近年日本でも盛んに研究・開発が進められているAI(人工知能)は、投資の世界にも大きな変化をもたらした。今回は、AI投資の最新動向と不動産投資・金融投資における活用法、投資にAIを利用するメリット・デメリットについて詳しく解説していく。

菅野陽平
監修者・菅野陽平
日本最大級の金融webメディア「ZUU online」編集長。株式会社ZUUM-A取締役。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)

目次

  1. AIで変化する投資の世界
  2. AIで不動産投資はどう変わる?
    1. 不動産投資の未来を予測するAI
    2. 不動産の評価額を査定してくれるAI
  3. 不動産投資でAIを賢く活用しよう
    1. AIによるキャッシュフローの試算を投資に活かす
    2. AI査定は正確ではないケースもあるため要注意
  4. AIで金融商品への投資はどう変わる?
    1. 商品選びをお任せできる投資一任型のAI
    2. 商品選びの参考にできるアドバイス型のAI
  5. AIを投資で活用する2つのメリット
    1. 初心者でも投資を始めやすくなる
    2. より正確なシミュレーション結果がわかる
  6. AIを投資で活用するデメリット
  7. AI投資で自分に合った投資をスタートしよう

AIで変化する投資の世界

AI
(画像=phonlamaiphoto/stock.adobe.com)

近年、世界各国で研究・開発が進められ、大きな注目を集めているAI。人間とAIが本格的に協働する時代を目前にして、投資の世界においても、例外なくAIの活用が進められている。

AI(Artificial Intelligence)とは、学習、推論、判断といった知能を備えたコンピューターシステムのことで、日本語では人工知能と翻訳される。AIの特徴は、膨大なデータを取り込み、最適解を模索してみずから学習できることだ。

実はAIに関する研究は今に始まったものではない。すでに1950年代後半から1960年代にかけて、第一次AIブームと呼ばれる動きが起こっている。その後1980年代の第二次AIブームを経て、2000年代から現在にかけては第三次AIブームの真っただ中にある。

そんなAIを投資に活用するメリットは、膨大な過去のデータに基づき、感情を挟まない客観的な視点で投資に関するアドバイスを受けられる点だ。

たとえば不動産投資では、投資期間が長期にわたることから、収支のシミュレーションが重要とされている。しかし、膨大なデータをもとに正確な未来予測を作成するのは、人間にとって困難な作業だ。

一方、AIは大量のデータの分析や、それに基づくシミュレーションを非常に得意としている。このように、人間にとって時間や手間のかかる作業をAIに一任することで、投資家はより高度な投資判断に専念できるだろう。

現在では、投資家がいくつかの質問に回答するだけで、自動的に金融商品への投資を代行してくれるタイプのAIも登場している。このようなサービスは、ロボアドバイザー(通称ロボアド)と呼ばれている。

ロボアドの登場により、投資家自身に知識や経験がなくても、投資用の口座と資金を用意して質問に答えるだけで、簡単に投資ができるようになった。ロボアドは、投資初心者にとっては積極的に活用を検討したい便利なサービスといえるだろう。

AIで不動産投資はどう変わる?

不動産投資の分野では、すでにAIの活用が進められており、先進的な不動産投資家や不動産の売買を考えている人に大きなメリットをもたらしている。

AIの導入によって、不動産投資の在り方はどう変わっていくのだろうか。不動産投資で活用されている2種類のAIの例を挙げながら、わかりやすく解説していく。

不動産投資の未来を予測するAI

現在よく用いられているのが、不動産投資の未来、つまり候補となる投資用不動産を購入した場合の将来的なキャッシュフローを予測してくれるAIだ。おもに投資用不動産の購入を目的として、ローンによる借り入れを検討している人向けにサービスが提供されている。

投資用不動産を購入する際、成功のための重要なポイントとなるのが、将来の賃料や空室率の推移だ。AIを活用したシステムに、購入を検討している不動産の情報を入力すれば、その後数十年間にわたる数値を目の当たりにできる。AIが算出してくれる数値には、たとえば「賃料」と「空室率」の収益変動予測、運営経費の想定値などがある。

また、投資の参考として、気になっている物件があるエリアの人口動態などの各種統計データや、周辺物件の分析レポートなどを見ることも可能だ。AIのシミュレーションでわかりやすく未来が「見える化」できれば、より投資判断がしやすくなることは間違いない。

AIを活用したサービスは、不動産投資の経験がある人にとっても、不動産投資の初心者にとってもメリットがある。将来のキャッシュフローが可視化されることで、初めて不動産投資をする人にとっては、不動産投資のハードルが下がるだろう。

今後は、不動産投資を検討する際の判断材料として、AIの存在感がますます大きくなっていくと予想される。

不動産の評価額を査定してくれるAI

不動産の立地や間取り、建築年数といった基本情報を入力すると、AIが自動で不動産の評価額を査定してくれるサービスも増えている。類似物件の取引事例などのデータと、入力した情報を照らし合わせ、AIが不動産の推定査定額を計算する仕組みだ。

