注目の金融商品Watching!保険・その他編
(画像=bee/PIXTA)

今回Watchするのは▶︎「ホームアシスト」
(楽天損害保険)

従来の水災リスクにかかる保険料を改定。リスクに応じた保険料を設定した商品

今回は、楽天損害保険の火災保険で、従来の商品をバージョンアップさせて2020年4月1日にリリースされた新しい「ホームアシスト」を紹介する。水災に関する補償部分の保険料体系を大幅に改定したものだ。誌面の関係上、解説は水災の補償に焦点を当て、他の部分は省略する。

注目の金融商品Watching!保険・その他編
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従来の全国一律の保険料をハザードマップに基づき細分化

1. 水災の補償内容

この商品では、台風や集中豪雨による水災で建物や家財に被った損害の補償は、基本となる補償に含まれているが、特約により補償を外すことができる形式をとる。

水災の補償内容は、協定再調達価額または保険価額の30%以上の損害の場合、もしくは、床上浸水または地盤面より45㎝を超える浸水により損害が生じた場合、保険金額を限度に、実際の損害額(修理費用)が支払われるというものだ。

2. ハザードマップに基づく水災補償の保険料

この保険商品の特色は、水災の補償に関する保険料の決定プロセスにある。

(1)所在地の水災リスクを保険料に反映

一般的に火災保険料の火災リスク・風災リスクは都道府県別、水災リスクについては全国一律の各社ごとの保険料となっている。建物の構造級別が同じであれば、保険の対象となる住宅が河川から離れた高台にある場合でも、河川の近くの低地にある場合でも、同一の料率が適用されている。

2020年4月に従来の水災リスクにかかる保険料を改定した同保険では、建物の所在地と国土交通省が公開している水害ハザードマップの情報をマッチングさせ、建物の所在地における水災リスクに応じた保険料を設定したものとなっている。

(2)水害ハザードマップ

水害ハザードマップとは、水防法に基づいて市町村が提供する水害(洪水、雨水出水、高潮)のリスクを地図上に示したものである。従来は計画規模降雨を公表していたが、2015年の水防法改正により、想定最大規模降雨を公表することが義務付けられた。

(3)水災リスク

水災リスクには「内水氾濫」と「外水氾濫」がある。「内水氾濫」は、河川周辺の雨水が、河川の水位が高くなったために排水できずに発生するものや、河川の増水とは関係なく、短時間の強雨などで雨水の排水能力が追いつかずに発生するものがある。「外水氾濫」は、河川の水位が上昇し、堤防を超えたり破堤するなどして堤防から水があふれ出すものをいう。(気象庁「避難勧告等に関係する諸情報(洪水・浸水)の技術について」)。

楽天株式会社と連携して保険料率を4つに区分

(4)4区分の保険料

同社では、楽天株式会社のデータサイエンティストチームと連携し、前述の水災リスクをハザードマップ上の浸水深と突き合わせ、建物の構造級別・建物の所在地ごとに水災にかかる保険料率をA〜Dの4つに細分化した。

最も低い料率のA区分が同社の保有契約区分の約7割を占めるが、水災にかかる保険金の支払いがここ数年大幅に増加しており(後述)、改定前の全国一律の保険料と比較すると、全体的に引き上げられている。しかし、リスクの高いD区分と比較すると、A区分の保険料負担は軽くなっている(図表参照)。

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今後水災リスクにかかる保険料体系の改定は広がる

3. 水災リスク細分型導入の背景

2011年以降、火災保険から風水害などの自然災害により損害保険会社が支払った保険金額の合計は、それまでと比較して大幅に増加している。直近で高額な支払い対象となったものは、2018年9月の台風21号の9363億円、2019年10月の台風19号の5181億円、2019年9月の台風15号の4398億円と続く(日本損害保険協会調べ)。

損害保険料率算出機構では、火災保険の保険料のうち保険金の支払いに充当される純保険料率の参考純率を算出している。この参考純率をもとに、各損害保険会社は保険料率を算出している。

近年の自然災害による支払保険金の増加により、2014年以降参考純率の引上げが続いている。火災保険の収支は2011年度以降赤字となっており、損害保険会社の経営を圧迫していることは否定できない。水災リスクにかかる保険料体系の改定は、損害保険会社の経営上喫緊の課題である。

前述の損害保険料率算出機構でも、中期経営計画の中で、2022年までに水災に関する補償部分の参考純率について、地域細分化を進めるとしている。昨今の水災の動向から、今後、損害保険業界全体でこのような流れになると予想される。同保険は他社に先駆けて、水災の補償にかかる保険料についてリスクを細分化して決定するプロセスを導入したものと言える。

4. さいごに

2020年8月28日から、私たちが宅地建物を購入する際に受ける重要事項説明で、宅建業者はハザードマップを使って水災のリスクを説明することが義務付けられた。水災のリスクを十分に理解し、事前に準備してリスクを軽減していくことが、社会的にも、私たちの生活設計上も、重要な課題と言えるだろう。

●執筆● 深澤 泉 株式会社ポラーノ・コンサルティング代表取締役 CFP®