個人事業主の方々がクレジットカードを持とうと思った時に、まず気になるのが審査だろう。個人事業主こそクレジットカードを持つメリットは多いが、肝心の審査で落ちてしまうようでは元も子もない。
しかも、一口にクレジットカードといっても、カード会社やカードのブランドは実にさまざまだ。申し込むとしてどのカードにすればよいのか迷ってしまう方も多いだろう。そこで当記事では個人事業主こそクレジットカードを持つメリットや、カード選びのポイントを解説する。
さらに多くの方が心配されている審査について、知っておくべき情報を網羅した。個人事業主におすすめのクレジットカードも5つ紹介するので、これからカードを作りたいとお考えの方はぜひ参考にしてほしい。
個人事業主がクレジットカードを持つメリット

個人事業主がクレジットカードを持つことには、主に4つのメリットがある。それぞれ順に見てみよう。
経費や会計管理がシンプルになる
個人事業主は、その名のとおり個人で事業を営んでいる。経理専門のスタッフがいるような会社であれば問題にならないかもしれないが、個人事業主の場合は経費など会計の管理も事業主がしなければならない。こうした管理業務が本業ではない場合は苦痛に感じる人も少なくない。
事業に必要な仕入れや支払いなどをクレジットカードで決済するようにすれば、1か月の利用明細が自動的に作成される。現金による支払いだと記帳漏れが起きる可能性があるが、クレジットカードにはそれがない。いつ、何に、いくら支払ったのかを漏れなく記録するためにも、クレジットカードは役に立つ。
急な出費への対応が可能になる
事業をしていると予期せぬ出費、急な出費はつきものだ。出費に対応できなかったためにビジネスチャンスを逃してしまったり、経営に悪影響を及ぼしてしまうこともあるだろう。
あらかじめクレジットカードを持っておくと、手持ちがない場合に急な出費が発生してもカード払いで対応できる。
ポイントやマイルがたまれば経費が削減
ほとんどのクレジットカードには、ポイントシステムがある。利用した金額に応じてポイントがたまっていくので、使えば使うほどポイントも多くなる仕組みだ。
たとえば、三井住友カードでは利用額200円ごとに1ポイントが付与される。付与されたポイントは1ポイント=1円相当の利用が可能なので、事実上の「0.5%割引」と考えることもできる。
キャンペーンなどで条件を満たすとポイントの還元率が高くなることもあるので、こうした仕組みをうまく利用するとさらにポイントがたまりやすくなり、経費の削減効果も大きくなるだろう。
資金繰り対策になる
クレジットカードは、資金繰りにも役立つ。というのもクレジットカードは掛売りなので、仕入れなどに使用したとしてもその場で代金を支払うわけではないからだ。その月の利用分をまとめて翌月以降の請求日に支払う仕組みになっているため、キャッシュを手元に残しておきたい場合や、現金で仕入れたいものがあるのに現金が足りない場合などにとても便利だ。
個人事業主がクレジットカード選ぶ時に見るべきポイント5つ
クレジットカードを選ぶ際の基本は、使う人のライフスタイルや用途にフィットしているかどうかである。個人事業主がクレジットカードを持つ場合であってもそれは同様で、個人事業主の利用シーンを想定して選ぶのがよいだろう。そこで意識したい比較ポイントは、5つある。
ポイントの還元率
利用した金額に応じてポイントがたまるのは、今やどのクレジットカードにもある機能だ。個人事業主が事業で使用する代金の決済にカード払いを導入すると決済金額は自ずと大きくなるので、ポイントの還元率が大きな差につながる。
そのため、ポイント還元率は高ければ高いほどよいことになる。仮に200円で1ポイントのカードと100円で1ポイントのカードであれば、それだけでもポイントがたまるスピードの差は倍になる。経費の削減効果にも直結するので、ポイント還元率にはシビアになるべきだろう。
年会費
次にチェックしたいポイントとして、年会費を挙げたい。クレジットカードの年会費にはいくつかのパターンがある。利用状況に関係なく年会費が発生するもの、利用状況によって年会費が無料になるもの、条件に関係なく年会費が無料であるもの、といった具合だ。
いうまでもなく、年会費は無料であるに越したことはない。いくらポイントシステムが優れていても年会費が高ければ差し引きでマイナスになってしまうことがあるからだ。しかも年会費は毎年発生するので、カードの保有期間が長くなればなるほど年会費の負担も大きくなるため、可能な限り年会費が無料になるカードを選ぶべきだ。
利用限度額
個人事業主が事業性の決済をクレジットカードで行う場合、利用限度額は大きければ大きいほど安心だ。あまり限度額が小さいカードだとすぐに利用可能枠を使い切ってしまい、クレジットカードを持つメリットが限られてしまう。
ただし、最初から大きな利用限度額を設定できるカードは少ない。利用状況に応じて徐々に大きくなっていくのが基本的な形なので、最初の利用限度額が小さいからといって使い物にならないと決めつけるのは早計だ。
ネットの口コミなども参考にして、「最終的に必要な利用限度額を設定できるカード」を選びたい。
付帯保険
付帯保険とは、クレジットカードを持っているだけで、特に保険料を支払わなくても適用される保険のことだ。よくあるのは国内や海外旅行を対象にした保険で、旅行先でのトラブルに対する補償がついている。
プライベートでの旅行はもちろんのこと、仕事のために訪れた旅先で見舞われたトラブルについても補償が得られるので、付帯保険が充実しているほど保険料の節約効果がある。頻繁に旅行や出張に行くことがある人は、この付帯保険に重点を置いて選ぶのもよいだろう。
特典・サービス
日本ではあまりその意識がないかもしれないが、欧米などではクレジットカードには一定のステータス機能がある。特定のカード保有者だけが利用できる空港ラウンジや旅先でのコンシェルジュサービスなどはその典型だ。
自分が持っているカードに付帯している特典やサービスのことを知らない人も多いので、カード選びの段階からこうした視点を持ちたいところだ。
個人事業主はクレジットカード審査に落ちやすい?