不動産査定にAIを用いれば、不動産の売却を検討し始めたとき、気軽に査定額の目安を知ることができる。不動産にはひとつとして同じものはなく、従来であれば査定額を知るためには不動産会社や不動産鑑定士に依頼する必要があった。

しかし、不動産会社や不動産鑑定士に依頼する場合、依頼主の個人情報を提供しなければならず、査定にも数日から数週間程度の時間がかかることも少なくなかった。

査定を依頼すると不動産会社から営業の電話がかかってくることもあり、こういった不安感も査定のハードルを上げていた。

一方AIは、情報を入力するとすぐに査定額を計算してくれることに加え、個人情報を入力したり不動産会社と電話でやり取りをしたりする必要がない。そのため、「今すぐ売るつもりはない」「将来に備えて査定額を知っておきたい」「大体の評価額だけを知りたい」という人にとっても利用しやすい。

ただし、AIによる査定は完璧ではなく、あくまで目安だ。不動産のリフォーム状況や管理状況、売買に関わる事情等など、AIが知りうるはずのない情報を評価額に反映することはできない。そのため、現状ではAIによる査定は参考程度に利用し、実際の査定額とは異なる可能性があることを理解しておこう。

不動産投資でAIを賢く活用しよう

ここまで、不動産投資の分野で活躍する2種類のAIを紹介してきた。次に、実際にAIを不動産投資に活用する方法と、AI査定を利用する際の注意点について解説する。

AIによるキャッシュフローの試算を投資に活かす

未来を予測するタイプのAIを活用すれば、投資用不動産のキャッシュフローを数十年先まで試算できる。将来のローン返済リスクが可視化されることで、より安心感や納得感をもって不動産投資をスタートできるだろう。

複数の投資用不動産のうち、どれを購入するか迷っている場合も、AIによるシミュレーションは大いに活用できる。それぞれの物件を購入し、数十年にわたって保有した場合のキャッシュフローが、一瞬で算出されるからだ。

数字で根拠を確認しながら投資判断をすることで、不動産投資で得られるリターンを最大化できるだろう。

今後投資用不動産の購入を検討する場合は、資産形成の確実性を上げるためにも、AIを積極的に利用していきたい。

AI査定は正確ではないケースもあるため要注意

不動産の売買においては、さまざまな事情が複雑に絡み合っている。そのため、AIによる不動産査定を利用する時は、必ずしも正確な査定額が算出されているとは限らないことを認識しておきたい。

AIが考慮するのは、あくまで類似物件の取引事例や立地、築年数といった過去のデータだ。しかし、不動産の状態は個々の管理状況等によって異なり、さらには売り主・買い主双方の事情も売買価格に関係してくる。

買い主が個人的に物件に思い入れを感じれば、査定額以上で売れる可能性もある。一方で、売り主が早く手放したいと思っているところ、買い主が管理状況等を理由に価格交渉をしかけてくれば、査定額より低い値段で手を打たなければならないケースもある。

AIによる査定は必ずしも正確ではなく、実際の売却価格と差異が出る可能性があることは十分考慮しておきたい。売却に当たって正確な査定額を知りたい場合は、最終的には不動産会社や不動産鑑定士に依頼するといいだろう。

AIで金融商品への投資はどう変わる?

ここまでは、不動産投資に焦点を当ててAIがもたらす影響について解説してきた。では、金融商品への投資の場合はどうだろうか。

現在、金融商品への投資には「投資一任型」と「アドバイス型」という2種類のAIがおもに利用されている。ここからは、この2種類のAIの特徴について詳しく見ていこう。

商品選びをお任せできる投資一任型のAI

初心者や投資に時間を割けない人におすすめなのが、投資をAIにお任せできる「投資一任型」だ。投資一任型AIでは、投資家が一定の手数料を負担することで、金融商品の銘柄選びから購入・売却・ポートフォリオ作成・リバランスまですべてをAIが投資家の代わりに行ってくれる。

投資一任型AIを活用する場合、投資家はまず簡単な質問に答える。するとAIがリスク許容度などを判断し、ポートフォリオを組んでくれる。

ちなみに、投資におけるポートフォリオとは、購入する金融商品の組み合わせや比率のことだ。具体的には、資産運用の目標額やリスクに対する考え方などをもとに、「どの銘柄をどの比率で購入するか」という組み合わせを決めることを指す。

ポートフォリオに納得すれば、そのまま運用をスタートできる。そして、定期的なリバランスまでAIが担ってくれる。

リバランスとは、投資を始めてからのポートフォリオの微調整のことだ。それぞれの金融商品の評価額が変わると、どうしても当初設定した資産配分の比率にずれが生じる。その際に、ずれた比率を元通りに修正するために、資産の再配分を行うことをリバランスと呼ぶ。

従来、ポートフォリオを組んだり、リバランスをしたりするのは投資家の役割だった。しかし、情報収集や分析が難しく、経験のない投資初心者にとってはハードルの高い作業だった。

しかし、投資一任型AIなら、一定の手数料を支払うことで手間と時間のかかる作業をAIに代行してもらえるメリットがある。

商品選びの参考にできるアドバイス型のAI

金融商品への投資では、「アドバイス型」と呼ばれるAIが用いられることもある。アドバイス型AIとは、投資期間や許容できるリスクといった質問に答えることで、AIがおすすめの投資対象や銘柄に関してアドバイスをしてくれるサービスだ。

