40歳になると新たに介護保険料が天引きされ、給料の手取り額が減ってしまう。そんな介護保険料は、一体どのように計算されているのだろうか。この記事では介護保険料に関する基礎知識について、詳しく説明していく。

菅野陽平
監修者・菅野陽平
日本最大級の金融webメディア「ZUU online」編集長。株式会社ZUUM-A取締役。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)

目次

  1. 介護保険制度は2000年に創設された三大社会保険制度の1つ
  2. 介護保険料の計算方法とは?
  3. なぜ年々介護保険料率は上がっている?保険料率は青天井となるのか
  4. 制度に関するさらなる議論が必要

介護保険制度は2000年に創設された三大社会保険制度の1つ

給与明細
(画像=BBuilder/stock.adobe.com)

介護保険制度は以前の日本には無かった制度だ。創設されたのは2000年で、現在では三大社会保険制度の1つとして数えられている。高齢化によって介護を必要とする人が増える昨今、この制度は少子化や核家族化が進む日本社会において高齢者の介護を社会全体で支えることを目的としている。

介護保険制度では、40歳以上の人に介護保険料を負担してもらうことになっている。「40歳以上」というルールについて厚生労働省は、主に以下の2点を理由として挙げている。

・ご自身も老化に起因する疾病により介護が必要となる可能性が高くなること
・ご自身の親が高齢となり、介護が必要となる状態になる可能性が高まる時期であること

ちなみに介護保険の財源は介護保険料のほか、国と地方の公費などでも賄われている。実際に介護保険を利用できるようになるのは原則65歳以上になってからで、必要な介護の度合いに応じて食事や入浴の支援、リハビリなどを受けることが可能だ。

介護保険料の計算方法とは?

このように、40歳から負担することになる介護保険料だが、負担金額はどのようにして決まるのだろうか。具体的には「ご自身の標準報酬月額×介護保険料率」で計算される。介護保険料率は、勤め先で加入している健保組合などによって決まってくる。

つまり40歳から納付する必要が出てくる介護保険料は、その人の所得や勤務先によって変わってくるわけだ。そのため、同じ年収の人でも介護保険料の金額に違いが出ることがある。また、介護保険料は企業と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」となるため、従業員側が実際に負担するのはこの保険料率で算出された保険料の半分となる。

大企業の健保組合で構成される「健康保険組合連合会」の2019年度における介護保険料率の平均値は、1.573%であった。

介護保険料率は年々上がり続けており、健康保険組合連合会における介護保険料率の平均値の推移は以下のとおりだ。2019年度も前年度比で0.055ポイント増加する結果となっている。

<健康保険組合連合会における介護保険料率の平均値の推移>
2010年度:1.173%
2011年度:1.254%
2012年度:1.320%
2013年度:1.359%
2014年度:1.407%
2015年度:1.411%
2016年度:1.420%
2017年度:1.463%
2018年度:1.518%
2019年度:1.573%

また、中小企業が加入する「協会けんぽ」においても介護保険料率は上がり続けている。1.730%だった2019年度の介護保険料率は、2020年度には0.060ポイント増の1.790%まで上がった。

<協会けんぽにおける介護保険料率の推移>
2010年度:1.500%
2011年度:1.510%
2012年度:1.550%
2013年度:1.550%
2014年度:1.720%
2015年度:1.580%
2016年度:1.580%
2017年度:1.650%
2018年度:1.570%
2019年度:1.730%
2020年度:1.790%

なぜ年々介護保険料率は上がっている?保険料率は青天井となるのか

介護保険料率は年々上がっているわけだが、その理由は何であろうか。答えはシンプルだ。高齢化が進むことによって高齢者医療への拠出金額の総額が増える一方、現役世代が少なくなっていることが理由として挙げられる。

健康保険組合連合会によると、2022年以降は団塊世代が後期高齢者入りすることから介護保険制度における拠出金の負担がさらに増え、保険料率の大幅な引き上げを余儀なくされるという。また、2022年度には介護保険料率は2.0%程度まで上がると試算している。

健康保険組合連合会は、2022年に後期高齢者の人口が急増することを「2022年危機」と呼び、早急な対応が必要不可欠だと国などに対して警鐘を鳴らしている。

国も少子高齢化の進行をくい止めようとさまざまな施策を打ち出しているが、少子高齢化の流れに歯止めが掛かっていない状況だ。このままでは介護保険料率が青天井となる可能性があるとの指摘もあり、日本が抱える社会課題の1つにも挙げられている。

制度に関するさらなる議論が必要

この記事では日本の介護保険制度について解説してきた。40歳になって突然天引きが始まって驚く人がいるかもしれないが、介護保険料は社会全体で高齢者の介護を支えるために重要なものだ。

ただ前述のとおり、介護保険制度には少子高齢化に伴う課題もある。そのため、制度に関するさらなる議論が今後必要になってくるだろう。