歯医者は、歯が痛くなったら行けばいい……。多忙を極めるビジネスパーソンにとって、虫歯や歯周病などの歯の病は、ふだんさほど意識しているものではないでしょう。しかし、「30代をすぎたら要注意」と歯科のドクターは警告します。注意すべきは虫歯よりも歯周病リスク。歯周病は、30代のうちは自覚症状なしに進行し、気づくと、歯がぐらついたり抜け落ちてしまったりすることもあるのだそうです。

この記事では、KRD Nihombashiで歯科のアドバイザリーを務める、東京医科歯科大学名誉教授、総合南東北病院オーラルケア・ペリオセンター長の和泉雄一氏にお話をお聞きし、年代別の歯のリスクの特徴や、歯周病のサイン、自分でできる予防策について解説します。

▽教えてくれた人

和泉雄一
和泉雄一(いずみ ゆういち)先生
東京医科歯科大学 名誉教授、総合南東北病院オーラルケア・ペリオセンター長。KRD Nihombashiアドバイザリー。専門は歯周病治療、歯科保存治療、歯科インプラント治療。歯周病と全身との関わり、歯周組織再生治療、歯科レーザー治療を専門とし、多数の難治症例を手掛ける。歯周病学・歯周治療学の第一人者。

目次

  1. 代表的な歯のリスク――虫歯と歯周病
  2. 年代別の歯のリスク!30代が分かれ目?
    1. 10代・20代・30代・40代の歯のリスク
    2. 20代から歯のトラブルが増加するワケ
    3. 自覚症状なしに症状が進行する30代
  3. “出血”は歯周病のサイン!進行すると口臭の原因になることも
  4. いますぐできる!歯科医がすすめる正しい歯磨き(ブラッシング)の仕方
    1. 歯磨き粉選び:研磨剤の少ないものを選ぼう
    2. ブラッシング:ゴシゴシ磨くのはNG! 歯肉の近くをていねいに
    3. 歯磨き(ブラッシング)のタイミング:毎食後すぐでなくても大丈夫。ゆっくりていねいに磨く
    4. 毎食後のうがいは効果絶大
    5. 歯ブラシ以外に活用したいアイテム:デンタルフロス、歯間ブラシと舌クリーナー
  5. 20代・30代の歯のお手入れが将来を左右する

代表的な歯のリスク――虫歯と歯周病

専門医に聞く健康投資#01
(画像=KRD Nihombashi)

歯のリスクというと、「虫歯」を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、30代以降に注意すべきは、むしろ「歯周病」リスクです。はじめに、代表的な歯のリスクである虫歯と歯周病について簡単に説明します。

虫歯とは、歯に付着した細菌の代謝産物によって歯が壊される病気です。歯に穴があき、穴がどんどん深くなるにつれ、激しい痛みを感じます。対して、歯周病とは、歯の土台である歯肉(歯ぐき)と歯の間の溝で細菌が繁殖し、歯肉とその周囲に炎症が起き、骨が溶ける病気です。歯周病は、最初は「歯肉炎」として始まり、「歯周炎」にまで症状が進むと、骨が溶け始めます。放置していると、最終的に歯がグラつき、抜け落ちてしまう怖い病気です。

▽虫歯

虫歯

▽歯周病

歯周病

年代別の歯のリスク!30代が分かれ目?

虫歯も歯周病も、言葉として知らない方はいないでしょう。そして虫歯は、あなたの人生において、とてもなじみのある言葉かもしれません。毎日、虫歯予防のために歯を磨いていることと思います。

この虫歯と歯周病については、じつは年代ごとにリスクがあることがわかっています。20代、30代、40代で変化する、年代別の歯のリスクについて少し、解説しましょう。

10代・20代・30代・40代の歯のリスク

10代から20代は、主に虫歯で歯を失う時期です。虫歯のイメージが強いのは、この頃に親や教師から「虫歯を防ぐために歯磨きをしなさい」と指導される機会が多いためです。

しかし、30代以降は歯周病リスクに注意が必要です。30代はちょうど、放置していた歯肉炎が歯周炎へと移行する時期です。歯周炎になると、自覚症状がなくても、歯を支える骨がどんどん溶け始めます。この時、歯周炎に気づかず放置すると、40代になると歯がグラつき始め、50代以降にポロッと歯が抜けるリスクが高まります。