アドバイス型AIは、あくまでデータに基づいて投資家にアドバイスを提供することを目的としており、実際の売買の手続きは投資家が行うことになる。ポートフォリオの提案はしてくれるが、運用をしてくれるわけではない。当然、リバランスも投資家自身が行う必要がある。

アドバイス型AIのメリットは、多くの場合無料でサービスを利用できる点だ。投資一任型AIを活用すると手数料がかかるが、アドバイス型AIなら手数料が発生しない。

そのため、できるだけ手数料を節約したい人や、AIのアドバイスを参考にしつつ最終的には自分で売買したいと考えている人には、アドバイス型AIが向いている。

ただし、売買や値動きのチェック、リバランスを投資家自身が行う以上、投資に関する専門知識は必要不可欠だ。そのため、ある程度知識と経験を積んでから利用した方が、納得感のある資産運用ができるだろう。

AIを投資で活用する2つのメリット

投資家がAIを活用するメリットは大きい。つづいて、投資家がAIを活用する代表的なメリットを2つ紹介する。

初心者でも投資を始めやすくなる

AIを活用することで、これまで投資に苦手意識があった初心者でも、投資を始めやすくなるというメリットがある。

投資一任型AIなら、一定の手数料を支払うことで、ポートフォリオ作成から売買手続き、リバランスまでを一任できる。投資家は口座と資金を用意するだけで、自動的に資産運用を始められる仕組みが整っている。

投資の勉強をする時間が惜しい人や、AIに投資をお任せしたい人にとって、大きなメリットといえるだろう。

より正確なシミュレーション結果がわかる

投資判断をする上で、シミュレーションは非常に重要だ。経験や感覚だけに頼るのではなく、数字の根拠を確認することで、より納得感のある投資先選定ができるだろう。

シミュレーションは人間にとっては時間のかかる面倒な作業であり、AIにとっては得意分野だ。データに基づいて将来のシミュレーションをしてくれるAIの力を借りれば、投資家はより高次の投資判断に時間を割くことができる。

不動産投資で成功した投資家は、2棟3棟と不動産を買い増していくことが多い。そうなると、どんどん管理が複雑になり、シミュレーションも難しくなる。早いうちからAIを活用し、シミュレーションに慣れておくことで、一室所有から複数棟所有へのステップアップも容易になるだろう。

不動産投資に注力しているなら、特にAIを積極的に活用していきたい。

AIを投資で活用するデメリット

投資家にさまざまなメリットをもたらしてくれる便利なAIにも、注意すべきデメリットがいくつかある。最大のデメリットは、AIが行う投資が確実に成功する保証がない点だ。

AIは、データをもとにアドバイスの提供や資産運用を行うが、AIが提案したアドバイスに従えば必ず利益が出るというわけではない。AIに任せていた投資で元本割れする可能性も十分にある。

いくらAIがアドバイスをしたり、購入する銘柄を選定したりしたとしても、損失の最終的な責任を負うのは投資家自身だ。投資に失敗したからといって、AIや金融機関が損失の責任を取ってくれるわけでない。初心者がAIを活用して投資を始める際には、このことはしっかり理解しておきたい。

AIは確かに投資家にとって便利なサービスだが、現状では自分の資産運用をすべてAI任せにするのは危険といえるだろう。

また、投資一任型AIを利用する場合は、手数料にも注意が必要だ。投資一任型AIの手数料は特別高くもないが、決して安いともいえない。せっかくリターンが得られても、手数料を差し引くと相殺されてしまうという可能性も十分にある。

手数料を支払ってでもAIに売買手続きやリバランスをお任せするのか、リターンを最大化するため自分で資産運用をするかは、悩みどころだ。

さらに、本格的に投資に取り組みたい場合、投資一任型AIに任せっきりにしていると、投資の経験や知識、ノウハウが身につきにくい点もデメリットのひとつだ。

投資の経験を積みたい場合、すべてを丸投げするのではなく、部分的なAIの活用にとどめるなど、自分なりに工夫していきたい。

AI投資で自分に合った投資をスタートしよう

投資の世界において、今後ますますAIの存在感は大きくなっていくだろう。不動産投資の分野では、AIの登場によって投資用不動産の将来のキャッシュフローを予測できたり、不動産の評価額を自動ですばやく査定できたりといった便利なサービスが提供され始めている。

また、金融商品への投資では「投資一任型」と「アドバイス型」という2種類のAIが登場した。中でも、投資をすべて任せられる投資一任型AIを活用すれば、初心者でもほったらかしで投資をスタートできる。

AIの発達は、今まで知識不足やリスクへの不安から投資をためらっていた人にとって、投資の世界に踏み出すチャンスとなるだろう。また、投資経験者は、面倒な作業をAIに任せることで、より高度な投資判断が可能となる。

AIを活用した投資には、メリットもデメリットもあるが、自分に合った方法でAIを活用していくようにしたい。