糖尿病という病名を聞いたことがない人はいないでしょう。一方で、具体的にどのようなリスクがあるのか知らないという人はたくさんいます。糖尿病は命にかかわる恐ろしい病気でありながら、自覚症状なく進行していくという特徴があります。

また、一度糖尿病になってしまうと、治療で劇的に回復するということがありません。糖尿病と診断されれば、生活は一変します。仕事にもプライベートにも、多大な影響が及ぶことは間違いありません。

この糖尿病、高年齢の方やとくに太りすぎの方がかかりやすい病と思われがちですが、じつは20代、30代の若い人にも予備軍が多くいる、と専門医は話します。毎日アクティブに働くビジネスマンにも、じつは身近な病といえるのです。

この記事では、KRD Nihombashi院長にして糖尿病に詳しい田中岳史氏にお話をお聞きし、30代だから考えたい、糖尿病のリスクについて、くわしく解説します。

30代から考える健康投資#1
(画像=ZUU online編集部)

目次

  1. 糖尿病とは?命にかかわる怖い病気
  2. 糖尿病の3つの要因・発症の仕組み
    1. 糖尿病の要因1:糖の代謝の悪化
    2. 糖尿病の要因2:酸化と糖化が進行する
    3. 糖尿病の要因3:自律神経のバランス
  3. 糖尿病が引き起こす深刻な合併症
    1. 糖尿病性腎症(とうにょうびょうせい・じんしょう)
    2. 糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせい・もうまくしょう)
    3. 糖尿病神経障害(とうにょうびょうせい・しんけいしょうがい)
  4. 糖尿病と死亡リスク・健康リスク
  5. 糖尿病が「沈黙の病」といわれる理由
  6. まとめ 糖尿病リスクを正しく知ることが大事

▽教えてくれた人

田中岳史
田中岳史(たなか たかし)先生
KRD Nihombashi院長。順天堂大学医学部卒業。ケンブリッジ大学留学後、行徳総合病院院長などを経て現職。日本消化器病学会指導医、日本外科学会認定医、日医認定産業医、宇宙航空医学認定医。

糖尿病とは?命にかかわる怖い病気

糖尿病は、血液中の血糖(ブドウ糖)の濃度が高い状態が持続する病気です。高血糖な状態が長く続くことで、さまざまな恐ろしい合併症が引き起こされます。日常生活に支障が出るのはもちろんのこと、一生涯の後遺症が残ることもあり、最悪の場合は死に至るケースも。

現在、日本国内の糖尿病の患者数は約1,000万人といわれており、12人に1人は糖尿病ということになります。そのうち、75%は治療を受けていますが、25%は自分が糖尿病だと知らないまま病気が進行している状況にあります。

「健康診断で問題なければ大丈夫だろう」と早合点するのは危険です。あとでくわしく解説しますが、糖尿病は自覚症状なく進行し、健康診断でも発見できないケースがあるからです。

糖尿病だと気づかないうちに病気が進行し、自覚症状が表れてから受診した時には、すでに後戻りができない状態になっていたという人も少なくありません。後戻りできない状態になると、一生涯、合併症に悩まされ続けたり、命のリスクにさらされたりします。

逆にいえば、未病の段階で必要な対策を講じれば、後戻りも可能です。糖尿病は油断すれば怖い病気ですが、しっかり予防すれば、対策ができる病気なのです。

糖尿病の3つの要因・発症の仕組み

死に至るケースもありうる糖尿病は、早期発見ができれば対策も可能です。この糖尿病について、3つの要因と発症の仕組みを解説します。

糖尿病の要因1:糖の代謝の悪化

食事をしたりお菓子を食べたりして、糖分が体内に入ると、胃腸で吸収されブドウ糖となって血液の中に入ります。その後、ブドウ糖はインスリンというホルモンによって組織に取り込まれ、エネルギーに変えられ、心身の活動をサポートします。

しかし、インスリンが足りなかったり、インスリンの効きが悪かったりすると、ブドウ糖が組織に取り込まれず、血液中に溢れていくことになります。

このように、インスリンの量、または効果に問題がある場合、血液中の血糖が高い状態が持続し、糖尿病になります。高血糖な状態が持続すると、血管をはじめ、組織や内臓に深刻なダメージが蓄積されます。

