米フォーブス誌が2021年4月22日、2021年版「日本長者番付」を発表した。新型コロナウイルスが広範囲に影響を及ぼす中、日本の富豪上位50人の資産は総額2,490億ドル(約27兆1,269億円)と、2020年から48%増加している。また、今回初めて50位までの全員の保有資産が10億ドル(約1,089億4,206万円)を超えた。

この記事では、上位の顔ぶれや昨年からの変化を見ていく。

目次

  1. 日本長者番付トップ10
  2. 上位の顔ぶれや昨年との変化は?
  3. 上位は企業の経営者や創業者が独占
  4. 新たに4人と一家族がランクイン
  5. トマ・ピケティ氏が主張する「r>g」が進行中?

日本長者番付トップ10

2021年版日本長者番付
(画像=PIXTA)

以下、上位10人を見てみよう。ランキングは個人、証券取引所、アナリスト、企業の財務諸表もしくは公的文書、その他の情報に基づいて作成された。保有資産には、家族の保有する資産が含まれる場合もある(下記の表では資産額を円で記載)。

 2021年  2020年  氏名  職業  資産額
 1  2  孫 正義 ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長  4兆8,920億円
 2  1  柳井 正 ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長  4兆6,270億円
 3  3  滝崎 武光 キーエンス取締役名誉会長  2兆8,420億円
 4  4  佐治信忠 サントリーホールディングス代表取締役会長  1兆690億円
 5  11  永守重信 日本電産創業者  9,920億円
 6  5  高原豪久 ユニ・チャーム代表取締役社長  8,810億円
 7  6  三木谷浩史 楽天グループ株式会社代表取締役会長兼社長  8,260億円
 8  9  似鳥昭雄 ニトリホールディングス代表取締役会長兼CEO  5,730億円
 9  7  重田康光 光通信代表取締役会長兼CEO  5,620億円
 10  8  毒島秀行  三共(SANKYO )名誉会長  4,850億円

上位の顔ぶれや昨年との変化は?

上位50人の中で最も資産を増やし、3年ぶりに首位の座に就いたのは、ソフトバンクグループの孫正義氏だ。資産額は昨年の2倍以上の約5兆円に達し、米フォーブス誌「世界の長者番付」でも29位にランクインしている。米食品配達アプリ「DoorDash(ドアダッシュ)」や韓国最大のEコマース「Coupang(クーパン)」のIPO(新規株式公開)成功によるソフトバンクの株価急上昇が、資産の増加に貢献した。

首位の座を明け渡したとはいえ、2位の柳井正氏も3年連続でトップ3を維持している。在宅勤務に適したユニクロの日常着の需要が高まり、資産が約90%増加した。

3位、4位は昨年から変わらず、滝崎武光氏と佐治信忠氏だ。5位の永守重信氏は6つも順位を上げ、初のトップ10入りを果たした。日本電産は経営・コスト改革を実施する一方で、PCや家電製品などの売上が大幅に伸び、過去最高の売上高を達成した。三共とキーエンスを除いて、いずれの企業もコロナ禍で売上高を伸ばしている。

上位は企業の経営者や創業者が独占

ランキングの上位は、企業の経営者や創業者が肩を並べており、そのうち7人が自ら一代で富を築き上げた「セルフメイド」である。

孫氏と永守氏を含む上位50人中5人の資産が、コロナ禍で2倍以上に増えた点にも驚かされる。資産の最大増加率を記録したのは、フリマアプリ「メルカリ」の創設者、山田進太郎氏だ。巣ごもり消費で利用者が急増し、資産額22億ドル(約2,396億9,559万円)で25位となった。

その一方で、2020年まで4年連続でランクインしていた森トラスト・ホールディングス会長森章氏の資産は大幅に減少し、14位に後退した。

新たに4人と一家族がランクイン

コロナ禍で資産を増やし、新たにビリオネア(保有資産10億ドル以上)となったのは、以下の4人と一家族だ。

49位 元榮太一郎(弁護士ドットコム創業者) 12億ドル/約1,309億3,311万円
47位 寺下史郎(アイ・アールジャパンホールディングスCEO) 12億4,000万ドル/約1,352億 9,561万円
45位 中村崇則(ラクス代表取締役) 12億6,000万ドル/約1,374億7,818万円
40位 谷村格(エムスリー代表取締役) 14億ドル/約1,527億5,354万円
27位 内山家(レーザーテック株式会社 創業) 20億5,000ドル万円/約2,236億7,252万円

トマ・ピケティ氏が主張する「r>g」が進行中?

富める者が資産を増やす一方で、貧しい者はさらなる貧困に喘いでいる。世界的に貧富格差が拡大している現在、子どもの貧困層の深刻化など二極化が問題視されている日本も他人事ではない。

このような状況は、フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が主張する、「r>g」が世界規模で進行しているということなのだろうか。「r> g」は、r=資本収益率、g=経済成長率の不均等を示すもので、「資本主義の富の不均等は、放置しても解決できず格差は広がる」ことを、膨大なデータから実証したものだ。

同氏は、2014年に出版した書著『21世紀の資本』の中で「r」は年間5%伸びているのに対し「g」の成長率は1~2%にとどまると指摘している。わかりやすく言うと、資本から得られる富は労働から得る富より、2倍以上の速度で成長するということである。

世界の資本の大半を所有する富裕層の富が短期間で増えているのとは対照的に、労働で所得を得ている層の富はなかなか増えない――まさに現在の世界そのものではないだろうか。

同書が発売された当時、データが不十分であることや「労働所得の不平等」には焦点を当てていないことなどを理由に、多くの経済学者がピケティ氏の説に異論を唱えた。しかし、コロナ禍で格差が加速している現状を見る限り、ピケティ氏の主張を認めざるを得ないのではないだろうか。