「糖尿病になると人工透析が必要。なんだか大変そう……」そんなイメージを持っていても、具体的に糖尿病リスクを想定して対策している人は少ないのではないでしょうか。糖尿病はしずかに忍び寄り、いつのまにか重篤な合併症を引き起こす厄介な病気です。あなたのキャリアや人生へ及ぼすリスクを理解して、早くから適切なリスクヘッジのための健康投資を考えたいものです。

これからますますキャリアアップする30代ビジネスマンを対象に、おそろしい生活習慣病の1つである糖尿病のリスクと、自らのための健康投資の必要性を解説する本連載。第2回目では、糖尿病になると仕事や日常生活にどんな影響があるのか、専門のドクターにお聞きします。あわせて、糖尿病を予防するための食習慣や運動習慣について、忙しいビジネスマンでも実践できる工夫を紹介します。

30代から考える健康投資#2
(画像=ZUU online編集部)

目次

  1. 糖尿病性腎症の5年生存率は約50%……合併症のおそろしい糖尿病
  2. 糖尿病になると日常生活がここまで変わる
    1. 食事療法はコミュニケーションのリスクにも
    2. 合併症はキャリアにも生活にも大きな影響が。経済的損失も大
  3. 糖尿病を引き起こす3つのリスク
    1. 糖尿病を引き起こすリスク1:食生活の乱れ
    2. 糖尿病を引き起こすリスク2:睡眠不足やストレス
    3. 糖尿病を引き起こすリスク3:自律神経の乱れ
  4. 忙しい人でもできる糖尿病の予防術
    1. 食事で予防する:食事の目安はこぶしと手のひらで考える
    2. 運動で予防する:有酸素運動と無酸素運動
    3. 運動が苦手の人は「階段を使う」「1駅余計に歩く」も効果あり
    4. 規則正しい生活を送る:12時前に必ず就寝。7時間の睡眠時間。3食きちんと採る食事
  5. 忙しいビジネスマンこそ健康投資の視点を

▽教えてくれた人

田中岳史
田中岳史(たなか たかし)先生
KRD Nihombashi院長。順天堂大学医学部卒業。ケンブリッジ大学留学後、行徳総合病院院長などを経て現職。日本消化器病学会指導医、日本外科学会認定医、日医認定産業医、宇宙航空医学認定医。

糖尿病性腎症の5年生存率は約50%……合併症のおそろしい糖尿病

糖尿病は、血液中の血糖(ブドウ糖)の濃度が高い状態が持続する病気です。高血糖の状態が長く続くと、さまざまな合併症が引き起こされ、最悪の場合は死に至ることもあります。

合併症の1つである糖尿病性腎症を発症し進行すると、生命維持のため腎臓の働きを機械に担わせる「人工透析」が必要になることがあります。人工透析が必要な状態になってしまうと、5年生存率が約50%、10年生存率が約25%です。5年後には2人に1人、10年後には4人に1人しか生存できないのです。

糖尿病になると日常生活がここまで変わる

合併症がおそろしい糖尿病ですが、これを避けるために、さまざまな療法を行います。これが私たちの生活には大きな負担となります。仕事や日常生活にどんな影響があるかをみていきましょう。

食事療法はコミュニケーションのリスクにも

まず、糖尿病になると食事療法が始まります。カロリー制限によって、食生活は今より寂しいものとなり、食事の時間を楽しめなくなるかもしれません。食べる時は、いちいちカロリーを気にしなければなりません。そうすると、家族や友人との外食にも制限が生まれます。

食事制限は、仕事にも間接的に影響を及ぼします。会議中に出てきたお弁当を自分だけ残さないといけなかったり、接待の会食や社内の懇親会にも気を遣ってしまいます。もし参加したとしても、食事制限がある中では、心から楽しめません。

また、「食べられない」「行けない」「できない」と断ることが続けば、人間関係にも影響が出てきます。仕事でもプライベートでも、自然と周囲から「彼・彼女は病気だから……」という遠慮が働くようになります。目に見えないこういった遠慮や気遣いは、仕事の成果や昇進に影響を及ぼすこともあるでしょう。

合併症はキャリアにも生活にも大きな影響が。経済的損失も大

また、これも糖尿病の合併症である糖尿病性末梢神経障害、循環障害になった場合、手足の指先が壊死に陥り、切断しなければならないケースもあります。こうなると日常身体活動に支障をきたすようになります。周囲に障がいについて説明しなければならず、職種にもよりますが、いままでキャリアに大きな影響を与える可能性もあるでしょう。転職をする際にも、自由度に制限が生じるかもしれません。

糖尿病性腎症によって人工透析が必要になれば、週に2~3回は医療機関に通って透析治療を受けなければなりません。人工透析は1回あたり4~5時間かかります。ここまでくれば、仕事に影響が及ばないようにするのも困難になってきます。

