金融機関FPの悩みにこたえる相談室【第5回】
(画像=MediaFOTO/PIXTA)

口座開設に関わるマネロン等対策・リスクを踏まえた対応法について解説します。

Q1. マネロン等対策はなぜ重視されているの?
口座開設時にも注意が必要?
営業店ではどんな対応が求められているの?

A 「マネー・ローンダリング およびテロ資金供与対策(マネロン等対策)」を国際的に推進しているFATFの活動目標には、「国際的な金融システムの健全性を脅かすリスクに対処すること。国際的な金融システムが悪用されることを防止すること」が掲げられています。

また我が国のマネロン等対策の基本法である「犯罪収益移転防止法」第1条では、マネロン等対策の目的として「犯罪による収益の移転防止を図り、テロ資金供与防止条約等の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与すること」を定めています。

このように、マネロン等対策の目的は、我が国の金融システムが不正取引等に悪用されることを防止し、あるいは顧客が金融犯罪等に巻き込まれることなく安心・安全に金融取引を行えるようにすることにあります。

このことは世界中の金融機関に課された重要な責務とされており、マネロン等対策が不十分な金融機関・不正取引に関与した金融機関は、法令違反を問われるだけでなく、社会的な非難を受ける可能性が高いといえます。

利便性の高い預金口座を悪用する事例も増加傾向に

預金口座は、資金を安全かつ確実に管理するための手段として広く一般に普及しており、インターネット等の非対面取引を通じて、口座を開設したり、取引をしたりすることが可能となったこともあり、その利便性はますます高まっています。

そのような特性を有するため、マネー・ローンダリング等を企図する者が、犯罪収益を収受・隠匿するために預金口座を悪用するケースも増えてきています。

例えば、特殊詐欺やヤミ金融事犯等において、親族や知人から借り受けた預金口座、他人から買い受けた預金口座、架空名義で開設した預金口座等を犯罪収益の受け皿として悪用することで、犯罪収益の移転が行われています。

したがって、金融機関としては、主要な商品・サービスである「預金口座」が悪用されないようにするための対策を講ずることは当然ですが、そのためには特に、入口である「口座開設」時に、将来不正取引が生じる可能性(リスク)をできる限り取り除いておくことが重要です。

ここで、リスク管理の基本である「リスクベース・アプローチ」について説明します。リスクとは、一般に、起こり得る「可能性(おそれ)・頻度」と「影響度」等を総合的に検証して、その程度を評価します。

例えば、暴力団員等の反社会的勢力との取引は1件でもあってはならないし、仮に、そのような者と取引を行っていることが社会的に知られたら、その影響は計り知れないものとなります。したがって、金融機関では、このような顧客属性との取引はリスクが極めて高いとして、謝絶方針で臨むことを「顧客受入方針」に定めていると思います。

このように、マネロン等対策においては、金融機関が提供する「商品・サービス」、「取引形態」、「国・地域」、および「顧客属性」のリスク要因ごとに、どのような顧客・取引が不正取引に悪用される可能性があるかを特定し、その頻度や影響度を踏まえてリスクの高低を評価することから始まります。

そして、リスクの程度に応じて、最適な対応方針(リスク低減措置)を講ずることが求められます。

以上のように、自らが直面しているリスクを適時・適切に特定・評価し、リスクに見合う低減措置を講ずることを「リスクベース・アプローチ」といいます。そのポイントは、リスク(発生の可能性や影響度)が高い顧客や取引に対して重点的に対応する(チェックや監視を強化する)ことにより、リスク管理の効果を高めることにあります。

リスク低減措置の中核となるのが顧客管理!