相続税の改正の大きな変更点は以下の2点です。

  • 基礎控除額の変更
    改正前)5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)で算出
    改正後)3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で算出

  • 最高税率が引き上げられた
    改正前)最高税率50%・控除額4,700万円
    改正後)最高税率55%・控除額7,200万円

改正以前の基礎控除額は「5,000万円 +(1,000万円×法定相続人の数)」で算出されていました。しかし改正後は「3,000万円 +(600万円×法定相続人の数)」と大幅に引き下げられています。税負担の増加とともに相続税の対象となる案件も増加。また相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられています。

以下の表のように税構造も変化し各法定相続人の取得財産が2億円を超える場合は、税率が段階的に引き上げられることとなったのです。

各法定相続人の取得金額改正前の税率と控除額改正後の税率と控除額
1,000万円以下10%010%0
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,700万円50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

例えば相続税課税価格が5億円で法定相続人が子ども2人の場合、各法定相続人が法定相続分で相続を行った際の相続税額の変化を試算しその影響を確認してみましょう。

【改正前】
・相続税課税価格
5億円-{基礎控除額5,000万円+(1,000万円×法定相続人2人)}=4億3,000万円

・子ども一人あたりの相続税額
2億1,500万円×税率40%-控除額1,700万円=6,900万円

【改正後】
・相続税課税価格
5億円-{基礎控除額3,000万円+(600万円×法定相続人2人)}=4億5,800万円

・子ども一人あたりの相続税額
2億2,900万円×税率45%-控除額2,700万円=7,605万円

試算では、およそ10%程度相続税の負担額が増加していることが確認でき、多額の財産を持つ富裕層ほど相続税への対策の重要性が高まっているといえるでしょう。

2018年の税制改正~小規模宅地等の特例制度の見直し~

相続税の負担額が増加する中、2018年の税制改正では相続税の抜け道ともいえた「小規模宅地等の特例制度」にメスが入っています。小規模宅地等の特例制度は、同居している配偶者や子どもなどの「持ち家のない親族」が自宅の土地や店舗、アパート・駐車場などの事業用地を相続した場合、最大730平方メートルまでの土地の評価額を最大80%減額することができる制度です。

相続財産の中で比較的大きな金額を占める自宅不動産などの評価額を大きく圧縮できるため、相続税対策を行ううえで重要な制度でした。しかしこの制度を悪用しマイホームを親族や資産管理会社に見かけ上譲渡することで故意に「持ち家のない親族」となることで相続税を軽減する事例が相次ぎました。そのため2020年現在、親族や資産管理会社への譲渡では「持ち家のない親族」とは見なされません。

つまり小規模宅地等の特例制度の特例を受けることはできなくなってしまったのです。

相続で重視したい3つの準備

相続税は、相続が開始された時点で税額が確定するため、事前に準備・対策を行っておくことが重要です。相続の対策や準備には以下の3つを意識すると良いでしょう。

  • 相続税評価額の圧縮
  • 遺族の生活保障
  • 納税のための現金

相続税評価額の圧縮

相続税の納税額を減少させるには、その源となる相続税評価額を圧縮することが有効です。相続税評価額は、資産をどのような形態で持つかによって評価額が異なります。現預金は、額面のままの金額が相続税評価額となりますが土地購入による資産の組み替えを行った場合、この土地は公示価格の80%となる相続税路線価で評価されるのです。

例えば1億円を現金で相続してしまうと相続税評価額は1億円のままですが、1億円の土地を購入することで評価額を8,000万円とすることができます。

遺族の生活保障

土地を購入することにより相続税を軽減することは可能です。しかし土地を所有しているだけでは固定資産税などの経費の発生や流動性に欠けるため、遺族への生活保障としての効果が薄くなってしまいます。そこで土地を購入する代わりにアパートやマンションなどの投資用不動産を利用することも方法の一つです。これにより「貸家建付地」として評価額が算出されます。

相続税評価額を圧縮することができるほか、賃料収入による遺族の生活保障を見込むことも可能です。貸家建付地は、以下の計算式で算出します。

  • 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権割合と借家権割合は、地域ごとに定められています。そのため実際には路線価図などで確認する必要がありますが借地権割合は30~90%、借家権割合は30%程度です。空室の発生などによって賃貸割合が減少してしまうと相続税評価額を削減する効果も薄れてしまうため、賃貸割合を維持することが大切です。

納税のための現金

不動産などを利用することで相続税課税額を圧縮することができます。しかし流動性に欠けるため相続税の納税のための現金を別途工面しておくことが必要です。納税のための現金の準備方法としては「生前贈与」や「生命保険の利用」が選択肢となります。

・生前贈与
一般贈与(暦年贈与)であれば年間110万円まで非課税枠を利用することが可能です。そのため長期間にわたり計画的に行うことができれば相続税評価額を圧縮することで相続税の節税効果を得ることが期待できます。

・生命保険の死亡保険金
受取人の固有財産となり遺産分割協議の対象外となるため自由に処分することができます。そのため相続税納付のための資金準備としては有効な方法です。しかし生命保険の死亡保険金は契約者・被保険者・受取人の設定よって相続税・所得税・贈与税に税区分が変化します。例えば契約者と被保険者と受取人が異なる場合、死亡保険金は贈与税に区分されてしまうのです。

贈与税は、110万円の基礎控除以外差し引けるものがないため、税額が高額となり準備額が不足する恐れがあります。生命保険を利用して相続税の納税資金を用意する場合は、契約形態による税区分の変化に注意しましょう。

相続の発生と同時に税額がほぼ確定するため、事前の準備が必須

相続税に関する税制改正が相次いでおり、対象者や負担額が増加傾向です。そのため次世代に多くの資産を引き渡すための相続税対策の重要性が増してきています。相続税対策には、さまざまな選択肢があるため、資産規模に応じた対策を選択することが大切です。相続税評価額が基礎控除額をわずかに超える程度であれば生前贈与や小規模宅地等の特例制度の利用をまず検討してみましょう。

資産の額が大きくなるにつれて、不動産などを利用し相続税評価額を圧縮することが重要です。しかし不動産のように流動性に乏しい資産へ組み換えを進めてしまうと遺族の生活保障を弱体化させてしまう可能性があります。例えば投資用不動産を利用した場合であれば、相続税の圧縮効果と同時に賃料収入による遺族の生活保障も両立することが期待できるでしょう。

相続税は、相続発生時には税額が確定するため、相続税の負担額を定期的に確認し事前の対策・準備を進めておくことが大切です。

(提供:THE Roots

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