また、QOLの低下にくわえ、経済的なダメージも無視できません。糖尿病患者は1年間で平均24万円もの治療費を負担する必要があります。透析患者の場合、助成制度はありますが、300万円から500万円の治療費がかかります。

糖尿病を引き起こす3つのリスク

糖尿病リスクは、日常生活にひそんでいます。続いては、糖尿病を引き起こす3つのリスクについて解説します。食、睡眠、ストレスと、どれも30代ビジネスマンなら身近なテーマです。確認しておきましょう。

糖尿病を引き起こすリスク1:食生活の乱れ

人は1日三食、定期的に摂ることが基本です。しかし、間食が多かったり飽食が続いたりすると、インスリンが常に分泌された状態が続くことになります。すると、膵臓(すいぞう)が疲弊してしまい、インスリンの分泌が低下し、血糖コントロールが不良となります。加えて内臓脂肪型肥満になるとインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が生じます。インスリンは血液中の血糖をエネルギーに換え、血糖値をコントロールする働きがあります。そのため、インスリンの効きが悪くなると、血液中の血糖が高い状態が持続し、糖尿病リスクが高まります。

また、アルコールは膵臓の細胞を直接攻撃する特有の作用があります。また、アルコールは肝臓にも負担をかけ、糖を取り込みエネルギー源として蓄積する力を阻害します。結果、糖尿病が悪化するリスクが高まってしまいます。

糖尿病を引き起こすリスク2:睡眠不足やストレス

体内に入った酸素は、一部が活性酸素に姿を変えます。活性酸素は、病原菌や異物から体を守ってくれる一方で、多すぎると自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまいます。

睡眠不足やストレスは活性酸素の温床です。増加した活性酸素は膵臓を攻撃し、十分なインスリンが作れない状態にしてしまいます。そうすると、インスリンの不足によって高血糖な状態が持続し、糖尿病リスクが高まります。高血糖はさらに活性酸素を増加させ、血管を傷害し、糖尿病網膜症や腎症といった恐ろしい合併症を引き起こす原因となります。

糖尿病を引き起こすリスク3:自律神経の乱れ

自律神経は交感神経と副交感神経からなっています。仕事中など精力的に活動しているときは、交感神経が優位になり、いわば消費モードになっています。一方、余暇や自宅でのんびりリラックスしている時などは、副交感神経が優位になり充電モードになります。交感神経と副交感神経のバランス、つまり消費と充電の時間がちょうど半々になるのが理想的といわれています。

しかし、このバランスが崩れ、交感神経が優位の状態が長くなると、糖尿病リスクが上がります。交感神経はインスリンの分泌を抑え込む働きがあるからです。そのため、仕事とリラックス、消費と充電バランスを意識することが大切です。

忙しい人でもできる糖尿病の予防術

食事・睡眠やストレス・自律神経という糖尿病の3つのリスクは、それぞれが影響し合っています。そのため、どれか1つについて対策するのではなく、総合的に予防に取り組むことが何より大切です。

糖尿病の予防策は、食事療法・運動療法・生活環境の見直しの3つです。続いては、忙しいビジネスマンでも実践できる内容を中心に、糖尿病予防の方法を具体的に解説していきます。

食事で予防する:食事の目安はこぶしと手のひらで考える

食事で糖尿病を予防する場合、「手計(てばかり)」という方法が役に立ちます。手計は、一食に必要な栄養バランスを、「手」を目安に考える方法です。飽食を抑え健康的な一食を摂る目安となるでしょう。手計による食事量の目安は、下記の通りです。

▽手計で考える、おすすめの食事量
片手のこぶし大:ご飯・パン・麺類などの主食(お茶碗に軽く一杯)
片手の手のひら:肉・魚・卵などのおかずなどの主菜(片手のてのひらにのる量)
両手の手のひら:サラダなどの野菜類(副菜)(両手のてのひらにのる量)
ふたたび片手のこぶし大:果物(1日1個)

手計で見る食事量を確認すると、意外と野菜が多いことに驚いた人も多いのではないでしょうか。食事をする時、1つの目安として活用してみてください。手の大きさは人それぞれの体の大きさとも関連します。わかりやすいので、家族や子どもと会話しながら実践するのもおすすめです。

3食すべて上記の量を摂るのが理想ですが、まずは一食でもいいので実践し、朝昼晩でバランスをとることも意識してみてください。

また、「食事を楽しむ」ことは、自律神経にいい影響を及ぼします。気心の知れた同僚や友人、大切な家族と一緒に食事をエンジョイし、幸せを感じることも糖尿病予防の効果があります。

