30~40代のビジネスパーソンが気になる歯のトラブルに「歯周病」が挙げられます。歯周病は初期のうちは痛みなどの自覚症状もあまり出ないことから、知らない間に症状が悪化しがちです。一方で、歯周病は口腔内だけではなく、全身のトラブルにつながる可能性があります。早期の症状の発見や治療が重要であることは、シリーズ「30代ビジネスパーソンを蝕む『歯周病』」の第1回で触れました。

本シリーズの第2回目では、歯周病が身体の各部位に及ぼす影響とそのメカニズムを深掘りして解説します。決して侮ってはいけない歯周病の恐ろしさを理解し、早いうちから対策を講じていきましょう。

目次

  1. 歯周病が、なぜ全身疾患につながるのか
  2. 循環器の病気につながるメカニズム
    1. 30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?
  3. 関節リウマチにつながるメカニズム
    1. 30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?
  4. 糖尿病につながるメカニズム
    1. 30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?
  5. 早産・低体重児出産につながるメカニズム
    1. 30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?
  6. 骨粗しょう症とも関連するとの指摘も
    1. 30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?
  7. 腎臓病の悪化やAIDSの発症にもつながる
    1. 30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?
  8. 歯周病が発覚したら精密検査でからだ全体のチェックを

歯周病が、なぜ全身疾患につながるのか

歯周病
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

歯周病は、歯と歯茎の間の溝で繁殖した細菌に感染することで、歯の周辺で炎症が起きる病気のことを指します。この細菌の集まりのことを「歯垢(プラーク)」と呼び、この歯垢が歯周病を引き起こす原因です。

初期のうちは自覚症状がほとんどないのが歯周病の特徴で、治療せずに放っておくと全身に悪影響を与えるようになります。これは、歯周病菌などが歯肉の血管から全身へと流れていき、歯周病菌の毒がさまざまな臓器や血管にダメージを与えるためです。

つまり「歯周病のトラブルは、口の中だけ」と考えているとすれば、それは大きな間違いです。歯周病菌が歯肉の血管から全身に広がっていくと、たとえば、循環器の病気や骨粗鬆症、関節リウマチ、糖尿病、腎臓病の悪化などにつながります。逆に、これらの病気が歯周病を悪化させることもわかってきました。

それぞれの病気・症状につながるメカニズムを解説していきましょう。

循環器の病気につながるメカニズム

国立循環器病研究センターが引用したデータによれば、歯周病を患っている人は患っていない人に比べると、循環器病を1.5~2.8倍も発症しやすいとのことです。歯周病は、なぜ循環器病につながるのでしょうか。

国立循環器病研究センターによれば、歯周病菌などが直接的に血管に障害を与えることがひとつ。このほか、歯肉もしくは歯肉の周りの炎症によって作られる『炎症性サイトカイン』の働きが指摘されています。

この炎症性サイトカインは、心臓血管系の異常を引き起こすことにつながっていると考えられています。具体的には、炎症性サイトカインが心臓や血管へと血流を通じて移動していくことにより、血管内皮細胞や免疫細胞が過剰に活性化され、そのことが心臓血管系の傷害につながっているというものです。

また、炎症性サイトカインが肝臓を刺激することで作られる『急性期たんぱく質(CRP)』が、ある種の動脈硬化を促すことも、循環器病につながっているとされています。

30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?

循環器系、とくに心臓血管系の異常は、場合によっては生死に関わります。具体的には狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす可能性があります。日本臨床歯周病学会によると、歯周病の人はそうでない人と比べ脳梗塞のリスクが2.8倍と言われています。家族がおり、まだ働き盛りの30~40代のビジネスパーソンにとっては、重大なリスクであると言えます。

関節リウマチにつながるメカニズム

関節リウマチとは、免疫に異常が起きることで手足の関節が痛んだり腫れたりする病気のことを指します。日本では毎年約1万5000人が発症していると推定され、働き盛りの30〜50歳代で発症した人が多いと言われています。この関節リウマチと歯周病には双方向の関係があります。

すなわち、関節リウマチになると歯周病の発症・悪化リスクが高まり、歯周病になるとリウマチの発症・悪化リスクが高まるというわけです。そして関節リウマチにも炎症性サイトカインが関連していると言われています。

また関節リウマチは、歯周病菌の一種である『ジンジバリス』が原因となることもあります。この細菌は周りのタンパク質の形を変えてしまう性質があり、免疫細胞がそれを取り除こうと抗CCP抗体という抗体を産生し、これが一方では関節を攻撃するものでもあることから、結果的に関節リウマチが発症してしまうのです。

30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?

30~40代のビジネスパーソンが関節リウマチにかかると、仕事に集中できなくなるでしょう。ズキズキとした痛みを関節に生じたり、熱を持って腫れたりし、仕事の成果に影響が出てくるほか、同じ仕事量をこなすにも以前より多くの時間が必要になり、過労につながることも考えられます。

糖尿病につながるメカニズム

年間に糖尿病になると免疫力が低下したり、末梢血管の血流が悪くなったりして歯周病に罹患しやすいということはよく知られています。逆に歯周病が糖尿病の危険因子となることも、知っておきたいところです。

歯周病によって起きた炎症で『TNF-α』と呼ばれるたんぱく質が作られ、そのたんぱく質が血糖値を下げるインスリンの機能を抑え(インスリン抵抗性)、血糖値を高める原因になると考えられています。

最近では、進行した歯周病がこのように血糖管理に影響を及ぼすことから、歯周病を治療することで血糖コントロールも改善するといった研究結果も多く報告されています。

30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?