インスリンは膵臓(すいぞう)で作られるため、インスリンの量が減るのは、膵臓のインスリン生成能の低下によって引き起こされます。一方インスリンの働きが悪くなるのは、内臓脂肪型肥満などが原因でインスリン抵抗性が増加することで引き起こされます。

糖尿病の要因2:酸化と糖化が進行する

呼吸をして体内に酸素が取り込まれると、一部は生命維持に使われ、一部は活性酸素となります。活性酸素は、感染症ウイルスをはじめとした病原菌や異物から体を守ってくれる働きがあります。一方で、多すぎると自分自身の身体を攻撃してしまう特性があります。このような状況を酸化(錆びる)といいます。

余剰な活性酸素があると、老化が進んだり、内臓の機能が衰えたり、さまざまな悪影響が出ます。そして、活性酸素によって膵臓がダメージを受けると、膵臓のインスリン生成能が低下し、十分なインスリンが作られなくなります。これによって、血液中の血糖がエネルギーに変換されなくなるのです。また活性酸素は血管障害を起こすので、血液循環が損なわれ、末梢組織でのエネルギー消費に支障をきたします。

糖化とは、いわば“焦げる”状態をイメージするとよいでしょう。余剰な血糖がたんぱく質と結合し、AGE(終末糖化産物)になることを指します。AGEは簡単にいうと、「糖分が主体の毒」と表現できます。AGEによって血管や内臓がダメージを受けると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞、がんなど命にかかわる病気のリスクが高まります。

高血糖になると酸化と糖化が進み、身体がボロボロになり、目に見えないところで全身の老化現象が進んでいくのです。

糖尿病の要因3:自律神経のバランス

自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあります。交感神経が働いている時は、「アクセルを踏み込んだ状態」にたとえられます。一方、副交感神経が働いている時は、「アクセルをゆるめた状態」にたとえられます。

糖尿病に悪影響が出るのは、交感神経が働いている状態が続くことです。緊張を強いられる場面などで交感神経が優位な状態になると、インスリンの分泌が抑制されます。すると、血液中の血糖が組織に取り込まれず、高血糖状態が持続します。

一方、副交感神経が働いてリラックスモードになると、インスリンが分泌され血液中の血糖がちょうどいい量に調整されます。糖が組織に取り込まれ、エネルギーとして利用されやすい状態となるわけです。

このような自律神経の働きから、本来は「仕事モード:リラックスモード=50%:50%」が理想といわれています。このバランスが崩れ、仕事モードの緊張状態が続くと、高血糖になりやすく、糖尿病のリスクが高まるわけです。自律神経を整えるには、食事・睡眠・運動と普段の生活におけるバランスが大切です。

糖尿病が引き起こす深刻な合併症

続いて、糖尿病が引き起こす深刻な合併症について解説します。糖尿病自体は、血糖を下げればよく、対策もできますが、本当に恐ろしいのはこの糖尿病合併症です。確認していきましょう。

糖尿病性腎症(とうにょうびょうせい・じんしょう)

糖尿病性腎症は、糖尿病が引き起こす腎臓の障害です。腎臓は体内の老廃物や毒を排泄する働きがあります。そのため、腎臓に障害が起きると、老廃物や毒がどんどん体内に蓄積され、内臓や脳など全身に影響が広がり、命にかかわる状況になります。

腎臓がうまく機能しなくなると、機械が代わりにその働きを担うほかありません。これが人工透析です。人工透析になるともう後戻りはできず、一生人工透析を続けるか、腎臓移植を受けるしか選択肢がなくなります。

糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせい・もうまくしょう)

糖尿病で目につながる神経や血管がボロボロになると、最悪の場合、失明してしまうリスクがあります。失明原因の第1位は緑内障(約25%)ですが、第2位は糖尿病(約20%)です。

糖尿病で目の神経や血管が傷つけられ、自覚症状が現れる頃には、後戻りはできません。視力を回復させることはできず、治療してもよくて現状維持がやっとです。出血を止めることはできても、健康な状態に戻すことは二度とできないのです。

