目次

  1. 今も続く老後資金2,000万円問題への不安
  2. iDeCoとはどんな制度か
    1. 加入資格
    2. 掛金と被保険者の区分
    3. 運用できる商品
    4. 給付金の受け取り方法
  3. iDeCoの加入はどれくらい増えているのか
  4. 「iDeCo」の加入手続き
  5. 「iDeCo」のメリット
    1. 運用益に課税されない
    2. 所得控除が受けられる
    3. 保険機能も付いている
    4. 運用の手間がかからない
  6. 「iDeCo」のデメリット
    1. 手数料がかかる
    2. 途中で引き出すことができない
    3. 事業主証明の提出が必要
  7. 積立に特化した非課税投資「つみたてNISA」
  8. 普通のNISAとどう違う?
    1. 運用できる商品
  9. 「つみたてNISA」のメリット
    1. 非課税期間が長い
    2. 複利効果で資産が増える
    3. いつでも自由に換金できる
  10. 「つみたてNISA」のデメリット
    1. 投資できる銘柄が金融機関ごとに決っている
    2. 損益通算ができない
    3. 「一般NISA」と併用できない
  11. 「iDeCo」と「つみたてNISA」のどちらを選ぶ?
  12. 究極は「iDeCo」と「つみたてNISA」の併用も
J-REIT
(画像=inkdrop/stock.adobe.com)

国民的課題といえる「老後資金2,000万円不足問題」を解決するには若い年代からの積立投資が重要になります。資産を着実に増やすため、毎月の収入から一定額を投資するのが理想です。長期積立投資に最適で有利といわれる「iDeCo」と「つみたてNISA」を比較します。

今も続く老後資金2,000万円問題への不安

総務省が公表した「家計調査2017年 高齢夫婦無職世帯の家計収支」という統計で、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦では毎月の家計が年金等の収入を含めても約5万5,000円不足するというデータが国民に大きな不安を与えました。

約5万5,000円が30年間不足すると、5万5,000円×360ヵ月=1,980万円で約2,000万円生活費が不足することになります。これが社会で話題になった「老後資金2,000万円不足問題」です。

そこで、若い年代から老後に備えて資金を積み立てる必要があります。積立による資産形成の方法として利用する人が増えているのが「iDeCo」と「つみたてNISA」です。

iDeCoとはどんな制度か

まず、iDeCo(確定拠出型個人年金)について概要を紹介します。

「iDeCo」とは、毎月の掛け金を自分で運用しながら積み立てて、60歳以降に受給する個人型年金制度です。「つみたてNISA」と違い、加入にはさまざまな対象者の区分や掛金限度額、給付金の受け取り方法などがあります。会社の証明が必要など複雑な制度である点に注意が必要です。

加入資格

iDeCoは、20歳以上60歳未満の人が加入できます。加入対象者は、自営業者(第1号被保険者)、企業型確定拠出年金・企業年金等のない企業の会社員、企業年金等のある企業の会社員、公務員など(第2号被保険者)、専業主婦・主夫(第3号被保険者)です。

掛金と被保険者の区分

iDeCoは毎月の投資できる金額が決っています。最も多いのが自営業者などの第1号被保険者で6万8,000円あり、かなりワイドな投資が可能になります。さらに2018年1月に制度が改正され、年単位等でも掛金を支払うことが可能になりました。

▽iDeCoの被保険者属性別掛金限度額 区分 被保険者の属性 月額 年額 第1号被保険者 自営業者など 6万8,000円 81万6,000円 第2号被保険者 会社員 会社に企業年金がない 2万3,000円 27万6,000円 企業型確定拠出年金のみ加入 2万円 24万円 企業型確定拠出年金と厚生年金基金、確定給付企業年金に加入 1万2,000円 14万4,000円 厚生年金基金、確定給付企業年金に加入 1万2,000円 14万4,000円 公務員など 1万2,000円 14万4,000円 第3号被保険者 専業主婦(主夫) 2万3,000円 27万6,000円

運用できる商品

iDeCoで運用できる商品は、iDeCo公式サイトで以下のように分類されています。

・投資信託 国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、エマージング株式、エマージング債券、ハイイールド債券、複合資産、REIT、その他。個別株を運用することはできません。

