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(画像=PIXTA)
銀行員の質問
コロナ禍にあっても何とか営業を続けている店がある一方で廃業してしまう店もあり、明暗が分かれています。生き残っていくためにマーケティングでは何をどう考えていくべきですか。

飲食店経営の基礎は「マーケティング」「クオリティ」「サービス」「クレンリネス」「マネジメント」の5つの分野にまとめられる。今回はそのうちの「マーケティング」を解説する。

マーケティングこそ明暗を分ける分水嶺

東京商工リサーチによると、2021年(1〜5月)の飲食業倒産は270件だった。年間の最多件数を記録した20年(842件)と比べれば各種支援により抑制されているものの、ほぼ半数は新型コロナ関連の倒産が占めている。明暗は、まさにこれから明確になると思われる。

コロナ前より問題・課題を抱えていた飲食店は言うに及ばず、ウィズコロナ時代を見据えた準備を怠っていた飲食店は早々に退場を余儀なくされるだろう。

業態で見ると、宴会や会食が中心だった店、居酒屋、ファミリーレストランの落ち込みが顕著な一方、ハンバーガーや牛丼等のファストフード店はあまり痛手を受けていない。つまり、イートイン主体の需要が消失したものの、テイクアウト(一部デリバリー)の需要はなくなっていないということだ。

すべての商売は、自身の強みを活かして需要を捉えることで成り立つ。平時から「凡事徹底(ぼんじてってい)」を怠らず、自店の魅力や売りを磨き続けてきた努力の積み重ねがモノをいうのだ。溢(あふ)れるほど需要があるときは気付きにくいが、いざ危機が発生すると途端に、そのことが如実に表れる。

需要を自店舗にどうマッチさせて顧客を獲得していくか――。この経営課題に取り組むことは、まさにマーケティングを実施することである。

マーケティングとは、簡潔に言うと「売れるための仕組みを作る」ことだ。押売りしなくても、買い手が自分の自由意志で自社製品を選択してくれる、そういう仕組みの構築がマーケティングの目的である。

飲食店ならば、お店の前を通る人あるいはSNSなどで情報を見かけた人が「今まさに欲しかったのはこういうお店!」と思って来店してくれるような店づくりをしていくということである。

そのためには、まず自店の強みを再認識することが重要だ。飲食店には必ずお客様に喜んでもらえる看板料理があるはずである。そして、その料理を食べるお客様は具体的に誰なのか?

老若男女すべてということはあるまい。シニア/若者、男性/女性、お独り様/ファミリー、さらにはお客様の利用動機や消費形態(客単価など)、店舗の立地・商圏、店構えも含めてターゲットを見極める。これらを明確にイメージできたら、次に、そのお客様にアプローチする方法を考えよう。

①新規顧客の獲得