コロナ禍によって在宅ワークが広がり、外出もしにくい状況下では、運動不足になりがちです。しかし、この運動不足は、肥満のみならず、体全体に大きな影響を及ぼすことをご存じでしょうか。いわゆる「生活習慣病」が指摘されますが、この生活習慣病は、仕事やキャリアへも大きな影響を及ぼす後遺症が残ってしまったり、場合によっては死に至る病ともなることがあります。われわれは新しい生活様式に合わせて「新しい生活習慣」を作り、運動不足の解消や食生活の改善に努めることが重要です。

本連載では、新しい生活様式が求められるこの時代に、われわれ30代が、なにに注目し、健康リスクに対応するべきなのかを考えていきます。第1回となる本記事では、新しい生活様式、ワークスタイルと運動不足のリスクについて、考えていきます。

目次

  1. 運動不足は身体にどのようなリスクがある?
  2. ビジネスパーソンが運動不足になる理由とは?
  3. 運動不足が招く3つの病気:動脈硬化・脳卒中・糖尿病
    1. 動脈硬化:運動不足による「高血圧」が危険因子に
    2. 脳卒中:原因となる動脈硬化にならないよう努めることが重要
    3. 糖尿病:運動不足でインスリンの働きを阻害する物質が溜まる
  4. 新しい生活様式でも運動不足の解消に努めよう
  5. 血液の状態は自分で判断できない。定期的な健診が健康リスク回避の要となる

運動不足は身体にどのようなリスクがある?

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(画像=polkadot/stock.adobe.com)

運動不足は身体にさまざまな悪影響を及ぼします。人は一日三食の食事をとり、エネルギーとして生命維持に消費します。人がなにもしなくてもエネルギー消費することを、基礎代謝といいます。この基礎代謝は、10代をピークに、年齢とともに衰えることがわかっており、とくに30歳を超えると、年に1%程度下がってしまうとされています。

この基礎代謝を上げてくれるのが筋肉です。定期的に運動することで筋肉の衰えを防ぎ、基礎代謝の衰えを抑えることができます。またしっかり運動して筋肉を増やすことができれば、基礎代謝も上げられるというわけです。

しかし、運動不足によって筋肉が衰え、基礎代謝も衰えてくると、エネルギーの消費量が少なくなるため、内臓脂肪型の肥満などになりやすくなります。肥満になると、とくに内臓脂肪からアディボサイトカインと呼ばれる生理活性物質が異常に分泌され、なかにはインスリンの働きに悪い影響を与えてしまいます。こうなると、血液中の血糖が消費されにくくなります。

筋肉が減って基礎代謝も減退しているのに、この生理活性物質の影響により、食事などから体内にとりこんだエネルギー=糖質を十分に消費できなくなるわけです。これによりますます肥満の傾向に拍車がかかるだけでなく、動脈硬化や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の原因となってしまいます。

この血糖は、運動をすることでエネルギーとして消費されます。運動により血糖値が下がることで血液がきれいな状態を保てるのですが、これが逆に運動不足の場合、使われずに余った糖質により、血液が高血糖状態となります。この高血糖状態は、高中性脂肪血症といった脂質代謝異常をももたらし、血液がドロドロした状態になります。血液がドロドロした状態だと「心筋梗塞」や「脳梗塞」を引き起こすリスクが高まります。

しかも、在宅ワーク中は、自宅にいる時間が増えることから間食も多くなりがちです。1日の摂取カロリーは過剰になりやすく、運動不足かつカロリーが過剰摂取の状態は、ダブルで血液の健康に悪影響を与えてしまいます。

そのほか、運動不足は筋力の低下と骨の衰えにもつながり、ケガや骨折をしやすい身体となってしまいます。一般的には、筋力は衰えやすくつけにくいものなので、一度筋力が衰えてしまうと元通りの筋力量に戻るまで多くの時間を要します。

ビジネスパーソンが運動不足になる理由とは?

在宅ワークかどうかに関わらず、ビジネスパーソンの運動不足が近年社会問題になっています。業務をインターネットですることが多くなったことで、パソコンの前に座っている時間が長くなったことなどが理由として挙げられます。

さらにコロナ禍で在宅ワークが広がりを見せ、運動不足の状況に拍車がかかっています。通勤で自宅と勤め先を往復する機会がなくなり、外出自粛ムードが続く中、通勤以外でも外を出歩くことが減ったビジネスパーソンも多いでしょう。

ビジネスパーソンの中には、日頃の運動不足をフィットネスジムなどで解消していた人もいるはずですが、コロナ禍においては感染防止のためにジム通いを中断している人も少なくなく、こうしたことも運動不足につながっています。