・元本保証商品 定期預金、保険商品。預金や保険商品には管理運営費用(信託報酬)はかかりません。

給付金の受け取り方法

60歳以降に受け取る給付金の受け取り方法は以下の3つの方法があります。家庭の資金需要に合わせて、最適な方法を選ぶようにしましょう。

・老齢年金 一定の期間定期的に受け取る方法です。期間は5年以上20年以下から1年刻みで選択。支給回数は年12回(毎月)、年6回(偶数月)、年4回(3月、6月、9月、12月)、年3回(4月、8月、12月)、年2回(6月、12月)、年1回(12月)から選択できます。

・老齢一時金 積立金額の全額を一括で受け取る方法です。退職金を受け取るイメージなので、退職金がない会社に勤めている人にとっては退職金代わりにするのもよいでしょう。

・老齢年金と老齢一時金の併用 老齢年金と老齢一時金を併用して受け取る方法です。一部を一時金、残りを年金として受け取ることができるので、まとまった資金が必要な場合に一部を一括して受け取りたい人に適した受け取り方法です。

iDeCoの加入はどれくらい増えているのか

「iDeCo」に加入している人は2021年3月末時点で193万2,283人と、前年比23.6%増加しています。ただ、登録事業所は15.9%の増加にとどまっていますので、今後参加する事業者の増加が期待されます。

▽iDeCoの加入状況(2021年3月末時点) 2020年3月末 2021年3月末 増加率 第1号被保険者 17万7,857人 21万87人 +18.1% 第2号被保険者 133万1,649人 164万7,649人 +23.7% 第3号被保険者 5万3,308人 7万4,547人 +39.8% 計 156万2,814人 193万2,283人 +23.6% 登録事業所 48万2,399事業所 55万9,260事業所 +15.9%

「iDeCo」の加入手続き

iDeCoの加入手続きの流れは、三井住友銀行の例では以下のようになります。

手続きはWeb申込と郵送申込から選ぶことができます。アプリでの申し込みが簡単で便利です。三井住友銀行アプリにログインし、以下の手順で申込手続きを行います。

1.書類を作成します。 2.申込書類に記入・捺印します。 3.2号被保険者(会社員・公務員)のみ、勤務先に事業主証明書の作成を依頼します。 4.申込関連書類に不備がないか確認し郵送します。 5.国民年金基金連合会にて加入審査が行われます。 6.加入手続きが完了し、加入者の資格を得ると「個人型年金加入確認通知書」「個人型年金規約」「加入者・運用指図者の手引き」「ユーザーID・商品登録完了のお知らせ」が送付されます。 7.毎月定額拠出の場合、毎月26日(銀行休業日は翌営業日)に掛金が引き落とされます。 8.運用商品を購入し、運用が開始されます。 (金融機関によって内容が異なる場合があります)

参考:三井住友銀行公式サイト

「iDeCo」のメリット

「iDeCo」にはさまざまなメリットがあるので、有効に活用するとかなりの節税につながります。保険代わりにもなるので、家庭を持っている人にはとくにメリットが大きい制度といえます。

運用益に課税されない

「iDeCo」は20歳から60歳までの最長40年間運用益が非課税となります。40年間のうちに受け取る分配金や利息は積み上がればかなりの金額になるでしょう。ただし、受け取り時は課税されますが、公的年金控除、退職所得控除を受けることができます。

所得控除が受けられる

「iDeCo」は掛金が全額所得控除になります。iDeCo公式サイトの算定によると、掛金が毎月1万円の場合、所得税10%、住民税10%とすると年間2万4,000円節税することができます。所得控除の手続きは、掛金の払込方法や加入者区分によって異なります。

保険機能も付いている

「iDeCo」には保険代わりになるという意外なメリットもあります。万一加入者が死亡した場合、遺族に対して死亡一時金が支払われます。加えて、加入者が70歳になる前に高度障害となった場合、加入年数に関係なく障害給付金の申請を行うことができます。

運用の手間がかからない

「iDeCo」は、はじめに投資する商品と掛金の配分を指定すれば、あとは口座自動引き落としまたは給与からの天引きで積み立てられていくので運用の手間がかかりません。掛金の金額は年1回変更でき、運用する商品や配分割合の変更は何度でも可能です。

「iDeCo」のデメリット

一方で「iDeCo」には次のようなデメリットがありますが、とくに事業主証明は書いてくれない事業所があるなど問題も起きているので注意が必要です。

手数料がかかる

「iDeCo」の運用には各種の手数料がかかります。加入・移換時(初回1回のみ)2,829円、加入者手数料(掛金納付の都度)105円、還付手数料(その都度)1,048円の3つが国民年金基金連合会の手数料としてかかります。ほかに運営管理機関のサービスに対する手数料と、事務委託先金融機関(信託銀行)への手数料がかかります。

