日本で上場企業の早期・希望退職者の募集が急増する中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が深刻な欧米諸国では、大手企業の大量リストラが相次いでいる。 一部の国は雇用調整助成金等の経済措置を延長しているが、コロナ禍の長期化が見込まれる現在、経済への影響を懸念する声もある。

海外上場企業もリストラが止まらない

海外上場企業もリストララッシュ Shell、ディズニー、ダイムラー…航空産業は130万人が失業?
(画像=wolterke/stock.adobe.com)

航空、ホスピタリティ、石油、自動車など、コロナで大打撃を受けた産業ほど、コスト削減に向けた大量リストラが加速している。以下は「氷山の一角」だ。

航空産業は大幅な減便から回復できていない上に、追加支援の行方が不透明な状況が続いている。米4大航空会社による自主的な退職者および一時休職者は、9月の時点で合計15万人に達した。

非営利旅行協会USトラベル・アソシエーションは「追加支援政策が実施されない場合、最終的に130万件の雇用が失われる」と予想している。長引く先行きの不透明さから、アメリカン航空とユナイテッド航空は、さらに合計3万人以上の解雇を検討中だ。

カリフォルニアを含む一部のテーマパークがいまだに閉園状態のウォルトディズニーは、9月に約2.8万人の解雇を発表した。主に米国内のテーマパークの従業員が対象で、そのうち67 %はパートタイムだという。

同社の3~6月の損失は47億ドル(約4,962億6,3 60 万円)である。主要部門の一つでリゾート関連業務を行うパークス・エクスペリエンス・プロダクツの収益は、前年同期比で85%減少するなど苦戦を強いられている。

世界最大の英・蘭合併石油会社であるロイヤル・ダッチ・シェルは、全従業員の10%に相当する約9,000人を解雇した。ロイターが関係者から入手した情報によると、同社は「プロジェクト・リシェイプ」という組織再編戦略を立ち上げ、最大40%の石油・ガスの生産コスト削減を計画している。温室効果ガス排出量の少ないエネルギー事業への転換を目指す同社にとって、大幅なコスト削減は重要な課題であり、コロナを機に大量リストラに踏み切った。

コロナ以前からリストラが始まっていた自動車産業では、小型商用車(LV)の売上高減などを理由に、2020年5月までの半年間で 、米国・カナダ・中国・英国・ドイツの5ヵ 国で合計3.8万件の雇用が失われた。そこにコロナが追い打ちをかけ、独車載部品サプライヤーのコンチネンタルが3万人、ロールスロイスが9,000人、BMWが6,000人など、続々とリストラを発表した。

ダイムラーは1.5万人の解雇を計画しているものの、同社の人事部長はドイツ通信社DPAの取材で、実際の解雇数がそれを上回る可能性を指摘している。多数の自動車メーカーがコロナ禍とEV開発コスト、そしてディーゼル関連コストに頭を抱えているが、コロナ以前から業績が悪化していたダイムラーにとっては、とりわけ厳しい試練となりそうだ。

また、同社には2019年9月に合意した、子会社メルセデス・ベンツのディーゼル排ガス不正の和解金15億ドル(約1,583億8,200 万円)も重くのしかかっている。

雇用救済策延長でも止まらない?英国ではすでに31万人以上が失業

9月以降、米国で大型リストラが相次いでいる理由の一つは、経済救済の枯渇だ。同国の失業率は4月の14.7%をピークに好転し、 経済活動の再開に伴い 9月には7.9%に回復した。

しかし3月に制定された2兆ドル(約211兆1,760 億円)規模の緊急経済救済パッケージ「コロナウイルス支援・救済・経済補償(CARES)法」は、すでに一部失効している。その他の補償の失効が目前に迫っているにも関わらず、2020年11月11 日現在、追加資金をめぐる協議はまとまっていない。このまま追加資金が確保できない場合、リストラのさらなる加速は回避不可能だろう。

一方、雇用救済策の長期的な効果に 疑問を唱える専門家もいる。米シンクタンク、タックス・ファウンデーション(Tax Foundation)国際プロジェクト部門のヴァイスプレジデント、ダニエル・バン氏は、「期間が長引くほど効果が減少し、経済の外形に影響を与える可能性がある」との懸念を示している。

一例を挙げると、イギリス国家統計局(ONS)のデータからは、雇用救済策が2021年3月まで延長された英国でも、すでに31万人以上が失業していることが明らかになっている。8月以降は雇用主側の負担比率が増加していること、2回目の延長発表が遅かったことなどを理由に、9月までの3ヵ 月だけで約24万人が失業している。これは2009年5月以来、最大の増加となった。 現在も約250万人が休業補償を受給しているが、支援が完全に打ち切られた後、これらの労働者のうち、どれぐらいの割合が職場に復帰できるのかは定かではない。さらに欧州では、第二波の影響で経済活動が再び低迷している。英国のEU離脱移行期間の終了を目前に、「合意なきEU離脱」が現実味をおびているなど、雇用市場にとって不安材料が多い。

リストラで変化する雇用市場と労働者の心理

世界規模の雇用環境の悪化は、雇用市場や一部の労働者の心理にも影響を及ぼしている。

多数の失業者が手っ取り早く収入を得る手段として、ギグワーカー(Gig Worker)として就労し始めた結果、「需要過多で賃金が過去最低水準に落ち込んでいる」とのギグワーカーの証言もある。ギグワーカーとは、アプリを介して単発(Gig)の仕事(Work)を請け負う労働者を指す。配車アプリのドライバーや飲食宅配サービスの配達員などが典型例だ。

また長期間にわたり休業手当などを受給している労働者の中には、「働かずにお金を貰えるなら、もう働きたくない」と、体調不良などを理由に欠勤を続ける者もいる。このような労働意欲の低下は、過去にフィンランドなどで行われた「ベーシックインカム(Universal Basic Income/最低限所得保障制度)」の実験結果に通じるものがある。実験で支給されたのは最低限の生活を保障する金額だったが、労働意欲の低下を示唆する結果が報告された。

このように、コロナの影響は我々が想像している以上に、広範囲に及んでいるようだ。失業や所得の減少が、肉体や精神に与える影響への懸念も高まっている現在、「コスト削減とリストラのバランス」は、企業にとって深刻なジレンマとなるだろう。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部
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