日本は「長寿大国」と呼ばれています。実際の統計からも日本は他国と比べると、長生きで健康的な国と言えるでしょう。

一方で、こうした日本人の健康を支える社会保障は限界をむかえていると言われています。こうした現状について世界の国々の制度などとも比較しながら、解説していきます。

増え続ける社会保障関係費、2040年度に190兆円に

社会保障,膨張対策
(画像=PIXTA)

2019年度の日本の一般会計予算を見てみると、7年連続で過去最大を更新し、100兆円を超えています。なかでも大きな割合を占めているのが、「社会保障関係費」で30兆を超えています。

また内閣府などの試算によると、2040年の社会保障給付費は全体で最大190兆円、医療費は約68兆円(2018年は39.2兆円)になると予想されています。

これらの数字を見てもわかるように、日本において医療・年金・福祉などに当てられるお金は、毎年増えつつあり、将来的には財政が維持できなくなるという声もあります。

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(画像=内閣府資料より編集部作成)

日本の社会保障制度やヘルスリテラシーに問題がある?

日本では公的保険への加入が義務付けられており、すべての国民が公的保険に加入しています。そのため、本来は高額である医療費の負担がおよそ1割から3割で済みます。保険適用外の治療や継続的に費用のかかる治療を必要とする病気やけがをしなければ、大きな家計の負担となる可能性はそれほどなく、医療を受けることができます。

では、もしこうした保険がなかったらどうでしょうか。

治療や検査に高額な費用が必要だとしたら、人々はなるべく病院に通わないように努力するでしょう。食生活に気を配ったり、適度な運動をしたりして健康を保つようにするはずです。つまり「いつでも治療を受けられる」「病気になっても生活に困ることが少ない」という環境が、日本人の健康意識を低くしている一因とも考えられます。

また、日本人は健康に関する情報を経て、その正誤性を判断し活用する意識や能力、いわゆる「ヘルスリテラシー」が低いとされています。調査法について偏りを指摘する声があるもののヨーロッパ基準の調査によれば、他のアジア・欧米諸国と比較すると低得点という調査もあります。   こうしたヘルスリテラシーが低い要因の一つに学校教育をあげる声もあります。諸外国では早い時期から、ヘルスリテラシーを養うための教育がなされているといいます。それらと比較すると、日本で現在行われている保健の授業では、ヘルスリテラシーを身に付けるのは難しく、より体系的に自身の身体について学ぶ機会が必要だとされています。

海外の社会保障制度と健康意識

こうしたヘルスリテラシーの違いは社会保障制度の違いにも現れているよう見えます。以下で、具体的に各国の社会保障制度と健康意識を見ていきましょう。

・アメリカ

アメリカ人は「自分で自分の体を守らなければならない」という意識を持っている人が多いとされています。そして、その要因は、公的保険制度が日本と全く異なるためともいわれています。

アメリカでは公的保険に加入できるのは、65歳以上の高齢者や身体障がい者、低所得者など、一部の人に限られています。そのため多くの人は、自身の所属する会社や団体を通して民間の保険に入っています。

しかし、病気やけがをして病院に通えば、高額な医療費を支払わなければなりません。そのためなるべく病気やけがをしないよう、健康に気を使う人が多いのです。

実際に、予防という観点から健康関連市場、サプリメント・ビタミン剤業界は年々成長しています。米国最大規模の健康栄養食品専門の小売企業「GNC」の店舗数は1980年代初期の1000店から2020年には、アメリカ国内で5,900店舗、海外50拠点と合わせると約8,000店舗となっています。

・スペイン

ブルームバーグの健康な国指数ランキングで、2019年に1位を獲得した国はスペインです。スペインには公的保険と民間保険の2種類あり、それぞれ利用できる病院が違います。

公的保険はスペインに居住して働き、社会保険料を納めている人なら誰でも利用できます。しかも医療費は無料(薬代は自己負担あり)です。ただし利用者が多いため、予約が取りにくいことが難点です。また、主治医は決まっており、そこ以外での受診はできません。

一方、民間保険は民間保険に対応している病院であれば、待ち時間がなく、自由に選ぶことができます。このように非常に充実した保険制度があるスペインですが、近年では国民の健康意識も上がっているようです。

IHRSA(国際ヘルス・ラケット&スポーツクラブ協会)の調査によると、スペインはフィットネスクラブの会員数が世界第5位。充実はしていても弱点のある公的保険を考え、なるべく健康でいようとする姿勢が見受けられます。

・カナダ

カナダも、とても健康意識の高い国です。日本同様国民全員が公的保険に加入できますが、診療までの待ち時間が長く、実際に治療を受けられるのは1週間後という場合もあるそうです。専門医は家庭医を通さないと紹介してもらえず、家庭医も不足している状態です。

こうしたことから、カナダでは「自分の健康は自分で守る」という意識が強く、オーガニックスーパーが人気で、ヨガやジム通いをしている人も多くいると言われています。先述したOECDの調査でも健康状態の自己評価については、カナダがトップです。

自分の健康は自分で管理

海外と比較して、日本では社会保障が整っているからといって、健康への意識が低いままでいてもよいのでしょうか?

健康意識を高めることなく日常生活を送った結果、生活習慣病などにかかり心身の負担を感じるのは、他ならぬ自分自身です。健康リテラシーを高め、今の自分の身体の状態を把握して対応するなど、自分で自分の身体を管理することは、本来自身の理想の人生を実現する上ので「大前提」ともいえるでしょう。

現在では、健康づくりや病気予防のために、個々人の医療・健康情報を収集し一元的に保存するしくみである「PHR(Personal Health Record)」を活用する動きも出てきています。

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日本人は気軽に治療が受けられる環境であるために、健康意識が低くなりがちです。しかし、現状の制度が将来も維持される保障はありません。

万が一、社会保障制度が崩壊したとしても、「自身の健康は自分で管理する」という意識を普段から持っておけば、将来の健康面での経済的負担を軽減し、自分が苦しむことも、大切な人に迷惑をかけることも少なくなるでしょう。

「未来の日本の健康」をまずは自分の健康状態を自分で把握し、マネジメントすることから始めてみてはいかがでしょうか。