途中で引き出すことができない

「iDeCo」は個人年金であるため、60歳以降の受給年齢に達するまで引き出すことができません。確実に資産が貯まる一方で、急に資金が必要になったときに換金できないデメリットがあります。そのため、毎月生活費ぎりぎりの掛金に設定するのは避けたほうがよいでしょう。

事業主証明の提出が必要

「iDeCo」加入の意外なネックになっているのが、事業主の証明をもらう必要があることです。「資産運用したい」という目的を会社に言いにくいという精神的ハードルがあることに加え、会社が書類を書いてくれない例もあり問題となっています。厚生労働省は2022年秋までに事業主証明を廃止する方向で検討中という話もあり、実現すれば「iDeCo」への加入者増加が加速するかもしれません。

積立に特化した非課税投資「つみたてNISA」

次に「つみたてNISA」の概要を紹介しますが、NISAは「一般NISA」もあるので、両制度の違いを確認する必要があります。

「つみたてNISA」は、少額投資非課税制度であるNISAを使って投資信託等を定期的に買い付ける積立に特化した非課税制度です。積立投資は時間による分散投資になるため、損失リスクを軽減することができます。

毎月一定の金額で買い続けることにより、価格が安いときには多くの口数を買い付け、価格が高いときには少ない口数を買い付けることになります。結果的に高値掴みなどのリスクを軽減できるのです。「つみたてNISA」は、買い付けコストを平準化する「ドルコスト平均法」を応用した投資方法といえます。

普通のNISAとどう違う?

「一般NISA」と「つみたてNISA」の大きな違いは投資対象商品です。「一般NISA」は個別株やETF(REITを含む)に自由に投資できますが、「つみたてNISA」は指定された投資信託・ETFの積立に特化しています。そのため、年間限度額を少なくして非課税期間を長く設定しています。

▽「一般NISA」と「つみたてNISA」の比較 一般NISA つみたてNISA 非課税限度額 年間120万円 年間40万円 非課税期間 5年 20年 加入年齢 20歳以上 20歳以上 対象商品 個別株、投資信託、ETF 指定された投資信託・ETF 投資可能期間 2023年まで 2042年まで ロールオーバー 可 不可 金融機関変更 可 可 非課税払い出し制限 なし なし

運用できる商品

金融庁の公式サイトによると、つみたてNISAで運用できる商品は、「手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)」に限定されています。信託契約期間も無期限かまたは20年以上と定められていますので、運用の途中で償還になることはありません。

つみたてNISAは定期預金や保険商品、現物株を組み入れることはできません。具体的には以下のような投資信託から運用商品を選択する必要があります。投資信託の運用には購入手数料・信託報酬・信託財産留保額などの各種手数料がかかります。

・インデックス型投資信託 「日経平均225種」や「TOPIX(東証株価指数)」などベンチマークと呼ばれる株価指数に価格が連動するように設定された投資信託です。ニュース番組でも株価は報道されるので、価格の動向がシンプルでわかりやすいのがメリットです。手数料はアクティブ型より安くなります。

・アクティブ型投資信託 インデックス型のベンチマークを上回るような積極的な運用を目指す投資信託です。大きな値上がりを期待する人に向いていますが、手数料はインデックス型より高い傾向があります。

・ETF 東京証券取引所に上場されている投資信託です。株式と同じように取引時間中も価格が変動します。

「つみたてNISA」のメリット

「つみたてNISA」には積立投資ならではのメリットがあるので、値動きに左右されない安定志向の人に向いている投資方法です。

非課税期間が長い

「普通NISA」の非課税期間が5年に対し、「つみたてNISA」は20年と長期間運用できるのがメリットです。投資期間が長いほど次に紹介する複利効果を得ることができ、買値も平準化することができます。

複利効果で資産が増える

積立投資は受け取った投資信託の分配金を再投資すると、複利効果で資産が増加するメリットがあります。例えば、元本100万円を分配金利回り3%で単利運用すると年間3万円を毎年受け取ることになります。

一方、3万円を元本に組み入れて再投資すると元本が103万円になるため、翌年の年間分配金は3万900円に増えます。これが複利運用による資産増加効果です。

いつでも自由に換金できる

「つみたてNISA」はいつでも投資信託を売却して現金化することができます。ただし、値下がりしている時点で売却すると損失が出るリスクがあるので、複数銘柄を積み立てて、利益が出ている銘柄を換金するように工夫することが必要です。