▽歯肉炎と歯周病

歯肉炎と歯周病

20代から歯のトラブルが増加するワケ

歯のトラブルが増加するのは、20代以降といわれています。その理由の1つとして、国の歯への健診制度に課題があります。

日本では、1歳半健診や3歳児健診で、赤ちゃんの口腔内の状態をしっかりチェックします。その後も、幼稚園・小学校・中学校・高校の間は毎年健診があり、虫歯や歯肉炎、口腔内の異常があれば歯医者に行くよう指導されるため、口腔内の状態は良好に保たれます。

しかし、高校卒業以降は、健診を受ける人がぐっと少なくなります。大学や会社の健康診断では、口腔内のチェックまでせず、アンケートのみで終わらせることも少なくありません。

このように、20代以降の口腔内の管理は、個人に任されている状態なのです。歯科医師による客観的な確認、指導はおおよそなくなってしまうため、20代から歯のトラブルが発症しやすく、かつ放置されてしまう現況があります。

自覚症状なしに症状が進行する30代

虫歯の場合、痛みをともなうことが多く、早めに歯医者に行く人が多いでしょう。しかし歯周病は、自覚症状がないまま進行します。

特に20代・30代のうちは歯周病が発症していることに気づきにくく、40代になって歯が突然グラつき始め、あわてて歯医者に行く人が多い傾向にあります。

“出血”は歯周病のサイン!進行すると口臭の原因になることも

自覚症状なしに進行することが多い歯周病ですが、注意していれば、歯周病のサインに自分で気づくことができます。

代表的な歯周病の初期症状は、歯肉(歯ぐき)からの「出血」です。健康な歯肉なら、歯磨き(ブラッシング)をしたぐらいでは、出血しません。歯磨き粉を口からゆすいだ時、赤色が混じっていたり、全体的に茶色っぽかったりする人は要注意です。歯肉が炎症を起こし、出血しやすい状態になっている可能性があります。

歯周病の最初のサインといわれる出血ですが、喫煙習慣がある人は、歯周病が進行していても出血が少ないケースがあります。タバコのニコチンが歯肉の血管を収縮させるため、出血しにくい状態になっているためです。ですから、喫煙習慣がある人は、出血がないからと安易に自己判断できません。注意したいところです。

さて、この歯周病ですが、症状が進むと、やがて歯ぐきと歯の間にポケットと呼ばれるすき間ができます。この中に汚れがたまり、細菌が繁殖すると、歯ぐきに炎症がおきます。この時、ポケットに溜まった細菌や代謝産物が、口臭の原因になることがあります。

そのため、口臭が酷くなったと感じた時も、歯周病を疑いましょう。

いますぐできる!歯科医がすすめる正しい歯磨き(ブラッシング)の仕方

20代、30代のいまから歯周病を予防するため、どのようなことに取り組めばいいのでしょうか?やはり日ごろからの歯磨き(ブラッシング)は効果的といえます。ただし、歯周病も予防できる正しいブラッシングの仕方を知っている人は多くありません。そこで、歯科医としておススメしたい、正しいブラッシングの仕方や活用したいアイテムを紹介していきます。

歯磨き粉選び:研磨剤の少ないものを選ぼう

よく質問される歯磨き粉についてですが、特に「研磨剤」の多く入った歯磨き粉は要注意です。これを使ってゴシゴシと力を入れて歯を磨くと、歯の表面を削りとってしまいます。

まずは歯磨き粉を使わずに、歯を1本1本ていねいに磨くようにしましょう。そして歯の表面がつるつるになる感覚を覚えましょう。歯磨き粉を使うと、なかに含まれている芳香剤によって、あまり磨けていないのに、さっぱりして磨いた気になってしまいがちです。それから歯磨き粉を使ってていねいに磨きましょう。研磨剤の入っていない水歯磨きもおすすめです。

そして、50代60代以降の方の場合は、歯ぐきが退縮し歯の根元が出てしまうので、歯の根元が虫歯にならないようフッ素が高濃度に配合された歯磨き粉がおすすめです。フッ素は酸により溶け出した歯の表面の再石灰化を促進するといわれています。年齢を重ねた歯を補強する意味では効果があるといえるでしょう。

また、冷たいものが触れた時や歯ブラシでこすった時に歯が痛む症状を知覚過敏といいますが、知覚過敏を抑える歯磨き粉があります。これは市販のものでも効果があるといえます。知覚過敏の症状がつらい時は、そういった歯磨き粉を活用するのもいいでしょう。

ブラッシング:ゴシゴシ磨くのはNG! 歯肉の近くをていねいに

ブラッシングのポイントは、歯の上半分ではなく、歯肉(歯ぐき)に近い方の下半分をゆっくりやさしく磨くことです。歯の上半分は、食事中に洗浄され、じつは意外にきれいな状態に保たれています。大切なのは、歯肉に近い下半分のところ。ここに溜まった汚れや細菌を落とすことです。