糖尿病神経障害(とうにょうびょうせい・しんけいしょうがい)

糖尿病神経障害は、ブドウ糖から変化したソルビトールが増加し、神経の中に溜まってパンクする病気です。

糖尿病血管障害になると、血液が末梢に行き渡らなくなります。血液が届かないと、身体の一部分が壊死し、ミイラのように黒ずんでシワシワになります。多くは手足の指先で起こります。その状態にまでいたると、切断しなければならないことがほとんどです。

普通は血の巡りが悪ければ、自分で痛みや違和感に気づけます。しかし、糖尿病で神経障害があると、痛みを感じる神経機能が麻痺してしまいます。そのため、痛みを感じないまま、気づくと指先が真っ黒になっていることが起こりうるのです。

糖尿病と死亡リスク・健康リスク

糖尿病は高血糖が持続する状態を指す言葉であり、厳密には、糖尿病が原因で死ぬことはありません。恐ろしいのは、糖尿病が引き起こす合併症です。

血管の老化が進み、硬くなった状態を動脈硬化といいます。糖尿病によって動脈硬化になると、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが通常の2~4倍高まります。脳梗塞は脳の血管が、心筋梗塞は心臓を養う冠動脈がつまる病気です。酸素不足から脳組織や心筋組織の壊死に至るものです。どちらも突然死のリスクがある、死亡率の高い病気です。

また、糖尿病によって血液循環が悪くなると、手足を失う壊死を引き起こすリスクが高まります。

さらに、糖尿病になると免疫力が落ちることから、健常の人より2.5倍歯周病にかかりやすく、歯周病菌が身体中に広がる可能性があります。歯周病菌による全身の炎症は糖尿病をさらに悪化させ、糖尿病はまた歯周病を悪化させる。このように悪循環に陥ってしまうのです。

糖尿病が「沈黙の病」といわれる理由

糖尿病は自覚症状なく進行するのが特徴で「沈黙の病」といわれています。

たとえば、糖尿病性腎症では、最初は「身体がむくみやすい」といった軽い自覚症状しか現れません。その状態を放置しておくと、倦怠感や食欲不振、貧血といった症状が出てきます。このような症状が現れた時点で、すでに腎臓はかなりのダメージを受けた状態にあるのです。

糖尿病性網膜症には初期症状がなく、眼科の視力検査にも影響はありません。進行すると、目がかすむ・ピントが合わない・視野が狭くなるといった症状が出てきます。さらに進めば、視力が低下したり、物が歪んで見えたりします。最終的に、網膜から出血して目の中が血でいっぱいになったり、網膜がタイルのようにべりっとはがれる網膜剥離を引き起こし、光を失う原因となります。

糖尿病神経障害では、手足のしびれが初期症状です。少しずつ進行すると、手足に力が入らない感覚が生まれたり、身体の一部を冷たく感じたりします。男性の場合は勃起障害、女性の場合は生理不順が起きることがあります。女性の場合は、閉経が早まることもあります。

糖尿病が引き起こす合併症は、初期症状があるものもありますが、それもかすかなサインです。そのため、「疲れているせいだろう」と放置してしまう人も少なくありません。「病院に行こうかな」と思うころには、すでに糖尿病が進行し、後戻りできなくなっているのです。

そのため、糖尿病については「症状が出てから対策しよう」と考えるのではなく、症状が表れる前に対策することが何より大切です。

まとめ 糖尿病リスクを正しく知ることが大事

糖尿病のうち死亡リスクが高い糖尿病性腎症は、糖尿病発症後10年から15年で起きるといわれています。つまり、20代で糖尿病を発症すれば、30代で糖尿病性腎症になり、人工透析が必要になることも十分ありうるのです。糖尿病を他人事ととらえず、正しい知識を身につけてしっかり備えることが大切です。

本稿では、アクティブに活躍する30代のビジネスマンが確認しておきたい糖尿病のリスクについて、解説をしてきました。続く連載の第2回では、このおそろしい糖尿病のリスクへ備えるために、私たちが普段からできる対策の実際を取り上げます。ぜひご確認ください。

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