2021年に延期された東京五輪の開催に黄信号が灯っている。7月の開幕予定まで半年と迫る中、東京など都市圏を中心に新型コロナウイルスの第3波が猛威を振るっているからだ。五輪が中止されればGDPへの影響は甚大なものとなり、さまざまな業界が大ダメージを受ける。

目次

  1. 東京五輪開催を巡る菅政権・JOCの最新動向
  2. 五輪中止なら4兆~8兆円程度の経済的損失に?
  3. 東京五輪が中止された場合に影響を受ける業界は?
    1. 航空業界:世界各国からの選手団や観客の来訪機会がゼロに
    2. バス・鉄道・タクシー業界:航空業界と同様にダメージ
    3. 飲食業界・宿泊業界:観戦者の消費機会が丸ごと失われる
    4. その他の業界も大ダメージ
  4. コロナ禍、五輪中止でも生き残れる企業は?

東京五輪開催を巡る菅政権・JOCの最新動向

五輪中止はほぼ確実!?経済的損失は8兆円の試算予想で影響を受ける業界は?
(画像=kovop58/stock.adobe.com)

2021年、果たして東京オリンピック・パラリンピックは開催されるのだろうか。安倍首相に代わって総理大臣の職に就いた菅義偉首相は、1月4日に開いた年頭の記者会見で、五輪を予定通り開催することを目指すと明言した。

菅首相は感染者が増えないよう万全の対策を打つことを強調し、「世界中に希望と勇気をお届けする」と語った。しかし実際のところ、日本政府はこれまでにもコロナ対策を実施してきたが、第3波の発生を防げなかった。そう考えると、菅首相の発言はあまり説得力を持たない。

新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、感染拡大の抑え込みに成功すれば、確かに五輪開催の可能性は高まるだろう。しかし、新型コロナウイルスの変異種の感染者が世界的に増加するなど、依然として先行きは不透明な状態だ。

こうした中、国際オリンピック委員会(IOC)側も開催に弱腰になりつつある。同委員会のある委員は、イギリスの公共放送BBCが行ったインタビューの中で、2021年の東京五輪について「予定通り開催できるか確信できない」と述べている。

こうしたことを鑑みると、残念ながら五輪開催はかなり危うい状況となっていると捉えて差し支えないだろう。

五輪中止なら4兆~8兆円程度の経済的損失に?

2021年に延期された東京五輪が中止された場合、日本経済はどのくらいの経済的損失を受けるのだろうか。

2020年3月、SMBC日興証券は東京五輪が中止された場合の経済損失について試算した結果を公表している。その試算によれば、経済損失額は約7兆8,000億円に上り、GDP(国内総生産)を1.4%程度引き下げることになるという。

また、関西大学の宮本勝浩名誉教授も五輪中止の場合の経済損失を試算しており、その金額は4兆5,000億円規模になるとしている。宮本名誉教授は、仮に五輪が簡素化されて開催された場合の経済損失も試算しており、その金額は約1兆4,000億円に上るという。

東京五輪が中止された場合に影響を受ける業界は?

それでは、2021年に延期された東京五輪が中止された場合、具体的にはどのような業界に影響が出るのだろうか。

航空業界:世界各国からの選手団や観客の来訪機会がゼロに

大きな影響を受ける業界の一つは航空会社だ。簡素化されることなく、予定通り東京五輪が開催される場合、日本は世界各国から選手団や観戦客を迎えることとなる。しかし中止された場合、当然こうした選手団や観戦客の来訪機会がなくなり、JAL(日本航空)やANA(全日本空輸)は売り上げに大ダメージを受ける。

バス・鉄道・タクシー業界:航空業界と同様にダメージ

陸路での選手の移動を担うバス会社や鉄道会社、タクシー会社も、航空会社と同様に売り上げを得る機会を失う。コロナ禍によって人の移動が減ったことで、交通業界の多くの企業がすでに経営状況を悪化させており、五輪の中止は業績の低迷に追い打ちをかけると考えられる。

飲食業界・宿泊業界:観戦者の消費機会が丸ごと失われる

飲食業界や宿泊業界にとっても、五輪中止は痛い。仮に競技場に観客を入れて五輪が開催された場合は、競技が実施される地域で観戦者が多くのお金を落とす。しかし五輪が中止されれば、こうした観戦者の消費機会は丸ごと失われてしまう。現状のコロナ禍でも苦しんでいる業界にさらに追い討ちをかけることとなる。

その他の業界も大ダメージ

五輪中止の影響はこうした特定業種の企業だけにとどまらない。

五輪に合わせたキャンペーンやプロモーションを実施しようと、五輪のスポンサー企業などは積極的にテレビCMやウェブ広告を打った。しかしこうした取り組みは、今のところほぼ空振りに終わっている。

東京五輪の開催で国内景気が回復することを見越し、設備投資に踏み切った製造業の企業や人材を増やそうと採用を強化した企業も少なくない。五輪が中止されれば、こうした先行投資や人件費の増加もただの重たい負担として残る結果となる。

コロナ禍、五輪中止でも生き残れる企業は?

今のところ、東京五輪が延期計画の通りに開催されるかどうかは、誰にも分からない。ただここまで開催が危うい状況になっている今、企業には開催中止のシナリオを念頭に置いた準備が求められる。

つまり「五輪が開催されればラッキー」くらいのスタンスで、五輪が開催されなくても別の形で売り上げを見込める戦略・計画を立てなければならない状況だといえる。

新型コロナウイルスの感染拡大も止まらない状況の中、企業の経営陣が難しい舵取りを迫られているのは事実だ。しかしポジティブに考えれば、この危機を新たなビジネスの開拓のチャンスと捉えることもできる。

コロナ禍、そして五輪の開催が中止されても生き残る企業は、こうした考え方ができる企業ではないだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部

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