歯磨き(ブラッシング)のタイミング:毎食後すぐでなくても大丈夫。ゆっくりていねいに磨く

一般に毎食後の歯磨き(ブラッシング)が推奨されていますが、忙しい場合は1日2回でも十分です。最低1日1回は絶対に磨き、時間をかけて歯の1本1本をていねいにブラッシングしましょう。余裕がある時は2回磨くとよいでしょう。このブラッシングのタイミングとしては、食後すぐでなくてもかまいません。ただし、食後は口をゆすぐようにしておきましょう。

注意したい点は、就寝前には必ずブラッシングを行うことです。夜眠っている間は、口腔内の温度が高くなり、細菌が繁殖しやすい環境になります。そのため、寝る前には必ずブラッシングをし、口腔内の状態をよくしておくことが大切です。

毎食後のうがいは効果絶大

うがいをすると、歯磨き(ブラッシング)をしなくても、歯についた大きな汚れを洗い流せます。そのため、朝や昼にブラッシングをする時間がない人は、うがいだけは絶対にするよう習慣づけましょう。

歯ブラシ以外に活用したいアイテム:デンタルフロス、歯間ブラシと舌クリーナー

歯と歯の間は、汚れが溜まりやすい場所です。歯ブラシだけではなかなか汚れがとれないので、デンタルフロスや歯間ブラシを活用しましょう。若いうちは、歯と歯のすき間が少ないため、デンタルフロスを2~3日に1回でかまいません。歯と歯のすき間が気になるようになったら、毎日デンタルフロスや歯間ブラシを使いましょう。

【参考】厚生労働省 e-ヘルスネット デンタルフロスの使い方

また、歯周病を感がるとき、舌の状態にも注意しましょう。舌の表面が白くなっている場合、それはすべて舌の溝に付着した細菌です。歯ブラシでこすると舌に傷をつけてしまう恐れがあるため、舌クリーナーを活用してください。1日1回、奥から手前へとそうっと動かすと、舌の汚れや細菌を一掃できます。

▽舌クリーナーの使い方

舌クリーナーの使い方

20代・30代の歯のお手入れが将来を左右する

歯は見た目年齢に大きく影響を及ぼします。歯が汚れていたり、歯にすき間ができたりすると、自信を持って笑えなくなることも起こりえます。口内環境が悪化すると口臭の原因ともなり、コミュニケーションにすら自信を失ってしまうこともあるでしょう。

本稿では、これら歯を失いかねず、コミュニケーション力にも影響を及ぼす大きな要因に、虫歯とならんで歯周病があることを解説しました。しかし、この、歯周病は自覚しにくいのが厄介です。歯のすき間が目立つような、症状が進行してからあわてて対策をすることも多く、この場合、通院も回数が必要で、時間がかかり、場合によっては大きな処置を行わないといけないこともあり得ます。

ですから、歯の健診の機会が少なくなる20代から、自分の歯の状態には気を配り、歯周病が進行しやすい30代のうちに、予防のための具体的な行動を起こすことが大切です。

健康で美しい歯は、さわやかさの象徴であり、自信にもつながります。歯の健康を保つことは、ビジネスや日常生活にいい影響を及ぼすでしょう。日ごろからの歯の手入れはもちろん、定期的な歯の健診を積極的に行うようにしましょう。

>>あわせて読みたい

30代は見えない危険信号に注意!知られざる“歯”と健康リスク-専門医に聞く健康投資#01
「歯のリスク」は「死のリスク」につながる?歯周病が及ぼす全身疾患への悪影響とは-専門医に聞く健康投資#02
健診で“歯のリスク”の早期発見を!30代・40代から始める健康投資-専門医に聞く健康投資#03

※KRD Nihombashiは健康保険の使用ができない、自由診療の健診施設です。 健診は、スタンダード、ライト、「歯・目・血」、プレミアム、レディースの各コースをご用意しており、 料金はスタンダードAコースで13万7500円、Bコースで12万1000円、プレミアムでは男性コース22万円、 女性コースは24万8000円となっています。各コースともに、70項目以上の検査項目を実施し、 受診者さまの健康管理をサポートいたします。料金の詳しくは以下をご確認ください。
・KRD Nihombashi 健診の料金 https://www.krd-nihombashi.com/service/price.php
・KRD Nihombashi Email:info@krd-nihombashi.com