厚生労働省の最新の統計(人口動態統計・2017年)によると糖尿病が疑われる人は推計1,000万人を超え、2017年は1万4,000人近くが亡くなりました。

糖尿病になると、定期的な通院やインスリンの自己注射などが必要になるほか、生活習慣を大きく変える必要が出てきます。バリバリ働いていたビジネスパーソンであれば、時間的にそれまでのように仕事に全精力を向けることは難しくなり、大きなマイナスであると言えます。

早産・低体重児出産につながるメカニズム

早産や低体重児での出産にはさまざまな要因があるとされていますが、その1つに、妊婦が歯周病を患っていることも指摘されています。

歯周病が悪化することによって歯肉における炎症が強くなると、歯周組織中に『プロスタグランジンE2』という物質が増えます。このプロスタグランジンE2は子宮収縮を促して出産を手助けする物質のため、過剰に産生されることで早産や低体重児を出産することにつながる可能性があります。

また炎症サイトカインが増えることにも関連があり、体が「出産のゴーサインが出た」と勘違いをして、結果として子宮筋の収縮が始まってしまうことで早産・低出生体重児の出産につながると言われています。

30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?

早産となるリスクが高い状況は、予定よりも早めに入院を余儀なくされるほか、入院が長期間に及ぶことも珍しくありません。計画的に産休などを取得しようと考えていたビジネスパーソンには、痛手となるでしょう。

骨粗しょう症とも関連するとの指摘も

骨粗しょう症は、骨量が減少することで骨がスカスカの状態となり、少しの衝撃でも骨が折れやすくなる病気のことを言います。国内の患者数は1,000万人を超えると言われており、高齢化の進む日本では今後さらに増えることが予測されます。

年齢を重ねるにつれて骨量は自然と減少します。女性ホルモンの一種である『エストロゲン』は骨の破壊や歯周組織の炎症を抑える働きがありますが、とくに女性は閉経にともなうエストロゲンの減少によって骨密度が急激に低下します。

歯周病をそのまま放置していると骨量の減少スピードが加速してしまい、まだ年齢的に若いのにもかかわらず骨粗しょう症を患ってしまう可能性があります。歯周病が骨粗しょう症につながるのは、前出の炎症性サイトカインが骨代謝に影響を及ぼし、骨吸収が促進されて骨の萎縮を引き起こすため、と言われています。

一方で骨粗しょう症である閉経後の女性に対し、歯周病を治療することで、骨密度の低下を抑えることができたというデータもあり、とくに閉経後の女性に関しては歯周病と骨粗しょう症に深い関係があることがわかります。

30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?

30~40代とまだ若いにもかかわらず骨粗しょう症を発症すれば、生命に関わる病気ではないものの、病的骨折をして入院したり、介護が必要になったりと、仕事や生活に大きな影響が出ることは必至です。

腎臓病の悪化やAIDSの発症にもつながる

ここまで循環器の病気や関節リウマチ、糖尿病などにつながるメカニズムについて解説してきましたが、歯周病はそのほかにもさまざまな病気と関連しています。たとえば、歯周病は腎臓病を悪化させることにもつながると言われています。

動物実験によれば、腎臓病の発症に関連する動脈硬化が歯周病菌によって引き起こされる仕組みが判明しています。人間にも同じ仕組みがあるかはまだ判明していませんが、もともと重症の歯周病の人は腎機能が低いケースも多いことから、歯周病を治療することで腎臓の状態も良くなるのではと考えられているのです。

また、HIV感染症が進行することで歯周病が悪化することは知られていましたが、歯周病が悪化することでHIV感染症が進行することもわかってきました。これは歯周病になることで、口腔内で生成される『酪酸(らくさん)』がHIVを活性させることから、AIDSの発症につながるというものです。

30~40代のビジネスパーソンにとってはどうマイナス?

腎臓病やAIDSなど重大な病気を発症してしまえば、長期にわたって治療を要します。通院などによって会社を早退したり、入院することになれば会社を長期間休むことになったりすれば、自身のキャリアプランに大きな影響が出るでしょう。

歯周病が発覚したら精密検査でからだ全体のチェックを

歯科を受診して歯周病であることが判明したら、歯周病の治療を行うのと同時に、精密な検査を受けることも賢明な判断です。とくに長期にわたり歯周病が続いている場合、この歯周病が原因で体のさまざまな部位で病気が引き起こされていないか、チェックする必要があるでしょう。

受診する施設を選ぶ際には、詳細な検査ができる施設を選ぶことが肝心です。とくに口腔環境についても精密な検査ができ、血液検査意とあわせて対応できる施設が有効と言えるでしょう。精密な検査のために時間と金額を投資しても、重大な病気が見落とされては、何のために受診したのかわかりません。

30~40代のビジネスパーソンとして健康に元気に働き続けられるよう、今一度、歯周病をはじめとする口腔内の健康に対する意識を高く持つように心がけたいものです。