バランスだけでなく、食べる順番も意識してください。まずは野菜を最初に食べるようにします。こうすると、野菜の食物繊維が、あとから食べるおかずの糖分や脂分を絡めとって、余計な糖分、脂質の吸収を抑えてくれます。自分にとって無理のないことから実践し、自信をつけましょう。

お酒に関しては、職種にもよりますが、仕事をしている以上、まったく飲まないのは現実的でない人も多いでしょう。お酒は昔から百薬の長といわれていますが、適量であれば健康への害は少ないとされます。日本人男性の場合、日本酒1合・ビール大瓶1本・ワイン1杯までならむしろ血糖を下げ、血管障害を減らすというデータもあります。

一方で、上記の量を上回ってくると、とたんに糖尿病リスクが上昇するので注意しましょう。

また、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は、日本酒やワインなどの醸造酒と比べて糖分が少なめです。そのため、乾杯はビールで、2杯目からは薄めのハイボールにするなど、糖分量を意識して微調整してみてください。

運動で予防する:有酸素運動と無酸素運動

身体に入った糖分をエネルギーに換えるのはインスリンの役目ですが、筋肉だけは、インスリンなしで糖分を消費できます。そのため、筋肉を鍛えて運動することは、膵臓の負担を減らし、膵臓の疲弊を防ぐことにつながります。

運動には、息が弾まない有酸素運動と、息が弾む無酸素運動があります。

運動習慣がない人は、まずは有酸素運動から始めましょう。ウォーキングなら1時間、軽いジョギングなら20~30分が目安です。サイクリングや軽い水泳もいいでしょう。

有酸素運動をすると、毛細血管の活動が活発化され、身体のすみずみまで酸素が行き渡ることで、余計な糖分を吸い取ってくれたり、酸素を利用して脂肪の燃焼を促進させます。また、体を動かすことで筋肉が糖分を燃やしてくれるので、高血糖が改善されます。

理想的なウォーキング量は、1日30分といわれています。1日トータルでは、1万歩が目安です。身長から100を引くことで大体の歩幅を出せるので、1万歩に掛けて距離を計算してみてください。たとえば、身長170cmなら歩幅は70センチなので、1日7km(70cm×1万歩)が目安です。

とはいえ、1日10~15分歩くだけでも効果があるというエビデンスがあります。最初は無理のない範囲で取り入れ、継続することが大切です。

有酸素運動を習慣化できたら、筋トレをはじめとした無酸素運動を織り交ぜていきましょう。たとえば、腹筋、スクワット、腕立て伏せなど、大きな筋肉を鍛えることが効果的です。筋肉が鍛えられて太くなると、糖分を燃やす体積が大きくなり、効率よく糖分を燃やせます。無酸素運動は、有酸素運動と交互にあわせて行いましょう。

運動が苦手の人は「階段を使う」「1駅余計に歩く」も効果あり

どうしても運動を継続するのが苦手という人は、階段を使ったり、一駅歩いてみたりするのも効果的です。

階段を使う場合、4階ぐらいまでは有酸素運動ですが、それを超えると無酸素運動になっていきます。意識しなくても、有酸素運動と無酸素運動を実践できます。チャンスがあれば、階段を積極的に利用しましょう。

また、通勤時に一駅手前で降りて、オフィスまで一駅分歩くのも効果的です。最初はめんどくさく感じても、朝は空気が澄みわたり、人通りや車通りも少なく、心地よく歩けます。一駅分のウォーキングで、さわやかな気持ちで出社できることも。

また、朝運動すると、血の巡りがよくなり、身体のすみずみまで酸素が行き渡ります。そうすると、頭の回転が速くなり、身体も疲れにくくなり、仕事効率がアップします。何度かウォーキングすると、「朝の運動は気持ちいい」と実感でき、そうすれば継続できるようになります。

規則正しい生活を送る:12時前に必ず就寝。7時間の睡眠時間。3食きちんと採る食事

自律神経を整えるには、規則正しい生活が大切です。食事は3食摂り、間食はできるだけ控え、夜12時前に就寝しましょう。睡眠時間は7時間が目安です。

忙しいビジネスマンこそ健康投資の視点を

忙しいビジネスマンは、つい自分の体調や健康は二の次にしてしまいがちです。しかし、仕事に集中できるのも、趣味を楽しめるのも、家族を守れるのも、健康あってこそです。これまでに解説してきたように、忙しいビジネスマンの生活には、じつは多くの糖尿病リスクがひそんでいます。過食、飽食、運動不足、ストレス、睡眠不足……。もろもろの糖尿病につながりかねないリスク要因を見るに、私たちは自らの健康資本を投資して、資産となるキャリア形成を図っていることがよくわかります。

糖尿病合併症が発症してから後悔しても、治療で劇的によくなることは望めません。糖尿病になる前に適切な健康投資をすることが、結果的に長く仕事をして人生を充実させることにつながります。

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