一般論として、個人事業主はクレジットカードの審査に落ちやすい(通りにくい)といわれている。その理由は、返済能力の裏づけを確認しにくいからだ。
たとえば大手企業の社員や公務員であれば給与所得の出所がはっきりしており、しかも安定性があることも確認しやすい。それに対して個人事業主はスモールビジネスであるがゆえに事業が安定していてもそれを確認する手段が少ない。そのため、収入や個人事業主として事業を営んできた年数などを厳しく審査せざるを得ない。
こうした事情があるため、個人事業主はどうしても審査のハードルが高くなってしまいがちで、それゆえに「審査に落ちやすい」というイメージがある。もちろん過去の利用履歴などに問題がなく、安定的に事業を継続しているのであればそれほど不利になることはない。
個人事業主におすすめのクレジットカード5選
個人事業主が利用することを想定して、おすすめのクレジットカードを5つ厳選した。これからクレジットカードを作ろうとお考えなのであれば、ぜひ参考にしてほしい。
三井住友ビジネスカード for Owners(クラシック)
事業者向けのクレジットカードだが、決算書や謄本などの提出は不要なので手軽に申し込みができる。また、気になる年会費については初年度が無料で、翌年からも年間で1375円なので、それほど大きな負担にはならない。
ポイントシステムは200円で1ポイントで還元率0.5%と一般的な水準だが、対象店舗に指定されている店舗で利用すると2%が上乗せされる。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールドカード
「アメックス」の略称でもおなじみの世界的なブランド。年会費は初年度が無料で翌年以降は3万4100円だが、米国をはじめ海外では絶大なブランド価値を誇るため、ステータスカードの1つといえる。ポイントの還元率は最大1%なので、カードを多く利用する人はより便利さを感じやすいだろう。
利用限度枠が設定されず柔軟に利用できること、クラウド会計サービスとの連携、オフィス用品の購入に使用した場合のキャッシュバックなど、事業者向けの機能が満載であることも嬉しいところだ。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス
サーバーホスティングやクラウド会計など、ITを活用したサービスの優待が多く見られるため、こうしたサービスをフル活用したい個人事業主が活用しやすいカードだ。
クレジットカードのポイントには有効期限が定められていることが多いが、セゾンブランドのカードは永久不滅ポイントが1つの売りになっている。しかもポイント還元率は条件によって2%相当と高く、クラウドサービスやサーバー利用など、対象となっているサービスや店舗を利用することが多い事業者に最適だ。
JCB法人カード
「法人」と名がつくカードだが、法人だけでなく個人事業主でも持つことができる。主要な会計ソフトとのデータ連携が可能で、カードの利用明細をそのまま会計処理でき業務の効率化につながる。また、出張が多い個人事業主に向けて新幹線や宿泊などの優待サービスがある。
NTTファイナンスBizレギュラーカード
このカードの最大のメリットは、年会費が永年無料であることだ。事業者向けのカードは年会費が発生するものが多いが、その中にあって優位性が高い。ポイントの還元率も1%なので高く、実質的に仕入れコストが1%引きになる。
ガソリンスタンドのキャッシュバックがあるため、営業活動でクルマをよく利用する事業者は燃料費のコスト削減も可能だ。
クレジットカードでビジネスを加速させる
クレジットカードというと個人が自分の買い物に利用するものと考える人は多いが、今やクレジットカードは個人事業主をはじめ事業を営んでいる人にとってもマストアイテムとなっている。それぞれのカードが事業者向けの機能やサービスを充実させているので、これからは「ビジネスを加速させる」という視点でカード選びをすることも重要になるだろう。