「つみたてNISA」のデメリット

半面、「つみたてNISA」には以下のようなデメリットがあります。

投資できる銘柄が金融機関ごとに決っている

「つみたてNISA」で投資できる銘柄は金融機関ごとに指定されています。金融サイト等で投資してみたい投資信託の情報を得たとしても、口座を開設している金融機関で扱っていなければ投資することができません。

損益通算ができない

特定口座では損失が出た銘柄のマイナス分はほかの株式・債券等の利益や配当所得から差し引くことができますが、「つみたてNISA」では、損失を別の利益から差し引く「損益通算」ができません。

また、確定申告で損失を3年間繰り越せる制度も利用することができないなど、利益が出たときは非課税で有利な半面、損失が出た場合は不利になります。

「一般NISA」と併用できない

「iDeCo」と「一般NISA」を併用することはできますが、「つみたてNISA」と「一般NISA」は併用することができません。したがって、個別株を非課税で売買したい人は「一般NISA」を選ばざるを得ません。バラエティに富んだ戦略を立てられないのがデメリットです。

〔Part.3〕iDeCoとつみたてNISA比較

では、「iDeCo」と「つみたてNISA」のどちらを選んだほうが得なのでしょうか。両制度の概要と非課税限度額のシミュレーションで比較してみましょう。

▽「iDeCo」と「つみたてNISA」の比較 iDeCo つみたてNISA 最低積立金額 月5,000円から 100円から 非課税期間 最大40年間 最大20年間 非課税限度額 自営業者(第1号被保険者)で 年間81万6,000円 年間40万円 引き出し 60歳以降の受給年齢に達するまで不可 自由 対象商品 定期預金、保険商品、投資信託 指定された投資信託、ETF 加入年齢 20歳以上60歳未満 20歳以上上限なし

「iDeCo」と「つみたてNISA」のどちらを選ぶ?

「iDeCo」と「つみたてNISA」のどちらが得かという観点で考えると、「iDeCo」には所得控除や保険機能など特別なメリットがある半面、手続きが難しい、手数料が高いなどのデメリットもあるため、一概には判断できません。そこで、単純に非課税で積み立てられる金額で比較してみましょう。

▽「iDeCo」被保険者属性別の掛金限度額シミュレーション 被保険者の区分 被保険者の属性 年間掛金限度額 40年間合計 つみたてNISA 第1号被保険者 自営業者など 81万6,000円 3,264万円 800万円 第2号被保険者 会社員A(注) 27万6,000円 1,104万円
会社員B 24万円 960万円
会社員C 14万4,000円 576万円
会社員D
公務員など
第3号被保険者 専業主婦(主夫) 27万6,000円 1,104万円
(注)会社員Aは会社に企業年金がない人。会社員Bは企業型確定拠出年金のみ加入している人。会社員Cは企業型確定拠出年金と厚生年金基金、確定給付企業年金に加入している人。会社員Dは厚生年金基金、確定給付企業年金に加入している人。

シミュレーションした結果、会社員C、会社員D、公務員以外は「iDeCo」のほうが、掛金限度額が「つみたてNISA」を上回ります。とくに自営業者は圧倒的に得といえます。会社員C、会社員D、公務員は「つみたてNISA」のほうが得ですが、「iDeCo」には給与から天引きできるメリットがあるので、総合的に判断することが大事です。

究極は「iDeCo」と「つみたてNISA」の併用も

「iDeCo」と「つみたてNISA」は併用することができます。それぞれメリット・デメリットがあるので、究極は両制度を併用して資産を形成するのも有効な方法です。

「iDeCo」だけだと原則として60歳まで引き出せないため、現金が必要になったときに調達することができません。併用していればどうしても資金が必要になった場合は、「つみたてNISA」で購入した投資信託を売却して現金化するという方法が可能になります。

「老後資金2,000万円不足問題」は人生における大きな課題です。給与や事業所得から「iDeCo」で確実に積立を行い、余裕資金があれば換金可能な「つみたてNISA」で資産を上積むという戦略が理想的といえるでしょう。それぞれの制度のメリットを活かし、デメリットをカバーしながら資産を形成することが求められます。

※本記事は2021年6月23日時点の情報を基に構成しています。取扱商品等は金融機関によって異なりますので、口座を開設する際は金融機関のホームページ等で最新の情報をご確認ください。