美容関連事業を展開するスターエティック社が2020年10月に実施した「コロナ禍の運動習慣」に関する調査では、緊急事態宣言が発令される前にジムやヨガスタジオに通っていた人の半数以上が「現在は通っていない」と回答しています。

運動不足が招く3つの病気:動脈硬化・脳卒中・糖尿病

コロナ禍のため、なかなか運動もしにくい状況となっていますが、それでも健康のことを考えると運動不足を解消しなければなりません。運動不足を放置していると、特に以下のような病気のリスクが高まります。

動脈硬化:運動不足による「高血圧」が危険因子に

動脈硬化になる危険因子としては、高血圧や肥満などが挙げられます。適度な運動は血圧を下げ、肥満を予防する効果が期待できますが、運動不足だと高血圧や肥満になりやすいため、動脈硬化につながっていきます。

高血圧はそもそも、血管が硬くなることで柔軟に広がらなくなり、そのことで血管内の圧力が高まることで生じます。適度な運動に血圧を下げる効果があるのは、筋肉に栄養や酸素を運ぼうと血管が広がることで、血管が柔らかくことにつながるからです。

そのほか、運動をすることで利尿作用が活発になり、体液量が低下することも、血圧を下げる効果があります。

脳卒中:原因となる動脈硬化にならないよう努めることが重要

動脈硬化が進行すると脳卒中になるリスクが高まります。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破裂したりして、脳にダメージを受ける病気です。ダメージを受けた脳の部位によっては、身体機能や言語機能、記憶などに障害を受けてしまこともあり、場合によっては死のリスクもあります。

公益社団法人「日本脳卒中協会」が提案している「脳卒中予防十か条」の中でも「体力に 合った運動 続けよう」という予防標語が掲げられており、まずは動脈硬化にならないよう適度な運動を続けることがポイントとなります。

糖尿病:運動不足でインスリンの働きを阻害する物質が溜まる

運動不足は糖尿病の原因にもなり得ます。糖尿病は、血糖値を下げる役割を担うインスリンが不足したり、インスリンの効き目が弱まったりすることなどで発症します。運動不足だと、このインスリンの働きを阻害する物質が体内で溜まりやすくなります。

新しい生活様式でも運動不足の解消に努めよう

在宅ワークといった不可抗力の要因で運動不足になったとしても、健康のことを考えればその状況を放置するのは御法度です。

「密」を避けるために人通りが少ない時間にウォーキングをしたり、車で外出するところを徒歩に変えたりと、小さな工夫の積み重ねで運動不足の解消につなげることが重要です。

厚生労働省によれば、1日の理想的な歩数は「1日1万歩」ですが、過去の調査では1万歩歩いている男性は3割弱、女性で2割強と低い結果が出ています。最近では歩数を自動でカウントしてくれるスマホアプリなどもあるので、うまく活用して「1日1万歩」をぜひ達成したいところです。

また、消費カロリーの過剰摂取にならないよう、これまでに増して食生活の改善を意識することも求められます。野菜中心の食生活に変えたり、間食をしないようにしたりするだけでも、運動不足に起因する血液への悪影響を緩和させることが可能です。

1日の摂取カロリーの目安ですが、成人男性の場合は身体活動量が多めの人で2,400〜3,000Kcal、身体運動量が少なめの人で2,000〜2,4000kcal、成人女性の場合は身体活動量が多めの人で2,000〜2,4000kcal、体運動量が少なめの人で1,400〜2,000Kcalと言われています。

ちなみにコンビニ弁当は600kcal程度、板チョコは400kcal程度の商品が多いとされ、3食をコンビニ弁当とし、間食に板チョコ1枚食べると計2,200kcalとなります。デスクワーク中心のビジネスパーソンなら、すでに目安を超える勢いです。覚えておくとよいでしょう。

血液の状態は自分で判断できない。定期的な健診が健康リスク回避の要となる

運動不足が招く健康リスクは、じつは血液の血糖値に関係し、リスクが増大することを解説しました。在宅ワークも日常となった新しいワークスタイルは、意識的な生活習慣の改善、とくに食事の管理と、意識的な運動が求められます。

また、健康リスクの指標となる血液の状態は、自分自身では判断ができないため、定期的に医療機関の検診を受けることも大切です。危険な兆候をいち早く察知できれば、重大な病気を発症するリスクを低くすることができます。定期的な健康診断や人間ドックには費用や時間も必要ですが、「健康投資」だと思って、決しておろそかにしないようにしましょう。

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New Normal-新しい生活様式が求められるこの時代に、わたしたち30代はどのように生活を変え、健康リスクに対応し、アクティブにビジネスを進めていくのか。30代ビジネスパーソンと健康について考える本連載の第一回では、新しいワークススタイルと運動との関係を考察しました。次回は、コロナとのかかわりでも注目される免疫力について考えていきます。ご期待ください。